アマツキの療養
シスターに案内され、アマツキはベットに座り、飲みものなどをもらっている。
隣には、ヒイロだ。
ブランケットも渡されて、ベットに座っているアマツキは、部屋のなかを見回している。
「あの」
「なに」
「シスターは、なんてお呼びすれば」
「シスターでよくってよ」
「でも」
「シスターでも、おい、オンナでもいいわよ」
「そんな」
「うふふ、ゾクゾクするわ」
「え」
「いえ、なんでもありませんわ」
「名前は」
「あら、知りたいの。でも、ここでは名前で呼ばれることなんてないわ」
「そうなんですか?」
「お世話係に、回復に、食事に、魔力修行に、なんでもつきあうんだもの。もう、みんなテキトーな言いかたよ。まぁ、慣れてるから」
シスターは、なかなか名前を教えてくれないみたいだ。
「あの、そんなに長いはしません」
「まずは、服装からね。ボロボロだもの。それから、もちもの」
「ノートだけ」
「それ以外のは、どうしたの」
「盗まれた。でもたいしたことない」
「そっかぁ。あとで、追っかけて、ぶん殴れないかしら」
「え」
「ううん」
もしかして、シスターって、と想うも聴けない。
「ホントに、持ってるのは、服とノートだけだよ。天使の最下層にいたのも、記憶薄いけど、たしか捨てられたんだとおもう」
「そうなのね」
ヒイロが、隣にすわると、アマツキの手をつかむ。
「ヒイロ、そんなに、心配しなくても。
「ううん」
アマツキは、うつむいて、手をみつめる。
「ぼく、あまり覚えてないんだ。たしか、別の悪魔に連れられて、あのスラムまでいったはずなんだけど、そのバーみたいなところで、座って待ってるように、言われて、でも、夜になっても朝になっても、そのまま」
「うん」
「お店の悪魔も、支払いはいいから、けど、ここに居着いてもらっては困るんだよっていって、外にでた」
「そっかぁ」
シスターが、部屋をいったりきたりすると、いつの間にか、ベットの上には着るものがたくさん積まれていた。
「ネネとミレイ、メディは教会のなかかな。いってくるわね」
シスターが教会の中央に呼びにいく間、ヒイロはずっと手を重ねていた。
よくみると、アマツキは、羽や服装は汚れているし、顔つきもやつれているけど、眼は細ながいし、顔にケガをしているわけでもなく、髪が長いのを除けば、まぁ、いい顔だちなのではないか。
「おまたせ」
ネネと、ミレイが入ってくると、
「うわ、いっぱいだね」
「これ、全部試着するの」
「あれ、メディは」
「アマツキのことは任せるから、教会のなかで、見学という遊びに連れてかれた」
「そっかぁ。さっきの子たちね」
ヒイロは、少し残念そうだ。
メディは、なぜか子どもたちに、好かれるのかもしれない。
ヒイロもはじめのほうは、少し怖かったけど、メディにすぐに慣れてきた。
なぜか、ネネとミレイは、アマツキの顔や身体つきをにやにやしてみている。
ヒイロは、なんか嫌な予感がして、サッと立ち上がる。
上がろうとしたら、アマツキに手を引かれた。
「どこいくの」
「いいえ。あの、なんか、その」
「ヒイロも一緒にね」
「えぇ、とぉ」
ネネとミレイは、服をわさわさと選ぶと、その場で、サイズを確認しはじめた。
「さ、どんどんいくよ」
「わ、わたしは遠慮しよっかな」
「なによ。ヒイロも一緒に着替えるのよ」
やっぱりかぁ。
わたしの嫌な予感は、当たるらしい。
幸いなことなのか、ベットルームには、カーテンが引けるため、そこで、ヒイロとアマツキは、交代で着替えることになった。
「これどうか、きてみて」
「こっちは」
「これなんか」
「あ、あと」
「うーん」
「やっぱり」
「こっちは」
「これと」
ヒイロもはじめは、それでも、少し楽しかったのだけど、
