表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪魔な小悪魔ネネの転生者にアレコレしてもう恋しちゃったじゃん  作者: 十矢


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

71/135

魔列車当日、朝の準備

 不安は、ないわけではないけど、

 とくにそれで目覚めたわけではない。


 ミレイがまだ寝ている。


 いつもより身体が軽いな、と想っていたら、このごろ隣でくっついて寝ていたスズネが、もういなかった。


 まだ、朝早い時間。

 探そうか、というおもいと、まだ眠いというのと、これからの移動時間のことを考えると、もう少し微睡(まどろ)んでいたくなり、

 ミレイの横顔を見ながら、もう一度ウトウトと夢のなかにおちていく。




 異界にいるファルティが、パチッと眼をあけると、そこには、宝石であるはずのまいと、アヤネが連れていったりんがいて、

 二人が仲良さそうに話している。

 そっか、りんも生まれ代われたのね、という想いと、まいが側にいないのが不思議で、呼びかけようとする。

「まい」聴こえていないのか、りんと話しこんでいる。

 気づくとわたしは、走っていた。

 走っていって階段をおりた先には、少し幼い顔をしたメディがいて、なぜだか違和感があった。

 よくみると、羽がない。

「メディ?」と聴くと、まるで知らないヒトのように、こちらを怪訝そうにみる。

「ミレイは、どこ?」と聴くと、

 「君はだれ」と聞かれる。

 「だれって……」と近づくと、パシャと足元に水たまりがあって、それを踏んでいた。

 水がおちつくと、その反射した顔は、

 悪魔なわたしではなかった。

「え、これって」そこには、まるで○トの姿をした幼い顔だちの少女が映っている。

「わたしは、だれ?」ふと、顔のふきんに冷たい感触がふれて、そこで、眼がさめた。




 ねね、ネネと声がして眼をあけると、ミレイの顔が上にきていて、のぞきこむようにわたしをみていた。

 わたしの顔に手を当てている。

 少し冷たいのは、部屋の空調で冷やされたからなのかもしれない。


「ネネ、なかなか起きないから」

「あ、ミレイ、いま手を当ててたの」

「そうよ」


 みると、ミレイの手が顔にあって、わたしの耳や唇を触れている。

 なぜだか、わたしは冷や汗をかいているらしい。


「ありがとう。起こしてくれてたのね」

「それより、悪夢でも観てたの? すごい汗」


 わたしは、服や首もとに手をやると、たしかに、ぺとついていて、気持ちが悪い。

 そして、そう想うと同時に、なんの夢を観ていたのか、だんだんとワカラナクなる。


「汗かいてるけど、あれ、なんの夢だったかな」


 ミレイが「ちょっとまってね」と言って、少し離れると、すぐにタオルを持って、わたしの首や胸辺りをタオルでふいてくれる。

 こうしてもらうと、なんだか子どものようでいて、恥ずかしくなる。

 わたしは、目もとに手を触れると、少し泣いていたのだろうか、濡れている。


「そう、たしか」


 ミレイがタオルを置くと、今度は顔を近づけて、ひとつ頷いてから、また隣に寝転ぶ。

 あまり気に病むことではないのかもしれないけれど、ミレイは、メディの秘書だからなのか、もともとなのか、

 よくこうしてお世話をしてきて、そのときだけは、抱きしめることもせずに、なにも特別なことは言わずに、ただ黙ってしてくれる。

 そうして終わると、ナニゴトもなかったようにふるまうのだ。


 悪魔らしいのか、それがミレイなのか、

 未来的なのか、そんなこの悪魔だから、わたしは、だれにも甘えることをしないはずなのに、ミレイには甘えてしまうのだ。


 もし、わたしに弱点があるとするなら、

