中古ショップで発見
二階は外から見た感じと違い、意外と広い売り場で、ジムトレーニングと中古加工品ショップ、それに、なんだかよくわからないショップが入っている。
既にメディが荷物の大半を重そうに持っているものの、スズネの買いもの意欲はまだあるようだ。
でも、スズネは前のアクセサリーショップといい、買いもの上手なことだけは、納得できる。
買い過ぎるらしいけれど。
一揃い程度には、わたしのバックに材料はあるのだけれど、それでも、重くならない程度には、種類があったほうが嬉しい。
魔力調整するのに魔力装置を内部に組むし、暴発用にリミットもつけなければいけない。
最大魔力もどの程度まで、いけるか試してからでないと渡せない。
そんなことを考えていたら、いつの間にか中古加工品ショップのなかを行ったりきたりしていた。
あまり下調べしないできたため、そんなに期待していなかったのに、けっこう揃っている。
カウンターの中やショップのなかで動きまわる悪魔は、若い子が多いため、新鮮だ。
いつも寄るようなショップは、少し古いところが多く、カウンターの店主も年齢の高い悪魔が多い。
ブランドの扱いもあるし、繁盛している場所らしいとわかる。
「ここいいわね」
「そうなんですか。どこをみたらいいのか」
「ていうか、歩くのはやい」
「え、そうかな」
メディとスズネで眼つきが違うとか、羽がパタパタしているとか、こそこそ話している。
「せんぱいは、こういうのわかります?」
「機械系とか、服装とかならいいけど、細かいパーツとかは」
「わたしもです。食料品とか、アクセサリーやバックとかならなんとか」
メディもスズネも、あまり来ないお店のようだ。
「中古品っていっても、いろいろあるのよ」
「そうなんですね」
「ただ部品が欠けたやつとか、旧式で交換のパーツがもうないとか、キレイだけど動かないとかそういうの」
「新しいのだけじゃだめなのかな」
「新しいので揃うやつもあるけど、旧いのじゃないと集まらないのとか、プレミアがあるのだってあるのよ」
「そっか」
「せんぱいは、わかります」
「少しくらいなら」
「中古ショップは、価格だけじゃないってことよ」
「活き活きしてますね」
「あ、これ」
魔力装置の調整器具で、あまり汚れてないやつだ。
こっちのは、加工するともっと使いやすくなる。
こっちのは、細かいのがもう揃わなくて、手放したのかもしれない。
あれもこれも見たくなるけれど、あまりに細かいものは、じっくり考えなくてはいけない。
とりあえず、いま探しているのだけにしておこう。
そう想っているのに、ワゴンのなかや棚のケースにまで、手を伸ばす。
メディもスズネもみてはくれるけれど、自分たちの興味のある部分以外は、なにを手に取ればいいのか、わからないらしい。
悩んでしまう。
いくつか目当てのと、安く買えそうなものがあるけど、それ以外のも手に取ろうか、どうしようか。
「とりあえず必要なのだけにして、また来られるかな」
「でも、こちらに寄るのは、偶然みつけた感じですよね」
「そうなのよ」
そうだ。
ミレイの療養がなければ、見つけなかったショップだ。
また悩んでしまう。
「これとこれ。あ、でも……」
「もう少しゆっくり考えていいよ」
「そうですよ。わたしたち休憩してます」
スズネとメディは、手に持っている荷物をベンチのあるところまで運び、そこで休憩するようだ。
「もう、楽しいのに」
けれど、スズネもメディもつきあってはくれているため、その分は親切だ。
ミレイと一緒のときは、趣味がまったく違うため、みるべき場所が違うことが多い。
そのときには、ミレイはわたしは「こっちね」とすぐに離れてしまう。
クラフトの材料をみせたときにも「よくみつけたわ」くらいにしか、言われたことない。
せめて、ナイフの加工に役に立つのと、いま消耗しているのだけは、買っておこう。
ショップで見かける悪魔たちは、ひたすら材料やアイテム探しに、没頭している。
わたしも、周りからみるとそう観えるのだろう。
「とりあえず、二つ、いえ三つね」
材料と加工に使う用具と消耗品と、みつけたキレイなやつと、と買いものカゴに載せると、いつの間にか量が増えていた。
お会計にだすと、それなりに買っていることがわかる。
魔力会計をすませてみると、あまりスズネのことはいえないくらいだった。
「おまたせ」
「いいのありましたか?」
「うん、見つかったわ」
「よかったです」
「あ、荷物」
「ネネせんぱいは、自分のでいいですよ」
気を使われてしまった。
もしかして、来るときから気を使われていたのかもしれない。
「すっかり荷物多くなっちゃったわね」
「多くあるのは食料品なため、ヒイロとアマツキのところまでたどり着けば、あっという間じゃないですか」
「アマツキもだいぶ食べられるようになったわ」
「男の子ですよ。だんだんと食べますよ」
