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ナイフの出来はいかがかしら

 妖精に見送られてから、花のエリアをでていく。

 花たちが揺れているなか、少しずつ風景が遠くなる。


 ふと気づくと、ひとつの道がずっと、先まで続いている。

 きっと帰りの道なのだろう。

 ヒイロとアマツキ、それにミレイは、妖精たちのハーブティーとフルーツお菓子の話しをしている。

 作り方とか、聴いたのだろうか。


 メディは変わらず、ぼーっとしている。

 青い花をみつけられて、ほっとしているようでもあるし、なにか他のことのような気もする。


「せんぱいは、中央図書館ですか?」

「その前に、中央の近くにある教会にいくわ。シスターに報告したいし、アヤからの手紙もまた来ているかもしれないわ」


 黒鉄に前の返事をだしてある。

 スマホで返ってくる場合もあるけれど、天使も忙しいらしく、要点を手紙で出してくるほうが多い。

 たぶん、スマホで長話するより、なにかの用で手紙をまとめてだすのだろう。


「わかりました。わたし少し寄る場所あるし、荷物も片付けて、それから中央図書館ですかね」

「ルルファイスたちに話して、ヒイロのスキルを魅了から、改良するわよ」

「固有スキルと、なにが違うんですかね」


 スズネが、スキルの改良や改変を詳しく知りたいらしい。

 興味があるとは、意外な気もする。

 いや、スズネはいろんな方面で積極的なのかもしれない。


「メディがいうには、固有を少しずつ別のに変化させたり、階級からの特権みたいなので、スキルはさらに引き上げられるとかいうわ」

「ヒイロもアマツキも、でも、スキルは修行中だし、階級とかも所属してないですよね」

「……そうね」

「魅了から、なにかってどうなるんでしょうか」

「そういえば、ルルファイスがなにか言っていたわ」

「ルルファイス?」

「転生者はなにか別らしいって」

「う〜ん、天使スキルもですけど、もう一回調べないといけませんね」

「そうかも」


 たしかに、水の高魔力結晶や青い花は手に入れられたけれど、黒鉄も含めてそこから先のスキルの改良や深化は、詳しくない。


「でも、ルルファイスに聴けば、なんとかなるか」

「そうね! ルルファイスは自身で魔力をこうなんとかして、なんとかなったものね」

「……あやふや過ぎる」

「仕方ないでしょ! スズネもほら、スキルが変わってるし」

「まぁわたしのは、わたしので……」


 ミレイが近くにきて、わたしを落ちつかせる。

 抱きついてきただけだけど。


「ほら、ネネ。ひとまずはルルファイスのところでしょ」

「その前に教会いってくるわ」

「そう……わたしもいこうかな」

「荷物は? かなり買ったじゃない」

「あ、あぁ。黒鉄にまかせてるから、忘れていたわ」


 ミレイの黒鉄は、いったい何往復したのだろう。

 いつの間にか、ミレイの荷物は小さくなっている。

 まさか圧縮したわけでもないから、何度か運んだのだろう。


「おつかれさまね」

「ネネだけ。ミレイはひどい」

「ふふっ。今度ご飯食べよ」


 ミレイの黒鉄が軽くなった荷物を抱えて、こちらにくるため、少しなでる。

 草原や広いエリアを通り過ぎたため、あとは山だ。

 行きは、ゆっくり探しながらだったけれど、帰りは魔力を制御しつつ、飛んで戻れる。

 魔力列車の停まる駅までいければ、あとは列車を使うのでもいい。


 今度は空中で、メディに話しかける。

 ヒイロとアマツキは、スキルについてなんだか、ずっと話している。


「メディは、ヒイロのスキル進化できると思う?」

「それは、できるだろ。ルルファイスがやった方法は、そんなに的はずれじゃないはすだ」

「でも、スキルの熟練だったり、黒鉄との契約だったり、まだよくわからない」


 メディが、少しだけこちらの前にでる。

 話しづらいのかもしれない。


「ネネは、クイーンの持つ四つの超高圧縮宝石はみた?」

「あぁ、あれね。たしか最上級悪魔たちがまもっているのよね」

「それだね」

「みたことはあるけれど、いろんな形に変化していたわ」

「クイーンの秘書たちが探しまわって、加工できる悪魔に手伝ってもらって、あのカタチなんだよ。それまでは制御できなくて、クイーンも持て余していた」


 なんだかメディがよく知っているらしい。


 戻りの道は、気がラクになるため、話しもしやすい。


