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悪魔な小悪魔ネネの転生者にアレコレしてもう恋しちゃったじゃん  作者: 十矢


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朝の風景

「おいしかったね」

「うん」

「アマツキは、今回はけっこう食べたね」

「え、うん」

「ヒイロは、調子わるいの?」

「ううん。そんなことない。アマツキが平気なら、それで」


 ミレイの部屋で、朝の食事をとりながらの会話。

 ヒイロもアマツキも、もう通常運転みたいだ。

 朝に強いのだろうか。


「ふぁ」

「メディ、まだ眠いの?」

「やる気持ち、あるときないとき、けっこう上下(じょうげ)するよ。今回は、なんだか、ダウン気味かな」

「ほんと。それは、大変。メディ、わたしのところにきて」

「ミレイって、そういうの平気で言うね」

「あら、あなたの秘書よ。あなたの身体のこと心配するのも、ひとつのわたしの思いやりなのよ」


 メディは、複雑そうだ。

 秘書として有能なのは、間違いない。

 女性悪魔としても魅力的で、ネネとミレイで、悪魔二大ファンクラブがあるほどだ。


 きっと、これから先だって、活躍していくだろう。


「ありがとう。でも、そんなに、弱くはないかな」

「ま、メディは強いわよね。たしかに」

「固有スキルの閃光は特別なんだ」

「そうなの?」

「プールでの出来事のときには、危うく、悪魔殺しになるところだったわよ」

「う、それは」

「そんなの、あったの?」

「そうそう」

「こらこら」

「そういえば、あのときメディは、すぐきてくれたね」

「ネネとミレイは、なにかと危ないからね」

「危ないってなによ」

「ミレイは、どうみても危険だよね!」

「なによ、みんなしてぇ」

「ネネは、ま、うん」

「ま……って、なにその表現は」

「いやぁ」

「えぇ! 気になる」


 なにかしら、わたし、なにかしたっけ。

 ミレイは、うん、わかるけど。


「ネネは、そのままでいいと思うわよ」

「ミレイのネネ全肯定だね」

「わたしもネネ肯定だよ」

「ぼくもね!」

「ネネモテてるね。モテモテだよ」

「はぁ。なんだかなぁ」


 ついため息がでてしまう。



 さきほどまで、ミレイと真剣な話し合いをしていたのが、嘘のようだ。

 こうなると、また普段のミレイだし、メディもきっと、これ以上は、話してくれないだろう。


 でも、少しだけでも、話しできてよかった。



 ヒイロとアマツキは、朝から元気のようだ。

 アマツキは、いまだ食は細いけれど、

 それでも、体調はもう万全なのだろう。


 スズネは、朝は弱いのかもしれない。


 いつもより、覇気がない。


 いや、ある意味このくらいのほうが、スズネは、かわいくみえるのかもしれない。

 大人しくしてもらおう。


「せんぱぁい」

「なによ」

「ハグしてください」

「なぜに!?」

「寝起きハグをご所望します」

「いやよ」


 スズネは、相変わらずパジャマなのだが、

 このハダケた胸どうにかして。


 ヒイロとアマツキの精神衛生上よろしくない。


「そんなぁ」

「それより、ほら、パジャマちゃんとして!」

「ミレイせんぱい」


 ミレイがパジャマをなおしてあげている。


「はいはい」

「甘やかしすぎじゃない!?」

「スズネ最近なんか、子どもっぽいのよね」

「そうですかぁ? わたし、元よりこんな感じですよ」

「え、そうだったかな」

「そうそう」



 スズネは、最近変わった。

 ミレイの変容は、少しずつのもので、通常のありかたは、そのままなのだけど、

 スズネは、仕事で活躍してるし、ミレイとも仲良い。

 後輩の男の子悪魔にも懐かれていると聴いた。

 でも、以前よりも少し暗くなり、話しが子どもっぽくなり、そして、ミレイから離れようとしない。



 仕事で、代理でも統括の職になったと聴いた辺りからのような気がする。

 仕事は、大変なのはわかる。

 わたしだって、そうだし、メディは混雑している。


 でも、スズネのそれは、なんだろう。

 仕事で昇進した、それ以外のなにかが、あるのだろう。



 そういえば、とふと想いだす。


 わたしの黒鉄鳥が、しばらく話しかけてこない。

 用がないときには、調べものをしたり、黒鉄鳥の自身の居場所にいるときもあるのだけど、クイーンが、特別用がないのか、それとも、これもひとつのきっかけがあるのだろうか。


