<番外編> 3!2!1!闇堕ち系アイドル、闇病みファンタジーV
「はーい! わたしたち、闇堕ち系アイドル、闇病みファンタジーVです!!」
「次いくよー!」
右手の小指、左手の小指を、口元に持っていき、バツを描くポーズをする。
このアイドルたちのいつものサインポーズだ。
メンバー四名は、同じ髪型をしている。
後ろにツインテールだが、リボンの色が担当メンバーカラーになっている。
レイミだけは、髪が短いため、ショートの髪に、ヘアクリップで色を担当メンバーカラーの薄いブルーにしている。
顔は、メンバー五名、それなりに可愛いと、スタッフからは言われる。
衣装は、悪魔を意識した紺色だが、ところどころ破れをいれているダメージ衣装で、スカートは短い。
みんなスカートのしたにショートパンツを履いている。
次の曲は、タイトル、闇堕ちアナタ色に染まる
加速していく恋心
沼に堕ちてく 闇堕ちよ
ふぅー♡
デビルズ リミッター解除だわ
ふぅー♡
デビルズ パラダイス闇に染まって
いつも空回りばかり
わが恋は
いつも下を向いて
かんでしまうの
いつも空回りすぎて
堕ちていく
いつでも本気だから
一緒に染まって
あなたに染まる
堕ちていくぅ
わーと、歓声に包まれる。
「さぁ、まだいくよー」
「ついてこーい!」
こうして計四曲を歌いきって、舞台を降りる。
「お疲れさま、よかった」
「ありがとうございます!」
観客から離れた、メイク室の楽屋に戻ると、それぞれメンバーたちは感想を言い合う。
「ここよくできたね」
「歌イマイチだったかも」
「ウインクしそびれた」
「つかれたね」
客席の悪魔たちも帰り始めたころ
「アイドルって大変」
「ハルP (プロデューサー)また次の曲あるんだって」
「練習きつい」
「みーんな、幻想だよ」
割きったことをいう。
「あ、でも、前列にいる悪魔の娘、すごい可愛い」
「そう、それー!」
「ハルPもああいう娘スカウトすればいいのに」
それを聞いていたPは言った。
「あの娘か。いつも来てるね。でも残念。アイドルするなら、もっと、変わった感じがいいのさ。お前たちみたいなね。あの娘は、かがやき過ぎてて、怖いくらいだ」
そして、また次のライブになる。
「みんなー! よくきたぜー」
「次は新曲だよー」
「デビルイエー」
「タイトルは、Good sleep sweet hell」
さあ、お眠りなさい
わたしの側で
手をつないで
さあ、深くしずみ
堕ちていくよ
二度とさめる
ことなくやすめ
さあ、最高の眠りのうちに
手をつないで
キスでもしながら
深くしずみ
堕ちていくよ
二度とさめない
Good hell
途中盛り上がってきて、
レンカは、おもわず悪魔なキッスを使ってしまう。
それを受けた観客の悪魔が、一名死亡。
しまった。
悪魔なキッスは、一撃死亡のスキルだ。
案の定、ライブ終わりに、運営に怒られる。
「いいじゃん。ライブで激アツになって、キッス受けて死ぬなんて、昇天としては、最高のイキ方じゃんね?」
「いや、そうそうライブで死亡者をだすものじゃない」
「はーい」
ハルPが楽屋をでていく。
「Pは悪魔だよね。だけど言うことは、ヒトっぽいよね」
「わかるぅ」
「なんてか」
「ヒトPの書いてるやつに、影響され過ぎだよね。」
「そうー」
「わたしたち、悪魔アイドルなんだから」
「ちょ、ちょっと、そこまでにしよう、ね」
「なに、なんか怪しい。Pと何かあったの?」
「なに、なにー?」
「よしPに聴きにいこう」
「ちょ、ちょっとー」
ハルPを事務所で捕まえて聴いてみる。
「モモカと、どういう関係なんですかぁ?」
「どうもしないよ。事務所のアイドルってだけ。ね、ヒメD (ディレクター)」
「そうですよ。Pとアイドルは、そういういかがわしい関係になりません」
「なーんだ」
こんな、ささいな争いがあっても、それは裏がわだけ。
表では、いつも仲良くアイドルを続けて、演技する。
「みーんな、幻想」
それが、レイミの口ぐせだ。
次のライブがまたくる。
「みんなー、今日も一緒に堕ちていこー!」
「準備はいいかぁ」
また今回も歌っていく。
