17:あいすうぃざーど
俺は手に入れたスキルstarkerを参考にして緑色の魔力を作ろうとしていたら青色の魔力を作っていた。
何を言っているのか分からないと思うが俺も分からない。
ただ魔力構造崩壊検査をするために吸引力を突き詰めた魔力構造体を作ろうとしただけなのに。
ちなみに崩壊検査の結果、緑色の魔力構造体の部位に関わらず一定規模の構造を流動化させると崩壊することが分かった。
つまり緑色の魔力作成は振出しに戻った。
ふて寝して開けた休日の朝。
ステータス画面の特性項目に追記があった。
名前:尾崎幻拓
種族:精霊憑き
レベル:8(↑1)
魔法力:46(↑12)
攻撃力:25(↑1)
耐久力:30(↑4)
反応力:26(↑4)
機動力:22(↑3)
直感力:47(↑6)
特性:精霊契約:アウレーネ、魔力制御、魔力変質(魔法力)
スキル:starker
闇鍋文字なので変質の所は適当だが何かしらの変化作用であるのは確かだ。
思い当たるのは勿論、なんか思ってたのと違う変化をした青色の魔力の事だろう。
ステータスが教えてくれるにはあれは魔法力の魔力変質らしい。少なくともステータスで魔法力とした闇鍋文字と特性の魔法力の闇鍋文字が全く一緒だし、ステータスが同じものだと主張したいのは確かなようだ。
さて何故魔法力の魔力変質が出来たのか。
1、魔法力とは吸引力であったから。
うん、意味が分からない。
2、魔法力のステータスが高かったから。
可能性はある。調べるなら同じ魔法力が高いアウレーネに協力して貰えば出来るだろう。
「って事でOKレーネ?」
「ぶらんでー?」
「日本語でOK」
……いや分かった作るから。
最近アウレーネの圧が高まっている気がする。あとそれに応じて副産物である回復薬……。いやこっちが主産物だろどうなってんだ本当……。まあ結局回復薬がダブつき始めている。量が量だからそろそろホームセンターで買ってきた透明なビンが枯渇し始めた。むしろ確定で土嚢サイズを収獲できるようになったマジッククレイの方が余裕がある。最近醸造工程を見直して作れるようになった品質16の回復薬以外は全部粘土壷に納めて納品に出してもいいレベルだ。鉄の剣がダース単位でぶち込まれそう。
そんなことを考えている間にアウレーネが青色魔力の根っこを作り出していた。2番目の説が補強されたな。
「それで解析を掛けて貰っていいか」
「んームリ?」
「え、何で?」
「ひっぱりすぎてこわれちゃう」
詳しく聞くとどうやら青色魔力は吸引力が強過ぎて物品を解析しようとすると物品の中の魔力構造を壊して調べたい魔力特徴そのものが変化してしまうらしい。強過ぎて笑えるわ。あながち1番目のトンデモ説が否定できないのが笑いを誘う。
しかし壊すモノを上手く使う方法か……。ふむ、まあこれか。
「レーネ。俺が光弾を撃つから青色のヤドリギの盾で防いでもらっていいか?」
「おーけー」
吸引力で魔力の構造を破壊することが出来るなら盾を青色魔力に変質させれば敵の魔法を破壊する事が出来るかもしれない。
俺はアウレーネが青色のヤドリギの盾を茂らせたのを確認して魔力を指先に集め、球状の単純均一構造体を作る。強度も弱い、ほぼ水のような脆い魔力をギリギリ粘土のように捏ねただけだ。
宿樹精たちの放っていた光弾の再現は白い細氷を作るより遥かに楽に再現出来た。
ヤドリギ盾を見据えて放つと視点の先へ意識した飛ぶ蚊みたいなゆっくりとした速さで飛んで行く。視点をずらすと軌道がぶれぶれになるのがちょっと面白い。
ややあってぽふりと着弾した光弾は瞬く間に青色の光るヤドリギに食われ―――。
食ったヤドリギが緑黄色の色を呈して実体化した。
「え?」
「う?」
震える手で青色のヤドリギが緑黄色に変色した部分に触れる。
質感はレーネの実体と全く一緒。光るヤドリギとは違い、くにっと捻ればくにゃりと折れ曲がる。
「ぞわっとする」
「触感はあるんだな」