 黒鉄鳥は、わたしの使い鳥ではあるものの気楽に話せる存在だ。

 少し待ってみたあと、

 聴いてみるのもいいのかもしれない。


「ミレイせんぱい、料理上手すね」

「一悪魔の生活ながいからね。スズネは、あんまりしないの?」

「フラフラ外いること多いすからね」

「じゃ、家は寝るだけの場所?」

「いやぁ、どうすかね」


 はぐらかす、スズネにミレイはそっけない。


「そうなの」

「ねぇ、ミレイ」

「はい」

「ミックスジュースまだあるの?」

「あ、うん。ちょっとまってね」


 ヒイロとアマツキは、ジュースが気にいったようだ。


「あ、そこのキッチンだよね」

「お願い」


 メディが席をたち、キッチンにまわる。

 ミレイは、囲まれていて、動きづらそうだ。

 メディは、席を離れるとキッチンに周り、

 さっきつくったのだろう残りのジュースをとりにいく。

 そして、ヒイロやアマツキのコップを回収している。


 ミレイの部屋は広く、キッチンも余裕があるため、何名か並んで作業しても平気そうだ。


「あ、メディ」

「どうした?」

「ほかの材料まだ余ってるのあるかな?」

「うん。少しなら」

「あ、じゃ、もう少しだけ追加しようかしら」


 わたしは、席から離れると、

 キッチンにいるメディの隣にまわる。

 リビングのテーブルに並べられた果物類が、だいぶ少ない。

 これなら、もう少しあってもいいのかもしれない。


「あ、言ってくれれば、つくるよ」

「ううん。手伝うよ」


 ここしばらく、メディとなにか作業というものをしていない気がする。

 それは、ほかのみんなが邪魔というのではなくて、ヒイロや天使アヤネのことを気にしているあまり、メディとのことをあとまわしにしてしまった自分がいるだけだ。


 でも、メディの態度が少しずつ変化しているとしても、わたしの "それ" を変える気はしない。


「ありがとう」



 いまだ、テーブルでは、ミレイとスズネの話しが続いている。

 少しの間、隣にいるメディと、キッチンにひろがる片付けものを少ししたり、余っている果物を切ったりして、静かに過ごす。



 メディも悪魔生活にすっかり慣れているなと、想うのが、果物を準備する間、羽を小さくたたんだり、ときどき羽でバランスをとる仕草だ。

 観ていてあきないのだけど、それをメディに直接言ったことはない。


 わたしのなかの発見した秘密だから。


「それ、もうつかわないかな」

「うん。あ、これ洗うよ」

「お願い」


 水道で、少しの洗いものをする。

 隣のメディは、果実を切って盛り付けたり、洗いおわったお皿を片付けたりしている。



 あまり言葉は少ない。



 もっと話したいことはあるはずなのに。

 でも、それと同時に居心地よくもある。

 言葉少なに過ごしても、苦にならないから。


 こういうとき、この "感情" に名前をつけたくなる。

 でも、きっと、ほんとは名前なんていらないのかもしれない。



 名前は、呼ぶときの "記号" だ。



 でも、いまこの瞬間に必要なのは、記号ではなくて、わたしのなかにただある "感情" の

 欠片だ。


「ネネ」

「なに?」

「はい」


 盛りつけのおわったお皿を渡されて、

 テーブルに運ぶ。

 でも、意識はさきほどメディに言われたわたしの名前が残っている。


 記号に載せられた感情を探してしまう。


 顔が熱い。



 ミレイが、なにか気づいたのか、眼をあわせてくる。

 けれど、なにも言ってはこない。

 こういうときのミレイは、とても優しくて、そして、わたしはその優しさが、ときおり、すごく怖い。

 たぶん、その怖さが、わたしを動かしているのだと想う。


「はい。どうぞ」

「追加だね。ありがとう」

「食べきれそう?」

「スズネが食べるって」

「わたしですか?」

「スズネ、あんまし食べてないじゃん」

「そうだよ」

「スズネ、あんまり元気ないの?」

「え、そんなことないですよぉ。げんき!」

