丘の上の公園
妖精たちが先に進むため、そのままそのあとをついていく。
外の明かりまででると、まぶしくて眼を細める。
手をかざす。
「ヤマ?」
「丘ね」
「そっかぁ」
出た先は、丘の真ん中辺りで、眺めがよいところだ。
少し広くなっているものの、先の道はまた細めだ。
ぐるっと周るようだけど、少しずつ登るらしい。
「それで、途中階段あったのね」
「ここの出口だったね」
「そうだね」
忘れてたらしい。
本当にここにいるのだろうか。
ヒイロとアマツキが、少し広くなっているここの場所のフチから、下を覗いている。
「少し高いけど、まだまだなんだね」
「地下からでたから、上ったようでいて、まだそんなになんだわ」
「この上は、たしか花あるよね」
「あるよね」
二妖精が話しているのは、ここの上のことだ。
「そこにいるの?」
「わからない」
「わからないけど、よく遊びにきてるから」
もう一妖精は、ここによくくるらしい。
それなら、いる可能性はある。
「海からは、どれくらいかしら」
「もうけっこう遠くにみえるね」
丘のまだ下の部分ではあるけれど、高い場所なため、眺めてみると遠い場所だとわかる。
「歩いたね」
「遠くまできたね」
「長い旅路だったですね」
「まだ先があるわよ」
ミレイがあきれている。
「ミレイは、平気なの?」
「高いところはいいわね」
「脚は平気?」
「ま、力そんなに入れなければね」
本当は、もっとゆっくり休んだほうがいいのかもしれない。
もう一妖精に逢えたら、休める場所を紹介してもらおう。
「そっか」
「わたしのこと、心配?」
「うん、当然」
「……はっきり言われるとなんだか、照れるわね」
「心配したっていいでしょ」
「……今度からはもっと慌てて怪我しようかしら」
「え、なに?」
「ううん」
また少しずつ二妖精を先頭にして、登り道を進んでいく。
ヒイロとアマツキは、妖精が気になるらしく、話しかけている。
スズネは、あまり興味ないのだろうか。
ミレイの隣にいつつ、ゆっくり景色を観ている。
少し気になるのは、水の洞窟を探してみる前くらいまでは、ミレイに甘えた感じのスズネだったのに、いまは逆転していて、スズネが姉悪魔のようにミレイに付き添っている。
怪我があったにしては、スズネの変わりようは、少し変に想う。
ほかにも変化するきっかけがあったのではないか。
でも、メディもスズネもわたしに対する受け応えが、以前より遠い気がする。
スズネは、指輪の件で少しは親身になれたけど、なぜ、わたしにプレゼントを渡す気になったのだろう。
隣にいるメディが空を気にしているため、聴いてみる。
「どうしたの。空」
「黒鉄ここまで来られるかな?」
「荷物持って来てもらうのだと、また増えちゃうわ」
「そう。それに、妖精のエリアだから」
「あぁ! たしかに。入って来られないのかも」
黒鉄たちは、基本喚べばどこでも来てくれるけれど、黒鉄たちにもルールがあるらしく、後れてきたり上空で待機するときもよくある。
「頼みごと?」
「少しおくれちゃうな」
「喚ぶ?」
「いや。妖精たちといまは探そう」
「うん」
せっかく洞窟にいたときには、仕事のことは忘れていたようだったのに、外にでてみたら、仕事のことを考えているようだ。
この悪魔は、職業から変えたほうがいいのかもしれない。
基本悪魔職業から転職するにして、メディならなにが得意そうだろうか。
丘といっても登り道なため、ふわりと先をいく二妖精より少し疲れる。
そういえば、飛べばいいのだろうか。
でも、別の妖精を探しているのだから、あまり案内がいないと、よくわからないか。
「もう少しあるかしら」
「そんなに、かからないで着くみたいよ」
ヒイロが応えてくれる。
「わかった」
「ネネ疲れたの?」
「少し」
「わかった」
ヒイロとアマツキは、まだまだ元気そうだ。
体力は底なしらしい。
「いい景色」
「海からは観えてないよね」
「魔船みえないね」
「そうみたい」
ようやく真ん中辺りらしい。
この先、どれくらいという看板が道の途中にあった。
「前は観光客とか来てたのかしら」
「あの洞窟が活きてた頃はそうかもね」
「どれくらい前のなんだろうね」
妖精が住みつくくらいだから、三年や五年ではないのだろう。
百年くらいは過ぎているのかもしれない。
「ここの道は比較的歩きやすいね」
「妖精が整備してるのよ」
「悪魔が出入りするのは、久しぶりなのかな」
途中階段もなく、少しずつ登る道だ。
景色はいいため、飽きることはない。
さきほどの洞窟のなかが、普段いる場所で、散策するのが妖精の日課なのだろうか。
水の魔力で隠していたらしいから、あの洞窟全体が魔力を得ていて、それでほかの水の魔力を引き寄せてしまうのかもしれない。
「もう少し進むと、上の広場にでます」
「広くて、眺めいいですよ」
そうなんだ、と思いつつ空との違いはわからない。
