天使アヤネとの別れ
「ねぇ、アヤネいいの?」
「うん。平気」
「そう」
転移するときの魔力がかかるからと、
天使第一層まで送ってくれた天使アヤネは、
悪魔界には、いかないで、ここまでだと話す。
「アマツキは、一緒でいいのよね」
「いいよ」
「わかった」
天使第一層の荒れているこの地でも、
アヤネとの別れの場所になると想うと、
なんだか、不思議と目に留めておきたい景色になるから、不思議だ。
アマツキは、アヤネに抱きつくと、
頭をなでられている。
「アマツキは、悪魔の状況をよく観てきて」
「わかった」
「もし、天使に逢いたくなったら、わたしをすぐ呼んでね」
「子どもじゃないし」
「でも、なんだか、ヒイロとアマツキは、もうわたしの子どもたちのような気がしてくる」
ヒイロが、アマツキの側にくると、
アマツキは離れて、ヒイロと手を繋ぐ。
「任せて。アヤ。アマツキもっと格好よくしてくる」
「それ、ヒイロのセリフなの?」
「いずれ、アヤにも優秀な騎士が必要でしょ?」
「アマツキは、ヒイロの騎士なんじゃん」
「そ、そんなことないし!」
「否定しなくても」
メディが、転移陣を準備しはじめると、
ネネとミレイが、今度は、アヤネに抱きつく。
「ミレイ、ネネにえっちぃことばかりしてると、そのうち飽きられちゃうよ」
「アヤネ、シスターに気をつけてないと、そのうち襲われちゃうわよ」
「ネネ。逢えてよかった。ネネが話してくれたこと、真剣に考えてみる」
「もし、天使の場所で、泣きそうになったら、いつでも悪魔を呼んで」
「そんなこと言われたら、いま泣いちゃうじゃん」
「ふふっ。アヤネ、かわいいから、泣かせたくなる」
「それ、ただの悪魔じゃん」
「なに言ってるの。悪魔だよ? かわいいがつくけどね」
今度は、くすくす笑っている。
メディの準備ができたらしい。
「もう、いけるよ」
「「じゃね。アヤネ」」
「みんなに、ギャル天使のハッピーストームをあげる」
ヒイロとアマツキが先に転移して、
ネネとミレイが手を振って進み、
メディが残り転移する直前に立ちとまる。
「メディ?」
「アヤネ、昇進したその先で、もしツライことが待っていても、妖精が描いたあの絵のように、閃光の想いを覚えていてね。きっと、みんながいたあの場所は、アヤネの再会になるよ」
「なにそれ。わかった」
転移により、いなくなる瞬間メディがひとつ魔法を使う。
閃光メディナナタリアにふさわしい、
光の粒が、アヤネの周囲に弾ける。
それは、華やかなお別れになった。
メディナナタリアの言葉は、たしかに、アヤネの、未来に導く光となった。
転移指定した先、間違いはないはずだ。
でも、悪魔界は、様子がいつもと違う。
指定地域は、悪魔中央教会の地区で、
その扉の前にいる。
中央図書館も近いけれど、この時期は図書館が混んでいるだろうから、少しだけ離れた位置を選んだ。
けれど、教会の前には、悪魔たちが行き来し、空中でも飛び交っている。
「どうしたんだろう。なんか騒がしい」
「てか、なにこの数」
ヒイロとアマツキが、行き交う悪魔たちをみつめる。
「いつも、こんな感じなの?」
「いいえ。もっと数いないし、こんな慌ててないわよ」
デビルスマホで、だれに連絡しようかと、迷ううちに、悪魔スズネが、教会の側におりる。
「あ、スズネ」
「先輩たち。戻ってきたんすね」
「ええ」
「どうすか、たしか探しもの」
「てか、これなに?」
「あ、ああ!! そうそう。大変なんすよ」
「なんか、騒ぎがあったの」
「説明大変なんすけど、あぁ、えと、その」
あまりに周りが、がやがやしているため、なかなか話しは進まないし、少し邪魔にされているようだ。
「とりあえず、なか入りません?」
「教会?」
「外よりは」
「うん」
スズネに言われて、悪魔中央教会のなかにはいる。
端の席がいくつか空きがあるため、
ヒイロ、アマツキが先に座り、
その近くに集まる。
「あの、この天使は」
「アマツキです」
「もしかして、ネネ?」
「うん。まぁ」
「あの」
「あ、平気す。慣れてます」
なんか、事情 把握してくれたらしい。
「なに、このさわぎは」
「ええ。どこからかな」
メディは、タメ息をつかないで、あきれ顔で、先を聴いてみる。
「イヤな感じしか、しないけど、統括がこんな揃ってるし」
「はぁ、まってまって」
スズネのデビルスマホが鳴りっぱなしになっているため、確認してから、
たどたどしい説明がはじまった。