あまりにもミレイの熱狂に、だんだん怖くなる。
アマツキは、それでも、新しい服だからか、はじめてなのか、戸惑っていたのに、途中からは、恥ずかしがりながらも、つきあってくれている。
「ミレイ、もう少し手加減しないと」
「手加減、ってなにかしら。わたし、服装選びは、マジだからね」
「ミレイの選んでるわけじゃないんだから」
「アマツキは、そうね、少し明るめで、ヒイロは、髪のイメージから、少し抑えめで、でも、かわいらしくして」
「聴いてないし」
「ネネは、これとこれなら」
「もちろん、こっちよ」
「次これね」
はぁ。
ヒイロは、わざと目の前でため息してみるも、効果なし。
「はやく。まだあるわよ」
「はーーい」
「アマツキは、次これ」
「うん」
次つぎと渡されては、着替えて、少しポーズを変えて、またカーテンをしめて、とやっていると、ヒイロは少しだけ、中央図書館でみた、アイドルやモデルがうつるポスターを思い出して、あぁいうのも、つくるのって、大変なのね。
今度は、もっとゆっくり衣装とか、ポーズとか、しっかりみよう、とほかのことを考えていた。
「ふぅ。アマツキのは、これでいいかな」
スラッと細めの長いズボンで、上は、
寒くないようにと、薄く模様のはいった長そで。
シャツは、少し厚手の地で、腕と裾になにかマークが入っている。
ブランドのロゴマークだろうか。
「ヒイロは」
どうやら、男の子っぽいので、あわせようか、女の子のキラキラしたのにしようか、本気で迷っているらしい。
「どっちでもいいから、はやくして」
ホントに、そう想う。
ベットのとなりにある、イスでアマツキは、少しだけ余裕がでてきたようだ。
わたしの服をみて、天使の羽根をパタパタしつつ、少しだけ笑っている。
「アマツキ。あんまり、じろじろみないで」
「そう言われても、ベットと近いし」
「じゃ、あっち向いて」
「もう少しみてる」
「そんなに気になる」
「別にのぞかないし」
「のぞいてきたら、なぐるし」
「てか、ベットが服だらけ」
「ミレイとネネに言ってよ、もう」
たしかに、ベットの上も下も服だらけだ。
「はい。これね」
「まだあるの」
「ヒイロって、なんか中性的だから、どちらのほうがあうのか、試してみるの」
もう好きにして。
結局、アマツキを置いてきぼりにしつつ、服選びに一時間はかかってしまった。
「あ、シャワー」
ネネが、急に思い出していいだす。
シスターが、
「シャワールームこちらよ。
でも、その前に、食事にする?」
ときくと、ミレイが
「アマツキは、入ってきたほうがいいわ。待ってましょ」
ということになり、アマツキは、タオルを渡される。
「ヒイロは、入らないの?」
「わ、わたし?」
「うん」
「そんな、一緒に入るわけないわ」
「え、一緒に入るっていうじゃなくて、先に入っていいよって」
「あぁ、もう、えと、アマツキが、先にでいいわ」
「そう」
アマツキが、着替えとタオルを持ってシャワーにいくと、ベッドの服の片付けがはじまった。
「シスター、この服たち、ほんとどうしたの」
「ほかの天使たちが、持ってきてくれたり、破れたの直したり、あと、アヤネが、買ってきたりかな」
「あれ、アヤネは」
教会の中央に、ヒイロが見にいくと、ベンチで横になって、少し寝ているみたいだ。
メディが、そばにいる。
「大変だったみたい」
「え」
「アヤネ、子どもたちの相手して、アマツキのみにいって、あと書類みたいなのみてて、つかれたんだね」
「そう」
天使アヤネの横顔をみながら、
メディの横に座ると、ヒイロは、どきどきしてきた。
なぜだろう。
このメディの眼つきをみていると、
なんだか、懐かしいような、ソワソワするような感じがして、慣れたはずなのに、少し恥ずかしい。