普段から空を移動し、転移するときはかなり高く飛ぶから、眺めるのは通常のことだ。
丘の上というから、少しは休憩できるのかもしれない。
だいぶ上の様子がわかるところまできたようだ。
なぜかなにかの香りがする。
「いい香りですね」
「スズネは、なんだと想うの」
「なんだか、香水に使いそうな」
「たしかにそうね」
お菓子のようでもなく、柑橘でもない。
道沿いには、小さめな雑草がいくつか生えている。
「上になにかあるのかしら」
「あるんだと思うよ」
「え、なんで」
「二妖精が楽しそうだから」
「そっかぁ」
丘の道を上にいきつつ、四回転ほどこの丘を周っただろうか。
頂上がみえてきた。
二妖精の脇をすり抜けて、ヒイロとアマツキが先に頂上の風景を観ている。
「うわぁ」
「すごいわ」
妖精たちが、ふふふと笑うなか、わたしたちも少し後れてから辿りつく。
「うわぁ、すごい」
わたしも思わず声がでる。
それぞれみんなで、感想が聴こえてくる。
丘の上は、見渡す限り花畑になっていた。
漂う香りは、ここから流れてきていたようだ。
「すごいですね」
「うん」
「でも、この花たち、どこから来たんですかね」
スズネが、いい指摘をしてくる。
「そうね」
二妖精が振り返る。
「ここのは、みんな花の妖精たちが届けて植えてくれたんですよ」
「うふふ、いいでしょ?」
自慢気に話すのも無理ない。
色とりどりの花たちが拡がる。
「ここはたしかに来たくなるわね」
ヒイロとアマツキは、さっそく花の空いてる部分を探して座っている。
二妖精たちが呼びかける。
「いる?」
「いるぅ?」
そうだった。
妖精を探しにきたんだった。
けれど、こんなに見晴らしがいいのに、姿が見えないのだから、別の場所だったのかもしれ……
「なにぃ?」
「いた」
「どこぉ?」
「ここ!」
「どこぉ?」
「花のところにいるわ」
花にうもれているらしい。
「イタッ!」
アマツキが、どこかぶつけたようだ。
「あ、ここにいたのね」
アマツキとヒイロが立ち上がると、
すぐ側に水の妖精がいた。
「あれぇ! 天使だわ」
「水の妖精」
「触っていい?」
「え、えと」
「触りたいな」
「あ、はい」
アマツキが後ろの羽根を見せると、羽根ではなくて、全身をペタペタ触る。
「天使だ」
「はい」
「いいなぁ天使だ」
「はい」
若干引き気味のアマツキだ。
ヒイロがたずねる。
「あなた、魔結晶落とさなかった?」
「え、落としてないわ」
「そっか」
「あわ、ない」
「ないのね」
やっぱりこの妖精が落としたものがそうだったらしい。
「わたしたち海岸で拾ったから、使っちゃったわよ」
後ろにいる二妖精を見ると、少しあきれて笑っている。
「あ、探してた?」
「うん」
「そうそう」
妖精は、ゆっくりしているらしい。
そっか、と言ったらまた少し花を観ている。
なにか探しているのだろうか。
「どこまでいってきたのよ」
「そうそう」
「海岸いって石拾いながら、丘のふちまわって、丘の上」
「また失くしたのね」
「いつの間にかなかった」
「結晶いろんなところに落としてるわよ」
よくみると、花に埋もれてまた結晶がある。
拾って渡す。
「あげるわ」
「いいの?」
「また創るもの」
二妖精が、また少し笑っている。
いつもこのペースの妖精なのかもしれない。
とりあえず、どこかスペースはと探すと、丘の上には、少し張り出す岩くらいしか見えないため、とりあえずミレイとスズネと一緒にそこで、腰かけてみる。
「キレイね」
「ここは、ルルファイス気に入りますね」
「水と花の妖精は仲良しなのね」
メディは、アマツキとヒイロに引っ張られて、そのまま花の中で寝転がっている。
すると、改めて水の妖精が揃ってわたしたちの前にくる。
「探していただいてありがとうございます」
「ありがとうございます!」
「せっかくですので、少しみていってね」
「いまからね」
そう言うと三妖精が、丘のだいたい真ん中辺りで、歌っている。
歌に合わせて空気中に少しずつ雨粒のようなものが浮かび上がる。
小さい雲が出来あがるも雨が降っているのは、妖精の周りだけだ。
だんだんと三妖精の真ん中に、雨が集まっていく。
「なにこれ」
「すごいですね」
真ん中にあるのは、アクアマリンだろうか。
それを中心にして、雨がふわりふわりとそこにうずを巻きはじめている。
いつの間にか水の妖精の周りが淡く光っている。
パシンッ!
と響き渡る。
すると妖精の足元に、中心がアクアマリンでできたけれど、高圧縮された魔宝石が出来上がっていた。
それを拾うと、アマツキに渡す。
「天使アマツキ、上手くつかってくださいね」
そのままアマツキに近づくと、三妖精が交代でほっぺにキスをしている。
「うん……ありがとう」
ヒイロがアマツキの側によると、丁寧にお礼をする。
「ありがとうございます! 大切に使いますね」
三妖精は、また歌の続きを歌っている。




