ヒイロの出発の日
図書館は、いそがしかった。
ルルファイスのいるカウンターには、何回も悪魔が聞きにきて、こちらです、それは、こっちで、と案内したり検索したり、している。
ネネとミレイ、メディは、禁書エリアで過ごしていたから、気づかなかったが、ヒイロの準備ができたから、と本を片付けて、
下の階に降りると、ルルファイスが呼ばれて、足早に動きまわっていた。
「図書館混んでるね」
「うん」
「ていうか、しばらく来ていて違和感なかったけど、中央図書館なのに、司書ってルルファイスだけ?」
「いや、そんなこともないと思うよ」
「でも、最近は悪魔界も機械化進んできて、だいぶ便利だよね」
「そうね。何年か前までは、タブレット検索したり、デビスマでデータアクセスしたりとか、そんなにではなかったね」
「うわさでは、転生者たちが、企業たちあげて、異世界の技術を取り入れてるって」
と、話しをしているが、なかなかルルファイスに話しかけられずにいる。
荷物はあるが、側にいないため
「ヒイロは?」
とメディが訊ねると
「お手洗いにいったみたいだけど」
「もしかしたら、泣いてるのかも」
「うん」
少ししてから、ヒイロが帰ってくる。
"ルルファイス"
「どうしよっか?」
「少し待ってみる?」
「あっ」
瞬間シンパシーを受け取ったのか、
ルルファイスがやってくる。
ヒイロに近づくと、アイテムを渡してくれる。
「これ、持っていきな!」
「えっ、うん」
「じゃ、ルルファイス」
ヒイロは、ルルファイスの首に手をまわして、抱きつく。
二回ほど、ポンポンとヒイロの背中をたたいて、また忙しく仕事に戻っていく。
「いこっか?」
「うん」
閲覧制限のパスカードを機械に収めて、図書館の出口をくぐる。
眩しい日差しに、一瞬眼を閉じる。
「まずは」
「どこいくの?」
「そうだね」
「ねぇ」
ヒイロが、ネネの裾をひっぱる。
「なに?」
「みていきたい場所、ホントにどこでもいいの?」
「うん」
ネネとミレイは、しばらくとっていなかった連休を申請して、統括の仕事の大部分を後輩にまかせてきた。
メディは、統括エリアのなかでも、重要になってきていたため、仕事をいくつか持ち歩きながらになるらしい。
ネネは、ヒイロの赤い髪をなでて、
その瞳をみつめる。
「ヒイロは、これまでほとんどの悪魔世界を図書館で過ごしてきたでしょ。今度は、外をたくさんみよう」
「うん」
ヒイロは、まずはメディの部屋にいきたがった。
悪魔メディナナタリアの部屋。
その部屋、わたしが、訪れたい場所だ。
これは、喜んでいいのか。
いや、わたしがいきたいのは、
メディとその、いい雰囲気になったときに、一緒にいきたいのであって、だから
"わたしが、メディとイチャイチャしたい"
だけなのだが、それはヒイロには言えない。
メディは、そんなに嬉しそうではないけど、案内されながら、向かう。
ビルの一室で、そんなに高層ではないけど、それなりに、いい部屋だ。
「にしても、なにも無いわね。」
ミレイが感想をいう。
「そうね」
「そうだね」
メディの部屋は、ベットと飾り棚にものが少しあるだけ。
あとは、キッチンと洗面所、トイレ。
玄関が広く、ロフトもあるが、ものはあまりない。
「そうね。前にきたときも、そういえば殺風景だったかな」
わたしが話すと、
「えっ、ネネきたの?」
「う、うん」
「いいなぁ。メディと仲いいね!」
「ミレイは、きたこと」
「ないわね。はじめて」
「わぁ!」
ヒイロが、ハシャいで歩き回ったり、カーテンを引いたり、ロフトを、たしかめたりしている。
ミレイは、一見するとおとなしいが、
あちらこちらを観察しているようだ。
そして
「ねぇ、メディ」
「なに?」
「えっちぃのはないの!?」
「え、な、なに?」
「だから、ラブシーンのやつとか、ベットのやつとか、いわゆるエ○に関するものよ!」
「ないよ」
「へぇ」
「なに、ミレイ、なにか」
「ふーん?」
途端に、部屋のいろんなところを探しまわる。
どうやら、ミレイはメディの隠している性癖をなんとかみつけだしたいらしい。
みていて、わたしが恥ずかしい。
ヒイロは、不思議そうだ。
「図書館では、あまりみかけないけど、えっちぃのってなに?」
ヒイロが、まっすぐに見て、メディに聴くため、メディは、答えかたを慎重にする。
「えと、その」
ミレイが、積極的に話しはじめる。
「女悪魔と男悪魔が、裸になって、肌をみせあい、あそこをピーーで、ドーーンして、ときどき口で、ピピーーーーして、羽をパーーンして、すると」
「もう、もういいからミレイ」
みるとヒイロが、顔を真っ赤にして、涙目になり、フルフル震えている。
「ミレイ、ちょっと話しすぎじゃない!」
「こういうのは、先にさきに話したほうが、あとのダメージを軽減できるのよ」
「そんなこと、いっても、ヒイロまだ」
「うん。ワカッタ。その、うん」
ヒイロは、メディのうしろに隠れて、ネネとメディを交互にみる。
そのキラキラした眼をみると、
そのうちそれが、ギラギラしてきて、ドロドロになっていくかもと想うと、
ネネは切なくて、ヒイロを抱きしめる。
「うん。いまはいいからね。そのうちね」
「うん」
ミレイはあきれていう。
「ネネ、ヒイロのこと、あまり子ども扱いしちゃダメよ。まるで甘いんだから」
ネネが珍しく、ミレイをにらみつける。
「いいの。ヒイロはまっすぐ育てるんだから」
「はいはい」
メディはヒイロをなでると、眼をみつめて、話す。
「ヒイロ、悪魔な世界いやなところも、汚いことも、イライラすることもあるけど、ひとつだけ、たしかなことをヒイロがみつけることができれば、それが最強だから」
「ひとつ」
「そう」
「じゃ、メディにはあるの?」
メディは、遠い眼をして、うなずく。
「ある。でも、まだ話せないかな」
「うん」
メディの部屋で、おしゃべりをして、
飲みものを飲み、ひと休みをしていると、
ヒイロが寝てしまう。
寝顔をみながら、ネネが小さく話す。
「やっぱり緊張してたのかな」
「少し寝よっか」
「わかった」
メディが、カーテンを閉めると、
ネネが灯りを薄くつけて、
ミレイが、寝る準備をしてくれた。