「朝そんなに弱い?」

「う〜ん、まぁ、仕事の日以外は、あんまりやる気ないっすね」

「そうなの」


 スズネは、やはり隠している。

 仕事の日、会うときはたしかに、元気いっぱいで、失敗するとすぐに泣きついてくるけど、

 でも、プライベートですれ違ったときにも、そんなにギャップなどなかった気がする。


 ミレイのライブなどにいく時のそれと違い、スズネは、割とプライベートも仕事も一緒のイメージなのだ。


「ええ、まぁ、やる気っていうか、う〜ん。言葉選びがムズい」

「焦らなくてもいいけど、なにかあったら言ってね?」

「メディせんぱい、やさしいす。せんぱい、ひとつ頼みきいてもらってもいいすか?」

「いいよ」

「ほんとすか! あ、じゃ、あとで」

「うん」

「なに、スズネ、いま言えないわけ?」

「そりゃ、秘密すね」



 秘密。


 スズネもミレイもなにか、ひとつしっかりと鍵をかけているような感じがしてしまう。


 心の鍵。


 また、さきほどのミレイとの会話のなかを想い出しては、少しだけ憂鬱(ゆううつ)になる。


 いや、気になるけど、

 あまり他の事情を探しまわるのは、

 得意ではない。


「そう」

「そういえば、スズネ」

「はい。なんでしょう」

「連休ってとってあるの?」

「え、どういう意味ですかね」

「お泊まりするのはいいけど、わたしたちは、ヒイロとアマツキのことがあって、申請許可されたけど、スズネは途中からじゃん。平気そうなのかな」

「あぁ、オッケじゃないすかね」

「そんな軽い」

「こんなもんすよね」

「クイーンの秘書に、申請するときに、なんて書いたのよ」

「えぇ、えとね……」


 なんだか怪しい。

 もしかして、理由は他にあるのかな。


「ちょっと、それ平気なの?」

「平気すよ。わたしいなくても回るヨユーす」

「そんなことないと想うよ」

「いや、ほんと、あ、いや」


 メディが心配しているのがわかる。

 仕事のことではなくて、スズネがなにか落ち込んでいるような、抱えているような感じだからだ。


 わたしに言えないことだというのは、わかった。


 でも、スズネのそんな様子が心配なのは一緒だ。

 ヒイロとアマツキも、変な感じだと、勘づいてはいるのではないかな。


「スズネ、仕事きついの?」

「ボクも相談にのるよ?」

「ヒイロ、アマツキ〜」


 わたしは、椅子に戻ると、

 テーブルに並べられたいくつかの切った果実を食べる。

 メディはまだキッチンにいるけど、

 ときどき手を伸ばしては、立って食べている。

 行儀はわるいかもだけど、

 そこが、メディらしい気もする。


「スズネ、悩んでるなら言ってね」

「スズネ、力になるよ」

「ヒイロ、アマツキ〜」


 ミレイをみると、いつかのメディと同じように、少し遠くカーテンの向こうを観てなにか、考えこんでいるようだ。



 ようやく、テーブルに並べられた

 大部分の食事を終えると、ミレイが中心に、片付けをはじめる。


 スズネは、いまだにヒイロとアマツキになぐさめられている。


「ミレイ、ありがとう」

「ん? 食事だいぶ減ったわね。また買わなきゃ」

「それもなんだけど、てか、そういえば、食事の交換とか、任せっきりね」

「まぁ、わたしの家だし」

「いや、なんかミレイがそんなに、お世話してくれるとは」

「みんなが、押しかけてきたんじゃない。メディだけなら、いつでも歓迎」

「買いもの、次はつきあうわ」

「次あるのね」

「あ、うん」

「はぁ。わたしの一部屋が、いつの間にかヒイロとアマツキの部屋になりそうね」

「あぁ、それも考えないとだね」



 ヒイロとアマツキは、いまのところの場所が、ヒイロは中央図書館だし、アマツキは天使の教会住みになっている。

 でも、わたしやミレイと一緒にいるのなら、せめてしばらくの寝る場所がないと、地域を移動するたびに、どこでという問題が発生してしまう。


 わたしの部屋をあけようか、とも考えるけれど、それなら、もっと広い部屋を探したほうがいいのかも。

