悪魔ネネと異界ドラゴン
回収したエネルギー体を異界のドラゴンのところまで、連れていった。
いつもの仕事だ。
この空間でエネルギー体を離すと、ある者はドラゴンに異界の扉の向こうに連れていかれ、ある者は食べられたりしている。
かなり怖い。
「お、お願いします」
いつもの通り、なにも発しないドラゴンの前に、エネルギー体となった者たちを離す。
この異界からは、転移や特殊な魔法を使わない限りでられない。
仕事も終わったし、帰ろうかと、後ろを向くと。
「おい、悪魔ネネ。少し話さないか」
「? ? ? ?」
どこから、声がした。
慌てて振り向くと、目の前にはドラゴンしかいない。
濃紺のおおきい身体、羽にシルバーの模様が入っている。
羽や身体が、魔力を捕えると、色が変化する。
いつもは、ほとんど眼を閉じているが、
ときどき眠たそうに、眼をあける。
「あ、あのぅ、ドラゴン?」
静かだ。
気のせいか。
「お嬢さんに、頼みがある」
は、話した。
やっぱりドラゴンだ。
悪魔語話せるのか。
いつも、ヒトや妖精と話しするときには、翻訳しながらなため、こうして話しかけられるとびっくりだ。
「あ、あのぅ」
また静かになる。
「あ、あの」
「魔力の結晶である高魔力宝石と、転生魔法使いとなる器に足りる者、それに探している悪魔がいる」
「えっ」
「探し悪魔は、名前ヒイロだな」
「あの」
「頼みだ」
また静かになる。
なかなか話しがよくわからない。
「えと、なんでわたしに」
疑問を聴いてみた。
また静かになる。
「メディナナタリアは、だいぶ偉くなったな。はじめは怯えていたのに」
「それは、誰でもドラゴンにはびっくりします。メディを知っているんですね?」
また静かだ。
「メディナナタリアは、さらに進化するな。転生魔法使いでないのは惜しい」
「あの」
「頼みだ」
それっきり、話しは途切れてしまう。
ドラゴンって、いつもこんな感じなの?
仕方なく帰ることにするが、あとに、これが、メディナナタリアを転生させることになる、最大のきっかけになってしまう。
帰りにミレイに会い、異界ドラゴンについて、話しをきいてもらうと
「え、あのドラゴン話しするの?! 始めてきいたわ」
と言われる。
「うん、わたしも始めてだよ、話しかけられたの」
「この仕事はじめて、もうけっこうだけど、そうなの!? メディのこと、知ってたんだ?」
「そう。転生者だから、なのかな」
「うん」
「でも、すごく眠たそう、というか、話しがゆっくりで、ちっとも進まないんだよね」
「また、次の仕事で、話しかけられるんじゃん」
「うん」
次の仕事終わり、異界送りの場所までいくと、異界ドラゴンが話してくれる。
「高魔力結晶は、ほら、ネネが持っているそのネックレスのようなものだ」
どうやら、いつもつけているネックレスの舞のことらしい。
「はい」
「死者になるとき、転生するとき、魔力衝突など、魔力要素が揃うとき、圧縮魔力が側にあるものに結晶化するんだ」
「はい」
「ネネがつけているそれは、大切なものだろう。だが、縁はある」
「それで、わたしですか?」
「メディのこともある。転生者がスキルを高めて、魔力を成長させることもよくあるが、転生魔法使いの素質は、また別だ」
「う、うん」
「魔力の素質は、これでわかる」
「えっ」
それは、ドラゴンの鱗の一枚だ。
「われわれは、眼や肌で、その魔力の探知をできる。だか、伝えるのはムズカシイ。これの色で見分けてもらおう」
「ドラゴンの鱗」
また静かな時間だ。
また別の日に
「転生素質のある悪魔は、一度みかけたがそれきり来なくなった。しかし、まだ存在するはずだ」
「はい」
「魔力探知にはかかるが、場所は不明だ」
「高魔力結晶と、その転生素質者を連れてきてくれ。そうすれば、転生魔法使いだ」
「はい」
話しがなかなか進まなく七日かけて、話しをしてようやくここまで、ききだせた。
「はぁ」
「ネネ大変ね」
「そりゃ、ミレイも忙しいでしょうけど」
「でも、たぶんもう少しすると、次のことが起こるわ」
「え」
「たぶんメディは、まだ上があるのよ」
「えー!」
「メディに従って、いろんな景色がみられるわ」
「うん」
「あ、ドラゴンの手伝い、なにかあったら言ってね」
「ありがとう、ミレイ」
「そうだ。ようやく名前を教えてもらったよ」
「ドラゴンのよね」
「ライーリア ミロダス ファルティシス」
「そうなんだ」
「好きに呼べ、だって」
「ふふっ。わたしもなにかあだ名つけて呼んであげよっかな」
「怒られない?」
「きっと、大丈夫。ドラゴン長生きだし。もう、そんなに、カッとなったりしないんじゃない」
「そっかぁ」
こうして悪魔ネネは、統括の仕事をこなしながら、異界ドラゴンの転生魔法適性者探しをすることとなる。