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名前がつかないアマツキのスキル

「シスターこれって……」


 話しかけようと探すも、姿がみえない。


「シスターなら、通路にいったわよ」

「誰かに呼ばれたのかな」


 勝手に集めたり、並べ替えたりしていいのだろうか。


「ここのって、分類も並びの法則もめちゃくちゃだわ」


 ヒイロが感想を言っている。


「そうみたい。並びは替えて平気かしら」

「平気じゃない?」

「なにかその悪魔にとっての法則とか……」

「とりあえず気になるところのだけ、手にとってあとは、また聴きましょう」


 ミレイは、秘書だ。


「メモしてあとでまとめてでも」


 メディは後回しらしい。

 ミレイがついているから、安心しているのだろうか。

 スズネとメディは、さっそくなにか悪魔ノートに書いたり、いくつか出して移動している。


 わたしは、どの辺りだろう。


 図書館ほどは広くないけれど、雑誌や写真集、冊子もあり、タイトルが掠れているものもある。

 シスターが独自に集めたのなら、もしかして珍しいものも含まれているのかもしれない。


「天使……って言っても、神話のはあっても、進化とか直接じゃないのかな」


 ヒイロがときどき梯子を動かしている。

 背が足りないらしい。


 メディとすれ違い、スズネとすれ違う。

 それぞれで違うものを探しているらしい。

 スズネとすれ違い、メディとすれ違う。


 いや、わたしだけなのかしら。

 なかなかこれだ、とみつからない。


「ね、ねぇ見つけるの早くない」

「手あたり次第です」

「おもしろそうだから……」

「なんかスキルっぽい」


 とにかくなんでもらしい。

 通常手にとるのは、新魔導書なのだけど、悪魔の魔導書と天使の魔導書では、違う気がする。

 前にアヤネにたずねたときにも、天使って天使なのよね、と言われた気がする。


「とりあえず、この二冊」


 新魔導書のなかでも、旧いものかもしれないのと、花のスキルらしいものを持って行くことにする。


「ここのは、なんで入れ替わってないのかしらね」


 悪魔の新魔導書は、黒鉄が定期的に新しいのを持ってくるため、 "新" 魔導書となる。

 旧いのは回収されるか、クイーンに送り返すため、その場所にあるものは、新しいのだ。

 けれど、いまみる限り載っているスキルが、旧い気がするのだ。


「黒鉄ここに来ないのかしら」

「それか、隠してるかでしょ」


 ミレイが指摘する。


「隠すの?」

「ほら、禁書にされる前のスキルだって載ってるわけじゃない。それなら、禁書扱いになって読めなくなるより、それをとって置くのよ」

「う〜ん。わたしは中央図書館すぐに入れるからなぁ」

「わたしの未来視だって、準指定なんだから、それに載ってるけど、次号にはもう載らないわよ」

「そうなの!?」

「レベルアップし過ぎちゃったわ!」


 えへって顔をしている。

 メディといいミレイといい、わたしのいない合間に、どんどん新しいことをしていたらしい。

 少し悔しい。


「ナイフしてようかしら……」

「探しものでしょ」

「わかってるけど」


 ヒイロがなにか見つけたらしく、こちらに持ってくる。


「これアマツキにみせてくるね!」

「わかった。でも、どこにいるかしら」

「たぶん、わかるわ」


 持って走っていってしまう。

 悪魔子どもは、元気らしい。


「あまり危険なやつじゃないといいけど」


 ヒイロがみつけるのは、けっこうハードはものもあるから、アマツキが驚くときもあるのだと思う。


「アマツキなら、たぶん平気よ」


 ミレイが気軽に言うけれど、ミレイはさらに危険だから、あまり信用できない。

 スズネが、いくつかの本をテーブルに並べて、そのあと聴いてくる。


「それで、せんぱいはなにかみつけましたか」

「あぁそれね」


 分類のせいか、それとも可笑しなタイトルが多いからか、なかなかアマツキのスキルに役に立ちそうなものがわからない。

 そういえば、シスターがさっきアヤネの手紙を渡してくれた。

 読んでみよう。



 悪魔ネネ 宛


 少しお時間が経ってしまいましたね。

 変わらずにみんな元気にしていますでしょうか。


 ネネが天使スキルについて、考えてくれていると天使の報せで聴きました。

