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妖精ハーブティー

 ヒイロとアマツキは、なんだか楽しそうでよかった。

 でも、スズネやミレイは落ち着かないらしい。

 メディは、いつも通りだ。


「あの……手伝いします」

「いいですよ。平気です」

「でも……」

「じゃん! できました」


 妖精自作ハーブティーと、花の飾りつけ、生け花、フルーツタルト、飴のようなものまである。

 これは、あれだ。

 アフタヌーンティーパーティらしい。


「……お招きいただき、とても嬉しく思います」

「そんな! そんなに、ただしくしないでくださいね」

「こんなに、気合いの入ったパーティーは、なかなかないわね」


 ミレイが眺めている。

 ミレイとスズネは、手伝いをしたくてずっとそわそわしていた。

 それもそうだ。

 こんなに喜ばれるお招きなら、おしゃれくらいはしたかった。

 そう思うくらいの飾りつけだ。


「花可愛いですね」

「いいなぁ」


 アマツキとヒイロが素直にほめている。

 妖精は照れているようだ。


「もしかして、いつもこういうパーティーをしてるんですか」


 メディが当然の疑問だ。


「いいえ。天使と悪魔だもの。できるだけ、張り切ってしまいました」

「キレイな部屋ですね。いいなぁ」


 妖精サービスらしい。


「さぁどうぞ」


 ヒイロとアマツキが、遠慮なく食べるため、こちらも手を伸ばす。

 でも、これだけの量をすぐに用意できるわけはないから、おもてなし準備をいつもしているのかもしれない。


「ミレイせんぱいそれとってください」

「スズネ、そっちのお願い」


 ミレイとスズネが、とりあえず順番に、手にとっている。

 メディもなんだか楽しそうだ。


「それで、なぜわたしたちはパーティーに招かれたのですか」

「え……迷惑でしたか」

「いいえ。そんな」

「よかった」


 ハーブティーは、変わった香りがしている。

 さきほど外でコップで飲んだものとは、また違う。

 スズネをみると、うなづいている。


「わたしたち、青い花から魔法をつくりだせると聴きました。ほかに高魔力のなにかと、水の魔力も必要かもと」

「そうでしたか」

「以前にも花を探してきた悪魔がいたはずです。その悪魔からのさまざまな話しを聴いたんです」

「わたしたち、であったかはわかりません。けれど、りんやの花は引き継がれています。それに、改良もかさねています。魔力みましたか」

「はい」

「この花のエリアで、土や水の影響を受けながら、ときには持ち帰り、少しずつ変化させています」

「元になるものはあるのですか」

「それは、かなり前になりますね。ただ、花のエリアのなかでも、いくつか分かれています。原種のようなものはさらに奥地です」


 改良されているということは、それだけ、いろんな自然の影響があったのだろう。

 魔力をみるとかなり強いため、持ち帰るのに、水を充分にすれば平気だろう。


 水の妖精にもらった、結晶が保水に役に立つだろう。


「原種は、大切に保管されているのね」

「あの場所、だれが管理しているのかしら。どの妖精なのかもわからないわ」


 妖精の管理は、どれほどなのか少し疑ってしまう。


 でも、ここはヒトや悪魔はめったにこないらしい。

 この部屋も花の魔力で、トビラを開いていた。

 あの花と草ばかりのエリアに、妖精たちのトビラがいくつもあるのかもしれない。


 急に光が入ってきて、びっくりする。


「え!」


 パタンとすぐに、トビラが閉じる。


「あ、お客さまだ!」

「おかえり」

「もう一妖精なのね」


 同じような衣装の妖精がもう一妖精きた。


「お邪魔しています」

「すごい! 飾りつけ、わたしもしたかった」


 妖精は、飾りつけが好きなのだろうか。


「いなかったから」

「呼んでよね。向こうで話してたよ」

「あ、こちら天使と悪魔よ」

「え! 天使だぁ」


 アマツキがぺたぺたと、触られている。


