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スズネに造るもの

 ミレイの療養期間中、ほかメンバーで食事にして、明日には出発だという話しをしてから、それぞれで寝ることになった。

 部屋は一室でも、広くキッチンスペース以外を使えば、なんとか寝られる姿勢にはなった。


 でも、わたしは作業をしたかったため、薄く明かりをつけて、スズネのナイフ作成をまたはじめた。



 深夜作業も慣れたものだ。


 悪魔の通常の仕事のほかに、クラフトで販売したり修理を依頼されたりするため、そのときには、休みの時間を使ったりミレイと出かけた先で部屋で造ったりもする。

 私室のときには、落ち着いて深夜にじっくりしてというときもよくある。


 いまはみんな寝入っているため、リビングのテーブルに物を拡げて、手持ちの魔力ランタンで薄い灯りをつけている。

 そういえば、ミレイとでかける時は、別に部屋をとることが多かった気がする。

 ミレイが、寝るときは一悪魔のほうがいいのよ、とよく言うからだ。

 昼間はベタベタするのに、夜はそうなため、デレツンじゃないかとよく想っていた。



 スズネに造っているナイフの刃の部分は、これでいいはず。


 でも、柄の素材感と鞘を悩んでいる。

 特に鞘は重要だ。

 刃のカタチときっちりじゃないといけないし、魔力の循環を逃さないようにする。

 循環が上手くいかないと、魔力が充填できなかったり、なかの結晶を脆くしてしまうこともある。

 中に収める魔力の結晶や宝石も大切だ。


 なにからはじめようか。


 テーブルに拡げたのは、素材や器具、宝石や結晶、それに飾りの参考になりそうなものだ。

 薄い灯りに、刃だけのナイフを照らしてみる。

 昼間みたときも、いまみてもこちらはいい出来だと想う。


「うん、模様も魔力もいい感じね」


 いま造っているこのナイフは、スズネをイメージして作成している。

 切れ味もよくはなっているはずだけど、刃紋や魔力の定着のほうを重視している。


 悪魔は、長生きだ。

 妖精やドラゴンほどではなくても、できるだけ長い間使えるように工夫したい。


「柄の部分と鞘は似たデザインで、でも、過剰じゃなくしたいな」


 悪魔ノートを出すと、さっそく思いつくイメージや飾りの部分を練っていく。



 合う部分とそうじゃないもの。

 込めるものと、省かないもの。

 考えるスキルと、考えなくてもいい部分。



 いくつかスズネが、言っていたこともメモに書いておく。

 スズネのスキルは、効果を得る代わりに、自身に返ってくるものもあるらしい。

 詳しく教えてくれないのは、固有の秘密が関係しているのだろう。

 わたしのクラフトスキルにも、そういった他言しない秘密はある。

 メディの閃光にだってあるのだろう。

 ゆっくり考えるしかない。

 なにか決まった日付に渡すわけじゃない。

 夜のほうが、頭が回転することもある。


 特にこの夜は、そうらしい。


 一枚には収まらないときには、二枚め。

 二枚めから、三枚めに書いているときに、ふと薄暗くしている部屋に、影が動いた気がした。


「ネネ……」

「ヒイロ起きたの?」

「いま起きた。作業してるの」

「そうよ」


 夜のせいか、寝起きかいつもよりだいぶテンションが低いヒイロが、テーブルにきた。

 椅子に座るも、少しこちらの作業をみている。


「いつも、この時間にしてるの?」

「ううん。昼間進められたから、その続きをしようと想ってね」

「……邪魔しちゃうね」

「そんなことないわ」


 悪魔ノートに書き込みをしつつ、ヒイロと話しをする。

 小さめに会話する。


「ナイフだよね。ネネがゼンブ造ってるの?」

「そうよ。もっと前には買ってみたこともあるけど、参考にするだけって感じ」

「指輪キレイだね」

「スズネからのなの」

「うん」


 置いてある指輪をヒイロが眺める。

 そういえば、ヒイロはプレゼントは渡したのだろうか。

 スズネのことを思い出しながら、話す。


