スズネの相談メディの助言
「朝はやいね。おはよう」
ホテルの屋上にきていた。
夜中、寝る前になってスマホが鳴り、
でてみるとスズネだった。
ネネやミレイが、寝る準備をしはじめたため、その合間にかけているらしい。
「相談の話しかな」と問うと、朝屋上で少し待っていてもらえますか、という返事だったため、少しだけはやめに起きたあと、シャワーをしてから屋上にでた。
朝の空気は凛として、それでいて屋上から観ると、少し遠くが靄がかかるのが、なんとも幻想的だ。
悪魔になって、もうだいぶ経つけれど、異世界の景色と以前の景色は、どこか似ていてこうして観ていると、悪魔や天使というより、自分自身と向きあっているようで、思考はどこか散漫で、ヒトの世界のときと実はなにも変わっていないのかもしれない。
「せんぱい、ごめんなさい、よびだして」
「ごめん、はいらないよ。朝の景色とこの空気感のなかにいれるから、感謝かな」
「ありがとうございます」
スズネは、緊張しているというより、なにか張りつめていて、声も少し上ずっているような、それでいて無意識に、明るくしようとしている。
「ここが、悪魔な世界ってときどき信じられなくなるね」
「どうしてですか」
「景色が幻想的過ぎて、もしかしたら世界は崩れていて、長い時間をかけての幻のなかにいるのかなって、そんな感覚」
スズネは、屋上にしては少し低いフェンスごしに、遠くを眺めながら、
手を上に伸ばしたり、まぶしそうに、眼に影をつくっている。
そんなスズネを観ていると、
ときどきだけど、 "悪魔スズネ" は、芯の強く普段の軽いノリは、隠したいことがあるからこその少しのカモフラージュなのだと、それとなくわかる。
だから、こうして横にいてだまっていても、実は気持ちはラクであるし、
きっとこちらに対しての好意だって、キチンと受け止めれば、しっかりと返ってくるのだろうと理解している。
あるひとつの意味合いによっては、スズネは自分とよく似ていて、
順序ではなくて、スズネの気持ちはできる限り尊重していたいと想う。
「同意はするけど、できればせんぱいとは、世界のはじまりからおわりまで、リアルにラブラブしたい」
「それは、悪魔として? それとも女心?」
「デリカシー皆無ですね。このシチュエーションでかわいい女の子が一緒におわりたいって言ってるんだから、それじゃってハグしてイチャついてお付き合いがはじまるのが、この悪魔世界の常識」
「そうなりたいのは、イイコトだと想うけど、スズネの本音として、言う言葉は別にあるよね?」
「ふぅ」
スズネは、クルッとまわると、光を背にする。
そのため、少し暗い表情になり、
足元に転がる小さいなにかを蹴飛ばす。
テテッとそれが行く先をみながら、話しはじめる。
「わたし、メディナナタリアせんぱい好きなんですけど、いま後輩悪魔のことで、困ってて、だれに相談しようって」
「うん」
「それで、いろいろで頻繁に連絡とってるんですけど、簡単にしていいすかね」
「うん、いいよ」
「じゃ、簡単にするとその後輩が、たぶんなんだけど、ネネ先輩とメディ先輩に嫉妬的なことで嫌味なんですよね」
「そうなんだ」
「できれば、言い方変化球ですけど、もう少しなんとかしてあげたいけど、ここ数ヶ月で態度悪化傾向です」
「そうか」
「直感で話しちゃうけど、堕悪魔になるやつってこういうなんだ、って。でも、いい後輩で先輩スズネとしては、してあげたくて、ま、わたしが甘かった」
そこまで聴くと、スズネの状況は端的にいってあまりよくないようだ。
おそらく、スズネの許容を超えてきてるのだろう。
「わかった。名前と、あと所属確認していいか。ヒイロの "転生魔法" の準備の合間になるけど、悪魔メディナナタリアとして、調べてみる」
「せんぱい、ありがたいですけど、こちらから少し条件が」
「どんな」
スズネからの条件つきを承諾して、
調べることにした。
スズネの真剣さをみると、予想を少し悪く考えておかないと、ほかに迷惑をかけてしまうかもしれない。
いまは、もう統括エリアマネージャーを越えて、クイーンの直轄である五つと一つの管理者の一悪魔であることは、まだ言っていない。
クイーンの直轄部隊の管理者とは、
つまりは、クイーンと秘書とその三番めの位置だから、まぁ悪魔として偉くなりすぎた。
ミレイだけが、仕事を通して知っているけど、秘密はまもっているらしい。
そこは、ネネに隠していることのひとつだ。
「お願いします」
「できる限りね」
すると、スズネはタタッと駆け寄ると、至近距離にまで顔を近づける。
「せんぱいやさしいけど、やさしさだけだと、キズつけることもあるんですよ」
スズネがさきほどの話しとは、別のことであるため、瞬間なにを返せばいいのかと想う。
「そう、なのかな」
「わたしせんぱい好きでよかったな」
「なんで急に」
「わたし、好きとかこれまで、よくわからなかったし、それでも、何名かつきあったりしてるけど、あ、これ "好き"だなって、
感じとれたのは、メディせんぱいですね」
すっと、スズネが首に手をまわすと、
スズネの顔はさらに近づく。
「気持ちは、ありがとう」
「ふふふ? そこはオレもだよ、とか、アイシテルとか、言ったほうがいいですよ」
「どんなクズ悪魔と付き合ってきたの」
「だから、そう言うところですよ、やさしさのなかのナイフ、みたいなの」
「よくわからない」
スズネが、あまりに顔が近いため、その表情はよくわかるけど、少し泣きそうな表情だ。
こういう場合は、なにをしてあげるのが、正解なのだろう。
「せんぱい」
甘えた泣きそうな声で、口元のすぐ横にキスをされる。
「なに」
「せんぱいのこと、これからも好きでいていいですか」
「それより」
「それより?」
眼の前のスズネに、なにをしてあげようか。
応えはみつからない。
みつけようとしないだけなのかも。
応えて抱きしめてあげれば、
この娘の助けになるだろうか。
キスをすれば、なにか変わるのだろうか。
「答えはまだだしてない気がするけど」
「せんぱい、ニブくてバカですね」
「バカって」
「こんなかわいい悪魔に抱きつかれて、いまえっちなことしないで、いつするんですか? バカですか? バーカバーカ!」
今度は、顔をつかまれてそのままキスをされる。
眼の前にいるスズネの眼は、潤んだままだ。
ようやく離れると、スズネは微笑む。
「はぁ」
「せんぱいのキスもらいましたから、だれにも渡しちゃだめですよ?」




