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再出発?

 部屋を片付けしながら、メディにミレイが回復してきたことを伝える。

 まだもう少しだけど、魔力ダウン現象はすぎたため、もうラクそうだ。


 それにしても、拾う書類が機密と書いてあるため、あまり見ないように集める。

 なにか探している項目があるのかもしれない。


 というか、よくこれだけ書類持ってるわね。


「これどこにあったの?」

「黒鉄に頼んで印刷してもらってきた」

「え? どこで」

「ここのビルの印刷魔機」

「印刷より、データで確認するほうがはやいのに……」


 すると、書類をみるのが疲れたのか、こちらをみて苦笑いしている。


「サインがいるらしいんだよね」

「メディのサイン!」

「そんなの後輩悪魔が目を通せばいいのにね」

「……いやそれだめでしょ。機密よ」

「機密……かぁ」


 そうかと納得だ。

 メディが確認してそれでサインをしたという作業がなければ、動かすことのできないこともあるのだろう。

 それにしても印刷って。


「がんば♡」

「なんだよ、それ」

「がんば☆」

「なにか変わったの?」

「後ろに♡ がつくか☆ がつくか?」


 デビルスマホでマークをみせてあげる。


「はぁ」


 少し楽しくなりながら、いくつかのをテーブルにまとめてあげていると、項目くらいはみえてしまう。


 中央図書館にあてる禁書目録。


 天使たちの外交窓口。


 保護施設に向けた基礎魔力割り当て。


 堕落悪魔たちの更生保護施設。


 スキル実用の講座。


 悪魔秘密団体の監視と調査。


 光粒子を利用した開発。


 地域視察。


「えぇ……これみんなメディがチェックしてるの?」

「分けられたのもあるけれど、基本的なものはみんな目を通すことになってる、とミレイは言ってたかな」

「ミレイはこれは?」

「ミレイは分けたり連絡したりしてくれるよ」

「じゃ書類はゼンブメディなのね」

「そうなるね」

「保護施設……のものは気になるけれど、わたしがみちゃだめよね? 子どもたちのだと思うんだけどな」

「……裏」

「え、なに?」

「裏返してあったのを表にしたら見えるよね。でもネネにみせたわけじゃないから、裏返してあったのは表にするよね」

「……あぁそういうことね」


 さっそくメディが裏にして置いてある書類から、それを見つけて表にする。

 サッと目を通してメディに渡すときに、一応言っておく。


「……これもサインか」

「これ裏にしてあったわよ」

「そうだね、ありがとう」


 これで伝わるのがメディらしい。

 けれど内容はわかってよかった。


 わたしの知っている範囲のより、もう少し詳しいけれど、魔力の残量がある魔結晶の配付を保護施設にも割り当てる。

 そのために保護施設の管理を調査して、いわゆるズルい運営をしているところは、そこの部分で省かれてしまうというような内容だ。

 メディは調査もかねているらしい。

 わたしの手持ちの管理している場所は、そこはしっかりとしていて、黒鉄にも運営をしっかりと報告するように、伝えてある。


 もっともクイーンのすぐ近くのものは、管理が充分でないと、すぐにはずされるため、そんなに雑な仕事はできない。


「なんか、上の悪魔ってタイヘンね」

「いまさらだな。上にいくようにネネたちも協力していたよね」

「さ……さぁ」

「ミレイとネネがいなかったら、こんなに上層にいなかったな」


 なんだか、仕事の話しになってしまった。


「息抜きも必要なんだから、今回の旅は」

「まぁ遠くの施設の管理状態やその地域の幹部との顔あわせはしなきゃだし……」

「……仕事はやめ!」

「え」

「書類片付けましょ」


 ミレイはともかく、わたしはもっと楽しみにしてほしい。

 そうでなくても、ミレイも仕事を持ちながららしい。

 まぁわたしもついさっきまでは、仕事を持ちこみしていた気はするけど、それは気にしない。


「さっきはがんばれって言ってなかったか?」

「がんばれっていうのは、いろんな意味よ」


 そう言いながらメディは、片付けていく。

 実際サインをしていくのに、つかれたのだろう。

