表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

44/165

44:探索成果とオルディーナの始動

 茨樹精(ラズラウネ)のユキヒメが居候になった。

 それから気になっていた泡沫精(ニンフ)の存在だが。


 色々類推すると茨樹精と融合していたらしい。

 本人(ユキヒメ)は何の事かよく分からないと首を傾げていたが、やれる事を色々確かめている内にその可能性が固まった。

 ユキヒメは植物塊から伸ばした茨の操作は勿論の事、水を生み出すことも出来た。あとついでに実体化した魔法の茨も作り出せるようになっていた。上位互換だな。

 能力的にも融合しているし、魔力的な繋がりは泡沫精の頃から続いている。ユキヒメとして自我が芽生えたのは先ほど起きて契約した頃らしいのでよく分からないらしいが、ここまで状況証拠が揃えば2体の精霊が融合してユキヒメとして成立したのだろうと考えてもいいだろう。

 予想外の事態や状況が重なったために再現は難しいだろうが、狂奔の森を鎮める手段の一つとして覚えておいてもいいかもしれない。




   *   *   *




 殺到していた探索者設立うんたらかんたらモルモットもこの土日で全国各地に儲けられた各試行検証用会場へ詰めかけて大いに探索していたらしい。ネット上はどこもかしこもそんな話で持ち切りだったそうだ。精が出るな。……もしかすると暴徒のガス抜きのためかもしれないが。


 俺もユキヒメを居候として工房に置いた後、茨迷路区画の第二次探索に乗り出していた。

 取り合えずで向かったユキヒメを仲間にした場所、ランドマークになり得る大樹には大きな樹洞が開いていて、宝箱でもあるかと期待したが残念ながらうまい話はなかった。代わりに樹皮色のぶよっとした物体、恐らく粘菌だと思われるが、これがマジッククレイや水銀同様魔力で自由成形が可能な素材だったので採取して持ち帰った。上手く増やす事が出来れば、オルディーナの研究材料にいいかもしれない。


 それから沈黙した茨迷路を樹上を渡って踏破していったが、別の茨樹精(ラズラウネ)に会う事はなく、迷路に煩わされることもなく順調に進んで行った。

 精霊たちを飛竜の血に詰めるのではなく、鎮静化したら存在核に戻すという手法もやってみたが、戻したら存在を維持できずに消滅しかけてしまった。慌てて胸中に再び格納してそこから飛竜の血に流したが、戻す前より少し存在が薄くなっている気がした。夜喋精(チャタドール)には悪い事をしたな。何故かは分からないが鎮静化したうえで確固とした精霊として確立するためには精霊の融合が必要なのだろうか。

 試してみたいという気持ちもない訳ではないが、殊個我というナーバスな存在を取り扱うので少々躊躇う。

 ユキヒメの時は状況が重なった末の偶然だから納得も行くが、自分で精霊を捕まえてきて無理やり融合というのは良くない気がする。

 やはり無理に狙わず偶然状況が重なったらでいいだろう。


 茨迷路もかなり探索が進んで小川にかかる石橋や石造りの小洒落た洋風あずまやなど幾つかのランドマークも発見できた。特に洋風あずまやには宝箱が置いてあったのがえらい。中身は鑑定ぽんこつ先生いわく、鑑定の苔宝玉、鑑定能力を持ったコケ玉の盆栽だった。


名称:鑑定のコケ玉

魔力濃度:23

魔力特徴:魔力と意志を力に変える。魔力と意志を沢山貯められる。


 うん、要らない。もう俺の胸中には鑑定ぽんこつ先生がいるし、更に言えばアウレーネが解析してくれるからな。

 鑑定能力は要らなかったが、鑑定の能力が入っている赤い色の魔石は気になるし、取り出した後のコケ玉盆栽は金と同じ魔力と意志を貯められる性質をしていたので少々興味がある。

 ボス攻略と合わせてじっくりと検証して行こう。


 うん。ボスエリアを見つけた。多分。

 多分というのは茨迷路を抜けた先が高度上限までそびえる崖になっていて、その一角にこれ見よがしの洞窟が真っ黒な口を開け、ご丁寧に何か陰鬱そうな黒い靄、アウレーネが絶対に触りたくないと言っていた嫌な感じ、もう瘴気とでも命名しておくか……そういった意味ありげな瘴気が薄く立ち昇っていたからだ。

