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花の香り

 ヒイロの熱はなかなか下がらなかった。


 あのあと、スズネが先に看てくれて、シスターもきてくれた。

 ヒイロは移動して広い部屋になり、ようやくアマツキもヒイロの手から放れた。

 アマツキが目覚めてから、一時間ほどしてから、ヒイロが目を覚ました。


「あれ、ここは」

「部屋移動したの。ヒイロ熱あるでしょ」

「熱……そうね。アマツキは」

「いるよ」

「そう」


 やはりボーッとしているようだ。


「熱いつからかは、わかる」

「昨日夜、アマツキを起こしている少し前くらいには、あったかも」

「そっか。ここまでの疲れと、少し寝不足があるんじゃないかってシスターが言ってるわ」

「そう。平気よね」

「少し休んで」

「それより、アマツキのスキルをみんなに見せるんでしょ」

「それは、もう少しして……」

「やだ。これからしましょ」

「やだって……」

「わたしが頑張るんじゃないもの。アマツキがするんでしょ」

「たしかに……だけど」


 ヒイロが後ろをみるため、そちらをみる。

 ミレイとスズネがこちらをみていて、メディはシスターと話している。

 たぶん子どもたちやヒイロの話しだろう。

 ミレイは困った表情で、スズネは心配そうだ。


「ネネ、準備してもいいんじゃない?」

「ミレイそう思うの」

「アマツキの魔力が安定するのに、時間もかかるわ。いますぐにでられないなら、アマツキの修行にもいいわ」

「それもいいのかな」


 アマツキをみると、気合いを入れている。


「ヒイロが熱の間に、上手くできるようにする」

「それもどうかとは思うけど」


 ヒイロは、ぐったりしながらアマツキをみている。

 それじゃ準備してみよう。

 アマツキの天使ノートと一緒にあった魔力の布を改めて拡げる。

 その上に、ノートをのせる。


「これは」

「天使ノートにかぶせたり、敷いたりして使うみたい」

「そうなんだ」


 アマツキがその前にくると、さっそく集中している。

 魔力の布は、天使ノートと一緒に使うものだ。


「天使ノートのは、しっかり読めたの。契約のこととか、書いてあったと思うんだけど」

「書いてあったよ。でも、よく思い出せないんだよね」

「契約のショックが残ってるのね」

「いつくらいまでかな」

「個体差あるらしいわ」

「そうなのミレイ」

「黒鉄がいうには、一年くらいボーッとしていて、急に思いだしたりとか」

「長いわね」

「瞬間五秒の悪魔もいたわ」

「短いわね」

「そういうこと」


 個体差があり過ぎるらしい。

 一年程度かかるといわれれば、待つしかないけれど、まさか秒で記憶が戻るのもいるとは。

 アマツキはまだ数時間ではあるけど、戻らないため、時間がかかるのかもしれない。


 ヒイロが無理やりベットに座りつつ、スズネに手を持ってもらっている。

 顔が赤い。

 ヒイロもスキルをみていたいらしい。


「はじめ慣れないうちは、天使ノートをもったり触ったりしながら、使うといいわ。暗記できるとあとは、なくても使えるわ」

「わかった」


 アマツキが手を触れると、天使ノートと会話しているような感じにみえる。

 ふとみると、ヒイロのバックの中身が淡く光る。


「なにか光ってない」


 慌ててバックの中身をだすと、少し前にシスターとつくった花のエキスの余りのビンがある。


「あれ、この花」

「うん。アマツキのスキルに反応してるわ」


 実験に使わなかった残りの花は、まだシスターに預けてある。


「シスターこれって」

「ええ! 天使スキルが花を探しています」

「アマツキのは、それじゃ探索?」


 すると、アマツキは首をひねる。


「ううん、違うと思うよ」

「それじゃ」

「いや、一部には適してるけどね」

「どういうの?」

「分析……? それと、灯りもある」

「わからないわ」


 アマツキが魔力を込めているのだろう。

 花のエキスが、色を変化させている。


「なんか、これどうするの?」