「はっきりするようになった?」
元から触感は伝わってた。そりゃそうか、だからこそ索敵のヤドリギ何て言うのも出来たんだろうし。
検証している間に細かい光の粒を散らして緑黄色の実体化した部分が崩れ去った。
「実体化は時間制限があるみたいだな」
「まりょくが切れたらくずれた」
実体化中は常に魔力を消費していて供給が切れたら崩壊するらしい。青色魔力の方はずっとアウレーネが供給していたから俺が放った白い光弾側の魔力が切れたのか。
俺は次に青色魔力を慎重に動かして水が細氷に、霰に、雹になるように育て上げ、育った青色の氷塊に白の魔力を流し込む。青色の氷塊は瞬く間に白の魔力を吸い込んで構造体と同化し―――。
「つめたい」
「今日から俺をアイスウィザードって呼んでいいぞ」
「あいすうぃざーど」
冷気を放ってその場に霜を降らし始めた。
……後日ステータスの特性欄に『アイスウィザード』とカタカナで追記されているのを発見して俺は悶絶した。
すいませんごめんなさいほんの出来心だったんですお願いゆるして……。
何か一瞬脳裏を大事なことが過ぎったような気もするがまあいい些細な事だ。
図らずして木の杖の動作原理が推測できた。
青色魔力は吸引力が高く、他の魔力構造を破壊してしまうが、青色魔力で作った魔力構造はその他の魔力を勝手に吸引して自身を補強する。
補強された魔力構造は魔力を消費しながらも魔力の続く間実体化して、物質的な作用を持つようになる。
恐らく木の杖の中では流し込んだ魔力を青色魔力へと変換する、火の形の魔力構造に構築する、即白色魔力を流して青色魔力に吸収させ、実体化させる。この上述の3つのプロセスが高速で何サイクルも回る事で魔力を流すと火の玉が育ち、意志に応じて飛んで行くという事象を引き起こしているのだろう。
推測が出来たら検証だ。
まずは魔力を青色魔力へと変質させる機構か。青色魔力は吸引力を持つ。流し込んだ白魔力に吸引力を持たせるにはどうすればいいか。何も持たない物が吸引力を持つようになる現象。磁性、重力……ふむ、検証の前の検証が必要か。
俺は家の前の泉から水を汲んできて超機能恒温機に入れて凍らせる。氷内部の魔力構造に吸引力は感じない。俺は氷内部の魔力構造をよく観察……いや、微細過ぎだ。俺が氷塊魔法を作っている時に案外雑に作っていることが分かった。かつ雑であっても青魔力が白魔力を吸引すると実体化して似せた現象を起こせることも分かった。
ともあれ、今の俺ではこの粘土コップの水全てを把握し、操作する事は不可能だ。まずは出来る所から。
改めて、粘土コップの氷、その一角の魔力構造的に最も整ったビーズサイズの部分を狙って。
作り出した青魔力を飛ばして整ったそのビーズサイズの領域の魔力構造体へと重なるように構築した。
変化はすぐに現れた。
ぽこり。とコップに張った氷の一角、構造的に整ったその場所にビーズサイズの青色の氷が生えた。
その青氷に白魔力を流すとすぐに取り込んで実体化する。おこぼれに与かるように氷の一角も白魔力を取り込んで青色の氷がぽこりともう一つ増えた。
俺は氷生成の氷を作成する事に成功した。
―――いつか、どこか、だれも知らない虚空の彼方で
「ねぇ♡」
「ひぃッ!?」
「あいすうぃざーどぉ♡」
「ふぐぅッ……!?」
「ねぇなんであいすうぃざーど♡っていうのぉ?くすくす」
「アッアッアッ……」
「きょーから俺をあいすうぃざーどって呼んでいいぞぉ♡?ふふっ」
「ぐぁああああああ―――ッ!!!???」(爆散
―――。
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―――この世界線は権能者の申し立てにより削除されました―――。
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なんか降りて来た。知らんけど
拙作をお読みいただきありがとうございます。