悪魔なミレイ甘やかし放題
わたしは、仕事中は見えにくくするために眼鏡をかけている。
わたしにとって、悪魔の眼は、見え過ぎるのだ。
悪魔の仕事は、エネルギー体の魔力のかたまりとなったヒトや妖精、ときには悪魔などを回収して、異界送りすることだ。
エリアマネージャーまでは、基本的にその仕事をおこない、昇格すると、自身の魔力のレベルにあった職業を選んで、商売を始める悪魔もいる。
大抵は、別の職業を選ぶほうが多いため、街はにぎやかで、中心都市の悪魔教会都市は、繁栄している。
たぶん、多くの悪魔は魔力のかたまりの回収だけでは、あきてしまうのだろう。
けれど、わたしやネネは、ずっと基本悪魔の仕事を続けている。
魔力やスキルのレベルアップにもいいし、ある程度こなして上にいくと、下層レベルの悪魔に仕事を渡せるため、時間もできてくる。
そう言いつつ、副業では占いもやってはいる。
魔力のレベルは、ネネのほうが上だけど、わたしは未来スキルが使える悪魔だ。
個人未来視と、全体 俯瞰、遠隔の未来視ができるため、これまでの十九年の悪魔生活で、方向が失敗だったことはない。
それでも、エネルギー体となった者の回収は、できるだけ、スムーズにやりたい。
見ないほうがいいものまで、みつけてしまうからだ。
それは、ボロボロになった身体だったり、エネルギー体のまま回収を拒否して浮遊する者だったり、呪縛され、とり残された者だったり、それらは、大抵何かに縛られている。
関わりたくない。
みない。
仕事おわり、今日はライブもない日で、デビルスマホからの遠隔の占い依頼もきていないため、少し遠飛びをして、隣の街まできた。
悪魔図書館よりは、品揃えはないが、新しい雑誌や少し前の文庫をチェックしに、悪魔書店にきた。
店内で、雑誌をみたりして周ると、隅の棚のコーナーに目が入り、気になるものを見ていくと、みちゃいけない本がみつかった。
さぁ、どうしよう。
「これは、どうするべきなの?」
それは、タイトル "前世に恋してね" 、という、前世が解る本というものだった。
もちろん魔力は入っているし、禁書ではない。
しかし、ネネにとっては、重大だ。
悪魔メディの過去がわかってしまうかもしれないからだ。
「うわ。ヤバ。どうしよ」
本を手にとり、瞬間、未来視をつかう。
ネネの嬉しそうな顔と、メディの戸惑う様子と、それから、少しわたしの様子が、映された。
とりあえず購入してみた。
もしかして、ただの占い本かもしれないし、わたしや職場同僚にでも、試してみよう。
「前世、かぁ」
二日後の仕事の日、集合場所となる事務所に本を持っていき、仕事着になったあと、小さめなその本を持ち歩くことにした。
エリアマネージャーのわたしは、回収が始まり、ところどころで後輩たちに、作業を話しながら、後輩に本の話しをしてみた。
「うわー、前世ですか! それはヤバですね。ヤバちで、ヤッバい」
そうだった。
この後輩の女の子は、とにかくヤバいで会話するから、参考にならない。
「前世ヤバー! わたしにもやってみてください」
ミレイが、昨日夜にやってみたときには、膨大な魔力検索が必要という注意事項の通りに、時間がかかり過ぎて途中で止めてしまった。
「わかった。この回収終わったらね」
無事、エネルギー体を異界送りにしたあと、帰りの休憩地で、後輩に本を触ってもらい、読み取りを開始。
"読み解きました。詳細を確認しますか"
「はい」
"あなたの前世は、天使ギャルです。天使でギャルだったあなたは、おおくのヒトや妖精たちを異界送りしましたが、頼まれるたびに魔力交換をしてしまうため、途中でゼロになり、転生魔法使いに頼みこんで、転生した悪魔です"
「ははっ。ウケる。ヤバぁ、天使!」
「そうなんだ」
「ミレイ先輩、これからは、天使って呼んでーー」
ホントに、信用できるのだろうか、これは。
持ってると、魔力を少しずつ本に吸い取られている気もする。
さっさと、売るか捨てるか。
こっそりと持ち帰るはずが、後輩が帰り支度のネネに声をかけてしまい
「前世が解る本なんですよ」
あ、しまったと思うより先に、ネネがこっちに近寄ってきた。
「ぜ、前世解るってホントー!」
「あ、ニセモノかもしれないし、それに前世に恋してね、って、見ちゃいけないやつだから、ね?」
「悪魔にそんなのないよ。ミレイ、わたしに貸してー!」
あ、あぁ。
ごめん、メディ、余計なことに巻きこむかも。
秘書の役割として、すっかり油断してしまった。
でも、この笑顔には、勝てないのよね、と心でなんとか謝ってみた。