ルルファイスから教わる転生
ルルファイスが来たのは、夜おそくになってからだった。
作業は、ひと区切りしたし、ヒイロもアマツキも探検しおえたらしい。
けれど、思ったよりはおそい時間だったため、先に夕食をして、黒鉄たちがまた仕事を持ってきたそうな感じのときだった。
改装中といっていたように、ところどころ作業途中の部分や点検などがあるらしく、そういった部分を確認していくのは、全てルルファイスの役割なのだろう。
何度か、ルルファイスが書類やタブレットを手に持って、歩きまわっている姿をみかけた。
「おまたせしました」
「ルルファイス、おつかれさま」
「ふぁ! つかれたわ!!」
そのまま床に倒れるんじゃないかと思う感じで、わたしたちが座っていた隣の席に、へばりつく。
「ご飯食べる?」
「とりあえず飲みものですかね」
「買ってくるね」
スズネが飲みものを買いにいく前に、ヒイロとアマツキが走っていく。
とりあえず、みんなで甘やかす。
「同じ図書館のなかなのに、ここは天使たち?」
「天使いるけど、悪魔たちだね」
「改装ってきいたときから、わたしこうなるんじゃないかなって気がしていたんだけど、やっぱりこうなるわよね!」
「そ、そうよね」
「普段からわたしたちだけじゃ館内たいしてまわってないのに、それからさらに改装前からの打ち合わせとかあって、ほかの仕事が手につかなくなってさぁ……」
ヒイロとアマツキがくるまで、ルルファイスは止まらない。
「ヒイロ、アマツキきたわ」
「飲みもの、いただくわ。ちょっとヒイロ聴いてる?」
「は、はい!」
「それなのに、三悪魔で開館状態のまま改装工事もずっとするとかいうのよ」
そのままルルファイスが話しこんでしまいそうなため、ルルファイスを手助けしながら、どこかゆっくりできるところまでいくことにした。
「ルルファイスは、どこがいいかな」
「それで、館長は見当たらないし……」
「じゃとりあえず、少し歩くけどカウンターのあるバーにしましょ!」
「館長どこいったのかと思ったら近隣の教会や図書館にあいさつとかで、いないし……」
ルルファイスの話しをなんとか受け流しつつ、カウンターのあるバーについた。
たぶんルルファイスも来たことはあるだろう。
入ってすぐ、いらっしゃいませと声をかけられ、カウンターの端のほうから、順番に座っていく。
「館長は図書館内は、おまかせ?」
「そうなの! 何度連絡しても、いま打ち合わせしてるからとかで、あれゼッタイ接待受けてるのよ。それなのに三悪魔でここのところ入って、わたしは改装のほうばかりで、司書カウンターに何分も入っていられないの……それなのに……」
「接待って」
「中央図書館は中央都市で一番の場所でしょ? だから、魔力の影響も悪魔たちの集まる場所でもあるし、改装するなら臨時でもいいから求悪魔してよって感じでしょ……」
ここのバーのご主悪魔は慣れているらしい。
ルルファイスがずっとしゃべり続けていても、いつものようだ。
「よく動けてるわね」
「もうわたし倍速よ。それにライリアもレミリアもたくさん抱えてるから、あまり分けられないし、打ち合わせと点検だけで一日が過ぎていくのよ。この前には異界送り時間直前まで残ってて、わたしの本業の役割ってなんだっけ……」
ずっと話し続けていたため、途中からだんだんと寝る悪魔もでてきて、わたしとヒイロとアマツキだけできく。
「それでルルファイス妖精なんだけど」
「そう、妖精たちの資料ももっとたくさん集めないとなんだけど、館長の話しだと、妖精図書館にいって、交渉しないといけないとかで、そのエリアまでいくにしても……」
結局ルルファイスにきけたのは、少数で、そのうちヒイロもきいていなかった。
慣れてるらしい。
一息つくようになった時間は異界送り時間になってからで、そのときにはわたしとアマツキで話をきいていた。
よほど話し足りないことがあったみたいで、これならもっと早くに声をかけてあげればよかった。
「アマツキは長くても平気?」
「うん! ルルファイスすごいね!」
カウンターの女性と眼があった。
天使いるわ。
やっぱり天使は、いるらしい。
ルルファイスから、転生魔法の条件をきくことができたのは、深夜異界送り時間になってからだった。
それまで、天使アマツキとわたしでなんとかルルファイスの気分をなだめていたけれど、これは、ルルファイスは相当ストレス過多になっていた。
もはや悪魔並み以上に働いたらしい。
最後のほうは、ねぇ一緒に旅しましょうだった。
アマツキが、ぼくも頑張るよといったら、いいわ、一緒に旅してくれるだけで、というものだ。
一緒に悪魔がだれもいない場所にいければ、それでいいと誘われた。
悪魔界から逃走したいらしい。
気持ちだけ、伝わったことにしよう。
そうしよう。