魔列車内、夢現
乗りはじめて、約三十分。
「景色いいわね」
「キレイなところ」
「まだ先あるね」
他方
「ウェーー」
「はぁーー」
「うぅ、気持ちわるい」
「目がまわるよ」
魔列車酔いにあっているらしいヒイロとアマツキ。
「ほら、呼吸して、外の景色みながら、少しずつ体内魔力を調整するです」
「タイナイ魔力? って、泣いていい」
「魔力って、なんで酔うの」
「魔列車に少しずつ吸収されて、体内調節がうまくいってないですよ」
「このままいくと、どうなるの」
「え、あまり知らないほうが……」
「なに、スズネこわい」
「泣きそう」
「はぁ、とにかく、お手洗いいってきたら」
「うん、いってくる」
「一応特急扱いの列車だから、簡易シャワーもあるからね」
「はぁい」
ふらつくヒイロとアマツキは、お互いに支えながら、車内を歩く。
スズネは、その姿をみながら心配そうだ。
「スズネもいってきたら」
「あ、うん。みてくる」
ヒイロとアマツキのあとを追いかけていく。
「メディは平気なのね」
「魔力調整は慣れてきてるから」
「そうなのね」
席に座りながら、端末をだしていろんな資料に目を通している姿は、
移動しながら仕事をしている風にしか見えずに、かえって少し気分がわるいくらいのほうが、休めるのではないかな、とみていて想ってしまう。
ミレイは、しっかりくつろいでいて、景色をみながら、バックから快適アイテムをだしては、試している。
ミレイは、なんていうかどこにいっても、なんにでも適応できそうよね。
「ミレイは、みていてホッとするわね」
「ネネは、気持ちわるくない? 気持ち悪くなってきたら、遠慮なくわたしの上にきてね」
「いや、いいや」
「なんでよ」
若干マイペースすぎるわ。
「ミレイにあまり甘えるの、よくないと想うな」
「ネネが甘えてくれるなら、世界滅びても構わないから」
「ねぇミレイ、前からのことなんだけど、未来悪魔がいうと、けっこう洒落にならないんだけど、わかってる?」
「ふふっ、ネネとこの世界の最期の瞬間を一緒に観られたら、なにも後悔ないとおもうわ」
「後悔はしてほしいわ。未来がわかってるなら、巻き込むのはよしてよ」
「いい? ネネ。ネネと一緒にいることと、世界の滅びを秤にかけたら、ネネと一緒のほうが重いのよ」
はぁ。
ちょっと、ミレイとの子どものころのこと想い出そうかしら。
もう少し、子どものころミレイとばかりいないで、ここまでなレベルの愛情になる前に、留めておくべきだったんじゃないかな。
「とにかく、ミレイ。世界の最期の瞬間になる前には、しっかりわたしとメディには伝えてよね」
「そう? 知りたくなったら聴いてくれれば、一応未来にいってみるわ」
「なんだか、ミレイの禁書レベルなら、ホントにそこまで視られそうで、怖くなるわね。距離置こうかしら」
「ネネに距離を置かれようと、わたしは距離は詰めるから、安心してね」
「余計に、不安があるわね」
冷静に考えたくなって、席にすわりなおして、少し落ち着いて景色を眺める。
スズネたちが戻らないな、とぼんやり考えごとをしていたら、いつの間にか記憶が薄れてきていた。
買いものをしていた。
キレイなショーウインドウのなかを歩きまわり、キラキラひかるアクセサリーを眺めている。
途中までは一緒にいたはずのミレイが、なかなかみつけられない。
メディもくるから、と言ったきりどこかにいってしまった。
しばらくは、楽しい気分だったはずなのに、窓の外をみると曇りからだんだんと空が暗くなってきていた。
たしかこのあとは、少しオシャレな食事スペースに移動するはず。
外が気になりでてみると、もう雨が降ってきていて、遠くで雷がひかった。
「ねぇ、ミレイ」
なぜだか、ミレイはいなかった。
「メディ? どこ」
メディも戻ってこなく、少し待っている間に、雨が強くなってきた。
「どうしよう」
だんだんと寂しい気持ちになり、
置いていかれたのかもと焦りがきて、
飛んで待ち合わせとなっている公園まで急ぐ。
羽も髪もびしょ濡れだ。
薄桃バラ園に降り立つと、どしゃ降りの雨と雷のなか、
公園のなかにある屋根つきの小さいたてもののところで、だれか避難している。
わたしも仕方なくそこに入ると、
なかに、スズネが丸くなってすわっていた。
「スズネ、こんなところにいたの」
濡れた髪をあげながら、
バックからタオルを取り出し、髪や顔をふこうとしたら、
スズネのほうがより雨にうたれたようだった。
「スズネそんなじゃ、ぐあいわるくなっちゃうわ」
タオルを当てて身体に触ると、とても熱い。
「スズネ熱あるわ、はやくここから離れないと」