四曲。
歌はどんどん増えていく。
「タイトルは、一撃ハートを群青に」
ライブ終わりに、雑誌インタビューをうけた。
週替わりで、みんなインタビューを受けている。
写真も撮られたりする。
いろんな仕事を受けていくに従い、レイミは、自分がどんどん冷たい悪魔になっていくのが理解る。
きっと、アイドルには向かないのだろう。
今度、Dにでも相談しよう。
インタビュー終わり、Dに話しをしようと、事務所作業終わりに、追いかけていくと、ハルPと合流して、Dの部屋に入っていった。
おもわず写真を撮るが、内心ドキドキだ。
Pと、Dはそういう関係? なのか。
ヒメDはディレクターだけでなく、わたしたちのダンスや振り付けもみてくれている。
以前に、ダンサーをしていたらしい。
Dの態度が変化してしまうと、グループのダンス指導などにも影響してしまうかも。
次の練習の際、だれに相談しようと考え、結局、直接きいてみることにした。
「ヒメDって、Pとどういう関係ですか?」
携帯端末でとった写真をみせながら、そう問い詰める。
「これ、いつの写真?」
「この前の帰りです」
「そっか、あのときのか。あ、でも何でもないの。コウとリルの様子が、変だったから、ハルPに相談しただけ。部屋のところまで送ってくれたけど、ハルはすぐ帰ったわ」
「そ、そうなんだ。あ、ごめんなさい」
「いいの。それより、何か相談?」
ヒメDに、正直に話してみる。
「わたし、アイドルに向いてないよ。ほかのメンバーより、冷たい表情しかできないし、根が悪魔っぽいから、そのうちファンも離れていくよ」
「そんなことないよ。レイミ、前より明るくできるし、クール悪魔って、美悪魔って、ファンの方言ってるよ」
「それは、素直に、嬉しいですけど」
「レイミはダンスもいいし、大丈夫。心配は、リルかな。最近集中してない。コウは、話したら結局いつも同じだったわ」
よく観てるな、とレイミは思う。
後日の練習、リルにその話しをしてみると、
「ナイショだよ。悪魔な彼氏できた」
と話してくれた。
「えー、でもPにバレると、なんか言われるよ」
この業界、暗黙ではあるが、恋愛禁止らしい。
直接言われたことはないのだが。
「そう。だから、連絡とか、デビホ (デビル電話端末)とか、あまり使えなくて。寂しいの」
それで、様子が変なのか。
今日は、デビルラジオ (DR) 800できけるラジオ収録だ。
レイミとリルで、三十分の時間を担当している。
リルは、アイドル顔で、すまして、
「彼なんて、ちっともできないです」
と笑っている。
わたしは、簡単な受け答えしかできない。
冷たい態度かもしれない。
コウは、配信デビチューバーなため、コウだけの番組をやっていたりする。
また次のライブのとき。
「あ、あの娘きてるよ」
どうやら、モモカとレンカは、好みのタイプらしい。
「たしか、ネネかなぁ」
すると、
リルがレイミに耳打ちしてくる。
「前列にきてる、グレーの悪魔、それがわたしの彼氏なの」
「そっか、チェックしてみるね」
始まる前に、少しだけ会場をみると、
最前から、少し後ろの列に、その悪魔をみつけた。
「みーんな、幻想。でも、その幻が、悪魔にも必要なんだ」
ライブが始まる。
レンカが叫ぶ。
「一曲めー! 病み恋しグレー」
病みやみ闇つきなの、この恋に
毎晩いまも夢に視るの
病みやみ闇つき、だい好きよ
あなたはいま、なにを考える
傷つきハート♡にキスをしてよ
もう離さないっていってほしいの
病みよ、この街で逢えたこと
病みに、向かってまっしぐら
闇いろ、心は異空間
闇つき、夢中なの、まじでまじ
傷なめほうだいこっちにきてよ
いまなら、きっと、差し出せるの
もう離さないのはわたしだから
もう病みつき闇やみまっしぐら
わー! と拍手が起きるなか、レイミは考える。
幻想のなかに、ホンモノを創ろう。
例えアイドルが、恋悪魔をつくろうと、お互いに、悪い噂がでても、追い込まれてくじけそうでも、それでも、この闇空のなかをつき進んでやる。
ホンモノのアイドルを魅せてやる。
だって、わたしたち
「闇堕ち系アイドル、闇病みファンタジーV」