 黒鉄がスッとでてくるも、わたしの担当ではなくてメディの黒鉄鳥だ。


「おわった?」

「最重要はみたよ。重要は知らないけど」

「あ、これ」

「あぁありがとう」


 メディがサッと目を通すけれど、少しかたい表情な気がする。


「どう」

「そっか。わかった。あまりいい報せじゃないな」


 今度は、黒鉄がまとめてある書類をみて、羽に持ってきているカバンにしまっている。

 いくつか確認もしているようだ。


 というか、メディの黒鉄もずっと仕事らしい。


 悪魔らしい働きかたなのかもしれない。

 いや、ただの中毒か。


「平気そうなの?」

「……頼まれてるやつだけど、もう少し調べないといけないな」

「そっか」


 心配だけれど、あまり詳しくは教えてくれないみたいだ。

 それは淋しいけれど、メディの考えはできるだけ尊重しないと、と思い直す。

 わたしも、もう少し頑張ればさらに出世はするらしいけれど、ヒイロとアマツキのことを優先はしたい。


 ミレイは、たぶんもう出世には興味がないのだろう。

 メディの秘書だからというより、支えてあげるのを選んだらしい。

 それはとてもミレイらしいし、同時にミレイの実力から、覚悟があることがわかる。

 未来視が禁書になるようなことを聴いたとき、きっとミレイならそのスキルを安全に使えるように遺すのだと想う。

 それは、もしかしたら仕事で活躍することよりも、もっと重要なことな気がする。


 やっとメディが動けるようになると、なぜかお湯を沸かしはじめている。


「なにか飲むかい」

「ミレイのところにはいかないの?」


 すると少し笑っている。


「スズネに、ヒイロとアマツキがいるんだろ。さらに集まったら療養室が混んで迷惑かも」

「う〜ん、それもそっか」


 一応でもキレイになった部屋の椅子に腰かけると、メディがキッチンでフルーツティーを入れてくれる。

 少しその作業をみている。

 いつみても、メディがキッチンに立つ姿を眺めてしまう。

 立ち姿がいいのか、それとも仕草がいいのかわからない。

 わからないけれど眺めると、ついうふふと笑う。


「ありがとう」


 温かい飲みものなため、少し冷ましてからになりそうだ。

 メディもテーブルの椅子に座ると、さっきまで集中していたのが、なかったかのように、ボーッとしている。

 ときどきプライベートで遠くを眺める姿をみるけれど、なにか考えているときもあるのだろう。

 でも、いまは単純に疲れてボーッとしているようにみえる。


 フルーツティーなため、仄かにいい香りが漂い、なんだか落ち着く。


「眠い」

「そっか。ミレイにもフルーツティーとか持っていってあげてもよかったね」

「そうだね、落ち着くよね」

「眠いのは、集中していたからよ」

「魔力の疲労回復と、身体の疲れは違うよね」

「頭の使いすぎよ」

「上層にいくほどに、頭ばかり使うんだよね。身体動かすほうがいい」

「……メディはもっと下の階級にいるときから、頭も身体も回転し過ぎだったわ」

「仕事の活動していないときは、いまよりのんびりしていたよ」

「嘘ね。図書館で調べものしたり、黒鉄と探しものしていたんでしょ」


 わたしがメディをみつめると、メディは苦笑いしている。

 当たっているような感じだ。


「ミレイから」

「ううん。前買いものって言っていたけど、よく考えればメディの部屋なんもない。そんなに魔力あっても、部屋があれならなんとなくね」

「そっか」


 ふと、窓をみるためわたしも見ると、黒鉄が通っていった。


「このところ、黒鉄鳥が慌ただしいわ。天使から帰ってきたときは、状況がわからなかったけれど、そのときのとは違うみたい」

「そうなのかな」


 ゆっくり飲みつつ話すため、この前からの疑問が、また(よぎ)ってしまう。

 ミレイが話さないことと、メディがなんだか頼まれていることと、鳥たちがこんなにいそがしいことには、理由がありそうだ。

 でも、まだわたしの手元に、それの話しは来ていない。


 階級の影響なのか、クイーンがいそがしいのか、それともヒイロとアマツキに関係しているのか、わからない。

 でも、ヒイロとアマツキのことで気になることがあれば、わたしにも共有してくれるだろう。

 そこは、信頼している。