 それは悪魔メディではなくて、このミレイなのかもしれない。


「たしか、まいとりんがでてきて、それで、それで、なんだったろう」

「そう、あまり覚えてないの」

「ううん。なんか、言葉にでてこないような風景だったのかも」


 それを聴くと、ミレイは寝た姿勢のまま、こちらをみて、上半身を向けると、わたしの頭に、軽く触れる。


「そう。わたしはね、夢というものをあまり観られないの」

「え」

「観ているのだろうけど、そのほとんどは、自動でつかっている未来視なの」

「うん」

「だから、眠るときにも少しずつ魔力の量を調節していて、細かくは言えないけれど、眠る用のスキルみたいなのも利用しているわ」

「そうだったの」

「ミライに待っている数おおくの可能性のなかから、わたしは常にどこの部分に立っているのか、思案しているわ」

「大変ね」

「でも、悪魔ネネの未来のなかにある、 "それ" だけは、わたしが(さら)ってあげるから、ネネは安心して寝ていいわよ」


 隣のミレイは、まるで告白するように、真剣に云う。

 けれど、いまのわたしには、ミレイの視ているのが、いまのことなのか、明日のことなのかさらにあとなのか、区別もなく、少しずつ不安を抱いてしまう。

 もしかしたら、ミライにあるものは、メディに対して抱いた不安感と同じなのかもしれない。

 聴くのが怖い。

 聴いていいのかもわからない。

 結局、また過去のわたしがしたそれと同じように、いまのわたしは置き去りにしてしまう。


「スズネは、いないのね」

「あの娘も、慎重に観てあげないと」

「ミライ?」

「ううん。ミライより、いま」


 また少し、隣のミレイがわかって、

 また少しだけ、後輩のスズネのことがわからなくなった。

 わたしのことは、未来でスズネは現在なんだ。

 スズネは、わたしになにを求めるのだろう。

 ミレイがわたしをみつめて、微笑する。

 不安と焦燥と、そしてその(みらい)にあるのは、愛情なのかもしれない。



 ノックの音が三回して、

 はぁいと返事をすると、入ってきたのはスズネだ。


「あ、もう起きてたんですね」

「スズネ、はやいね」

「あぁ、寝る場所が変わると早くに目が覚めちゃうんですよね」


 スズネが、笑って受け答えるも、どこか様子が変だ。

 近くにきて、自分がつかっていたベットメイクをしている。


「あんまりキチンとしなくて、端にたたむだけでいいみたいよ」

「そうなんですね」


 よく横顔を観ていると、ほんのり赤くなっていて、目もともこすったように赤い跡がついている。

 わたしは、荷物の整頓をやめにして、

 横までいくと、スズネの顔に手を添える。


「ねぇ、スズネどうしたの? 平気?」


 すっとスズネの眼がこちらに向くと、

 まるで、おびえた少女のように身体を強ばらせている。

 ミレイも、なにかみてとったのか、心配そうな表情をしている。


「い、いやだな、せんぱい朝の散歩してきて、気分がブルーなだけっすよ」


 そう言って笑うスズネは、

 けれど、とても普段みせていないような不安な様子だ。


「話せないならいいけど、スズネ少し前から様子おかしいわ。ほら、力少しラクにしなよ」


 ふぅ、とスズネは眼をみつめたまま、ニ、三度深呼吸をして、目もとをこする。


 ミレイは、バックの中身をたしかめたあと、「ほら、これでも飲んで」と小さいボトルの自然水を渡しにくる。

 スズネがそれを受け取り、ひと口飲むと、わたしとスズネをミレイが軽く抱きしめる。


「せんぱいたち」

「なに?」

「ときどき想うんですよね。シアワセだなぁっていうときと、いまナンダカイマイチだなぁっていうときが同じくらいあって、もう少しシアワセなのが、分量多めなのがいいのはわたしワガママ?」

