143:VS策謀
結果から言えば占拠された防御施設の解放作戦は成功した。
ただし防御施設と近隣住居の半壊、及び多数の負傷者という結果を以てだが。
・ダンジョン崩壊終息も、傷痕深く……
こんな見出しで始まった勇者氏の関わった案件はあくまで解放作戦は成功としながらも、周辺に大きな被害をもたらした探索者という個人が持つ破壊力に対する懸念やひいては崩壊したダンジョンがもたらした被害を並べ挙げてダンジョンその物の存在について疑問視する論調を経て言葉を結んだ。
実を言うとこれでもまだマシな結果だそうだ。
思考を読む読心能力に目覚めた勇者氏が言うには招聘されて出向いた先、解放作戦を進める裏では当初、並行して勇者氏の暗殺シナリオが動いていたらしいからな。実際にミサイルは勇者氏を加害半径に含めるように設定されてたっぽいし。
流石にどこぞから調達されてきた最新鋭のミサイルの集中投射には勇者氏も無傷とは行かず、口元などの鎧の開口部を中心として重傷を負っていたのでサクッと修復薬を転送して治療しておいたが軍事政権とはいえやりたい放題である。
その上暗殺失敗を受けてシナリオを変更したのかお次は意味不明な事に故意に周辺被害をもたらしたとして軍部から勇者氏御一行の身柄を拘束される所だったらしいからな。
死角から飛来したミサイルによるバリケードの爆発は地上最後方に配置されていた報道陣からは全貌を把握し辛く、彼らが公開した映像からは勇者氏が火炎剣を振り下ろした直後で周辺一帯を巻き込む大爆発が起こっているように見える。マッチポンプと強権の合わせ技だな。
勿論ドイツ側は勇者氏の関与を否定しているが、かと言って対抗する証拠を挙げることも出来ずに周辺諸国の報道の不自然な包囲網もあって苦戦している。
辛うじて勇者氏御一行の勾留はドイツの外交筋と国際世論で回避されたそうだが、その分の印象の低下は検索上位を踊る疑問符を見れば明らかだ。
動画の中ではいつぞやのスーツ女が硬い顔をして記者団の質問に受け答えていた。
「で、何で放置しておくんだ?」
『食いつくのを待っているの』
日本語でOK。
まあ分かるが。
携行ミサイルってアレ、小国の軍事政権ごときで運用できる装備じゃないらしいからな。
多かれ少なかれ大国が裏で糸を引いていると見ていいだろう。
今の所騒いでいるのは巷の文屋クラスが大半で意見を表明している国家はまだ少ない。梯子を外すなら重い旗が上がった直後の方が効果的という事だろう。
何とはなしに厨二女の手元で転がされている偏光コアを眺めていると、摘まみ上げて掲げ上げた先の若草色の瞳と目が合う。
『でも不思議ね。何で崩壊したダンジョンからは銃火器を持ったモンスターばかり出てくるのかしら? こちらとしては都合がいいのは確かなのだけど』
「あぁ、それか。
何で銃火器なのかはまだ不明だが、いずれにしても崩壊したダンジョンはレベル……お前が言うアストラル回収効率が悪くなったから手仕舞いしたそうだぞ。
もしかしたら銃火器はアストラル回収効率が悪いのかもな?」
『ねえ』
うん?
説明しているのに人の話を遮るんじゃねえよ。
『また私に話していない事、あるんじゃない?』
「あるぞ?」
『……言うじゃない』
そもそもお前に徹頭徹尾全部詳らかにする気なんぞ毛頭にないからな。
『教えて』
「自称忘遠の賢人とかいう会話可能なボスが親切に教えてくれた」
『え、レグネスプラーナ!? 本物!!??』
「知るか」
何をそんなに食いつく必要があるのか知らんがダンジョンに本物もクソもあるかよ。
『会わせて』
「嫌だ」
『なんで?』
めっちゃドス効かせるやんこの烏。下の顔も大概だけど。
ゴネられても嫌なモノは嫌だ。
流石に自宅ダンジョンに通すとそのまま戻るの転移象形に乗られたら自宅を捕捉されるだろうからな。悪いが可能性が存在する時点で許容する事は出来ない。
それでもなお食い下がる厨二女と口八丁やり合った結果、次のインタビューでは偏光コアで録画するという事でケリがついた。
……なんでめっちゃ食いつくのか不思議に思ったらドーンシーカーなるイギリスの児童文学の登場人物なのな、アイツの元ネタ。
あのガンメタクソ天使絶対厨二女がダンジョンに食われた蔵書か何かから出来ているだろ。余計なことしやがって。
拙作をお読みいただきありがとうございます。




