表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
105/127

ミレイが元気すぎる

 朝食をしたり、でかける準備をしているとミレイの黒鉄鳥が、こちらに報せにきた。

 朝も食べたし準備もしたし、回復士もこれなら平気です、と言ってくれたらしい。

 すっかりお世話になってしまった。

 急ぎで探した宿泊施設なのに、ずいぶんと快適だった。

 こちらの準備ができ次第、ミレイと合流することになる。


 ほかのメンバーは、ゆっくり休めていたようだ。

 わたしは、少し作業が長かった。

 そのため、若干眠気が残っている気がする。


 スズネは朝すっきりしているらしく、朝食の準備から片付け、ヒイロとアマツキたちのお手伝いと、テキパキしている。

 メディが合間をみつけては、仕事をしようとしているも、でるんだからと、スズネに怒られているところだ。


「はい、せんぱいおわりにしましょ! もう迎えにいきますよ」

「いや、ミレイもゆっくりしてるだろうし」

「いつまでも仕事してると、取り憑かれてるって言いますよ!?」

「悪魔の場合は、堕落くらいのほうがいいのかな」

「なんで、そこで悩むですか」

「黒鉄が仕事持ってくるからなぁ」

「ちょっとその黒鉄、いまから言いましょうか」

「やめておいてあげて」


 後輩悪魔のスズネから、もはや指示を出されているのがメディだ。

 これじゃ、もう後輩悪魔って呼べない。


「ちょっとネネせんぱい、いま作業してませんでしたか?」

「え……いや、うん。してないわ」

「でかけるって言ってるんですよね」

「え……と……」


 こちらに来た。


「居心地いいのは、よくわかります。でも、水の洞窟からのアクシデントで」

「わかってるわよ」


 サッと作業道具を隠して、バックも見えないようにする。


「作業するのは、また別の落ち着いてからでいいですよね」

「うんうん、そうよね」

「ヒイロとアマツキを習ってください。いまからでかけるぞって、気合い入ってますよ」

「ヒイロは、よく寝られたの?」

「うん……なんかメディの夢みてた」

「そうなの」


 スズネが、今度はメディのところにいき仕事の片付けを手伝っている。

 わたしは、免れたらしい。


「ネネ」

「なに?」

「スズネ、ハイテンションだね」

「ミレイが回復して、気分が上がってるのよ」

「そうなのかな」


 メディとスズネが、なんだか片付けにかかっているため、その間に出していた作業道具やバックの中身を仕方なく、仕舞いこむ。

 清掃は、しなくてもいいらしいけれど、スズネとメディはまだかかりそうだし、ヒイロに話す。


「まだ時間あるし、少し掃除してからにしましょ」

「そうね」


 アマツキがどこからか持ってきた、掃除用具を分けて、ヒイロとわたしで受け取る。

 テーブルを拭いたりベットのシーツを畳んだり、キッチンをキレイにする。


 メディは、仕事中ずっとああいう感じらしい。


 ミレイが苦労しているのが、わかってきた。

 いまはいないけれど、黒鉄が運んでくる仕事をこなしていき連絡をすませて、作業を指示してと、放っておくと一日そうなるらしい。


「よくメディは、休みとれたわ」

「あれって休みなの?」

「仕事しにきてるようにしか」


 たしかに、ヒイロとアマツキのほうが正しいかもしれない。

 移動先でも仕事がついてくるため、休みで仕事が常態化している。

 あれでは、ミレイが連絡を取らないという日があるというのは、本当なのだろう。

 連絡さえ来なければ、仕事しないかもしれない。

 いまはスズネにお任せしてみよう。


「キッチンはできたわ」

「ベットいいよ」

「あとはあの辺だけ……」


 メディの周りのあふれていたものが、スズネの手を借りつつ、だんだんと上手く片付いていく。


「スズネって秘書だったんだね」

「秘書はミレイよね」

「ミレイはよほど上手くできるのね」


 スズネが大方の荷物を玄関付近に集める。


「さ、いきますよ!」


 メディがなんだか申し訳なさそうにしていて、みてると楽しい。


「今度また、スズネにお任せするわね」

「……なんのことですか」


 スズネは、夢中でしていて気づいていなかったようだ。


 キレイになった部屋に、お礼を言ってから通路にでた。

 スズネとヒイロが先頭に進み、ミレイの療養室まできた。

 それぞれ荷物を抱えている。


「ミレイ来たわよ」


 療養室の扉をノックしてから、開けて入る。


「まって、まだ入っちゃだめ」

「え、なにが」

「いいから、でて!」


 ヒイロは、平気そうに入っていくけれど、明らかにミレイが着替え中だ。


「うふふ……みんな入っていいわよ」

「ミレイ! いいわけないわよ」


