アマツキとヒイロ
天使アマツキと悪魔ヒイロは、境遇や環境が似ていたのだろう。
一度、ヒイロの手をとったら、アマツキは、不器用ながらも話しをするようになった。
「ね、いいでしょ」
アヤネは、仕方ない顔になる。
「ホントは規則違反なの。でも、ま、わたしの立場だし、悪魔に頼まれたらね」
アマツキは、黄色の少し長い髪をはらいながら、答える。
服は、茶色シャツに上着には、薄い茶色の長袖。寄れてはいるものの、長いズボンに茶色っぽい靴をはき、手にはノートを持っている。
「あの。ついていくけど、メイワクなら、いってください。すぐに、捨ててもらっていい」
「そんな。アマツキは、いまできることしよ。ネネも一緒に考えてくれるから」
「ふぅ。悪魔って、想像とだいぶ違うんね。もっと無関心で、ただエネルギー体回収してまわる、作業としてやるんかと思った」
アヤネがいうのも無理はない気はする。
ヒイロも意外だったのだ。
ネネやミレイは、言葉では突き放すのに、それでいて優しく、なぜかカバーしてくれる。
「アヤネ、天使こそ意外だよ。天使って、みんなアヤネみたいに優しくて、仲間たちの世話して、エネルギー体の扱いもいいもんだと想っていたよ」
「それは、ないわ」
「えぇ、どうして?」
「天使は、競争社会なの」
「うん」
「上の階層にいくほどに、扱いやエネルギー体の魔力わけが多くなり、下の階層ほど、自分たちでなんでもしなくちゃいけなくて、最下層はだれもなにも手伝ってはくれないところよ」
「クイーンは、どうしてるの?」
「天使界は、広いもの。上層階とその少ししたの中間が多いから、その天使たちのことばかりよ」
ミレイは、疑問に浮かぶことをすぐに聴いてみる。
「それ、アヤネはいいの」
「なに?」
「アヤネは、そういう天使でいたいの?」
アヤネは、転移陣を拡げて準備ができたところで、ミレイの顔をみつめる。
「わたしは、ほら。こんなチャラくて、ギャルっぽいし、みんなをまとめるのも、いまの段階が手いっぱいで、そんな、天使全体の善意みたいなものまで背負えないわよ」
「そんなことないと想うけど」
「ほら。準備できたよ。いこう」
「うん」
ネネ、ミレイ、メディが転移していき、
ヒイロとアマツキもなかに入っていく。
最後にアヤネが残り、転移にのる前に、いまのスラムの様子の街並みを振り返る。
思わず、声にだす。
「わたしは、ただのギャルな天使よ。
あの娘ひとり、救えない。無力を越して、虚しい。なんで、天使になったんだろ」
転移した先は、賑やかなところだった。
「ねぇ、ここは」
「ここは、下層三階部分ね」
「三階」
「けっこう賑わってるでしょ」
「はじめてみた」
「天使界ってこうなってるのね」
「てか、天使商売も魔力なのよね」
「そうね」
みんな、それぞれで言いたいことを話す。
「天使だって、受け持ちの仕事はあるでしょ。でも、街なかが賑わっているのは、副業」
「うーん。たしかに、エネルギー体回収には、回収したときの魔力が分けられるだけで、上の階級の者でないと、あんまり見合っていないのよ」
「でも、ネネたち悪魔は、回収に積極的だよね」
ヒイロが疑問を聴いてくる。
悪魔界の仕事は、ヒイロもそんなには詳しくない。
「ミレイは、どう思う?」
「わたしは、仕事は、仕事としてやりきるだけよ」
「未来視なら、もう充分高いし、仕事はやめちゃっても、いいくらいじゃない」
「わたしが、メディの側、離れるわけないじゃない」
当然のことというように、話す。
ネネは、どうだろうか。
「そうね。特に悪魔たちが回収にふりわけられるのは、クイーンからのだから、天使たちより、仕事に対してもっと熱はあるわね。ま、やめてすぐに堕ちていく悪魔もいるよ」
「ふーん」
