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5:リザルト・対策・実践

 結論から言えば俺たちは苔島への侵入を諦めて撤退した。

 解決策は何とか思いついたが準備と訓練が足りなかったからだ。

 アラームが鳴ったのを受けて俺たちは最近たまり場になっている気がする第1階層ボスエリアから荷物をまとめて戻るの転移象形を起動する。


 自室に戻って荷解きを終えると夕飯の準備……しようと思ったがアウレーネからの圧力がかかったので閉店間際のスーパーによって酒を調達。もう面倒だから半額表示の総菜と弁当でいいか。ロクなもの残ってないけど。

 手早く夕飯を終えると就寝前の時間を使ってマジッククレイを捏ねる。ひたすら捏ねる。造形を作って固めて振り回す。当然魔力を込めてだ。ステータス画面をタップして編集する要領を発展させれば、一応俺でも魔力を込めやすいマジッククレイのような素材なら魔力を込められるようになった。

 あとはひたすらこの練習を繰り返して自由自在迅速に造形出来るようになるのが目標だ。

 肩の先から伸びたヤドリギの根っこが撫でるように注がれた酒の液面を這うのを尻目に俺は就寝時間まで粘土を捏ね続けた。




名前:尾崎幻拓

種族:精霊憑き

レベル:5(↑1)

魔法力:15

攻撃力:22(↑2)

耐久力:20(↑2)

反応力:15(↑3)

機動力:17(↑3)

直感力:36(↑3)


特性:精霊契約:アウレーネ


名前:アウレーネ

種族:精霊

レベル:4(↑2)

魔法力:32(↑12)

攻撃力:1

耐久力:8(↑2)

反応力:16(↑6)

機動力:3(↑1)

直感力:22(↑4)


特性:精霊魔法


 第1階層ボスと第2階層のモンスター、それからオタマたくさんを倒したにしては慎ましやかな伸びだ。レベルごとに各モンスターが持つ経験値的なものの要求度が桁違いに跳ね上がっていくのかもしれない。

 電車が到着を知らせて来たのでステータスの確認を止めて下車する。

 目的地は規模の大きい中心街のホームセンター。キャリーバッグ目当てだが行楽シーズンではないのであるかどうかは分からない。片手で引っ張れて2,3輪くらいで自立する収納容器であれば及第点だ。レジャーコーナーかあるいは園芸コーナーか。手早く見つけられればいいんだが。




「んッ!」

「分かったから落ち着け」


 荒ぶるアウレーネを宥めて俺は装備を確認する。二輪タイプのキャリーカートは無事買えた。登山用のリュックサックを合わせて買って今はそれを接続している。荷物が増えてきたら最悪リュックを背負ってキャリーカートに追加の荷物を載せてもいいし発展性は高いだろう。

 アウレーネが荒ぶっているのは昨日酒が呑めなかったからだ。働いていないのに呑ませる事は出来ないとダンジョン意欲を煽ってみたがやり過ぎだっただろうか?しかし毎日酒浸りされてもそれはそれで問題だし何か酒以上に興味を引く飲料水を考える必要がありそうだな。何でこんなことになったのやら……俺のせいか。ハァ。

 肩の上と背中で温度差を感じつつも一昨日ぶりのダンジョンアタック。今日は休日なので朝からみっちりダンジョン生活だ。今日は昼で一端帰還する予定だが、明日はダンジョン内で昼食を取るなり言い訳を考えてアウレーネが酒から目を逸らせそうな飲料水を見繕って飲ませてもいいかもしれない。

 昏い虹色の光が全感覚を覆い尽くしてダンジョンへと連れていく。




―――グボォッ!?


 掌からヤドリギを生やした泥の手が当てのない助けを求めるかのように虚しく数回宙を掴もうと手を藻掻いたあと光の泡になって消えていった。

 その後には丼ぶり一杯程の粘土の塊。


「はぁ、やっとか」


 何かと言えばマジッククレイを想定量集めるためのボグハンド狩りだ。第2階層を半分ほど回って運よく湿原の根本にいたボグハンドも2体ほど見つけて狩った。だというのにドロップが魔石ばかりでマジッククレイがまともに集まらなかった。レア設定がキツイのか物欲センサーなのか。とはいえ集まったのだからこれ以上の曇りは不要だ。切り替えさせて切実に。


 キャリーカートを引きずって目的の行き止まりまで歩く。粘土を集める過程でクリアリングはとっくに済んでいるので足止めを食らうこともない。

 行き止まりで俺はキャリーカートの軸に結わえつけられた長物。キャリーそりから更に変身を遂げた呪醸樹の太枝を取り外した。

 長さは2メートル。本当は余裕を見て3メートルくらいは欲しかったが流石に自室に置くには邪魔なのでギリギリ縦置きも出来る2メートルとした。

 持ち手部分には穴が開いていて先端まで続くように造形して貰った。加えて先端に取り付けられた環には一昨日ボスエリアで編んだ太めのアシ縄が結わえつけられ、手元の持ち手部分にまで緩く柄に巻きつきながら垂れさがっている。