 ぱっとみた感じだと、シャワーをしてきたらしい。

 裸ではなかったのが、救いだ。

 ヒイロだけ置いて、一度通路に戻った。

 先にノックすればよかった。


 いや、ノックはしたけれど、返事が来なかった。


「もう、なんで返事しないのよ」

「ネネだけかと想ったのよ」

「ああ、そういうこと」


 ノックをしたのが、わたしだけかと思ったらしい。

 そういえば、みんなで来るとは言ってなかったかもしれない。

 ヒイロは、平気そうになかに入って話している。


「ネネは入ってくればいいのに」

「男の子もいるでしょ」

「そんなに警戒しなくても」

「ミレイは無防備なのよ」


 メディとアマツキは、仕方なく荷物を降ろして、その場で落ち着いている。


「せんぱいは、よくハプニングしますね」

「わたしじゃなくて、ミレイよ」

「メディもアマツキも、ここにいるし」

「メディが言ったのよ。薄着とか下着とかで気になるって」

「たしかに言ったね」


 スズネもよく薄着でいるため、あまりそこは信用できない。

 特にアマツキに対して、裸に近い格好で慣れてしまっては、堕落天使のきっかけになってしまわないか心配だ。


 大抵の男子の場合、女の子に手をだしたことがはじめにあり、そこから転がるように堕落していくのだと、認識している。

 少なくともわたしを追いかけてきていた悪魔たちは、そういう悪魔たちだった。


「スズネもそこはちゃんとしてね」

「ネネせんぱいは、もっと色気たっぷりでもいいと思いますよ」


 ホントにスズネは、わたしにどこを目指せというのだろう。

 もしや、前に話していたプリンセスアイドルを本気で狙わせようとしているのではないか。


「アイドルにはならないわよ」

「そういう悪魔っていつの間にか、ノリノリなんですよね」

「違うから!」


 扉が開く。


「ネネ、アイドル目指す気になったの」

「違うから」


 ヒイロがくすくす笑っている。


「入っていいみたい」


 中に入ると、ミレイが小物をバックにしまっている。

 着替えも済んで、濡れている髪を少し乾かしているのだろう。


「よく寝られたの?」

「ええ、いい(みらい)をみたわ」

「そう……よかった」

「それで、アイドルになるためには歌も必要ね」

「ミレイまで」

「ヒイロとアマツキが交代でくるものだから、すっかり話してたわ」


 療養期間中、暇になっていたかと思ったら、それなりに忙しかったらしい。

 シャワーを浴びれるようになったのもよかった。


「魔力は?」

「回復したわ。まだ満杯ではないんだけど、八割ほどにはなったかもね」

「回復士のかたは」

「あちら。でもまた別の悪魔がきたみたいだわ」


 ミレイの指した方向から、少し痛そうな声が聴こえてくる。

 怪我をした悪魔だろうか。


「お礼しようと思ったのだけど」

「しっかり伝えてあるから、平気よ」


 ミレイが言うからには、しっかりとハグくらいはしてそうだ。

 それぞれで少しだけ、ミレイの様子をみたあと、でかけることにする。


 奥の部屋に一声かけたけれど、短い返事だけきた。

 いまはいそがしいのだろう。

 ビルをでて、ミレイが腕を上げて伸びをしている。


「よかったわ」

「ふう〜〜!! なんかひさびさね。外気持ちいい!!」

「ミレイは部屋のなかだったからね」

「もう暴れたいくらい」

「それはやめて」

「もう回復したからいいじゃない」

「ミレイが休んでる間、心配だったんだから」

「心配してくれたの?」


 何度か伝えた気がするため、たぶん冗談なんだろう。


「冗談いえるなら、だいぶ増しね」

「花の妖精よね」

「そう」


 たしか中央図書館で、小さい花をもらった。

 その花が導いてくれるかは、わからない。

 けれど、水の洞窟のように、なにかヒントをくれるだろう。


「でも、花の場所ってどこなの?」


 アマツキがたずねている。

 水の妖精も言っていたけれど、花たちは隠れるのが上手いらしい。


「移動して暮らしてるらしいから、詳しい悪魔とか聴いてまわらないとね」

「まずは、どこにいくべきかよね」


 療養していたすぐ後ろにある建物から、でた瞬間から、もう行き先がわからないでいる。


「なんとかなるわ」

「なんとかなるかな」


 悪魔世界には便利な言葉がおおくある。


「悪魔は導かれる者」

「喚ばれる者」

「裁く者」


 どれも本当でどれも嘘なのかもしれない。


「とりあえず、水の妖精が話してくれたことを参考にしましょ」

「迷う者」

「堕ちる者ともいうわね」

「うん……何者でもいいわ」


 たしか、小さい花のビンがあったと思う。

 荷物から、それをだしてもらう。


「不思議な花ね」

「枯れてなかった」


 不思議な青色をしていて、でも光で色が少し変化している。