荷物も提げて、歩きながらビルに向かう。
飛べばいいのかもしれないけれど、意外と重いため、ふらついてしまうかもしれない。
ミレイが休んでいるため、慌てることはないだろう。
「メディは、なにか買ったの」
「うん、これだけ」
いつ買ったのかわからないけれど、手に小さいバックを持っている。
少しは、気晴らしと運動になっただろうか。
仕事中毒なメディは、ときどきこうして引っ張らないと、また仕事に向かってしまう。
重たい荷物を三悪魔で、交代しつつビルに着いた。
部屋に置いたらヒイロとアマツキを呼ぼうと思っていたら、もう部屋に来ていた。
「ミレイは、食事の用意あったから、食べたよ」
「お腹すいたかも」
わたしたちが、でている間もヒイロとアマツキでミレイのところを何度か往復してみたいだ。
「わかった」
「買ってきたから、食事用意するね」
「手伝うよ」
わたしと、スズネとメディで荷物を拡げている間も、ヒイロとアマツキは、ミレイとの話しをしていた。
「食事はしていたけど、ときどきふらふらしてたよ」
「ダウンは脱したから、平気よって強く言われた」
「ミレイって気分の上げ下げすごいよね」
なかなかに言いたい放題だ。
それだけ、その前まで心配していたのだろう。
ヒイロとアマツキをあまり待たせても、落ち着かないため、わたしとメディ、スズネでキッチンに並ぶと、フルーツメニューを作りはじめる。
魔改ナイフを持とうとしたら、スズネに止められた。
なぜ。
「どこを切り裂くつもりですか」
「フルーツに決まってる」
「眼つきヤバかったですよ」
「なによ」
メディの方をみると、眼をあわせてくれない。
そんなに、ヤバい表情だったのだろうか。
無意識だ。
「せんぱいは、こっちミキサー」
「メディせんぱいは、刻んでサラダ」
どうやら、スズネがキッチンで活躍してくれるみたいだ。
本当に、スズネはギャップがある。
ギャル要素は、いったいどこにあるのだろう。
「スズネってもしかして、できる悪魔」
「なにをぶつくさ言ってるですか」
「うん」
メディが刻む音と、わたしのミキサーの音が響く。
ヒイロとアマツキは、なにか打ち合わせをしているらしい。
スズネは、テキパキと調味料を準備したり、細かくなったフルーツをスープにするのに温めたりと忙しい。
ミレイが、適度に料理をできるのは知っていたけど、スズネもこうしてると料理は得意みたいだ。
というか、メンバーのなかで料理がニガテなのがわたしかもしれない。
少し危機感がある。
メディは、今度は味付けと温めを担当している。
「せんぱいは、温めてるやつの味をみてもらって、あと、これとこれも」
スズネの割り当てるのは、的確だけど、わたしは基本的なところしかやっていない。
「わたしも、なんかやりたい」
「なにを言ってるですか。ちゃんとやってますよ」
「そうじゃなくて……」
「せんぱいがいると、助かります」
「え、そう……かな」
「そうですよ」
ほめ上手だ。
スズネの上手な役割分担と、メディの滑らかな動作で、どんどんできていく。
メディをみると、特に気にはしていなさそうだ。
これは、もっと料理上手にならないといけない。
「わたしもっと料理上手くなろう。習いたい」
「やる気ですね」
「スズネ教えて」
「え、いいですよ。鍛えがいありそうですね」
「……やっぱり少し考えようかな」
「いえいえ、これからもヒイロとアマツキにたっぷり食べてもらわなきゃだし」
「そ、そうよね!」
「そうですよ」
「そうよね!」
よし、なんだか楽しくなってきた。
料理の路は、楽しさから。
そして、悪魔らしく。
「できましたね」
メニューは、フルーツスープにサラダと、細かく切られたカットフルーツと盛りあわせだ。
テーブルに並べると、ヒイロとアマツキが嬉しそうにする。
「今度手伝うね」
「手伝う」
「じゃ、お願いするときもあるかも」
「はぁい」
ミレイは先に食べたというから、こちらもいただこう。
でも、少しだけ寂しくもなる。
「やっぱり今度は、ミレイも来なきゃだね」
「そうですよ」
スズネがにこやかだ。
そうか、と想った。
いままでナイフで、ただ切りきざめばそれでいいかと想っていたけれど、よくヒイロやアマツキをみていると、スズネがしっかりと切ってくれたため、とても食べやすそうだ。
料理に想いがあることに、いまさら気づく。
メディは気にしないかもだけど、もっと料理上手になろう。
スズネを改めてみる。
最近は服装もオトナしめで、動きやすい。
前準備もしっかりとするし、教えかたも上手い。
ギャルじゃなくてもそのままスズネは、モテ女だったのだと気づく。
「まずは、料理から。次にセンスも磨くわ」
「ネネせんぱい、なんだか張り切ってますね」
これからは、もっとストイックさを手に入れよう。
メディにモテるためじゃなくて、わたしがもっと、自分を高めよう。
まだまだ未熟な成長期。