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119:源泉より流れ流れて

 鋭く突き込まれた白刃を腕甲の傾斜を使って外へと流して一歩踏み込み、お返しとばかりに掴んだ腕を引いて態勢を崩し、開いた首元へ曙光の華剣を突き入れる。

 その一撃で宮殿守衛先生は光の泡へと還って行った。


 今の一連の流れは満足のいく動きだったな。

 まだ素材に頼る所も多いがそれなりの仕上がりにはなってきたと思う。

 メタルゴーレムの方へ付けたサブ人格によってより感覚的にメタルゴーレムを操作出来るようになったのもあるだろう。


 自宅ダンジョンの第7階層の推定ボスを確認した俺はお隣ダンジョンの第4階層へ修行と調整に来ていた。

 正直第6階層の金色ドラゴンと比較すると若干役者がショボい気がしないでもないが、そうは言っても第7階層だ。またぞろエグイギミックやら巨影騎士を筆頭とする七面倒くさい取り巻きでも用意しているのだろう。

 いつも通り、準備は入念に。

 ……最近そのいつも通りを疎かにしていた分余計念入りにな。


 歩法や腰部推進器の調整も確かめながら進んで行くと幽かだが重い足音が響いてくる。恐らく黒巨人だろう。

 少し探し回って結局空中回廊を越えた本宮の方まで足を運んでしまったが見つかって良かった。


「じゃあレーネ。始めるぞ」

「はいよー。しょうがないなーもー」


 しょうがなくないがな。れっきとした修行だし。

 手札は幾らあっても困らない。

 アウレーネの準備が整った事を確認して、俺も修行を開始する事にした。




   *   *   *




 溶岩湖を左回りに崖伝いに進み、狭隘部に銀腕を渡して飛び越えて対岸へ。

 時折飛び出してくる削岩ケラが露払いに飛ばした赤肉メロンを貫通して溶岩河へと自殺ダイブかましていく風物死を眺めながら遡ること暫し。

 大きく蛇行しつつ昇って行った溶岩河はやがて水源ならぬ溶岩源へと辿り着いた。


 下流の溶岩湖よりは細やかながら溶岩を湛えた源泉ではここに来て新顔。燃え盛る鶴のようなモンスターが群れを成して溶岩の泉の中で羽を休めていた。

 軽く調べてみたものの生憎元ネタは見つからなかったが、姿形から見てもやれる事、やられると面倒な強みというのはある程度決まってくる。

 そこをカバーできるように対策を立てれば概ね処理できる手合いだろう。


 そして今。その燃え鶴の群れの奥でゆるりととぐろを巻く巨体が、一段と高く溶岩の滝と湧き溢れ出る源泉の最奥から身を起こした。




―――生まれ出ずる今に歌を歌おう。


 その巨体は溶岩と同じく赤く赤熱している。


―――棄てられた過去へ祝福を送ろう。


 両腕が胸の前で祈るように組まれ、灼光を放つ瞳がふわりと閉じられる。


―――溢れ出る灯は未来へと流れていくのだから。


 豊かな胸が大きく陽炎を吸い込んで―――。


「はいカット」

「あいよー」


 砲音が呼吸の間隙を搔き消して鳴り響き、奥の暗がりから放たれた星白金杭弾が異形の顔の側頭部を貫いた。


 だってお前満を持してその口から放たれるのってどうせ野太い警笛音だろ? 興醒めじゃん。




 紅炎歌姫プロミネンスアリア。

 灼熱の巨体を持ったラミアとでも言ったナリの面影を辛うじて残したそれは、恐らく精霊たちをテイムして魔王やら邪神やらを倒しに行く育成RPGに出て来たあいつを元ネタとしているだろう。