 魔力があるからか、少し風がさわさわしている。


「もらった種はこれのなのかな」

「さぁ、種類はわからないみたいだったよね」

「水の洞窟でみた花畑すごいキレイだったね」


 居場所に繋がるなにかは、ないだろうか。

 種は、いま撒くわけにはいかないし、花もいまのところなにか変わったわけではなさそうだ。


「はじめの部分で、いまつまづいてるわね」

「ミレイそういうこと言わないで」

「とりあえず、この辺りで図書館や資料とか探してみるのはどうかしら」

「中央図書館では、あまり妖精に関しては詳しいのなかったよ」

「妖精のは、たしかに探した気がするけらど、いまは種もあるし花のでいいんじゃないかしら」

「それですね!」


 スズネが賛成したことだし、近い場所で図書館がないか探してまわることになった。

 ヒイロが図書館と聴いて、なにかそわそわしている気がする。


「図書館は、少し離れたところにある気がする」


 アマツキが自信なさそうに話す。


「知ってるの」

「探しながら、自然広場にいたら、図書館がもう少し近くにあれば、みたいなこと話してたよ」

「そっか」


 デビスマホで地図を確認すると、このビルから離れてはいるものの、街中にあるみたいだ。


「いってみましょ」


 ミレイが荷物を抱えてすぐに飛ぶ。

 みんなも続いていくけれど、ミレイの荷物は多すぎな気がする。

 先に買いものをしていたせいだろう。

 聴くとこれでも、療養しながら減らしたみたいだ。

 ミレイとアマツキ、ヒイロの案内で図書館前に降りる。


「そんなに大きくはないみたいね」

「でも、趣きはいいわ」


 ヒイロは、すっかり図書館を品定めする気のようだ。

 中央図書館では、ヒイロが一番詳しかったから、当然なのかもしれない。

 荷物が邪魔になりそうかと思ったら、入ってすぐの受付そばにロッカーがあった。

 手荷物になっているものを収めて鍵をしめる。


 カウンターの悪魔にたずねてみる。


「花や妖精に関しての書籍はどの辺りですか」

「花……妖精ですか」

「はい」

「ご利用ははじめてですか」

「そうです」

「もしタイトルやジャンルがわかるのでしたら、進んですぐにある端末で検索できます」


 左右と正面にある通路から、正面まっすぐにいくと、小さい机が並ぶ場所にタブレットの端末と魔力測定計、いまの館内の温度などか表示されている。

 そこのタブレットで、花や種について検索してみる。


「よくわからないわね」

「花の図鑑でいいのかな」

「調べてみるしかないわね」

「妖精は?」

「あまりないかも」


 妖精については、絵や詩はでてくるけれど、少し違うような気もする。


「花の種類で調べる班と、妖精や妖精の噂で調べる班にわかれましょ」


 ミレイが端末のタイトルや種類から、そう判断して、図書館に詳しいヒイロ、アマツキ、スズネの班と、わたしミレイ、メディでわけて探すことにした。

 メディは、たぶんまた途中でいなくなるのだろう。


 それぞれで散らばりつつみつけたものを運び、階段で二階にある少し広めの中央のテーブルに、拡げた。

 ヒイロとアマツキ、スズネはまだ探しているようだ。

 やっぱりメディが見当たらなくなっている。


「ネネとりあえず、みんな観る?」

「それもいいけど、時間かかるかもね」

「そしたら、あとで近場の宿泊施設探しましょ」

「しばらく調べものかしら」

「そんなのは、あとあと!」

「そうね」


 なんだかミレイがすっかり元気だ。

 ケガも治ったみたいだし、ほっとする。

 少し元気過ぎる気がするのは、資料は山積みにするし、さっそく別の端末は持ってくるし黒鉄になにか頼みごとはしているし、既に前よりテキパキしている。


 ヒイロたちがおくれて来ると、さらにテーブルは山になる。

 山の谷になっているところから、アマツキが顔をだす。


「これ、一日で終わらないよね」

「どうだか」

「ミレイって調べもの好きなのかな?」

「そうかな」

「ヒイロもなんだか素早いんだよね」

「図書館や資料みつけると、はりきるのよ」


 メディがようやく来るころには、テーブルの山は崩れそうなくらいだった。


「一応聴くけど、これゼンブみるのかな?」

「そうみたいだわ」

「仕事の山を思い出すな」

「そんなの思い出さないで」

「そっか」


 そういいつつ、メディは何冊かそこに付け足している。

 表紙だけだけど、不思議な本だ。

 ミレイとヒイロが席についたとき、スズネがえへへと笑っている。

 たぶん、これ集め過ぎたというサインだろう。


 ミレイが張り切っているのとは反対に、わたしは、スズネのナイフはかなりあとになりそうだと予感だけした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