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25/165

25:引いてダメなら押してみろ

 世界中にダンジョンが出来たらしい。

 調べてみると動画として生き残っているのは一昨日くらいから。

 休日で視聴者が増えてバズったのも一つの要因だろうな。

 消されたり不死鳥したり転載されたりで賑やかになっているようだ。

 俺には関係のない話だが。




 それは置いておいて今日もダンジョンだ。

 昨日は知らんうちに強化されていた第3階層を突破し、レベルと報酬、それから気付きを得た。


名前:尾崎幻拓

種族:精霊憑き

レベル:19(↑4)

魔法力:122(↑24)

攻撃力:52(↑14)

耐久力:49(↑7)

反応力:43(↑9)

機動力:36(↑8)

直感力:110(↑8)


特性:精霊契約(アウレーネ、オルディーナ)、魔力制御、魔力変質(魔法力)、アイスウィザード、土魔法

スキル:怪力


名前:アウレーネ

種族:精霊

レベル:19(↑4)

魔法力:160(↑42)

攻撃力:5(↑3)

耐久力:38(↑4)

反応力:59(↑15)

機動力:12(↑4)

直感力:102(↑21)


特性:精霊魔法、魔力変質(魔法力)


 レベルは19まで上がり、今攻略の主目的だった攻撃力の強化も目標値を余裕を持って越えて52になった。

 魔法を湯水の如く使っていた結果かステータス最大値がとうとう魔法力になってしまったな。上がる事は喜ばしいとはいえ、あまり偏り過ぎるのは良くないかもしれないという考えが少しある。脳筋攻略はこれからも出来る範囲で継続していこう。差し当たっては着替えとタオル、制汗剤辺りを用意しておきたい。

 特性ではマジッククレイを魔力構築して実用したからか土魔法が出ているな。これからも少しずつ構築レシピは増やしていきたい。カタカナ? 何の事やら……。

 ハイ次、報酬も道中含めてそれなりだ。

 火の玉が出る杖の高魔力版を6本、水が出る杖を2本、風、石が出る杖をそれぞれ1本ずつ手に入れた。石はともかく火、水、風は構造体の解析が困難なので組み込んでの使用も最悪視野に入れつつ頑張って解析していきたい。

 加えて玉座に座っていたゴブリン……推定キングゴブリンからは奴が持っていた雷の出る錫杖を手に入れた。


名称:王ゴブの錫杖

魔力:18

特徴:魔力を込めた意志を雷に変化させる


 ゲームならば定番とは言えメカニズムとか凄い気になる。そもそも金属棒持って雷発生させて自分が被雷しないんだろうか。これも要研究だな。魔力的には今のレベルにも比肩し得る実用クラスだが、如何せん周囲への被害が尋常じゃない。瀕死だったとはいえ味方の重装ゴブリンもまとめて焼き払ってたからな……。キルスコアなら自殺点3くらいに無得点という惨憺たる有り様だ。少なくとも徹底した性能検証なしには使えない。

 実用戦力で言うならばボス奥の宝箱にあった壷に入った流体金属、推定水銀の方が有用だろう。

 現実では取扱いに注意が必要な毒物だが、魔力的な性質が加わったこの素材はマジッククレイのように魔力で変形とその形の保持が出来るようだ。ここら辺は元ネタになったクラフトゲームと類似していて分かりやすい。使用感に問題が無ければ次の階層でも役に立ちそうな気配はするので期待大だな。


 さて、そして最後に一つ気付きを得た。それはキングゴブリンに接近した時に放たれた咆哮。体を吹き飛ばす強い圧力を伴った薄い緑色の魔力の放射だ。

 こんな簡単な事になぜもっと早く思い至らなかったのだろうと当時の俺に疑問を投げかけたい。魔法力への魔力変質、通称青色魔力は極論を言えば引力を持つように変質した魔力だ。ならば引力と対になる力を持った魔力はどうなる事が期待できるのか。当然考えてもいい方針だ。

 おそらくその答えが緑色魔力なのだと思う。あの咆哮がほぼ答えを言っているようなものだ。

 緑色魔力は引力と対になる力、斥力を持たせるように変質させた魔力なのだろう。

 あとはどうやって魔力に斥力を持たせるのかを考えるだけだ。

 方針が示されたなら難題の半分は解けたようなもの。

 そう時間もかからずにモノに出来るだろう。




   *   *   *




 そう思っていた時が俺にもありました。

 正直もっと簡単だと思っていた。

 斥力を持たせるなら魔力同士をグイグイ押し込めばいいんじゃないか?