「でも、高圧縮宝石は、偶然できたんでしょ?」

「そうでもない。強い戦闘で魔力がぶつかりあったり、自然の魔力が少しずつ堆積したり、いろんな影響が絡むんだよ」

「へぇ」


 でも、それとスキルの影響は、またどう関わるのだろうか。


「ルルファイスがスキルを上げたのも、そういったことの研究だと思う」

「ヒイロにそれを試せるかしら」

「ヒイロの力……だけじゃ足りないかも」

「どういうこと?」

「ルルファイスが言っていたのは、自身の魔力を変化させるようなことだろう。ヒイロはまた別の道になるのかも」

「よくわからないわ」


 けれど、メディにはなにか策がありそうだ。

 思えば、光を変化させたりも最近までずっと調べていたらしい。


「一度こちらも仕事場に戻らないとね」

「メディは、いったら帰ってこないわね」

「いや、後輩に持ち場は任せてあるから、平気だろう。そもそも、滅多なことは起こらない場所ではあるんだよ」

「そうなの」


 ここのところ、メディの資料はちら見したけれど、実際の仕事内容を教えてもらっていない。

 ミレイも機密があるらしく、仕事のことは話さないのだ。

 偉くなると、そういうのらしい。


「教会いって、中央図書館で集合ね」

「あとで、ネネのところ寄るかも」

「え……わたしの?」

「そうだね」


 メディがわたしのところで用があるらしい。

 プライベートなら嬉しいけれど、よくわからない。

 このメディの行動が、しっかりと理解できたことはあるのだろうか。


 飛んでいる間は交代で話し、降りてからは魔列車の乗る駅を探した。


 ミレイは、魔力吸収をあきらめたらしい。

 すっかり魔力調整に入っている。


 魔列車で移動中は、寝ている悪魔も多かった。


 わたしは、今度はスズネと話すことになり、ようやくスズネに宛てたクラフトが区切りがついてきた。

 教会で調整すれば、できあがりだ。

 きっといい出来だろう。


「指輪気にいったわ」

「え、照れますね」

「スズネのセンスはいいもの」


 メディは起きて考えごとをしていたようだけど、わたしとスズネ以外は寝ている。

 スズネの話しは、割といろんな話題だったけれど、本当にときどき、なにかを戸惑うことがある。

 何度か停車した隙に、少しだけ列車から降りて、また乗ったりした。

 今日の魔列車の機嫌は、あまりよくなかった。



 目的地まで着くのに時間がかかり、その分だけ、スズネとは話しできた。



 中央の街区(がいく)にきたときには、くたくただったけれど、それでも飛ぶよりはよかったのだろう。


「解散ですね」

「ヒイロとアマツキは?」

「そのまま図書館いくね。ルルファイスが待ってる」

「ぼくは、少しだけ寄り道かな」

「じゃわたしも」


 ヒイロとアマツキは、中央にきてもさらなる冒険者になるらしい。

 教会に着くと、シスターが甘いフルーツティーを出してくれた。

 ほっとしたし、子どもたちの様子がきけたけれど、どこか足りない。

 メディたちと長くいたからだろう。


 いつからわたしは、こんなに寂しがりなのか。


「寂しそうね」

「そうなのかしら。長旅だったから」

「クイーンからの頼まれごとは、次で最後でしょう?」

「一応ね。でも、またすぐに次がくるわ」

「仕事、続けるの?」

「どうしよう。そろそろ悪魔たちの異界送りは、後輩たちに任せてしたいこともあるような」

「そう」


 ここのシスターは、もう長くつきあい、何名も子ども悪魔たちを見送った。

 そのためか、クイーン以上にいろんな話しをしている気がする。

 特に最近は、ミレイがプライベート以外はあまり話さないため、このシスターに聴いてもらう。

 そうだ、アヤに手紙を書かないといけない。


「魔力封筒の余りあるかしら?」

「ちょっと待ってね」

「ときどき紛失されちゃうから、やっぱり魔力入りのじゃないとね」


 待ってね、といってシスターが棚を探してくれている。

 少し窓をみると、黒鉄たちが飛んでいるのがわかる。

 魔力入り封筒なら追跡もできるし、失くされても番号で追えるため、どこの配達所で失くされたのかわかる。

 天使界までは、わたしはわからないけれど、送ってみた荷物がいつまでも届いていないときには、配達所に連絡してみるときがある。


「あ、あったわ」


 可愛らしい封筒がいくつかでてきて、選ぶことになった。