スズネが顔をあげると、泣いているようだった。
「どうしたの?」
「わたしのせい」
「なにが」
「ネネにメイワクかけた。もういられない」
「スズネ、まずは身体休めなくちゃ」
ふらつくスズネは、大雨のなか、
そこから飛ぼうとしている。
「無理よ。ここにいて」
ふり向いたスズネは、眼をはらしながら、
小さくなにかを話す。
よく聴き取れない。
でも、なぜだかとてもいま聴かなくちゃいけない気がしている。
「スズネ? おしえて。なに」
雷が近くで鳴った。
気づくと、スズネがなにか呼んでいた。
なんだろう。
薄い意識のなか、スズネの顔がまだ近くにあることに、不安と安心が混ざりあい、なにかを聴かないといけない。
でも、なにを聴きたいのだろう。
「スズネ?」
「ネネ? まだ寝てるですか?」
「んん?」
「そのままだと、けっこう大変ですよ」
「ん?」
まだよくわからない。
スズネが、なにか心配してるような感じは伝わるものの、雷がなってるわけでもないため、ようやくなにか夢をみていたのだろうと、そこで気づく。
手元に、なにか冷たい感触があるため、薄くみると、なにか飲みものを持っている。
いつ渡されたのだろう。
「それにしても熱い」
「それは、そうかと」
目がはっきりしてくると、
なぜか左のすぐ近く、というかわたしの胸近くにメディの頭があって、右すぐにはミレイの肩が乗っかっている。
「はわ、い、ゆえ、んん? えあわ」
変な声がでる。
「あ、気づきました?」
でも、すぐに動くわけにもいかないため、変に汗をかきながら、動きをとめる。
「ゆめ」
「え」
「みてた」
「あぁ、たしかにいまの状況なら悪夢くらいみますよね」
熱いのが、メディとミレイが乗っかっているかららしい。
手に飲みものを持たせてくれたのは、ヒイロらしく、少し離れた席で、こちらをみている。
アマツキは寝ているみたいだ。
スズネになにか、聴きたいことがあるものの、変に汗はかいてるし、
メディがもう少しでアタマが胸だし、ミレイがいて動かせないし、てか、なんでこの状態で眠れてたのかが、不思議でならない。
「ちょ、ちょっとスズネ助けて」
「……と言われましても、あ、飲みもの飲みます?」
「いいの。それより、動けない」
「う〜ん、困りましたね。あ、うなされてたけど、平気でした?」
「うん、なんかスズネ……」
スズネのことについて、と話そうかと迷って、いまはとりあえず、この状態をどうにかしたい。
「ひとまず、ミレイせんぱいを動かしてみて、メディせんぱいは、少し待てますかね」
嬉しいけど、嬉しくないのだけど、
メディがくっついていて、
嬉しいけど、と焦る。
ヒイロとスズネが、そーっとミレイを動かして、ミレイの位置が少しずれる。
今度は、メディの位置をずらしてくれているのだけど、寝顔が近くにあることは、嬉しかったため、離れるとそれはそれで寂しい。
「あ、ネネせんぱい、いま寝顔写真とっておけば、とか思いませんでした?」
なぜ、わかるの。
「安心して」
ヒイロがにこっとするため、不思議に思うと、スズネがスマホを指している。
写真はすでに撮ってあるらしい。
てか、寝顔○撮じゃん。
「あ、ちょ」
「しーー!」
「あ、うん」
黙っていれば、黙っていれば、黙っていよう。
ごめん、悪魔だもんね。
わたし、悪魔だからね。
ようやく席から立ちあがり、
汗をかいているため、服をパタパタする。
「ネネせんぱい、平気でした?」
「なんとか」
「アマツキが寝ちゃってから、スズネと車内を散歩してて、黒鉄のところで見学してから、戻ってきたら、もうネネがつぶされそうになってた」
「ありがとう。まさか、挟まれて寝ちゃうとは」
「タオルで汗もふいたんですけど、なんかうなされてたし、起こしたらいいのかなって」
「そう、よかった」
そう言いつつ、上着やスカートに風を通していたら、車内のヒンヤリした空気がきて、今度は少し肌寒い。
持っていた飲みものを飲んでから、冷静になると、まだ目的地には着いていないらしい。
「シャワーってあったわよね」
「ええ、簡易シャワーで、狭いみたいすけど」
「ちょっといってくるわね」
「わかりました」
「一緒にいく」
ヒイロが案内してくれるみたいだ。
足元に置いていたバックから、寝ていてもメディに見られないように、タオルと下着をとりだすと、ササッと抱えて、別のショッピングバックに入れた。
「ねぇ、わたし、悪魔寝言いってなかった?」
スズネが席に座りこみ、スマホをしはじめる辺り、かなり怪しいのだけど、
とりあえず、手をふってヒイロと歩いていく。
わたしの写真も撮られてる気がするな。
あとで、ちょっと、なんとかしないとだわ。