 そう考えた結果、出来たのは青色魔力でした。

 なんぞこれ再びである。目がテンになったね。

 もしかしたら重ならない魔力をムリに重ねようとした結果、片方が青色魔力になって重なろうとしたって事なんだろうか? 正直よく分からん。ちなみに当然重なり合った魔力は二つの魔力のエネルギーを使って実体化し、純エネルギーになって放射されて回復薬を1杯引っ掛ける事になった。ダブついているからいいけど。

 次に考えたのはスキル:怪力の緑色魔力を利用しての斥力付与だ。

 満を持して突き込んだ白色魔力は……、何の手ごたえもなく貫通して緑色魔力を通り抜けた。

 ……そういえば青色魔力を作った時の吸引模倣根っこも緑色魔力の中に何の障りもなく入って行ったな。

 いや、キングゴブリンの緑色魔力のバフを受けた術士ゴブリンが俺が放った氷の散弾を防いでいたから、緑色魔力は自分の魔力なら斥力を発せず自由に貫通できるのか。

 とするとだ。ふむ……。


 俺は今一使い道のなかった金属をマジックボックスから取り出す。

 赤みを帯びた色合いに輝く金属、銅のインゴットだ。

 こいつの魔力的な特徴は魔力を通さないだ。

 通さないのは結構だがこちらの魔力の通りも阻害してしまうため、魔法主体で攻略する俺たちとはイマイチ相性が悪かった。あと足の指にぶつけて痛い思いをした逆恨みも多分に含んでいる。

 試しに魔力を流そうとして見ると押し返すような、反発するような魔力の跳ね返りを感じる。つまり斥力だ。

 ……もしかしたら、この銅の魔力構造自体が既に緑色の魔力変質を持っているのかもしれないな。ふと思いついた考えを頭の片隅にクリップして俺は跳ね返る白魔力を粘土の構造体にガッチリと構築して、粘り強く意志の力で強靭に成形してグイグイと押し込んでいく。

 自分のスキル:怪力の魔力を引っ張った時よりはあっけなく銅の中の魔力構造体が歪んでいく感触を感じる。何と言うか構造素材の強度が足りないという印象を受ける。魔力の違いだろうか。レベルが上がると素材に込められる魔力が変わる。それで考えると今は魔力19くらいの力を魔力10の銅に込めている状況だろう。魔力保存の小瓶も同数値の魔力までしか魔力の劣化を抑えられなかった。自分より強い魔力は浸透したり変形を受けたりしてしまうのかもしれない。レベルを上げていく事も大切だな。


 ぽやぽやと思考を飛ばしながら魔力圧迫を続けている内に、銅と手のひらの表面の白色魔力が、緑色に呈色してきた。

 随分と遠回りになってしまったが、俺は緑色の魔力変質を手に入れた。


 


   *   *   *




 一度魔力変質させる感触を掴んでしまえば後は早いようで。

 俺は自身を流れる魔力の中から、緑色魔力を捏ねて練り上げて取り出すようにして分離し、手のひらから放つ。

 放たれた緑色魔力は何のイメージもしていないのに自然と球体になって飛んで行き、目の前のアシ原をなぎ倒して爆発した。

 大きな斥力が、アシ原の中に巨人の足跡のような薙折り痕を残す。

 緑色魔力変質の特徴は端的に言えば自己非自己を識別する斥力力場だった。

 纏う事は出来るし、自分の魔力支配下にある物も持つことが出来るが、それ以外その辺のアシなどは弾く。

 加えて体の外に放出すると非自己斥力の反作用なのか意識しなくても勝手に構造体を作り上げた。先ほどの斥力弾などが最たるものだ。魔力を飛んで行くように放出すれば勝手に球体になって飛んで行く。キングゴブリンの斥力咆哮はともすれば技巧的とも言えるだろう。……もしかしたら自己組織化する前に全力全方向に叩きつけるだけの力技かもしれないが。

 いや、そうか。自己非自己というならば、なぜキングゴブリンが配下のゴブリンたちに緑色魔力でバフできたのかという疑問が残る。道中と状況からみて配下ゴブリン自身が緑色魔力を使えた線は薄いから、キングゴブリンがバフをしたという見立てで問題ないだろう。とすると、自己非自己の識別設定というのは上手くすれば操れるのかもしれないな。心の片隅に止めておこう。


 緑色の魔力変質は会得した。次はそれの応用だ。

拙作をお読みいただきありがとうございます。

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