「わたしたち青い花探してきました」

「ま、座ってよ」

「いまハーブティーだしてた」



 にぎやかになった。

 花の妖精は、変わってるみたいなことを言っていたから、構えていたけれど、こういうことだったらしい。


「ね、中央図書館ってどういうところ」

「とても広くて、キレイな司書がいます」

「そうなんだ」

「たくさんのスキルが、管理されてるから、ずっと勉強してたわ」

「えらい」

「タイトルが変なのもおおいのよ。探すのに苦労するわ」

「いいなぁ、いってみたい」

「できれば、花あるといいよね」

「花かぁ」


 やはり妖精たちは、自身のもつ魔力の近くがいいらしい。

 それから、旅の妖精の話しをしばらくしていた。

 二妖精が交代で入れてくれるハーブティーは、そのたびに違う香りがする。


 ハーブティーやフルーツのお菓子を交代で食べて、落ち着いたら改めて聴く。


「高魔力の宝石と、それに青い花、水を集めると、スキルを進化できると聴きました。なにか知ってることありませんか?」

「知ってること……なにかある」

「知ってること」

「ないかしら」

「あっ! たしかこの辺りに……」


 立ち上がると、テーブルの横に並ぶ棚をあけはじめる。

 飾り棚のようだけど、いくつか書籍も並ぶ。


「ほら……このあたり」


 なにか手にとり、テーブルに拡げる。

 少し旧そうな表紙だけど、なんだろう。


「読めない」

「妖精語だね」

「そうだわ」


 妖精が代わりに、めくって説明してくれる。


「二つのおおきな力が、ぶつかるとき、圧縮もしくは、弾けた魔力が、さらに変化する」

「変化……」

「花などの力に限らず、これらはいつも惹かれている。深化するのは、スキルだけではなく同じ魔力をもつ存在たちは、共にあう仲間となる」

「仲間……」

「転じるのはいい、わるいを繰り返し、流れる魔力となる」

「ほかは?」

「……う〜ん、ほかは新作をお待ちくださいってなってるよ」

「新?」

「この旧いのは、間のなんだと思うわ。長い巻数の間のってやつかも」

「そっか」


 どう、とこちらをみる。


「ありがとうございます。参考になります」


 ヒイロが丁寧に、お礼をいう。

 なにか決意に満ちているのは、アマツキだ。

 メディが妖精の持つ本を受け取り、眺めている。

 今回は、黒鉄に翻訳してもらわなくてよかった。

 妖精に直接たずねられた。


「深化させるときには、ほかになにか作用ありますか?」

「作用というのは」

「傷ができるとか、なにか失くなるとか」

「聴いたことはないわ。ね」

「ねぇ」

「でも、強大な力を手に入れる者は、相応の想いを託さないと」

「想いですか」


 メディが聴く。


「そう。つかんだ力は、いい悪いを通りこし、影響を及ぼす」

「妖精も悪魔も一緒よ」

「……そうですか」


 すると、妖精がメディのそばで、なにかささやく。

 わたしには、聞き取れなかった。


「ハーブティーありがとうございました」

「それから、お菓子も」

「美味しかった」


 パーティーに招待されたお礼をみんなで言うと、妖精たちが寂しそうだ。


「また来てくれますか」

「すぐに来て」


 いや、そんなに気軽に遊びにくるには、けっこう大変だ。


「う……うん」

「そうだね」


 ヒイロとアマツキは、素直に返事をしている。


「もう帰るのかぁ」


 そんなに寂しがらないでほしい。

 部屋にあるなんだかよくわからないトビラの前に来る。


「トビラを開けると、また花のエリアに戻る……はずです」

「はずって」

「たぶんです」


 けっこう曖昧らしい。

 場所が移動するのだろうか。

 順番に外にでていく。

 ヒイロが最後になる。

 きっと、それ以上寂しくないように、外には来ないことにしたらしい。

 トビラをパタンと閉じるまで、手を振っていた。


 ハーブティーの残りの香りが、まだ身体には残っている。


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