中央図書館クエスト"二"
「魔力音楽端末の一部だけど、どうやってつかうのかしら」
ネネが、ヒイロの手元をみながら話す。
データセンターは、二階の裏側にあるようだから、これはその操作端末なのだろう。
隠してあったということは、いちおう関係者以外は、利用しないようになっているのだろう。
「ディスクとか、レコードはないから、データの更新と、選曲だけしてみるよ」
「もしかして、ヒイロつかったことあるの?」
詳しいため聴いてみる。
「ううん。ないよ」
「ないんだ」
アマツキが、そっとつっこみ。
メディがヒイロの隣に屈むと、
これが、電源かな、とか音量で切り替えでと、一悪魔言を言っている。
前から、想っていたけれど、
もしかして、メディは機械系が好きなのかもしれない。
すると、クラフトのことももっとたずねてもいいのかもしれない。
まぁ、スキルのクラフトで作業するのと、
魔力機械を操作するのは、別のことかもしれないけれど。
「ね、これが切り替えだよね」
「音量はともかく、データの更新中は音が止まっちゃわないかな」
「更新ボタンあったの」
「ここの設定から端末設定で、通信から最新に更新かも」
「とりあえず押せばいいのよ」
ミレイは、なかなかに、積極的に操作するようだ。
「え、でも、ほかに説明ないかな」
「マニュアルあっても、また探しまわることになるでしょ」
たしかに、と思いつつ、できれば手順通りにいきたいところだ。
そうネネが想っていたところ、
横にいたアマツキがていっと押してしまう。
「あ」
操作パネルの画面が切り替わり、
最新の楽曲更新という画面になった。
図書館内で流れる音は、とまらないで進む。
「もう、アマツキ。いきなりしないでよ」
「平気だよ」
「どうして」
「天使のバーにあった店内用の機械も、なんか似た感じだった」
「あぁ!」
「アマツキ、そんなのみてたの?」
「置いてかれてから、しばらくすることないし、バーテンダーの手元とかみたり、掃除したりしてた」
「そうなのね」
約二分ほど画面がくるくると、動作したあと、完了の文字が浮かんだ。
すると、新着通知というお知らせが入り、新着楽曲の一覧がみられるようになった。
「あ、いいのあるよ」
闇病み
魔女になりたい
「闇病みだぁ」
「マジョ隊じゃん」
「被ったね」
「新曲でてるの気づかなかった」
「えぇ、ショック」
ヒイロとアマツキが、操作をして、どんどんとプレイリストに追加している。
中央図書館のラインナップが、今後はネネとミレイのリストになりそうだな、とメディがくすくす笑っている。
「少し想うのだけど」
「なに」
「おすすめっていうのもあるんだけど」
「リストはわたしたちでつくるものよ」
「そうね」
「そうなの、メディ」
「登録してあったのは、何曲くらい」
「二五六曲」
「ヒイロとアマツキは、どんなのがいいかな」
ヒイロとアマツキは、同時にハテナ顔だ。
もしかしたら、店内で聴いたりするの以外では、あまり音楽は知らないのかもしれない。
「う〜ん、わたしはなんか恋愛のがききたいな」
「ぼくは、かっこいい曲あるかな」
隣でネネとミレイが、あの曲はいい、この曲は迷うと、話しあっているなか、
メディもヒイロの隣から手を伸ばして、
いくつか新曲があるか検索をしてみる。
タイトル
"もも色♡恋愛ゼロ秒堕ち"
タイトル
"灰色カナリア 四重層 "
「この二曲おすすめ」
「そうなんだ」
そういいつつ、ヒイロは曲のタイトルで、少しびっくりしてしまう。
なんだか、メディの嗜好にあわない気がしたからだ。
これは、と思いつつ聴けないでいると、スズネがみたあとで、聴いている。
「悪魔アイドルっぽい感じですけど、メディせんぱいのは、どんな感じのです」
「ま、聴いてみたほうがはやいけど、有名Pの曲を配信者が歌ったやつと、もうひとつは、たしか配信者が作詞作曲して、自身でボーカルしたやつ」
「へぇ、なんだかよくわからないけど、おすすめなんすね」
「そう」
メディが、おすすめというからには、ま、聴いてみようと、ネネは想っていた。