 これでこの先ボスじゃなかったら何だって言うね。

 現状は洞窟周辺を確認だけして撤退した所だが、この洞窟に挑むにはボス対策しておいた方がいいだろう。

 この洞窟に入って即ボス戦なのか、ボス前迷路でもあるのかは分からないがまず暗闇だ。照明対策は必須だろう。……多分実際には魔力を纏うなりなんなり、常に何かしらの魔力が発光しているので薄ぼんやりとなら自然と視認できそうな気もするが。

 ボスを見てみないと対策のしようがないというのはその通りではあるが、だからといって無策で突っ込んでいい訳でもない。出来るだけ逃げる手立て、状況に応じて偵察できる手段を検討していくべきだろう。


 ひとまずは仕事を進めよう。

 何やら例のモルモット抽選にあぶれたらしい何某さんが荒ぶっていたが、後々のもっといい条件でのモニター応募への当選確率が上がったのでは、と提言したら収まった。知らんけど。

 気が変わらない内にさっさと業務を再開しよう。




   *   *   *




「ンガガ」

―――成功じゃな。

「アッハイ」


 いつものように工房へ向かうとアフロの木目のおっさんが片手を挙げて挨拶してきた。

 まあ造形センスからは誰の犯行かは分かる。

 オルディーナが言うには樹人形らしい。魔力を伝達する木をベースに間接部位を自由成形できる粘菌で埋めて可動性と柔軟性を持たせ、ヤドリギの制御核を頭にコケ玉の魔力貯蔵タンクを胸の樹洞に収めた力作だという。

 とりあえずコケ玉を勝手に使った事には一言物を申しておいたが、自由に出歩けているのは誰のおかげであろうなとの反論にはこれからは事前に相談するようにと注意する事しかできなかった。オルディーナはほぼずっと工房の裏庭から動いていないのは確かだからな。

 とりあえず、動きを確実にするためにも星白金の粒をオルディーナと樹人形に持たせて第2階層を一回りさせる。

 動けないとは言え、何もしていなかったわけではないようで器用に青色変質魔力で作ったヤドリギを操ってボグハンドやヤゴを処理して歩いていた。

 いつの間にか魔力変質を使えるようになっていたようだ。どう作り出すのか自体は教えていたからな。魔力制御できるのならさしたる苦労もないだろう。


 一通り第2階層の動作試験で通信状況に問題ないことが分かったので、本番の転移実験だ。

 向かう先は第3階層。

 今俺たちがいる第5階層は流石にレベル差がね。全体に立ち込めている瘴気がどう影響するかもわからないし。

 オルディーナのステータスを聞いた所、現在このような感じらしい。


名前:オルディーナ

種族:精霊

レベル:5(↑2)

魔法力:72(↑42)

攻撃力:1

耐久力:4

反応力:13(↑6)

機動力:4(↑3)

直感力:44(↑4)


特性:精霊魔法、魔力変質(魔法力)


 魔法力の上がり幅がとんでもない事になっているが、毎日と言わず24時間物理的な意味で張り付いて木の世話を魔力的な意味でしたり、オルディーナ人形を操って働いていればそうなるのも頷ける。

 ともあれ、レベル的には俺たちが第3階層へ挑戦したのとそう変わりないし、そもそもこのアフロトレントとでも言えるかのような珍妙な樹人形は幾つか第5階層の素材も勝手に組み込まれているのもあって大分強度が高い。

 本当は基本外骨格になっている魔力伝達の木の素材の強度も黄色変質魔力の同調現象で上げてやりたかったのだが、同調自体はするものの、魔力濃度はすぐに下がってしまった。

 どうやら魔力伝達の木にレベルが生えたらしくそれが原因ですぐに魔力濃度が下がるそうな。そもそも魔力伝達の木にもレベルが生えた事自体初耳だが、まあ仕方ないだろう。

 多分敵を倒せばレベルが上がるだろうし、そこら辺はオルディーナに頑張ってもらうとしよう。


 差し当たって、適当にダブついていた発火原石だか鉱石だかの魔法を使えるアレコレを抽出してコケ玉に流して置いたら喜んでハッスルしていた。

 喜ぶのは結構なんだが、喜び方がモンキーダンスってお前キャラ変わってない?

拙作をお読みいただきありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