表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
116/127

未来夜の瞬き

 ミレイの探しものはなんだろう。


 ヒイロやアマツキの探しているものと、ミレイがたずねていたものは、実は違っているらしい。

 たしかに、花を探しているはずなのだけど、ミレイはまた違う見方なのだろうか。


「ミレイは、どこにいくつもりなの」

「ま、ちょっとね」

「ふ〜ん」


 何度か夜になってから、歩きつつ話すのだけど、まるで話しの先がみえてこない。

 これは、ミレイにしてはめずらしい。

 いつもなら、決まってるでしょとか、これがあるからとはっきりしているのだ。


「メディとスズネ置いてきちゃったけどよかったかしら」

「スズネは、アマツキの面倒みたいらしいし、メディはまた黒鉄と連絡とってて、すぐにいないから」


 わたしもできれば、メディの近くにいたかったけれど、ミレイが探しものがあるなら、せめて二悪魔のほうがいいはずだ。

 山の上に向かうらしいのだけど、飛ぶのではなくて歩きだ。


「疲れた?」

「ううん。でも、上からみてこようか」

「たぶん平気じゃない」


 やはり目的はあるらしい。

 ついこうしてミレイと歩くと、思い出すのは、小さい頃だ。



 ミレイも背は小さかったけれど、わたしのあとを追いかけてくるのは、しょっちゅうだった。

 まだ装備のトロピカルガンも魔改の途中であり、安定していなかった。

 そのときは、わたしが先頭になり、アイテムや魔結晶を探していたのだ。


 魔結晶は、そこの場所の魔力を吸収して育つため、川なら水、山なら土、空気に近ければ風と魔力の比重が違う。

 それでも危険はあっても思い出すのは、ミレイがくるおかげで手間も省けるし、わたしがミレイを見捨てるか、と想うことはあっても、わたしをミレイが見捨てることは絶対になかったため、クイーンはそこは安心していたらしい。