そのあとも、全員で目にはいってきたタイトルのものをまとめてリストに入れて、なんだか種類がよくわからない、まとめてみたリストを更新すると、さっそく店内から一曲めの音楽が流れだす。
「ふぅ、ひとつおわりだね」
ヒイロとアマツキが、パネルに流れていく再生時間と曲のタイトルをみながら、ササッとパネルのホームボタンをタッチすると、自然と壁が目隠しされていく。
「次はレミリア探してみる」
「そうしよ」
ヒイロが悪魔ノートをだすと、メモに済みと書き込む。
アマツキがそれをみて満足そうに微笑む。
「レミリアの飲みものはどうしよ」
「探したあと、もう一度買いにいきましょ」
ライリアはまだカウンターだろうから、
カウンター以外を探さなくてはいけないけれど、と周りをみる。
「どうしたの」
「ここ何階だったかな」
「二階よね」
「そうだった。なにか作業すると、何階かわからなくなるのよね」
「方向音痴ね」
ミレイは、恋愛系ではとても迷子だと想う。
「よくあると想う」
「メディもよくあるの?」
「曲がり角二回くらい曲がると、目的地を見失ったりするね」
「それ、平気なの!?」
「ミレイは、平気そうだね」
「ミレイなら間違いないね」
ミレイが、あきれている気がする。
「レミリアの担当とかないのかしら」
「どうだろね。ありそうな気がするけど」
「ヒイロはどう想う?」
「う〜ん」
アマツキが考えているヒイロの翼で遊んでいる。
そのたびに、ヒイロが手でどけているのだけど、その腕をアマツキはつかむ。
「ねぇ」
「なに、ちょっとやめてよ」
「いや」
なにか、アマツキが言いたそうだ。
「どうしたのよ」
「いまって、一階混んでたよね」
「そうね」
「ルルファイスは、禁書にいるみたいなのかな」
「そんなことも言ってたかな」
「そしたら、開いてるフロアの二階か三階か、あとは外でしょ」
「外にはおそらくだけど、いないわよ」
「そしたら、このフロアか三階なんだから」
そう言ってアマツキは歩きだす。
「それもそうね」
ヒイロも言いたいことがわかった。
「歩きまわったほうが早い!」
アマツキに引っ張られるようにヒイロが続いていき、みんなもそれについていく。
二階をまわると、いなさそうなため、三階の階段にいく。
スズネも図書館には慣れてきたのか、ヒイロのあとをひたすらついていく。
三階にくると、また少し悪魔たちが増えていた。
混雑する時間なのかもしれない。
それぞれ羽を縮めて、混んでいるなか、
避けながら歩いていく。
一周めでは、みつからなかったけれど、
スズネとアマツキが、それっぽい悪魔をみかけたというため、もう一度周ることにする。
はじめ気づかなかったけれど、複数の悪魔に囲まれて、なにか説明している様子で、その中心にいるのが、レミリアのようだ。
「声かけてみる」
「でも、まだいそがしいかも」
「なんだろ、図書館案内かな」
「それにしては、少し変よ」
怒鳴っているわけではないものの、複数の悪魔がなんだか困惑気味で、レミリアも対応に迷っているような、そんな気がする。
少し離れて様子を観察しているものの、なかなかその場からは、動かない。
「やっぱり、声かけてみましょ」
ヒイロが、パッとそばを離れるため、みんなもそれについていく。
近づいていくと話しの内容が少しわかるようになってきた。
「レミリア」
レミリアに声をかけてみるも、他の悪魔たちの話し声であまり聴こえていないのかもしれない。
ヒイロが二度ほど声をかけてみると気づいてこちらはみたものの、目線だけで話しは続いていかない。
やはりなにか困りごとらしい。
「ねぇ、ネネ」
「ミレイ」
「イヤな予感しかしないわね」
「そうね」
「逃げちゃだめよ」
なんで、わかるのかしら。
なにかしら、メンドウゴトな気しかしないため、一瞬考えたことを言い当てられる。
「わかってるわよ」
メディの表情をみると、なぜだか少し笑っている。
メディの思考はときどきわからない。
なんで、笑うのかきいてみようかしら。
すると、ヒイロが先に話しかける。
「ネネは、予感とかは信じるの」
「未来視よりは不確定だけど、よく当たるのよね。以前に追いかけられたときにも、事前に怪しいやつってわかったわ」
「ネネは、未来視の才能もあるのかもね」