 アヤから送られてきた手紙には、アマツキのスキルのことが中心だった。

 けれど、天使の教会のことや子どもたちのことももっと聴きたい。

 そんな風に書いてみた。

 手紙のあと、今度はスズネのナイフの調整をする。

 もう飾りは終わり、柄の部分もできた。

 だけど、移動中もなにか足りないかもと想い、途中でとめてあった。

 いまも少し悩んではいる。


「それ贈りもの?」

「そうです。少し悩んでて」

「ゆっくりしてください」

「うん。でも、あまり待たせても」

「贈りもののとっておきはわかる」

「どんなの?」

「あなたのこと、想ってたわっていうの」

「はぁ……後輩なんですよね」

「男の子じゃなかったのね」


 メディにそんなこと言ったことないな。


「そう。でも、大切な悪魔よ」


 シスターがほかの作業に入っていたため、ここの場所をしばらく借りていた。

 何度か子どもたちがみにきたけれど、じっと観察するだけにしていたみたい。


 やっと完成品になったのは、けっこう時間が経ってからだった。

 魔列車では、やはり揺れなどあり集中しづらかったらしい。

 シスターが用意してくれた飲みものを飲みつつ話す。


「それ、ずいぶんと特別なのね」

「わかりますか?」

「ええ。飾りだけでなくて、魔力のこもりかたが尋常じゃないわ」

「……気合い入り過ぎちゃったわね」

「ネネの魔改ナイフと双子のようね」


 共鳴している。

 使った宝石は別モノなのに不思議だ。

 アヤへの手紙をシスターに渡す。

 黒鉄が届けてくれるけれど、もし返事があれば、また教会に届くだろう。

 わたし宛の荷物や黒鉄がみつけたものの、そのほとんどは一度教会に運ぶ手続きにしてあるのだ。

 わたしが選んでから、また教会に寄付するより、教会で分けたほうが少しは早い。


「シスター、それじゃ」

「これ渡しておくわ」

「ありがとう」


 こちらの教会で不要になった結晶や魔力空になったものを受け取る。

 またこれらに新しく魔力を補充していくのもわたしの役割だ。

 新しくつくったナイフを軽く包んでから、教会をでる。


 そういえば、メディがなにか話しがあるようだった。

 いい加減に、メディに伝えてみるしかないかもしれない。



 スズネにプレゼントを渡して、ヒイロの進化と、アマツキのが一区切りして、アヤの手紙を待ってみて、それから……辺りにしようかしら。

 いい加減に先送りにし過ぎだと、黒鉄があきれている気がする。


 中央図書館にいく前に、もう二、三別の用をすませて、それから図書館前についた。


「まだ…………来てないのね」


 けっこう遠回りした気がしていたのに、まだ誰も来ていなかった。


「先に入っていようかしら」


 スッとだれか降りてくるのがみえて、振り向くとスズネだった。


「あ、せんぱい先にいたんですね」

「みんなおそいわ」


 スズネが来てくれたのだから、渡しておこう。


「先に入りますか」

「それより、スズネこれ!」


 くるんだそのままみせるため、スズネがよくわからないようだ。


「これは……」

「ナイフよ。あけて」


 中身をみてもらうと、スズネが真剣にみている。

 少し時間がかかり過ぎただろうか。


「せんぱい……」

「あ、ちょっと凝ったつくりにしてちょっと時間かかったけど、なにか破壊するには充分よ!」


 物を破壊する前提にしてしまった。


「すごい嬉しいです! でも、こんな立派なの、もらってしまっていいんですか?」

「うん!」

「泣く……」

「え」

「泣きます!」

「そんなに!?」

「だって……ネネせんぱいからのこんなに心と魔力のこもったプレゼントなんて、悪魔生涯のなかで最高にあがるから、泣くしかないですよ」


 スズネにそんなに喜ばれるとは、思わなかった。

 指輪のお礼でもあったけれど、常に気配りをしてくれるスズネに、なにかしようと思いたっただけなため、時間もかけてしまった。


「一応わたしのナイフと、ペアみたいなものになったから、使いかただけ気をつけてね。あ、使いかたの魔力調節も教えておくね」


 半泣きで喜んでくれたため、取り扱いが聴いてくれてるか少し不安はあるけれど、スズネはそーっと鞘からだして、外の光にあてている。

 ナイフの刃が、光を反射している。


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