「後はマジッククレイを流すだけっと」


 先端部に今まで拾ったマジッククレイを3塊、まとめて捏ねて押し付ける。魔力を流して長物に空いた中空に粘土が浸潤していき、持ち手を握った俺の意志によって房の形状を自由に変化できる長柄マジックワンドが完成した。


 アシ縄を解いて引き、持ち手と縄の両手で保持できるようにしてから行き止まりのアシ原にマジッククレイを突き出す。

―――ぐにゅり。

 柔らかい感触を受けてマジッククレイに魔力を送り、先端を柔らかく薄く平べったく、アシモドキの群生の中をかき分けるように浸潤するように伸ばしていく。

 程々いい負荷の所まで伸ばしたら、今度はマジッククレイを頑丈に堅牢に、掻き分けて回り込んで取り込んだアシモドキの群生をガッチリとホールドさせるように固めた。


「そして、仕上げだぁッ!……と」


 両手でもって長柄を釣り上げてやれば、根すらない謎のアシモドキは群れごと根こそぎ引っこ抜け、後には直径1.5メートルくらいのハゲ湿地が広がっていた。

 ボグハンドの射程1メートル強と考えると左右2列の最大幅3メートル未満、向こう岸の苔島まで約10メートルと推測されるので概算14回ほどこの作業を繰り返せば苔島まで開けた道見通しのいい道が長柄の2メートルという安全圏を作りつつ作成出来る事になる。

 バサバサと木道の端に釣り上げたアシ束を投棄して俺は次の群生に取り掛かった。


―――。

――――――……。


 何とまあ溢れる殺意かは。

 俺は拾った水中に沈んだマジッククレイを拾い、じゃぼじゃぼ戻ってキャリーカートのリュックに放り込んだ。

 行き止まりの木道端から苔島までの10メートルで遭遇したモンスターはボグハンド4体にヤゴ8匹と尋常じゃない密度を誇っていた。

 そこそこ時間を食ったので周辺から寄って来たのもあるだろう。実際に引っこ抜いたハゲ湿地で見つかったモンスターと開いた道の左右から姿が見えたモンスターと数はどっこいどっこいだった。

 それでも宝箱までの隠し通路に用意された殺意に俺はため息を吐かざるを得なかった。


 そしてもう一つため息が出る曇り要素があった。

 いつの間にか水が水らしさを実装していた。そして現在膝下まで浸水しているので靴はおろかジャージの下半身まで濡れて気持ち悪いしそもそもかなり歩きにくい。

 この調子で湿地のぬかるみまで再現されたらこのダンジョン極悪なんて表現では済まなくなるな。


 ため息が積乱雲でも作りそうな湿っぽい考えは横に置いてようやく苔島到着だ。

 見た目的には見事な緑がもこもこと茂る苔島。踏み心地もいい感じに柔らかい……けど何か妙だ。苔にしてはさらりと乾燥して肌触りが良過ぎる感じがする。何か目の細かいタオル地のハンカチ……そう、モニタ拭きでも触っているかのような感触だ。

 苔島の中心に生える一本樹はバサバサとした成りそこないのカシワみたいな葉を茂らせて直立していた。

 素材的にもアウレーネと相性が良さそうだし可能であれば枝の一本くらい貰って検証してみたい。

 そしてここに来るまで散々苦労させられた主目的の宝箱が樹木の太い根の合間にちょこんと鎮座している。

 ここで迂闊に開けるには第2階層はモンスターのラインナップがアンブッシュ過ぎた。ちゃらんぽらんですらここまで来たら用心するだろう。宝箱に仕掛けられたトラップに。

 俺はマジッククレイワンドを起こして宝箱斜め後ろにしゃがみ込み、クレイを程々の柔らかさにして宝箱のフタと密着させると、そっと長柄を釣り上げてフタを開けた。


「………トラップは、なしと」


 いや、まあ浅い層だしまだ手心加えてトラップが無い可能性も十分にあったよ?でもこういうのは常に用心しておくからこそ効果があるのであってうんぬん。

 ともかくお宝だ。休日潰して散々苦労させられたんだし期待してもいいだろう。期待させてお願い。

 箱の中は苔島コケの色を紫色に塗ったような感触の内張りが施された丁寧な仕上がりでその中央にちんまりと丸い2つのガラス球っぽい……。


「ちょっと待て……。フゥ……、レーネ。解析、頼めるか?」

「ん? んぅ」


 ここに来てただの魔石だったら流石に頽れるぞコレ。

 手をかざした先で2つの半透明で小さなヤドリギを芽生えさせ、暫く首をかしげると、ややあってアウレーネが思念を伝えてくる。


名称:ガラス球?

レベル:5?

魔力:20?

特徴:魔力と意志を伝え合う。


 ……いやなんでアイテムがレベルを持ってるの?

拙作をお読みいただきありがとうございます。

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