「ナイフ造ってるの」

「そうなんだ」

「まだ途中。柄の部分ももっと考えなくちゃ」


 バックのなかには、造りかけのナイフが布に丸めてしまってある。

 ナイフの柄の部分などの材料は、もう一つの大きいバックのなかだ。


「ネネのナイフは、みていると憧れるな」

「え! そうなのかな」

「装備とか、かっこいい」

「なぜかスズネもそう言っていたわね。わたしはかわいいのなんだけどな」

「ネネのかわいいは、幅広いから」

「ナイフはかわいいの!」

「わかったよ」


 ミレイには前に伝わっていた気がするのに、どうにも上手く伝わらない。

 それとも、わたしの頭を考え直さないといけないのかもしれない。

 指輪を無意識に触る。

 だいぶ馴染んできたと感じる。

 そうだと、思いつくためノートをだして、いそいでメモをとる。


 カタチは、かたちと想いがある。

 装飾もそうだ。


 いたずら書きじゃないなら、それには意味を付加する。

 クラフトはカタチにするけれど、それよりも遺るのは想いの魔力だ。


「ひかりみたいだね」

「え……」

「カタチのないものをカタチにしていく作業なんでしょ」

「ひかりはそうなの……?」

「そうだね」

「そっか」


 わたしは嬉しくなる。

 スキルをほめられたからではない。

 メディのひかりは、想いらしいとわかるからだ。


「もしかしてネネは、そういうので保護施設の管理者になっているのかな」

「……そうかも。でも違うかも」

「違うのか」

「いや、そうなのかな。わかんないや」

「きっと、そうなんじゃないか」


 メディがくすっと笑う。

 相変わらずこのメディの笑うタイミングが、わたしにはわからない。

 ときどき悔しいくらいに余裕があって、そこがなんだか、惹かれてしまう。

 さっきは、ずいぶんと余裕はなさそうだったけれど、いまはもう戻っている。


「管理者になった話しは、また長くなるのよね。今度時間をかけるわ」

「そうなのか」

「ミレイならズバっと言うのだけど、そんなに単純じゃない」

「わかった」

「メディこそ、アマツキと仲良いけれど、なにかあったの?」

「そうかな、そうだな。なにかってわけでもない」

「それにしてはって思うんだけど」

「男にとって、聴きやすい相手は男っていうことなんじゃ」

「そう? わたしは仕事のことは別にして、あなたに聴きやすいわよ」

「ネネはだれにとっても話しやすいよ」

「なにそれ……」


 少しあきれてしまう。

 それなら、もっといろんなこと話してほしい。


「話しやすいのは、わるい?」

「そんなことないけど、もっと話すことありそうなのに」


 なんだか置いてけぼり気分だ。


「話してるんだけどな」

「もっとちゃんと……」


 悔しくなって、やめにしてしまう。

 こっちはメディにもっと、はっきりいろんなこと話してほしいのに、メディは無自覚に、そうしてるつもりらしい。


「そうか、わるい」

「メディ変わらずだね。仕事でいそがしくする前から、やっぱりはっきり話してくれない」

「そうかな」


 メディは、もしかして隠しているのではなくて、とても無自覚なのか。

 それとも機密情報になっているのか。


「でも、こうしてゆっくりしてくれるのは、嬉しい」


 カップに口をつけてから、ジッとみると、いまはゆっくりできているらしい。

 ゆっくりと笑う。

 わたしもいい加減に甘いな、と想ってしまうのは、こうして瞬間笑いかけてくれることで、なんだかいまはこれでいいやと想ってしまうからだ。

 扉を叩く音がするため、はぁいと返事をすると、スズネみたいだ。


「スズネだね」

「いま開けるね」


 スズネが部屋に入ってきた。


「ミレイせんぱい、もう一晩は休むそうですよ」

「そう、わかったわ」

「それから、アマツキが事故ってます」

「え、怪我?」

「いや、そうじゃなくてラブコメですね」

「……あぁ」

「メディはそれでわかるの?」

「たぶん」


 ミレイは説得されたのだろう。

 回復士の話しをあまりマトモに受けてなかったからかも。


 アマツキは、ラブコメらしい。


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