天使上層階事務作業
「アヤネ、もういっちゃうの」
「アヤ〜」
「アヤネ」
教会の礼拝堂で、子どもたちが集まってきて、これから、でかけることを伝えると、
アヤネが囲まれてしまった。
「うん。またくるから!」
「いや!」
「もっと遊んで」
「また、しばらくこないんでしょ」
シスターが、仕方なしに、みんなをなだめている。
「さ、お祈りしてあげましょ」
「はぁい」
子どもたちが、返事をして、
ベンチにそれぞれ座る。
「シスターお祈りって、なにに祈っているの?」
「なににでも。主に、うちがわ、かな」
「うちがわ?」
「わたし自身を外側からみて、うちがわに向かってていうことね」
「わかりました」
メディやほかのみんなも、子どもたちと一緒に、祈る。
おわると、そっと立ちあがり、荷物をもって、歩きだす。
「あ、まって」
「はい」
「シスター、お名前」
「あぁ、そうね。せっかく知り合えたし」
「ローゼン リンター ハイリシェン」
「ネネ フリュークス アミテスよ。また逢えるといいわね」
「じゃね」
シスターとわかれたあと、
教会の外で、アヤネが、みんなが跳べるように、転移を調節している。
「アマツキ、ヒイロ、あいさつできた?」
「しっかりしてきたよ」
「お祈りもね」
「えらい」
「メディアは、ああいうとき、なにを祈るの?」
ネネが、さり気なく聴いてみる。
実は、すごい気になっている。
「うまくいきますように、かな」
「え、どういう意味?」
「まだ、ナイショかもね」
「えぇ、教えてくれないの!」
「ネネ、きっとえっちぃことよ。聴いちゃだめよ」
「ミレイ、それは、違うんだけど」
「きっと、ネネやわたしと、あんなことやこんなことやすっごいこと、したいのよ」
ヒイロとアマツキが、同時にミレイをはたく。
「いたっ」
「メディのこと、そんな眼で見てるのは、ミレイだけ」
「そうそう、メディは平和とか、理想だよね」
「ごめん。それも少し違うね」
アヤネが合図をすると、転移陣が、空間に浮かぶ。
「はい。できた。いこ」
「うん」
「あ、行き先、まずは事務所によっていきたいのだけど」
「いいわよ」
「天使事務所?」
「ま、いけばわかるのかな」
アヤネが、出現させた転移陣の範囲内に入ると、それぞれ転移していく。
最後にアヤネが残ると、
くるっと教会を振り返る。
シスターが、手をあげてくれた。
天使事務所の前に転移していた。
けっこう広めの敷地に、三棟の建物が横にある。
その真ん中の建物入口のところに、天使たちが行き来している。
カラフルな色で、色わけされていて、敷地の広場には、ベンチや像が並ぶ。
「アヤネ、中に入ってもいいのかな?」
「あ、いいよ。入ってすぐに受付。あ、でも、受付すんだら、少しはずすから、なか見学したり、三階に確かラウンジがあったから、そこで」
「わかったわ」
アヤネが先に入っていき、受付をしていると、
「アヤネ! もう。おそい。どこまでいってきたの!」
「アヤネ、手続きまだなんじゃ」
「この前いわれたの」
「この書類は」
受付で、話しかけてすぐに、
アヤネの周囲に、天使たちが集まり、叫び声が聴こえてくる。
「あぁぁ、もう、まって」
「それは」
「だから」
「え、それって」
ヒイロとアマツキは、すっかり怯えているけど、メディにとっては、悪魔も天使も同じか、という気分であった。
ネネが声をかける。
「アヤネ、しばらく戻ってこないね。少し探検しよ」
「うん」
受付で、書類と事務天使たちと言い合っているアヤネを置いて、事務所のなかを歩き回ることにした。
他の天使たちは、悪魔がウロウロしているのも気にとめないで、まるで、嵐のように、書類と手帳と端末と、とにかくいそがしく動き回っている。
アマツキが、当然たずねてくる。
「ねぇ、天使たちって、もしかして、えらくなると、こんなことになるの?」
「いや、天使に限らないよ。悪魔だって、仕事中は、こんな感じだよ」
すると、ネネとミレイが同時に話す。
「「メディが働きすぎなのよ」」
「働きすぎだって」
ネネとミレイに言われてしまい、
ヒイロにまで、言われる。
「わかった。そうだね」
事務作業をしているカウンターを見ながら、横の通路を通ると、階段がある。
一階は、雑誌自販機コーナー以外は、事務受付らしいから、上にあがっていく。
二階は、別の受付と資料室、それに、いくつかの自習室となっているらしい。
「天使たちは、ここで集まったりもするのかもね」
「悪魔の雑然とした風景よりは、少しは増しに整頓されているね」
天使たちは、事務作業をキッチリするのがおおいのかもしれない。
神経質なのがおおいのかな。
