転生魔法使いになろう鍵つき
四階の禁書フロアで、ネネ、メディ、ミレイと揃って、調べものをしていたら、いつの間にか時間を過ぎていた。
「ネネ。そろそろいかなくちゃ。ヒイロとアマツキ待ってるわ」
「え、そんなに経ってる?」
「ヤバいね」
慌てて、積まれている書籍を返却に戻していく。
相変わらず、このフロアで、悲鳴や倒れている悪魔、目を覚まさない悪魔が何名かいて、この悪魔たちは、取り込まれてしまったらしい。
出口ゲートから、慌てて二階にいき、喫茶につくと、ヒイロとアマツキ、スズネが、デビル自販機で、飲みものを飲んでいた。
「おそかったね」
「ごめんなさい」
アマツキは、席に座りながら、窓の外を眺めている。
「アマツキたちは、読むのみつかった?」
「たくさんありすぎて、目眩する」
「そっか」
「でも、ヒイロが、禁書フロア以外は、案内してくれたから、詳しくなったよ」
「ヒイロ、案内上手だよね」
「途中、ライリアには会わなかった?」
「え」
「ネネたちと、またゆっくり話したいって、言ってたよ」
「そっかぁ」
メディが、自販機の前にいく。
「ネネとミレイは、なにか飲む」
「同じの」
「はーい」
「デビルズハニーティーと、いちごミルクミックス」
ガシャントコ
三回音がする。
「ここで、少し休憩してから、ルルファイスと合流しよっか」
「そうね」
それぞれ、席に座ると、メディが飲みものを渡してくれる。
スズネは、カウンターの席で、ぼんやりと窓の外を眺めている。
「はぁ。中央図書館広いね」
「悪魔たち、たくさん」
「こんなに広いと、司書大変だね」
「さっき見てきたら、まだ一階カウンター並んでたよ」
「そうなんだ」
ヒイロとアマツキが、図書館を歩いてきた感想を言い合っている。
充分に、探検をしてこられたようだ。
アマツキは、この時間で、すっかり図書館に詳しくなったようで、発見したものを報告してくれる。
「それで、天使の歴史については、資料少ないけど、スキルや生活とかは、そんなに違いはなかったかな」
「でも、わたしたち悪魔からみたら、だいぶアマツキの生活は、大変そうだったよ」
「ぼくは、それでもいいほうなんだよ」
「どうして」
「ヒイロが声をかけてくれたし、持ちモノは、持ってかれちゃったけど、身売りしなかったし」
「そっか」
ヒイロが、少し暗い顔になる。
「そんなに、暗くならなくても」
「だって。アマツキ」
「うん」
「あのまま、あの天使界の場所にいたら、アマツキは、身体を売る商売をしてたとおもうと」
「きっと、そういう天使もこれまで、たくさんいたんだよ。それに、ヒイロがいてくれたから」
「アマツキぃ」
ヒイロが、少し泣きそうになっているのをアマツキがなぐさめている。
「ふふっ。すっかり仲良しだね」
「でも、アヤネがあのとき、戸惑っていたのは、そのことなのね」
「ミレイ、どういう」
「そのままよ。アマツキが身売りの天使だったり、もう戻れないくらい傷痕がついた天使だったら、わたしたちと、旅にでられたかしら」
「そっか。ミレイは、それでアマツキにきびしいのかな?」
「そんなにではないわ。でも、弱くても強くいてほしい」
「それは、ミレイがやさしいからだよ」
メディが、寂しそうな表情をする。
飲みものを手にとり、飲みほすと、
スズネやアマツキ、ヒイロの空もついでに、持っていき、回収箱に入れてくる。
「ネネ」
「どうしたの」
「なんだか、ネネ考えごとおおいから」
「あ、あぁ。そうね」
「さっきの調べもの?」
「うん。それもある」
ネネは、ヒイロに転生魔法を覚えてもらって、ホントにいいのだろうか、不安になってきた。
ルルファイスは、ヒイロが後継だと考えている。
でも、天使のアマツキと、悪魔のヒイロが、一緒にいられているこの時間は、もしかしたら、貴重な時間かも。
ううん。
スズネやメディだって、こうして集まれているのは、貴重だ。
天使のシスターも言っていた。
