どうでもよくない天使
はじめその天使は、首をふったり、邪魔そうに手を払ったりしていた。
ミレイやアヤネは、困った顔をして、あとは、ジッと待ってくれている。
ネネとメディは、ヒイロと一緒にひと言ずつ話しかける。
積極的にヒイロは話しをして、その天使が
なにかしら、行動をおこしてくれるのを待っていた。
それほど、長い時間ではないはず。
それでも、ヒイロは自身が泣かないように、うまく自分を奮い立たせているような感じだった。
「ねぇ、もうどうでもよいんだよ」
ようやく話してくれたひと言は、それだったけど、ヒイロもネネも笑顔を向ける。
「よくないよ」
「もう。気にしなくていい」
「そんなことないよ」
また、だまってしまいそうになる天使をなんとか、話しさせようと、ヒイロはいろんなことを話してみる。
「わたし、悪魔だけど、自分がよくわからないの。ノートとかあって、それみたけど、やっぱりよくわからなくて、街をぶらぶらしていたの」
どうやら、話しはきいてくれてるようだ。
でもうつむいたままではある。
「名前だけはわかって、だれに頼っていけばいいのかもわからなくて、それで話してくれた中央図書館の司書に、お世話になることになったの」
「うん」
「図書館で、たくさんの魔導書に囲まれて、悪魔歴史や悪魔小説、いろんな体験をそこでみつけたわ。」
「うん」
「ね、わたしたちと、少し天使界を歩いてみましょう」
座ってうつむいている天使は、少しだけ顔をあげる。
「どうして」
「えっ」
「きみには、関係ないじゃん。どうして、そんな話しをするの?」
「ふふっ。わたしは悪魔ヒイロ。悪魔なら、きっと手に入るものがあるわ。天使は、どうかな。天使なら、天使だけにできるようななにか、あるかもしれないわ」
「それでも、なにもなかったら、どうするの?」
「わたしが一緒にいてあげるわ。悪魔と天使、ちょうどいいじゃないの」
途中、ヒイロは震えを我慢していた。
まだ、泣いてはだめ。
この天使を奮いおこす、チャンスなの。
「どうでもいいよ。天使とか」
途中アヤネが、なにか言いたそうにするも、メディに止められて、また待つ。
「悪魔ノートに、わたしのスキルがあるの。いま少しずつだけど、進化させて、きっとあとに役にたってみようって、想ってるんだよ」
「はい」
天使は、自分の後ろの隠れて置いていた天使ノートを差し出す。
「みてもいいの?」
「うん」
差し出された天使ノートをヒイロは受け取り、パラパラと少しずつ読む。
でも、基礎スキルとはじめのほうに、説明が書いてあるだけで、なにかの手がかりは少ない。
「え、なに?」
「どうせ、あなたたちだって」
「うん」
またうつむく。
ヒイロは、天使ノートを元の位置に返すと、おもいきって、言ってみる。
「わたしたちと、ううん。わたしと、一緒にきて。きっと、わたしとできることあるわよ」
その天使は、顔をあげて、ジッとヒイロをみる。
瞳はブルーグレーで、暗い表情のなかに、なにか、決めようとしている意思がある。
「もし、暗いジメジメした未来しかなかったら、どうすればいい。どうすれば」
「そしたら、わたしと手を繋いで、一緒に悪魔になろう」
「悪魔」
「天使がイヤなら、悪魔になればいい」
ふっと、その天使は少しだけ笑い、羽を広げてみせる。
「あなたの名前は」
「わたしは悪魔ヒイロ」
「じゃ、ヒイロ、もしこの先になにもなかったら、悪魔になるよう手配してくれる?」
「ええ、いいわよ」
「わかった」
その天使は、ノートを掴むと立ちあがり、
みんなのことをようやく始めてみるような表情になる。
「名前は」
「ノートに書いてなかったかな?」
「ううん。しっかり聴きたいの」
「名前は、アマツキ」
「うん。わかった!」