 考えてみれば、ネネやアマツキといるときに、もっと詳しく話せればよかったですね。


 わたしもうっかりです。


 天使スキルは、悪魔からみれば特殊におもうかもしれません。

 初期の覚えかたが、本当ならわたしが教えてあげたいですが、なかなか悪魔界にはいくことが出来ません。

 そのため、こちらにごく簡単に書いてみます。

 もし、よくわからなくなったら、黒鉄鳥、灰鐘鳥に伝えておいてください。


 連絡なかなか取れずに、ごめんなさい。

 いまは天使界は騒がしいです。



 天使スキルの覚えがき。

 ……

 ……



 担当の灰鐘。

 悪魔ネネに上手くね。


 天使アヤネ。



「……だれ!?」

「え、どうしたの、ネネ」

「あ、ええ、ギャルアヤネからなんだけど、これ本当に誰なのよってなるのよね」

「ギャルピースしてたわよね」

「ホント文章が天使変えるわ。ていうか早くに読めばよかった」

「なにか」

「天使スキルに必要なのわかったわ」

「手紙にあったの?」

「それが……」


 ミレイが近くにくるため、二枚めとなっている覚えがきの部分をみせる。


「読めない」

「天使語になっているの。上の部分は悪魔にも読める言葉なんだけど、スキルに関しては、悪魔の言葉には変換できなかったのかしら」

「アマツキ!」

「そうね! アマツキなら読めるかも」


 ヒイロがアマツキを探しにいったのだから、戻ってくるだろう。

 スズネとメディにも話すと、いま集めた本を読みながら、待ってみることにした。


 少しすると、シスターがきた。


「なにかありましたか」

「ここの分類はどうなってるの?」

「あ……分類……そういうのもありますね」


 あまり気にしていないらしい。


「勝手に動かすと、悪いかしら」

「いえ! ぜひわかりやすく」

「そうね」

「それと、受け取った手紙に参考になりそうなのがありました」

「よかった」

「アマツキはみましたか?」

「天使の子ですよね。なにか調べている感じでしたので、声はかけなかったです」

「悪魔のヒイロは……」

「一緒にいました」

「そうですか」


 ヒイロがみつけたのなら、時間が経てば、連れてくるだろう。

 シスターが、なにかを抱えている。


「これをよければ」


 テーブルに並べるため、そちらに集まる。


「花……の資料?」


 図鑑や出来上がっているものではなくて、手作りらしい。


「ここで研究みたいなことをしていて、造っています」

「すごいですね」


 メディが少し資料をみていると、本にはなっていない細かい解説や使いかたもある。


「この資料を探してくれたんですね」


 資料室は別にあるらしい。


「なにかあるかと」

「見させてもらいます」


 スズネとミレイにも渡して、さきほどの本棚からの本と並べつつ、読みはじめる。

 天使や悪魔といったことは気にせずに、ここの地域の植生や毒、薬になりそうなもの、魔力の付加に役に立つものなど、細かい。


「資料はこんなに細かいのに、本棚の分類は気にしないのね」


 ミレイが指摘する。


「書くのは好きなんです」


 秘書のミレイは気になるようだ。


 ほかには、といってテーブルある実験器具も触る。


「この試薬に浸けると、色が変わります」

「それは」

「こちらのは、魔力を分析します」

「すごい! 全部自分で造ってるの?」

「ときどきほかの地域のシスターに聴いたりはしますが、基本はわたしが作成します」

「シスターってそんな役割もあるのね」

「シスターは、なんでもなんです」

「なんでも?」

「家事や裁縫から、毒から薬、手当てや護衛まで」

「……それシスターじゃないわよ」

「うん、たぶんなにか違う」

「え……そんな……」

「それはいいや。とにかく青い花を分析できそうね」

「ええ、お役に立ちそうなら」


 スズネがバックから、いろいろものを出している。


「これとか、これとかもっとよくなりませんか?」

「それは、傷薬ですね」

「量も減ってしまったし、もう少し効き目が」

「それでしたら、この辺りかな」


 どうやらここのシスターと、スズネは気があいそうだ。

 ものを造るというのでは、わたしも合うけれど、傷や毒は少し専門から離れ過ぎている。

 スズネとシスターが話し込みはじめてしまい、ミレイとわたしは少し置いていかれてしまう。

 メディは、なにか確認作業だ。