「わたしには、クラフトがあるわ。それは、たしかに未来が視えたらなっていう気分のときもあるけど、予感とか頼りになるし、それで充分よ」
「ぼくは、もっと先までわかっていたいな」
「アマツキは、どうして」
「事前に知っている事があれば、解決できなくても、アドバイスしたり、少し避けたりできるかも」
天使なアドバイスだ。
悪魔な視点とは違う気持ちもする。
アマツキは、天使アヤネをみていたからなのだろうか、それとも、それ以前の経験なのか。
競争社会で生きるほかの天使たちと違い、相手に対する配慮や少し気づかいが過ぎるくらいだ。
それは、ネネにとっては嬉しいけれど、同時に、仕事になったときには、そんなに遠慮気味で平気なのかと想ってしまう。
まだ先の話しではあるのだけれど。
「あっ、呼んでるよ」
レミリアが少し困った顔をしながらも、呼んでいるのがわかる。
「どうしたのよ」
「ヒイロにネネたち、少しいいかしら」
「ええ、どうしたの」
「迷子と案内と探しものと、質問もされててなにがなんだか」
「探しものは、ライリアがみつけたそうよ」
「そうなの!?」
「飲みものなにが飲みたい」
「え、飲みものね。そうね、生クリームトロリッシュコーヒー」
(生クリームトロリッシュコーヒー)
スズネが、自身の悪魔ノートにメモして、サッと離れていく。
「それから」
「館内音楽は、最新に更新されてるわよ」
「あ、ありがとう〜」
「なに質問されてたの」
「一階の絵画は、売りものなのかって、値段どれくらいつくのって」
「わかった、絵画の本だね」
メディが一階にいってみてくるようだ。
「ほかには」
「案内はおわったから」
「迷子はどのこ」
レミリアの腰の辺りにしがみついて、離れない悪魔の子どもがいる。
ネネがしゃがみこんで、ミレイがその子どもの頭を二度ほど優しくなでる。
「どう、ミレイ」
「メディが戻ってくると合流できそうよ」
「ライリアが、カウンターを交代してほしいみたい」
「え、うん」
「スズネが、飲みもの買ってきてくれるから、少しだけ休憩したら、戻るといいわ」
「うん」
迷子を連れながら、近くのイスに座ってもらいレミリアを落ちつかせると、涙目になっているのがわかる。
「安心して。スズネとメディもすぐ戻ってくるわ」
「ありがとう〜、感謝しかない」
「お礼は今度でいいからね」
「うん」
スズネがレミリア、ライリアの飲みものを持ってくると、ヒイロとアマツキが子どもをなぐさめている。
そのあと少しして、すぐにメディが手に一冊持ってやってくる。
なぜか、別の一悪魔と一緒だ。
「はい」
と隣の悪魔を紹介されると、レミリアのそばにいた子ども悪魔がさらに泣き出す。
どうやら、迷子は解決したみたいだ。
「よかったね」
「うん。二階にいるかと思った」
「三階にいるかと思った」
「外にいっちゃったかと思った」
少し言い合いしたあと、お礼をしっかりして手を繋いでその二悪魔は、歩いていく。
たぶん喫茶にいくのだろう。
「メディせんぱいよくみつけましたね」
「いや、絵画のタイトルを探していたら、急に足にしがみつかれて、この悪魔知りませんか、って言われたよ」
ネネとミレイは同時に想う。
"子どもになんで好かれるのかしら"
"子どもがなんで集まってくるの"
レミリアが、まだしょんぼりしていると、
メディが持っていた一冊を渡す。
タイトル
妖精たちからのおくりもの
シルバーゴールドピンク版
「これかと」
「ありがとう」
なかを確認していると、たしかに似たデザインの絵が何枚か掲載されている。
けれど、どれもサインはあいまいらしく、
値段がかなりの高値なことしか、書いていない。
「とにかく高いみたい」
「わかったわ。まだいるから、声かけてくるわ」
レミリアが席をはずして、少し離れた位置にいた悪魔に声をかけている。
「ねぇ、メディ」
「なに」
「わたしたち、図書館向いてるんじゃない」
「よし。現在の仕事がイヤになったら、集団で図書館にアルバイトに来よう」
「それ、いいね」
アマツキが一天使言を加える。
「ぼく通うね。週 八 通いね」
ヒイロがかぶせるように言う。
「そのときは貴方も働くのよ」