 ヒイロがビンをみながら話す。


「そのままでもいいはず。加工もある」

「クラフトもあるの?」

「違う……のかな。上手く説明が……」


 詳しくはわからないらしい。

 けれど、ヒイロがビンの蓋をあけると香りが拡がる。


「いい香りね」

「変わった感じ。あまり知らないわ」

「シスターの持っているのも含めて、そのビンとあと香りが、連れていってくれるって」

「花の妖精?」

「灯りと加工して、それに少し魔力同士の結びつきとかもある」

「もしかしたらアマツキのは、魔力や素材、種類の加工なのかも」


 ミレイがビンをみつつ、そう納得している。


「魔力の種類を加工するの?」

「自由に総てじゃなくても、適している魔力を別のに置き換える、みたいなことかしら」

「ミレイのは、近いのかも……上手くいえない」


 シスターがなにか興奮している様子だ。

 なにかシスターの実験にも利用できるのだろうか。


「ヒイロ……どう?」

「いい香りね」

「悪魔ノートみてみて」


 ヒイロがバックから、ノートを取り出す。


「あっ!」

「どうしたの?」

「わたしのノートに、香りの特徴みたいなのが載ってるわ」

「よかった。まだ魔力小さいけど、花の分析した内容もわかるかも」

「なかなか便利ね」

「もう少し訓練すれば、もっと加工できるって……ことかも」

「天使のスキルは不思議ね」

「アヤネもよくわからないこと言ってたわ」


 ふとみると、ヒイロがベットに倒れている。


「ヒイロどうしたの!?」

「ううん。安心した。アマツキスキルが使えるわね」


 熱がまだあるからだろう。

 ぼんやりしているけれど、アマツキのスキルをみて、ほっとしたらしい。

 ヒイロは、ヒイロで心配があったみたいね。


「少し休んで。これなら花をたどれるかもしれないわ」


 シスターが、ヒイロにいくつか飲むものや冷やせるものを持ってきてくれる。

 まだ、ヒイロが置いたビンのエキスは淡く光る。

 メディの光やわたしの加工もヒントに使っているらしい。

 あまりいると部屋が狭くなるからと、一度部屋をでる。

 スズネとシスターが、ヒイロを看てくれるみたいだ。



 メディとわたしが先にでたため、歩きながら話す。

 このヒイロのいる部屋は、療養室に使っているため、わたしたちが泊まった部屋とは別だ。

 ヒイロの様子もアマツキのもわかったため、部屋で落ちつくのでもよさそうだ。


「アマツキのよかったわ。ヒイロのは子どもたちと同じ熱かしら」

「おそらくね。でも、シスターやスズネが看てる範囲では、ひどくはなさそうだよ」

「しばらくヒイロは、慣れないことしていたから」

「そうだね」


 けれど、ヒイロが頑張り過ぎてハシャぐのは、もういつものことで、アマツキが熱心に自分磨きをしているのももういつものことだ。


「ヒイロもアマツキも、だんだんとたくましくなってきてて、嬉しいかも」

「熱だしてるけどね」

「そうだけど。でも、アマツキが越えるきっかけをつくったのは、ちゃんとヒイロのおかげよ。それが嬉しいの」



 部屋の前につく。

 入っていくと、荷物が散らばっている。

 今朝、アマツキの様子をみにいく前にも、ここの子どもたちが体調を崩していてと話しがきてから、慌ててみんなで子どもたちに聴いてまわっていたのだ。


「今朝のままね」

「あぁ散らかってるね」

「片付けないと」

「ネネ」

「メディも手伝って」

「それもだけど、ネネもよく気づかって、しっかりしてきてると想うよ」

「なにそれ……」


 メディに突然言われて照れてしまう。


「前は、まぁ慌て者のときもあったけど」

「そ……そうかな。あんま変わらないよ」


 そう言って、また片付けをする。

 けれど、照れていたのは一瞬で、少しずつ気持ちが落ちつくと別の気分になる。


 そして、これまでの何回かの気持ちの揺れがこれなんだと思った。


 メディに優しくされると、不安なんだ。

 それが、わかった。


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