悪魔と天使の静かな空間は、奇跡のかたちみたいって。
迷宮にいた妖精リリアの日誌。
なぜだか、もう一度探してみないといけない気分だ。
「適性者に必要なもの、わかったの?」
「ファルティの言っていた高魔力結晶」
「うん」
「それに、転生魔法使いになろうの鍵になるほう」
スズネが、訊ねてくる。
「ねぇ、せんぱい」
「なに」
「司書のルルファイスなら、たぶん知っていますよね?」
「え」
「鍵はわからないですが、高魔力結晶は、使ったんかと想いますよ」
「たしかに」
「それに、せんぱいも持ってるし」
「まい、ね」
「せんぱいのは、クイーンの城でみつけたって、前にきいたような」
「そうよ。わたしが小さい頃、クイーンの城のなんだかわからない部屋で、発見したの。はじめは、クラフトの材料を探していたのだけど、ちゃんと、許可はとったのよ」
「ネネは、トロピカルガンと、魔改ナイフは、けっこうはじめにつくったのね?」
「トロピカルガンは、はじめの作品よ。はじめは魔力の調節ができなくて、何名か悪魔がすっとんだわ」
「こわっ!」
「もう。いまはそんなこと。ダイヤモンドの魔力が強力で、魔改ナイフでは、暴走しないように、はじめから魔力共鳴を考えたわ」
ネネは、足にくくりつけてある銃とナイフをちらっと見せてくれる。
「ネネせんぱいセクシーす」
「なに、スズネ? 脚にフェチでもあるの?」
「ネネせんぱいの足がキレイでうっとり」
「スズネ恥ずいわ」
「肌キレイつやつや」
「恥ず」
「触りたい」
「やめてよ。もう」
「わたしも同感よ」
「ミレイまで」
「ボディソープ、化粧水なにつかってる?」
「まだ続くの」
「せんぱいのお肌のヒミツ知りたいす」
「もう。あとでね」
「いま知りたい〜!」
「それより、とりあえずルルファイスに、高魔力結晶の在り処と、条件ね」
「それと、ルルファイスも肌つやいいのよね。この間、抱きついたとき、いい香り」
「ミレイのは、ただの変態ね」
「あのときは、ネネ」
「そうね。未来視スキルの、ためよね」
「なんだ。ネネ嫉妬してたのね。いやん」
「はぁ」
ネネが、ミレイとスズネのやりとりでつかれて、ため息をつくと、メディがくすりと笑っている。
「ネネ。好かれてるね」
「メディもなにか言って」
「ルルファイスの高魔力結晶の話しは、聴いてみたほうがいいね」
「それね」
「五階に移動する?」
「そうしよっか」
ネネとミレイは、飲みかけを飲みほすと、それを回収箱に入れて、動きだす。
まだ、ミレイとスズネは、ネネの肌について、研究しているようだ。
メディがたずねる。
「五階の食堂空いてるかな」
「う〜ん。ここにくる前のときには、まだ混んでたよ」
「そっかぁ。ま、いってみるか」
五階まで、移動していき、
食堂ふきんまでくると、あまり悪魔は、いなさそうだ。
時間がズレたのだろう。
「あまりいないね」
「さっきは、混んでたみたい」
「時間が少しズレるだけで、こういうのって混みかた違うよね?」
「そういうもん?」
「だね」
六名以上座れそうな、長テーブルの席につく。
ルルファイスは、もう少ししたら、
来るだろうか。
ヒイロとアマツキは、少し時間が空いてしまったことで、座ったまま、さっきの続きの話しをしている。
「アヤネが、アマツキをみて少し戸惑ってたのは、スラムの天使たちを教会にいくら連れていっても、状況は改善されないからかしら」
「ぼくは、アヤネはもっと、なんか深い場所で、もがいてる気がする」
「アマツキは、教会をみてどう思ったの」
「たしかに、天使子どもたちみんな元気になってた。やさしいよね。でも、教会でのアヤネをみてたら、痛々しかったなぁ」
「なんで」
「アヤネは、子どもたちと向き合うことで、自身の無力感みたいなのとも、向き合っていたのかも」
ネネは、この話しを聴いて驚く。
アマツキが、よくアヤネを観察していたのも驚きだけど、
アヤネのそうした様子の捉えかたが、
ネネがみてたアヤネと同じだからだ。