アヤネは、悪魔と天使の仕事の差はなんだろうと、よく考えてみる。
「結局、天使たちは、死者、とくに人間に対しての関心や感情がなくなってしまうのかも。ただの魔力を持ってきているだけ」
アマツキは、それを聴いていて、不思議におもう。
「それじゃ、アヤネは天使の仕事キライなの?」
「それは、好き嫌いじゃなくて、単純に役割かな」
「そっか」
アマツキは、ヒイロをみる。
すると、ヒイロもアマツキのことを見ていて、眼があってしまう。
すぐに逸らすアマツキ。
「どうしたの」
「いや、なんでも」
「ふーん」
その姿を少し離れてみていたメディが、こそっとネネに話す。
「アマツキとヒイロ、けっこううまくいくかな。ネネもはじめは、あんな感じだったよね」
「やだ。メディ覚えてるの!?」
「うん。まぁ、転生したばかりだったし」
「えーー! わすれてるかと」
「いや」
「なによ。メディもネネもいやらしい」
「そ、そんなこと」
「ほら、ネネ。貴女の顔よくみてみなさいよ」
ミレイが、天使の販売していた魔力鏡をサッとネネに渡す。
「うわ、変な顔」
にやにや、フニャフニャしてる。
「これ、ちゃんと購入しなよ」
「うん。そうね」
ミレイは、露天販売をしていた天使に話しかける。
アヤネは、アマツキとヒイロをどう想っているだろう。
もしかして、アヤネは天使自身になにか疑問をもっているのかな。
「メディは、わたしから悪魔の仕事紹介されたとき、どう想ってたの」
「はじめてのとき?」
「そうそう」
「そうだね。悪魔なイメージは、どちらかというと、ブキミで残酷な感じだから、仕事として、あまり感情的にならないで、やれるのは、あってるかもって想っていたかな」
「転生ショックで大変だったみたいだけど」
「それはね。けど、仕事やなにか始めるときは、みんなそうでしょ。なにか覚えて、よくわからなくて、少しなにか見えたりしてね」
「うーん」
「まぁ、ネネやミレイは、悪魔な仕事ずっとだからね」
「そうなのよね」
ミレイが、話し終わると、鏡のほかにも手に持っている。
なにか買ったみたいだ。
「アヤネ、ここからどこいくの?」
「あ、そ、そうね」
アヤネは、背中の羽をパタパタさせて、なにか考えている。
「三層にきたのだし、じゃ、少し様子みてこよっかなぁ」
「うん。ついていくよ」
「そうしよーー!」
アヤネが、上空に飛ぶ。
ほかの悪魔たちも飛ぼうと構えていると、
ヒイロが気づく。
「あ、待って!」
「どうしたの?」
「アマツキが、あの」
ネネは、アマツキの様子をみて、そっかと思う。
「そうね。アマツキ、羽がボロボロだし、体力少なそう」
想い出す。
そういえば、悪魔メディナナタリアもはじめのとき、空中での飛びかたが、わからなくて、教えていたな。
「じゃ」
とネネが抱えようとするとメディが横にくる。
「抱えてくよ。とりあえず、アヤネが案内して、その先で、少し休めるところあれば」
「わかったわ」
メディがアマツキを抱えると、ヒイロが横について、一緒に飛ぶようだ。
「それじゃ、いくよ!」
アヤネが先頭に飛びだし、それぞれ上空に展開する。
少し街なかを飛ぶと、数分ごとにほかの天使に会う。
「アヤネ、今日はどの子?」
「アヤ、ピース」
「アヤちゃん、悪魔も連れてきたの」
ネネもミレイも驚く。
「ねえ、アヤネ」
「なに?」
「さっきから、アヤネ声かけられるけど、階級が上だから? それにしては、みんな気軽ね」
「あぁ、えと」
「アヤネってユウメイなの?」
「それは」
どうにも、答えたくないようだ。
答えにくかったわけは、降りたさきでわかった。
教会と泊まる施設、それに、時計台のある広い公園。
「ここなの?」
「そうよ」