 ……本物はCVも適役の声優さんを充てた綺麗な歌声を響かせていたんだがなぁ。


 まあ分からなくもない。

 巨体から放たれる音声は単純な物理法則に従いつつ人間の耳に心地よい音色にするというのは至難の業だろう。

 欲を言えば喋る烏みたいに便利な魔法でなんやかんやして綺麗な歌声を響かせて欲しかったものだが。


 理解は出来るとはいえ納得は出来ない。

 なので満を持して歌声崩れのナニカを響かせようとしていたところ申し訳ないがさっさと畳み掛けて終わらせよう。

 先日確認した溶岩閉鎖区画から上下を貫く自然洞窟の先は、ここ源泉に開いた横穴へと続いていた。


 ボスの姿を確認しても敵がアクティブにならんのならそらまあ狙撃手配置するよね。


 アウレーネにはいつものようにコブラ型ゴーレムを操って横穴にスタンバイして貰いつつ、改めて溶岩河を遡上して正面から訪問した訳だ。


 溶岩ラミアの頭に突き刺さった星白金杭の後部に仕込んだ碧白銀を通して魔力を送り、氷杭を形成して―――。


 俺は身構えて攻撃態勢を取る燃え鶴の群れへ向けて氷杭を後背から突き刺した。


 燃え鶴の群れの反応速度が結構早いな。

 出の早い軽い攻撃の弾幕で牽制してくるのも理に適っていて嫌らしい。


 火球の散弾とでも言おうか、無事だった燃え鶴が小粒の火球を乱雑に散らして俺のいる源泉の畔へとばら撒いてくる。

 こちらは細氷の霧の強度を高めて相殺し、合わせてこちら側でも氷杭を生成して飛び立とうとする奴らを優先して落としていく。

 幸い燃え鶴はそこまで耐久性もないようで、氷杭がきちんと突き刺されば無力化ないし撃破まで行けるのでこいつらを抑える分には問題ない。


 燃え鶴の群れ自体は問題ないのだが。


―――フォウオオオオオオオウゥ。


 群れの奥で溶岩の噴流の中へと倒れ伏した溶岩ラミアの方から野太い汽笛の音が響いてくる。

 ほらやっぱりね。あいつじゃん。


 溶岩ラミアから噴き出した紫色の呈色光がダマを作って散らばり、それらがグネグネとうねりながら形を成して。


「燃え鶴追加入りまーすってか」


 目の前には先ほど半数まで数を減らしていたはずなのに最初いた時より多く見える数の燃え鶴が一様にしてこちらを睨み付けていた。


 ……ならば好都合ではある。


「いいぞ、レーネ。やってくれ」

「任せてー」


 横合いから投げ込まれたコア質のイガグリ爆弾が燃え鶴の群れの内側で弾け、何羽かに突き刺さる。

 突き刺さったコア質の棘が燃え鶴を苗床に大きなイガグリへと成長して再び弾け―――。

 溶岩の源泉は一変して連鎖増殖する無数の棘が吹き荒れる針山地獄になった。


 何でか知らんが狙撃手へのヘイトが薄いならそら次弾装填もする。


 コブラゴーレムに増設した砲塔の次弾は転送しないといけないので装填には少々お時間を頂きたいが、アウレーネ自身の手札ならば問題ない。

 万が一を見越してコブラゴーレムは一発撃ったら早々に横穴から退避させておいたが必要なかったかもな。


 燃え鶴の群れが針山地獄に苛まれている間にリーパーコアを射出して針山地獄の余波を受け流そうと伏せている溶岩ラミアの腰部に突き刺して切り裂く。

 強度的には紺鉄鋼の刃で十分に加害出来るが刃渡りが足りないか。

 ならばと一度上空に引き上げたリーパーコアを起点として―――。


 どぷんっ。


 次の手札を用意する前に、溶岩ラミアが身を翻して溶岩の噴流の中へ潜り込むと、太い腰、長い尾と続いて尾の先端をびちびちと細かく振って完全に溶岩の中へと消え去った。

 赤色魔力レーダーを追跡用に展開して捕捉すると深い源泉の底に空いた穴へと泳いで行って。


 そのまま穴を通って源泉の広間から出て行った。


 あ、これ逃げましたね。

拙作をお読みいただきありがとうございます。

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