ヒイロの夢
「あれ」
「どこだっけ」
迷子になった。
いつもの中央図書館ではない。
ルルファイスと会った場所、のような気がする。
わたしの記憶は、あの頃に戻る。
わたしは、生まれてからのしばらくの期間の記憶がない。
気づくと、街なかをさまよう悪魔な子どもだった。
自分が悪魔だと認識したのもビルの窓ガラスを観たときだ。
ガラスに映る悪魔たちのなかに、自分もいて、あぁ、これは悪魔なのか、と想った。
「わたし、ここでなにしてるんだろ」
とりあえず、手近なビルに入ると、
化粧室にいったり、ショップを回ったり、
かわいいものをチェックしてみるものの、想いだせない。
ときどき店員が「かわいいね」と声をかけてくれるもわたしのことか、どうかもよくわからなくて、逃げてしまう。
ホールになっているふきんで、天井が窓になっているのを見上げながら、近くのベンチにすわった。
持っていたバックの中身を確認すると、
いちおうのわたしの持ちものっぽいものが入っている。
「わたしって、だれなの?」
女性小物があることから、
女の子ではあるようだ。
持っている鏡で、顔を確かめてみたり、
いまの服装を確認してみる。
「うん。可愛いことは、わかったぞっと」
「でも、どうしよ」
立ちあがり、もう一度ビルのなかを周ったあと、外にでてみる。
日差しのなか、外を散歩する。
紫の百合で染まった公園をみつける。
「きれい」
なかに入り、フラフラしていると
「あ、あなた」
と声をかけてくれた。
「えっ、わたしですか?」
「かわいい。あなた、わたしとデートしない?」
声をかけてくれたのが、ルルファイスだった。
「でーーと」
「そう。デート」
わたしは、聞き間違いな気がして、また聴いてしまう。
「あの、デートって」
「いけない?」
わたしは、ひとまず、公園のベンチにすわり、どうしようか、考える。
わたしって、だれなんだろう。
声をかけてきた悪魔も隣に座ると、
どうやら、ベンチに、パスケースと小さめのカバンを置いていたようだ。
それを手にもつ。
「わたし、悪魔なんです」
「えぇ」
「悪魔なんですけど、だれかよくわからないため、おつきあいできません!」
わたしは、一応断りのはずだったのだけど、
「えぇ、いいじゃない。謎の美悪魔で。それより、一緒にいいことしましょ」
「あの、話し聴いてます!?」
その悪魔は、ベンチの背に手をかけると、徐々にこちらに顔を近づける。
わたしは、少しずつ逃げるけど、だんだんと端によってしまう。
「あ、その」
「こういうの、キライ?」
わたしは、ベンチの端で、変な格好のまま、キスをされそうになる。
なんだコレ
すると、小さめのカバンから、ノートが一冊落ちてしまう。
表紙には、悪魔ノートと描いてある。
「それ」
「えっ」
「ノート落ちました」
「そうね」
「名前」
「なに?」
「名前教えてください」
すっと、その悪魔は、ノートを拾うと、
ニコッと笑顔になり、わたしの首にキスをした。
「ひぁっ」
「ルルファイスよ」
「えっ」
「わたしの名前。そこの図書館で、司書をしているの」




