復帰後ってなにかと騒がしい
ミレイが起きたけれど、すぐにメディに連絡したりだと、療養室が満杯になってしまうかもしれない。
そう思った。
そのため、回復士の診断を待ってからミレイを連れていこうと話して、回復士が来るまで待っていた。
その間、クラフトでまだ途中のナイフを見せびらかしていたら、ミレイも欲しそうだった。
「ミレイもこういうのいるの?」
「そこまで、甘えないわよ」
さっきまで、身体こそ接近していないけれど、言葉では散々甘えていたのに、なぜそこは遠慮なのだろう。
けれど、スズネに贈るものだとしても、もしミレイの分まで作成すれば、自然と悪魔と天使数分全部つくることになりそうで、そこは正しい判断かもしれない。
「ま、みんなの分まで造るのは、たしかに大変そうね」
「わたしは愛だけあればいいわ」
「変わらず、重いわ」
「わたしの愛が、軽いことあった?」
「せめてボールくらいな重さがいいわ」
「ボールって、どこかに投げるつもりね」
「そんなこと……考えてないわ」
「そうかしら」
まぁ会話が進むくらいには、元気になってきたらしい。
回復士によると、まだ回復途中の段階らしいから、無理しないことと飛んだり跳ねたりしないことと注意を受けた。
いったいわたしたちは、何歳にみられているのだろうか。
「明日には動けるかしら」
「そんなに心配しなくても、いいわ。いまからだって」
「ちょっと、回復士の話し聴いてたの?」
「それは、ちゃんと聴いてたわ。回復待ち回復待ちって何度も言われたわ。ゼッタイ最大まで回復してやる」
ミレイがここまで言うのは、意地というよりも、心配かけ過ぎないようになんだろう。
あんまり時間がかかると、今度はスズネが青ざめてしまいそう。
ヒイロやアマツキも様子を見にきてたらしいから、ミレイが強気にでてくれるのは、いいことなんだろう。
「ほっとするわね」
「ネネまで。そんなにわたし元気なかった?」
「なかった、というか、未来視のスキルなのに怪我とかあるんだって想うわよ」
「ああ、それね」
「それ?」
「未来からの影響は、回避できないのもけっこうあるからね。予備動作や準備はできるけど、上手くいかないわ」
「そんなに」
「例えばだけど、突然メディが混乱して閃光の渦をだしたら、わたしたち全滅よね」
「回避は?」
「わかっていても強すぎる未来は、ムリなのよ」
「弱気ね」
「未来視と回避は、もうかなりしてるけれど」
「それで、魔力切れね」
「……それもある」
「隠しごと多いわ」
「どう? 魅力的でしょ?」
「ヒイロが、ミレイとの子どものころのこと聴きたいみたいよ」
「ネネのかわいい子どものときなら、百年は話せるわよ」
「五分で収めていいわよ」
「そんなに短くしたら、たぶん一番要はなにも伝わらないわ」
「ヒイロは話し聴いてくれるけれど、確実に引くわね。わたしはずっとだけど」
ミレイがこちらにと手を出すため、近づくと、貸していた魔改ナイフを返してくれる。
「ありがとう」
「いいえ。役に立ったのかしら」
「はじめから、それに頼ればよかった」
「回復士のおかげでしょ」
「両方よ」
たしかによくみると、ナイフに貯めてあった魔力が半分以下まで落ちている。
ナイフからの魔力が、ミレイを落ちつかせたのはあるらしい。
「スズネは、回復スキルも覚えられるかもね」
「スズネが?」
「アイテムや薬、準備とか考えていたでしょ。悪魔ってそんなに回復や怪我治癒に関して詳しい悪魔少ないし、向いてそう」
「そうかもね」
「メディが以前話していたけれど、光もずいぶんとカタチとか素材を変化できるそう。わたしのは造るほうだけど、スズネは治すほうかも」
「男の子たちが喜びそうね」
「そうかな」
「やっぱりかわいい悪魔に、治療されるほうが嬉しいのよ」
ミレイのような美悪魔でも、それはいいのではないかな。
そう思うけれど、ミレイがもし治癒系を覚えたら、女の子には甘くて男の子悪魔には、回復をきびしくしたり気に入った子にベタベタして、返って迷惑かもしれない。
「そっか」
「あぁでも、ネネはダメよ」
「……どうしてよ」
「男の子たちが、ネネの治癒中いやらしいこと考えていたら、蹴飛ばしたくなるもの」
「回復しなきゃいけないくらいなんだから、そんな元気もないんじゃ」