「懐かしいわ」

「山? それとも花」

「違う。ミレイと歩くことよ」

「昼間は、みんなといるわ」

「違う。こうして冒険みたいなことよ」


 ミレイが、割とのんびりいくものだから、

 わたしものんびりした気で話す。


「ネネとはよく魔結晶探したわね」

「そう。ときどきミレイがやけに難しい場所でみつけるから、登るのに苦労したり、水のなかに入ってみたりね」

「壊せばいいのにって思うのだけど」

「そのたびに周り破壊するんじゃ迷惑よ」


 そういいつつ、ミレイは笑っているため、冗談のようなものだろう。

 スズネとは、対称的にミレイはよく笑うようになった。


 それはいいのだけど、なぜか前と違うように感じている。

 メディもミレイも、変わっていくのだ。


「ネネはなにか探しているの?」

「ううん。ついてきただけ」


 ミレイは、山の頂上を目指しているわけでは、なさそうだ。

 それなら、飛べば早いのだ。

 でも、なにか見つけたいなら昼間のほうがいい気もする。


「アマツキは熱心だけど、やっぱり天使よね」

「そう思うよね」

「助けたいから、助けるとか、ヒイロに頼りきりになるよりは、覚えるとか、そういうの悪魔とは違うわ」

「でも、いてくれると嬉しい」

「そうね」

「ねえ、昼間のほうが見つけやすくない」


 ちらっとこちらをみるも、また前に向きそのまま歩いている。


「メディの光にも欠点あるのとかわかる?」

「メディの話し。光にあるのは、やっぱり強い魔力が必要とか、調節が難しいとか」

「惜しいわ。もう少し」

「う〜ん、それじゃ明るさ」

「まぁそれね」


 言いたいことはわかってきた。


「それで夜ね」


 周りをみると、暗いものの空からの明るさで、そこまでは濃くない。

 それでも足元や頭の側には気をつけないと、ぶつけてしまう。

 だいぶ進んだかとは思うけれど、まだ先にいくらしい。

 わたしが足をとめる。


「休む?」

「ううん。でも、そういえばここまで歩くのも久しぶりかも」

「羽があると飛ぶから」

「空からの景色わたしは好きよ」

「でも、もう少しね」


 少し進むと、少し木が開けてきた。

 先の上の部分をみると、明るい部分もみえる。

 汗ばむくらいの頃に、木が少なくなり広場のようになる部分についた。

 ここらしい。


「ここになにがあるの?」

「ネネはあまりイベント時期に、眺めたことはないのね」


 なんとなく小さい頃、みた記憶にたどりつく。


「そっか……もしかして」

「この時期なのよ」


 広場のようになる部分で、ミレイが適当に腰かけるため、同じようにわたしも座る。

 しばらくは観えていなかったけれど、眼が慣れてきた頃、淡く光るものが観えてくる。


「魔力夜景だわ!」


 山の高い部分にいるために、地表ふきんから淡く立ち上る魔力の浮きがよくみえる。


「魔力反射とも反魔力とも、魔界トビラの路ともいわれたりするわね」


 しばらく見入ってしまう。


「これアマツキにもみせたかったな」

「魔力ダウンしてるからね」



 原因はよくわかっていないらしい。

 開戦から何年というイベントの起こる時期になると、地表ふきんから魔力が上に上にと浮き上がり、天空にそれが散ってゆくのだという。


「浮き上がった魔力は、異界にいくのかしら」

「ファルティに聴いてみるのもいいかもね」


 いつも寝てばかりいるドラゴンの姿を想い出してみる。

 悪魔界にいると忘れてしまいそうになるけれど、ヒトも妖精も天使も回収されて最期は魔力として、異界にいく。

 それぞれに違う異界の見張りであるドラゴンに、遺った総てを渡して次を待つ。

 そうして総てのものが、また転生(よみがえ)られる。


「最近逢ってないわ」

「わたしも」


 ミレイがくすくす笑っている。

 わたしが忘れていたのに、ミレイが覚えていたのだから、ミレイは何度もこの季節に観ているのだろう。


「ありがとう。ついてきてよかったわ」

「あら、これなにかしら」


 ミレイが足元をみるため、わたしもみる。

 魔力に反応して、青い花の花びらがいくつか落ちている。


「これ妖精のかな」

「でも、花びらだけよ」


 ほかに周りをみても、山にある花はいくつもみつけられても、この花は見当たらない。


「持ってかえりましょ」

「持ち歩いているとか?」

「それか、ここの景色をみにきていたとかかしら」


 まだ魔力夜景は、続いている。

 どちらにせよ、発見できてよかった。

 上手く探して歩けば、もっとみつかるのかもしれない。



 今度は、わたしが先頭に歩いていく。


「ヒイロやアマツキに言ったら喜ばれるかしら」

「ついていくっていう話しになったんじゃない」

「……それもそうかも」


 山から戻る道は、案外らくそうだ。

 魔力夜景の灯りがあるし、さきほどよりもここの辺りの景色にも慣れてきた。

 妖精たちも高い場所に魔力夜景を観にきたりするのかもしれない。


 これではルルファイスが苦労するわけだ。

 ルルファイスは、花の妖精をみつけるのに数年かかっていたらしい。

 ルルファイスの手記は、だいぶ長いものだった。

 わたしたちはたどるだけだから、まだみつけやすい、はずだ。


「足元気をつけて」

「帰りは飛んでいく?」

「……ううん。少しゆっくりいきましょ。まだもう少しだけど景色を観ていたいわ」


 ミレイがゆっくりできるのは、いいことだ。

 最近ミレイもいそがしくしていたし、図書館でも、地下室でもしばらく、活躍していた。

 ときどき、ふと山のなかにも魔力の浮きがみえる。

 土の魔力は、地面の近くがおおいため、重いらしいのだけど、それでも魔力が浮いてくるのだから、不思議だ。


 だいぶ下ってきた。


「つかれたでしょ」

「平気よ。返ってここの景色ならメディにもみせたかったわね」

「うん」


 メディと観たい景色は、いくらでもある。

 だけど、この景色は特別だと思わせるくらいには、魅力的だ。



 下りてきて宿泊施設に戻ると、ここからは魔力夜景はみられない。


「スズネ、アマツキは起きてる?」

「起きてますよ。少しは回復してきました」

「悪いわね」

「……どこかいってきたんですか?」

「夜景みてきたの」

「え、いいなぁ」

「そうよね」

「メディせんぱいは?」

「メディはいないの」

「黒鉄が飛びまわっていたから、せんぱいかと思った」


 また仕事を集めてきたのだろうか。

 そういえば、部屋に置かれた仕事の資料は、完全に無視してしまった。

 夜中にかけてやろう。


「ヒイロも今度みにいきましょう」

「アマツキが回復して元気なときにね」

「今夜はちょうどよかったのよ。イベントまでもう少しあるから、また観られるかも」

「ミレイって不思議ね」

「えっそう?」

「未来に頼るのではなくて、なんか漂う感じ」

「いま観られるものは、いまだもの」

「じゃ未来のは?」

「未来にかけてみられたら、それはいまよ」

「……一緒にいきたかったかも」

「ヒイロ今度ね」


 わたしがアマツキの隣にいる、ヒイロのところにいき、少しなでてあげる。


「次はみんなで」

「わかったわ」


 そう言いつつ、ミレイはまた未来を視ているのだろう。


「あ、メディ」

「どこにいってたの?」

「魔力夜景をみてたわ」

「……そっか。もう時期なんだね」

「それはなんですか」

「あ、あぁ山でみつけたの」

「分けてもらってもいいですか?」

「ええ」


 スズネに渡すと、メディとスズネがさっそくビンや布を取り出して作業している。


「スズネもメディも覚えたの?」

「シスターに教わったよ」


 持ち帰った花びらを少しは加工して、残りはビンに分けた。


「アマツキのおかげよ」

「もう少しですね」

「ルルファイスの手記よりは、かなり短いわ」


 ミレイが、近くの椅子に座る。

 みんなこの部屋に集まってしまった。


 アマツキがまだ、くらくらするというので、その場でさきほど観てきた山と夜景の様子を話している。

 ミレイが話すと、わたしが話すよりずっと詳細に景色がわかるようだ。

 おそらく、ミレイは話すためにもじっくりみてきたのだろう。


「ミレイ今度、もっと話し聴かせてよ」

「ネネのお話しなら、たくさんあるわよ」

「それもいいけど、ミレイの話しは?」

「わたしのは……少し困る部分もあるわね。ふぅ、飲みものもらってくるわね」


 ミレイが近くの売店に向かうようだ。


「ミレイの眼って、ときどきなんであんなに深く沈むような感じなんだろう」

「未来視って、選ぶことなんだってミレイは言ってたわ」

「未来?」

「視てきた総てをミレイはいまも選んでるの」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