 メディの部屋は、メディを信用しないわけではないけど、ヒイロやアマツキをずっと預けてしまうのは、なにかわたしのなかで、引っかかりを覚える。


 責任感というよりも、まずは、ヒイロとアマツキの意見やみんなどうすればいいのかをもっと集約しないといけないのかもしれない。


「わたしの部屋、あげちゃおうかな。」

「まって。ミレイ、少し保留していい?」

「えぇ、それはいいけど」


 ここは、メディを頼ってみんなどうしたらいいか、一緒に考えよう。

 メディを観ると、片付けが一段落したのか、カーテンをあけたあと、日差しを浴びて、ミレイがかけた壁にあるポスターや絵画を観ているようだ。



 ポスターは、ミレイの推しである

 ヤバジャンや魔女隊のやつだ。

 寝室の棚のなかなどにもいくつもそれらのグッズが置いてある。

 メディも音楽は好きみたいだし、

 ライブにもいきたいと言っていたから、

 それだろうか。


 でも、そういえば、それらのグッズのなかにあって、少し異質ともいえるのが、

 リビングにある絵画だ。

 ここに来たときに、みてみると、絵画の作者名のサインが、イマイチ読めないのだけど、タイトルは描いてある。



「メディ、なんかボーッとしてるね」

「絵かしら」

「ミレイあの絵って描いたのだれなの?」

「わたしも知らないわ」

「知らないで、購入したの?」

「ファーストインパクト」

「うん。でも、カッコいいわね」

「たぶん、ヒトの世界で描かれたものだと想うわ」

「なぜ」

「ふふっ、ヒミツ」

「そう。教えてくれないのね。残念」



 不思議な絵。

 でも、とても魅力的。

 前に手を伸ばした両手に一輪の薔薇。

 背後には、着ているローブだろうか、

 の一部がたなびいている

 男の子にもみえるけれど、

 もしかしたら、女の子かもしれない。

 目つきは鋭いけれど、どこか凛々しいような寂しいような表情。

 背後に、ひとつかがやきがみえる。



 わたしは、絵画を読み解くのは得意ではないけれど、きっと、訴えかけたいなにかあるはず。


 でも、それがなんだろう。


 ミレイは、この絵になにを視たのだろう。


「メディがあの絵、気にいってくれたのなら、嬉しいわ」

「ねぇ、ミレイ。聴いてもいい?」

「ん。なに」

「もし、この先、わたしたちがそれぞれで、別の道を歩むことになるとして、ミレイは、わたしのこと忘れない? それとも、すぐ忘れちゃう?」

「ふふふっ」

「え、なに? 変なこと、言ってるかな?」

「ううん。ありえないし、ないわよ」

「え」

「貴女のこと、わたしが忘れるわけないし、貴女は、わたしのこと忘れないわ」

「なにそれ?」

「それに、別の道にいくことは、ないわ。少なくとも、わたしの "ミライ" には、そんなの存在してないわ」


 未来視のミレイが言うからには、

 きっとそうなのだろう。

 少なくとも、いま、ミレイが嘘や冗談で、それを話しているようには想えない。

 信じることにしよう。

 いまだけは。


「ありがとう。なんだか、気分が晴れたわ」

「ふふっ。お礼はキスでいいのよ」

「それはないわ」

「そういうところ、ネネ好きよ」

「冷たくされたほうが、ミレイはいいの?」

「冷たくても優しくても、ひねてても、甘えても怒っても、たとえ泣いていても、貴女のこと好きよ」

「泣くのは、イヤだわ。わたしは、ただ強くありたい」

「泣き場所くらい、わたしの胸のところにしてよ」

「ミレイ、それ言うタイミング間違えてるわ」

「あら、そんなことないわ」

「そういったことは、メディに言うのね」

「わたしの一番は、いつだってネネよ」

「わたしは、二番めくらいにして。ミレイの愛情は、重たいわ」

「それくらいの愛情、ネネは受け止められるわ。安心して。支えられなくなったら、わたしがいるじゃん」


「ミレイ、あなたの愛情の重さのことなんだけどな」


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