「スズネなんだか変わったの。ううん。以前と比べて明るいけど、暗いって感じなのよね」

「そうなんだ」

「仕事のことなのか、プライベートなのか。あまり話したくないみたい」

「ネネは、やっぱり話してほしい?」

「それはね」


 ヒイロの横顔をみる。

 やはり眠そうだけど、会話はするみたいだ。


「スズネは、ネネにあまり迷惑をかけたくないようにみえるわ」

「迷惑……そうなのかな」

「暗いのは、やっぱりそのことだよね」

「そうなんだと思う」


 ヒイロは、やはり周りをよくみている。

 もしかしたら、アマツキもかもしれない。

 一度孤独になると、態度が変化してそうなるのだろうか。


 柄の部分をまずは、書けた。

 飾り文字や結晶部分、リミッターの位置も確認する。

 ナイフの刃と柄には同じような文字で造る。


「これは?」

「ナイフに込める信念みたいなのかな」

「そっか」


 ヒイロが横から確かめている。

 鞘も似た絵柄にはするけれど、こちらはもっと装飾を凝りたい。

 いまはまだ、それぞれ部品がバラバラだ。

 いくつかのを組み立てたり、魔力の循環を意識して構造を練る。


 ヒイロが眠そうにしながら、また話す。


「もの創る作業いいね」

「そうかな」

「みてると、ネネが楽しそう」

「けっこう苦労してるの」

「料理中は恐かったけど」

「みてたのね」

「アマツキと、ネネ恐いねって話してた」


 そんな話しになっていたらしい。


「料理まったくできないわけじゃないのよ。でも、刃物みるとなんかうずくっていうか……」

「わたしの魅了をみんなにかけたいっていう感じと似ているかしら」

「そ……それはヤメてほしいな」

「なんでなのかなぁ。魅了かかるとセカイがキラめいてどきどきしていいわ」

「やっぱりやめましょうよ」

「わたしもうずくわね」

「ヒイロのは、危険すぎるわ」

「ネネのも爆発するんでしょ」

「……ふふ」

「……うふふ」


 暗いなか笑いあうため、とても怪しいニ悪魔だろう。


 でも、ヒイロはだいぶ眠いようだ。

 話しつつも、だんだんと寝そうになっている。


「もう寝ていいわよ」

「……もう少し」

「そう?」


 作業をしつつ、ゆっくりとヒイロと話しをする。

 でも、そろそろらしい。

 いつの間にか、テーブルに腕をつくとその座ったままで、ヒイロは寝てしまう。


「寝ちゃった。少し寝かせておこう」


 動くとまた起きてしまいそうだし、しばらくそのままにしておく。


 ヒイロは、やっぱりアマツキのことを考えているのだろうか。

 それとも、ヒイロ自身のことだろうか。

 スズネも、ヒイロとアマツキも過ごしていく時間のなか、なにか変わってきたらしい。


 わたしは、どうなのだろう。


 ミレイは、そのままでいいといつも言ってくれる。

 けれど、わたしが変わることでいい影響があるなら、もっといいのだと想う。


「デザインは、こんな感じかしら」


 やっと、柄の部分のカタチがわかってきた。

 スズネの感じを出すために、花や艶やかな飾りにする。

 キレイな模様に、派手すぎないイメージだ。


 あとは、鞘の部分だ。

 まだ、先は長い。

 夜には黒鉄は急ぎの用以外は、あまり来ない。

 すぐ側で寝ているヒイロをみながら、時間をかけつつ進めていく。

 ふと思い出すのは、アマツキを見つけたときのヒイロだ。

 ただ、うずくまるだけのアマツキに、一緒にと声をかけるヒイロ。

 わたしの造るナイフも、スズネと共に成長するようなものにしよう。

 静かな夜に、ヒイロの寝息の夜は、なんだかとても落ち着く。



 だいぶ時間が経ってしまったあと、少しだけ休憩してさらに続きを進めた。


 深夜、さらにおそい時間に、メディが起きてきた。


「寝られないの?」

「ううん。作業進めてた」

「ヒイロ、寝てるね。移動しよっか」

「お願い」

「ネネ、それキレイだね」


 まだ未完成品のナイフが、きらりと光っている。


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