「ううん」

「でも、いませんぱいたちが、こうしてダメ悪魔なわたしを支えてくれるのは、きっと幸せな部分って、そう想います」


 ミレイがきつめにわたしとスズネを抱きしめるものだから、

 わたしは、スズネの首から胸あたりに、顔をとじこめてしまう。



 しばらくそうしていると、さきほどまで汗をかいていて、肌が寒いかもと思っていたはずなのに身体は熱くなり、スズネとミレイの息つかいのなか、わたしは励ましていたのか、反対に励まされていたのか、わからなくなる。

 たぶん、きっと、この状況でミレイの腕のなかにいるのは、ミレイの想う通りなんだろうと考えると、悔しいのと嬉しいのと、そして不思議な安心がある。


 ミレイが、パッと腕を放すのと、

 わたしが「あ、ねぇ」と声をだすタイミングが重なり、わたしが変な声を出してしまうと、スズネが笑ってくれて、

 少しの間、笑っていた。


「あ、時間平気かしら」

「わたし、サッとシャワー浴びたい」

「なんか、扉にだれかいますよ」


 叩いている音が聴こえていなかったため、

 スズネが扉を開けに走ると、

 開けてすぐに、ヒイロとアマツキがいた。


「ごめんです。時間おくれてますかね」

「ううん。少し早くに起きちゃったから、メディのところに遊びにいったのだけど、メディが悪魔ノートと途中から仕事しはじめちゃってて、アマツキが仕事ジャンキーだねって言って、つまりは、そのあと逃げてきたから」


 なぜだか、ヒイロが早口に言うため、不思議な顔をしながら、とりあえずスズネが部屋に入れる。


 アマツキが「じゃ、これで」と、ヒイロとは反対向きに歩こうとすると、ヒイロがその腕をとって、強引に部屋まで引っ張ってしまう。


「あ、わたしシャワーしてるから、ゆっくりしてていいわ」


 わたしがそういうと、それぞれ返事がきて、ミレイはさきほどの続きで、バックの中身をたしかめはじめる。


 わたしは、タオルと着替えを抱えて脱衣室に向かい、内側の鍵を閉める。


「メディは、仕事かぁ」


 そう口にしつつも、さきほどのスズネの様子が、やはり気になってしまう。

 少しずつ思考の波のなかに向かいそうなのをコントロールしつつ、いま着ている服を脱いで軽くたたみながら、最後に宝石を置いてシャワールームに向かう。

 そうしてお湯をだし、温度をたしかめている間に、再びわたしは流れてくる考えを止められずにいた。

 シャワーの音だけが響くなか弾ける粒を見続けてしまう。


「スズネはかわいいってわかってる」


 悪魔スズネは、ギャルっぽくても芯のしっかりしている娘だ。

 ヘアスタイルもそのときどきで変化していて、私服も軽装が多いみたいだけど、充実している。

 しゃべりかたを "ワザと" 崩して話すのも、

 できるだけ相手に威圧を与えないで、話しやすくするためだと、長くつきあううちにわかってきた。

 わたしはこの顔をほめられることは、よくあるけれど、

 実質の性格やオシャレ感は、わたしはスズネの可愛さには、ときどき敵わない気がしていて、きっと同じくらいの同僚悪魔には、よく可愛がられているのだろうと想う。

 メディもスズネに対して、けっこう甘い態度な気がするから、ホントのところは、メディだってスズネみたいなタイプの悪魔のほうが、好みなのではないだろうか。


 わたしは悪魔(わたし)に自信が、

 ないわけではない。


 ミレイも保証してくれる。

 だから、それを伝えられないのは、わたし自身の精神的な部分での問題なんだろう。

 かわいいやがんばってるね、やよくできてるね、も嬉しい。

 わたしは、ようやく身体を洗いはじめ、懸命に泡立てた石鹸で、身体を泡だらけにして、羽や髪もキレイにしていく。

 ひとつひとつ意識を流されないようにしながら、それでもひとつのことが、離れなくてシャワーで流しおえて、シャワーをとめた、ただ水の落ちる音を聴きながら、声が零れる。



「あなたにだけは、わたしだけをみてほしいのに、わたしだけみてって、なぜいえないの?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