洞窟の先水の妖精
「声聴こえてくるね」
「さっきまで、あまりしなかったのに」
「これ動かしたからだよね」
ヒイロが、上に差し込んだ結晶をみる。
ヒイロが海岸で拾い上げた結晶は、ここの場所のものだったらしい。
「落としものかな」
「そうかもね」
おそらく、水の霧のようなもので覆い隠されていたのだろう。
洞窟のいくつかの場所が、さきほどは見えていなかったのに、いまは通路がある。
「ここの真っ直ぐみたい」
ミレイが、ふふふと笑っている。
「どうしたの」
「ヒイロとアマツキが拾わなかったら、閉鎖されていたままなのね」
「それもそうね」
落としたのは水の妖精だろうか。
「いきましょ」
「そうね」
ヒイロがまだ頭を触りながら、アマツキと先頭をいく。
薄暗いため、メディが灯りを飛ばそうかと迷ううちに、すぐに先がみえてきた。
声がはっきりとしてくる。
高い声で、おしゃべりしているのが聴こえてくる。
「あ」
「あ」
ヒイロとアマツキが観た先には、二妖精いてちょうど眼があってしまったようだ。
そのあと、コソコソと二妖精で話しをしている。
「……悪魔と天使」
「……天使と悪魔」
なにか話しを中断させてしまったようで、少し気まずい。
「洞窟止まってなかったかな」
「洞窟入口開いてたかな」
二妖精は、薄い青の袖が短いワンピースのようなものを着ていて、いまはベンチに座っている。
女の子っぽいけれど、妖精の性別などよくわからない。
羽は薄いけれど、身体の割りに広くおおきい。
まだコソコソと話している。
「あ、わかったあの子だ」
「そうだね。あの子だ」
なにか納得した様子だけど、とりあえず話しかけてみるしかなさそうだ。
「結晶に案内されてきました」
「洞窟迷ってここまで来たのだけど、水の妖精?」
アマツキとメディが話しかけてみる。
顔を見合わせたあと、こちらを向く。
「「えっち」」
「えっ」
ババッとスカートを抑えている。
足を開いて座っていたのを思い出したらしい。
「あなたえっちね」
「ぼくは、違うよ」
「ジーッとみてた」
「妖精は、珍しいから」
「天使がくるの珍しい」
「そうなんだ」
「あの子が連れてきたのかな」
「あの子?」
「……違うみたいね」
「結晶って言った?」
「はい」
「また忘れたのね」
「そうね」
なんだか険悪だけど、水辺で拾った結晶は、妖精の仲間が落としたものらしい。
「ここ素敵な場所ですね」
メディが、話しかける。
「そうでしょ。暖かいし」
「湖に浮かぶ島があったのですけど」
「そう。あそこで魔力を熱に変換してるのよ」
「水の魔力って、そういう使いみちもあるんですね」
「あなたは、属性は」
「光」
「そう。それならわかるでしょう。カタチがあるようでなくて、変化させればよくも悪くもなるのよ」
「たしかに、その通りですね」
二妖精が、今度は笑顔で話している。
そういえば、誰かが妖精はとても気まぐれだと言っていたのを思い出した。
「こちらにどうぞ」
入ってすぐに立ち止まっていたため、距離が開いていたけれど、もっと近くにいってもいいらしい。
周囲には、ベンチがいくつも置いてあり、洞窟のなかなのに、明るい。
メディの放った光とは別のもので、薄い青色の照明となっている。
広い空間になっていて、新しく造られたのではなくて、以前からあるようで、ところどころで草が生えていたりする。
ベンチの置いてある地面には、草花が拡がっていて、ここが洞窟のなかであることは、忘れてしまうくらいだ。
「ありがとうございます」
「ねぇ、あなたたちはただ迷いこんだのではないでしょう? なにが目的なの」
これに、どう応えようか迷ってしまう。
経緯を話すのは、長い気もするけれど。
「どの辺から話しはじめようかしら」
「そうね。ルルファイスの辺り?」
「アマツキの辺り?」
「わたしもいるわ」
「ヒイロの辺りかな」
二妖精が顔を見合わせている。
「妖精から始めて妖精のお話しをしてくれるとわたしたちは嬉しいわ」
「それは、困ったね」
「あまりあなたたちのこと知らないのよ」
「安心してね。わたしたちも悪魔も天使のこともあんまり知らないの。でも、知っていることもあるわ」
知っていること。
なんだろう。
「ねぇ、教えてくれるかしら」
「えぇどうしようかなぁ」
「まだ、なにも聴いてないわ」
「ふふふ」
なんだか、楽しそうではあるけれど、教えてくれるのだろうか。
「わたしたち高魔力の宝石か、それに近い高魔力結晶を探しているの。ずっと前かもしれないけれど、ここで見つけたっていう悪魔がいるのよ」
わたしが説明してみるも、聴いているのかどうかよくわからない。
二妖精で遊んでいるのだ。
ミレイが、少しイライラしていそうな気がする。
「ふふうふふ水のふふ」
「聴いてるのかしら」
「どうだろ」
「宝石ふふうふふ」