また通路を戻り、階段で三階にあがる。
「三階にラウンジがあるんだよね」
「アヤネは、そう言ってたかな」
窓が並ぶ短い廊下を進むと、真ん中辺りに、建物が、少し半円形になる部分で、窓がおおきくあり、そこが、雑談ラウンジになっている。
ヒイロとアマツキが、窓に駆けていく。
「眺めいいね」
「相変わらず、カラフルなビルや建物がおおいね」
ときどき天使が、転移したり羽をつかって到着するため、観ていてあきないようだ。
ラウンジでは、一階や二階のさわぎと違い、ゆっくりとしている天使がおおい。
ときどきこちらを観てくるのは、悪魔がいるのが珍しいからなのかもしれない。
ラウンジには、エンジェル自販機と、小さめの棚に本や絵本が並び、ベンチが三つほどある。
「自販機、なんか飲む?」
「いいよ。でも、ここのも魔力で交換できるのかな」
「きいてみよ」
ベンチに座って、窓の外を眺めている男の子天使に、声をかける。
「ここの自販機、どうやるの?」
「タッチセンサーのある部分で、手をあてて、魔力を少し流します」
「ありがとう」
「あ、エンジェルグレーグレープミックスはやめておいたほうが」
「そうなの?」
「グレープなのに、甘ったるくて、また変なミックスしたみたい」
「わかった」
ネネとメディが、飲みものを選んで、試しに二つ購入する。
「ミレイは」
「紅茶」
「ヒイロとアマツキは」
「「ミックスベリー」」
「は〜い」
飲みものを購入したあと、
ベンチに座って、眺めていると、
男の子天使は、場所を移動してしまう。
ヒイロとアマツキは、飲みものを半分ほど飲むと、ベンチに置いて、そのあとは、ラウンジをぐるぐるしたり、廊下をいったり来たりする。
そこで、落ち着いて少しアヤネを待ってみると、話し声が聴こえてくる。
「ねぇ、いいでしょ、ラウンジ」
「ほんとだね」
「でも、いいの、仕事は?」
「うん。いいの。もう、あの天使たちなんて、知らない」
「そっか」
「ねぇ、それより」
「なに」
「ほら」
「こらこら」
「えーーいいでしょ」
「みんな見てるよ」
「そんなことない」
どうやら、仕事サボってのラウンジデートをしている天使がいる。
「ほら、悪魔だっているし」
「知らない。いいから」
「恥ずかしいよ」
「いやん」
ミレイは、ガンガン無視しているけど、ネネと、ヒイロ、アマツキはすっかりイチャイチャコメントを繰り返している天使を観察してしまう。
「ねぇ、移動したほうがいいんじゃ」
「でも、仕事はいいのかな」
「話し聴こえてるし」
「そんなことより、ここで、はじまったらどうしよ」
「いや、流石にこんなところで、イチャイチャからの、えっちぃことなんて」
と、ネネとヒイロたちで、遠巻きにみまもる。
だんだんと近づいてくるも、こちらには、目線をおくるだけ。
ベンチに座ると、天使男の子のほうが、
女の子の肩を組んだり、手をにぎったり、
軽めのキスをしている。
ヒイロとアマツキが、あまりに真剣に見入っているため、ネネは意識を戻す。
「だめ。そろそろ、いこ」
「え、ネネ、みていかないの?」
「なんか、はじめちゃったらどうするの」
「なんか、ってネネなに?」
ハッ、ネネは、しまったとおもう。
ヒイロに説明するわけにはいかない。
前にもこんなことが、と思っていると、
ミレイが、アマツキとヒイロの耳もとに近寄る。
「ほら、前にも教えたじゃない、あんな」
「あああぁぁ! もういかなくちゃ」
「なによ、ネネ」
慌てて、立ちあがると、ネネはメディの手を引っ張る。
「ほら、飲みもの持って。いくよ」
ヒイロとアマツキも慌てて、飲みものを手にする。
ミレイは、二天使をちらっとみると、
男の子天使にさりげなく、目線をおくる。
ネネは、その様子を歩きながら、みていた。
「ねぇ、ちょっとなに悪魔のことみてんのよ!」
「え、見てないよ」
「うそ。いま、あの女のこと、すっごい見てた」
「そんなこと、ないよ。ほら、続き」
「続きってなによ。なに、わたしのこと、そんな軽い女だと思ってんの!?」
「いや、ちがくて、いまなんか、ほらいい感じで……」
ネネがあきれて言う。
「ミレイ、魅了でもつかったの」
「そんなの、ないわよ」
「ケンカしてるし」
「わたしは、ただ、ニコって勘違いさせただけ」
ヒイロとアマツキがそろって
「「悪魔だね」」
「悪魔だもの」
「そうなんだよね」
ラウンジでは、まだケンカしているが、もう他所のこと。
「もう少し上いきたい」
「そうね」
「ここ何階まであるの」
「階段の手前に、たしか案内なかったかな」
歩いていくと、階段に入る前の台にフロアの案内と、階数が表示されていた。