「アマツキ、よくみてる」
「ありがとう」
すると、いつの間にか、ルルファイスがすぐ近くにきていた。
「そうだね。それが天使たちの課題、
命題になっているところかも。天使の救済は、なにも生み出していないかもっていうね」
「ルルファイス、仕事落ち着いたの」
「いま、ようやくね。ライリアとレミリアに言われて、少し休憩ね」
「よかった。おつかれさま」
「それで」
サッと空いてる席に座る。
ルルファイスの表情は、みていても疲れている。
きっと、ここ数日中央図書館は、こんな混んでる状態なのだろう。
「ええ、図書館内で、以前みつけた "転生なろう" と、それとは少し違う鍵マークのついた書籍をみつけたの」
「うん」
「あと、ファルティに言われた、高魔力結晶のこと」
「それね。わかったわ」
「え、もう?」
「高魔力結晶の在り処よね。まってね。思い出してみる」
「お願い」
疲れてるルルファイスに、さらに頭を使わせてしまうみたいで、ネネは少し居心地が悪い。
「ねぇ、ネネ。手にぎってもいい?」
「え、うん」
手をにぎってあげる。
「ねぇ、ネネ、抱きしめていい?」
「あ、うん。ま、いいけど」
背中に手をまわして抱きしめる。
「ね、ネネ。あいしてるって言ってくれたら、思い出せるかも!」
ダメだこいつ。
調子ノッてる。
いや、元から、こういう悪魔だったような気もする。
ベリっとはがして、
にらみつける。
「そんなことしません。いいから、思い出して」
「えぇぇ! じゃ、ミレイにお願いしよっかなぁ」
「ミレイ甘やかしちゃだめよ」
「ルルファイスって」
「ヒイロ、ルルファイスっていつもこうなの?」
「あ、うん」
「いつも、こうじゃ、仕方ないね」
アマツキは、あきらめた。
「もう。わかったわよ。いま思い出す。
いいもの。あとで、ヒイロに思いっきり抱きしめてもらうから」
「わたし、抱きしめるのか」
ルルファイスが、う〜ん、と三度ほどうなると、ようやくなにか記憶を取り出したようだ。
「あっ!」
「思い出した?」
「そうねぇ」
「うん」
「高魔力の宝石をみつけたのは、たしか、あの日だわ」
「えっ」
ルルファイスは、司書エプロンのポケットに入っていた、悪魔ノートを取り出した。
パラパラと、随分前のページをみているようだ。
「この辺りかなぁ」
"あの日、たしか、なにかおかしかったのよね"
「ルルファイスのノート、何冊め」
「ふふっ。ナイショよ。あったわ」
「うん」
高魔力結晶
高魔力宝石
異界ドラゴンからのもらいものとあわせた
「ひとつは、異界ドラゴンのファルティから、いただいたものだわ」
「もしかして、以前にヒイロがもらったやつ」
「あとほかに、ふたつほどは、探して集めたのね」
「ふたつもなのね」
「そう。そこにいつもあるとは、限らない。けれど、あると想い続ければ存在するもの」
「なにかの問いかけかな」
「あいだわ」
「愛ね」
ネネとミレイが、なぜかなっとくの答えを、だす。
「いまは、宝石の話しをしていなかった?」
「それは、悪魔をも惹きつける魔力結晶」
「はい」
「詳しくは、これを読んでね」
渡されたのは、中央図書館のある棚の番号だ。
「そこに、たしか手記を残したわ」
「わかった」
「それから、ヒイロ」
「なに」
「よく戻ったわね。逢えて嬉しい」
「わたしもよ」
ヒイロが、ルルファイスに、近寄ると、ルルファイスは、ヒイロの頭を抱きしめる。
「あと、もう少しだけ」
「うん」
「もう少し……」
「うん」
少しの間、ルルファイスはそうしていた。
ネネは、気づく。
なんだ。
そうなのね。
ヒイロを構う理由は、
ルルファイスが、そうしたいからだわ。
ルルファイスが、転生魔法を使ったのと一緒。
「おまたせ。さ、離して」
「いや」
「いやなの?」
「ええ」
「困ったわ。アマツキがみてる」
「ヒイロは、アマツキのほうがだいじなの」
「ルルファイス、困らせてどうするの?」
「うん。わからないわ」