「ふふお願いふふふ」
「してふふは」
「ふふはふふみようかふふふ」
「ふふ水のふふ」
「聴いてないんじゃない」
「しーー」
「え、なに?」
「アマツキなに?」
「しーーーー! 静かにしてみて」
「うふふ宝石ふふ」
「ふふふ知りたいふふふ」
「ははふふふ」
「ふふふはは」
「うふふふ」
「ふふふはふふ」
「ふふうふふのかなふふ」
「ふふははふふふ」
「ふふふ知りたいふふ」
「ふふきいてみるふふふ」
「ははふふふ」
「うふふ」
「けほうけほう」
「ふふっふふ」
「はふけほう」
「ふふふははふふ」
「けほうふふ」
「うふふけほう」
「うふふ」
「ふ」
「う」
「けほう」
「けほうけほう」
笑い声に混じってなにかささやいていたのは、わかったのだけど、それよりも咳こんでいる。
「ちょっとお水いる?」
「スズネさっきのボトル」
「はい」
「近くいきましょ」
みんなで妖精の近くにいくと、
笑いながら苦しそうにしている。
そのうちホントに苦しそうだ。
「お水お水」
「はい!」
スズネとアマツキで、ボトルに入れたお水を妖精に慌てて渡す。
一気に飲んでいる。
やっぱり咳こんでいたようだ。
「ふう、はぁ」
「はぁふう」
「あのぉ、平気ですか」
「「しぬかとおもった」」
少し泣きそうになっている。
笑っているうちに、咳に変わっていたらしい。
お水を先に準備してあってよかった。
水の妖精なのだから、自分たちでなんとかできるのかもしれないけれど、役に立ったようだ。
「お礼……」
「えっ?」
「お礼しなきゃ」
「そんな、お水汲んであっただけよ」
「なにがいいかしら……」
アマツキが笑顔になってから、妖精をみつめる。
「元気になってくれたんで、それでいいですよ」
見事な天使スマイルだ。
「天使がいるわ」
「天使いるね」
「はい、天使ですね」
二天使は手を繋ぐと、ベンチから立ち上がり、ペコリと頭を下げる。
「ヒトはこうお礼をすると聴きました。ついてきてください」
「どこへ」
「迷子の妖精を待っていたんですけど、扉が開いてるなら平気です」
「迷子……」
「ついてきてください。どこかはわからないけれど、みつかるかと想います」
そう言うと、羽でふわりと浮きながら、ベンチの後ろがわの道を先にいってしまう。
「ついていくのよね?」
「どこだろう」
「妖精……不思議」
とにかく後を追いかけていく。
一度振り返るも、洞窟のなかには誰もいなさそうだ。
身体が軽いのだろうか。
それともスキルなのだろうか。
ふわりふわりとした感じなのに、けっこう速度がある。
ついていくのが大変だ。
「ミレイ平気」
「うん、なんとかね」
「せんぱいいざとなったら」
「うん」
「メディせんぱいが背負います」
「そっちね」
「ぼくも、頑張る」
「アマツキは、そんなにいいわよ」
「子ども扱いしないで」
「身体の問題もあるでしょ」
「すぐに成長するからね」
「変に強情ね」
前をいく二妖精は、またくすくすと笑っている。
話しをしながら進んでいるらしい。
「妖精って話し好きなのね」
「本では噂が好きとか言ってたよ」
「グループでいる悪魔とあまり変わらないわね」
「多くの悪魔は、話しを聴くのは好きだよね」
「あ、それって女の子のことでしょ」
「メディのところ、すぐに女の子集まるもんね」
「メディいやらしいのね」
「おい、なんでそんな話しに」
「話し聴くのは好きって、女の子のことでしょ」
「いや同僚とか……だよ」
「なんか、間があいたわね」
「ミレイなにか知ってる?」
「さぁわたしに言えるのは、わたしがいる間は、女の子はあまり近づかせてないわね」
悪魔ミレイがなんだか怖いんだけど、気の所為かしら。
悪魔だからね。
「ゆっくり聴こうね」
「そうね」
ミレイと眼があうと、これはマジの眼だ。
わたしはそんな嫉妬とか、そんな嫉妬とか、そんなこと、そんなことない。
ないない。
「アマツキわたし怖いわ」
「ヒイロ、ぼくも怖い」
ほら、アマツキとヒイロを怖がらせてる。
ミレイの所為ね。
まだ先があるようで、妖精はどんどんと進む。
はじめ洞窟の暗い通路かと想っていたのに、なんだか向こう側が明るくなっている。
「ねぇ、どこまでいくの」
「わからない。でも、明るくなってる」
そう話していると、妖精の周囲がパァっと明るくなる。
「あっ」
「外だよ!」
「洞窟からでるのね」
わたしたちもその洞窟の出口にまでくる。
周囲が急に明るくなるため、目をとじてしまう。
次に開いたときには、驚いてしまう。
さきほどの湖の場所もびっくりしていたのに、ここはまたすごい。
「なにここ」
「キレイ!」
洞窟からでた場所は、とても広い敷地で、いろんな場所に水たまりのある、草原だ。
いったいあの海の入口から、どれくらい歩いたのだろうと想うくらいには、景色が違って観えた。