ネネが降りて、周囲をみると、公園では天使子どもたちが、走りまわり、扉が開けられている教会のなかでも、祈りの詩声が聴こえてくる。
「ここって教会だし、子どもたちを預かっているの」
「そうといえば、そうだし、違うっちゃ違うし」
「違う?」
「教会は、わたしがつくった教会なの。だから、運営っていうのかな」
「そうなの!?」
「あと、いまはもうしてないけど、天使スラム街や第三層以下でも、暮らしていけない天使を少しだけ、保護しているの」
ネネもミレイも驚く。
「え、じゃ、アヤネの教会じゃん」
「うん。まぁ、そうといえば、そうかな」
「えーー!」
「とにかく、アマツキを休ませましょ」
「うん」
メディが、アマツキを降ろすと、悪魔がくるのが珍しいからだろう。
公園で遊んでいた、子ども天使たちが、何名か走ってくる。
「アヤネ」
「悪魔」
「子ども」
「そうそう。ケガしてるかもだから、あまり騒がしくしないでね」
「アヤネそっちは」
「あぁ、知りあった悪魔たちよ」
「へぇ、美悪魔」
「かっこいい」
「エ○い」
いま、だれか、エ○いって言ってる。
ミレイやネネの周りを走りまわり、ネネの服を引っ張ったり、ミレイに触ったりしている。
メディのところには、ちゃっかりな女の子天使が、ジーッとみている。
「どうしたの」
「悪魔?」
「うん」
「コワい?」
「怖くはないかな」
「そう」
その小さな天使は、ぎゅっとメディの足を捕まえてしまう。
ミレイもネネもすぐには、怒れないが、
ヒイロが、少しムッとした顔をしている。
「メディは、わたしのだから、その遠慮してもらっても」
「メディって言うのね。これから、お願いします」
「あ、うん」
「だから、メディは」
「アマツキのことはいいの?」
「あ、アマツキ、早くなかに入って」
「うん」
絡みついている子ども天使たちを半ば引きずりながら、教会のなかに入っていく。
「なんだか、すっかり仲良しね」
ヒイロは、依然として、子ども天使に、抗議をしている。
教会のなかに入ると、ピタリと詩声が、止む。
なかにいた天使たちが、みんなして入口のほうを向くと
「あ、アヤネだ」
「悪魔もいるよ」
ざわざわっとしたあと、すぐに走って突進してくる。
あっという間に囲まれてしまう。
「あ、あの、通してくれる? アマツキ連れていきたいの」
「アマツキってだれ」
「アヤネげんき」
「悪魔じゃん」
「羽かっこいい」
とりあえず、言うことをきかなそうなため、ひきずっていく。
教会の前列の向こうにいたシスターが、近寄ってくると、
「アヤネ、げんきしてる?」
「はい!」
「じゃ、こちらへ」
と案内してくれて、少しずつなかに入り、通路を歩き、
絡みつく子ども天使たちを扉の前で、ようやく離すことになる。
扉のなかは、簡単な療養施設と懺悔室になっているらしく、短い廊下をいき療養の部屋につくと、ようやく声が遠くなる。
「びっくりした!」
「うん」
「子どもげんきね」
そんな感想を話した。
アヤネとシスターは知り合いのようだ。
「どうしたの、この天使は」
「うん。第一層で、いろいろあって」
「悪魔たちは、一緒にきたのよね」
「うん」
「えーと」
シスターが困っているのも無理はないだろう。
子ども天使に、悪魔が急にきたのだから
「あの、わたしたち、メイワクでしたら」
「じゃ、お名前は」
「アマツキ」
「アマツキをまずは、休ませましょう。アヤネは、手伝いね。ほかの悪魔は、座ってお待ちになって」
「はい」
「シスター、わたしも手伝いたい」
ヒイロがいうと
「お名前はなにかしら?」
「ヒイロ」
「ヒイロは、アマツキについてあげてね」
「はい」
"このシスターできるわ"
ネネとミレイは、シンパシーで一緒のことを想った。