 また仕事をしている。


 パタパタと音がしたあと、ヒイロが駆けてきた。


「役に立ったような、役に立たなかったような」

「さっきの本のこと?」

「天使の言葉っぽいのがあったけれど、なんだろ。天使のことわざみたいらしいわ」

「アマツキは?」

「あれ、もう来るとおもうけど」


 そういうと、アマツキの足音が聴こえてきた。


「はやいよ」

「アマツキがおそいよ」


 ふぅとアマツキが息を深くしている。

 ヒイロとここまで走ってきたようだ。

 元気が余っている。


「アマツキは、少しは気分転換できた」

「うん……いちおう」


 なにか探しものをしていると、シスターが話していた。

 なんだろう。


 シスターをみて、少しびくっとなっている。


「それで、スキルのことだけど、以前ヒイロの試していたのよね」

「そう」

「アヤネが教えてくれたの。アマツキのスキル、少しここでやってみましょうよ」

「え、ヒイロとのときのは、もうよく覚えていないよ」

「平気」

「アヤネ……なにかお知らせあったの」

「手紙が来てたわ」

「なにかあった?」

「みんな元気してるといいなって」

「そう」


 アマツキの期待していた話しでは、なかっただろうか。

 やや落ち込んでみえる。


「天使のスキルは選択と限定、それに魔力の浸りかたらしいわよ」

「よくわかんないや」

「上手くできるか、わからないけれど、覚える儀式があるの」


 アマツキがちらっとヒイロをみている。

 ヒイロは、なぜか微笑してアマツキに近づく。

 アマツキの頭をポンとしている。


「まだ怖い?」

「子ども扱いしないで」

「怖くても平気よ。そばにいるわ」

「女の子扱いしないで」

「アマツキ可愛いよね」

「可愛い子扱いしないで」

「困ったわ。ゾクゾクしちゃう」


 悪魔だわ。

 ヒイロもこうしてみると、悪魔だとわかる。

 アマツキも慣れた様子では、あるけれど、できれば慣れて欲しくはない。


「からかうなら、メディのとこいってよ」

「違うわ。スキル身につけるんでしょ」


 まだ悩んでいるのは、怖いよりというより不安なのだろうか。


「少し考えてもいいわ」

「上手くいくかな」

「やってみようよ」


 ヒイロがアマツキの手を取っている。


「もし、覚えるならメディのようなのがいい」

「光?」

「そうかも。役に立ちたいから」


 固有スキルのことなのかもしれない。

 思い当たる。


「アマツキの固有スキルが、わからないから不安なの?」

「……そうなのかな。そうなのかも」


 ようやく少しわかってきた。

 固有スキルは、その悪魔の特別なスキルであるため、その代わりに別のものを覚え直すことができない。

 基礎スキルや模倣、別のスキルで補助はできても、わたしが光になれないように、メディはクラフトの才能を受け取れない。

 アマツキは、それが心配らしい。


「平気よ平気」

「ヒイロなんで」

「魅了だって魅了するだけじゃないし、光だって、明るさだけじゃないじゃない。アマツキの固有が始めどんなのでも、アマツキが好みに、合うようになるわ」

「好み。ぼくの希望は、やってみなければ、やっぱりわからないか」


 アマツキとヒイロをみていると、ミレイとの小さい頃を思い出す。

 わたしも未来視のミレイが、なにかしらなんでも持っている気がしてしまい、物を造る以外にも、なにか欲しかった。


 いまだってそうかもしれない。


 けれど、スズネやメディの様子をみていくうちに、少しずつ固有スキルのわたしだけも、なんとか受けとめられてきた気がする。


「そうよ。もしだめなら、わたしの魅了スキルもなんか変化させてみるわ」

「ヒイロって、とにかく前進だよね」

「少し違うのよね」

「違うの?」


 ヒイロが首を(かたむ)けたあと、戻したりしている。


「ルルファイスが言うには、吸収しすぎると、放ちたくなる性格らしいわ」

「つまりは」

「再構築?」

「分析してからのほうが安全じゃない」

「組み立てるほうが好きなのかな」

「勉強ニガテなのは、それなの?」

「ニガテっていうか、とにかくまずは、殴る?」

「よく考えてからにしてね」

「アマツキは、引き過ぎなのよ」

「ヒイロに、殴られたくはないからね」


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