「甘いわね。男ってたとえ死にそうなときにだって、エ○があったらとびつくのよ」
「そ……そうなのかな」
「ネネは何度も堕悪魔に襲われてるじゃない」
「堕悪魔たちは、自身を見失ってる輩もおおいから」
「相変わらずネネは、警戒が薄いわ。ま、そういうところかわいいけど」
ミレイの言うところなのだから、そうなのかもしれない。
たしかに、メディやスズネと合流する前までは、まるでミレイがいないときを狙っているかのようだった。
単独で飛ぶところを後ろから来られたり、公園で待ち伏せされたり、仕事終わりに抱きつかれたり、悪魔子どもと話してるときでさえ、触られたりしていた。
不思議とメディと話して、共に飛ぶようになってからは、あまりなくなった。
ミレイの行動のおかげもあるのだろう。
でも、最近ではヒイロのように幼女に近い女の悪魔も狙われているようだから、わたしよりヒイロや天使かわいいアマツキが、危険かもしれない。
「たしかに、わたしよりはスズネのほうが、喜ばれるのかもね」
スズネは、ああみえて警戒強そうだし、お世話が上手なため、いいのかもしれない。
それに、わたしより後輩で若いし。
ミレイが、出られるように準備をするなか、ヒイロとアマツキに連絡してみる。
アマツキは、ヒイロといるだろうから、ヒイロに連絡すればいいだろう。
のんびり来てくれれば、と思っていたのに、連絡してから五分もしないうちにヒイロとアマツキがきていた。
「ミレイ元気になった?」
「ミレイ魔力いいの?」
ヒイロとアマツキは、来るとすぐにミレイに問いかけている。
ミレイが駆け出して、ヒイロとアマツキを抱えている。
「かわいい」
「やめて」
ミレイがぐりぐりしている。
よほど寝ている間、癒やしが足りなかったらしい。
いまもし天使アヤネがいたら、一緒になってパーティに参加していてもおかしくなさそうだ。
「うふふふふ」
「ミレイ怖いよ?」
「やっぱり現実のほうが、かわいいわ」
「ほらアマツキが苦しそうよ」
ミレイがアマツキとヒイロを放すと、ヒイロがなんとなく笑顔で睨みつけている。
ヒイロの対応も少し考えないと、そのうちミレイはヒイロに、借りを返される気がする。
アマツキが、少しここのビルの施設の話しをしていると、今度はスズネが来た。
「ミレイせんぱい!」
「スズネ!」
「ネネせんぱい、ミレイせんぱいがテンション高いです」
「ミレイ寂しかったのよ」
「そうなんですね」
すっかり騒がしい。
作業は一度終わりにして、片付ける。
メディには、いま連絡した。
少しは仕事が、進んだだろうか。
「一度メディのところに戻るわね」
「あ、わたしも一緒に」
「ミレイはまだ療養でしょ。いってくる」
療養室をでると、少し静かになる。
部屋をでると、すぐに黒鉄鳥が飛んできた。
「黒鉄」
「ミレイは無事みたいだね」
「そうよ。でも少しほっとしたわ。正直心配だったから」
「そっか」
わたしが歩く速度にあわせて、ついてくる。
「魔改ナイフ役に立ったみたい。魔力がこんなに減ったわ」
「ネネは魔力付加が上手いから、アイテムの効果も高いんだよ」
「宝石もそうだけど、アイテムから効果がくるのは、わたしは嬉しい。でもいまスズネのナイフになにをのせようか迷ってるわ」
「スズネは回復や癒やしでもいいんじゃない?」
「そうね。でもそれ以外にもインパクトがほしいのよね」
「こだわりね」
「プレゼントだもん。はりきるわ」
黒鉄が、羽をパタパタさせている。
相変わらずバックが重そうだ。
たずねたことはないけれど、黒鉄のバックにもかなりのアイテムが入っている。
小さいのにかなり重たそうだ。
わたしの荷物を運ぶときもあるから、意外に力持ちである。
魔力もわたしのと共通するところがある。
たしか、共有スキルとかいってた。
「ミレイの黒鉄と少し話した。ヒイロとアマツキは、契約鳥いないんだね」
「そうみたい」
「ミレイの黒鉄が、とりあえずでヒイロとアマツキの仮契約みたいなのをしたらしいわ」
「そうなの。ヒイロは悪魔だけど、アマツキのは平気かしら」
天使アマツキは、契約はどうなるのだろう。
アヤネにたずねることが増えた。
「ミレイの黒鉄契約の話しでは、仮契約までは悪魔使い鳥もなんとか……なった」
「……間があいたけど、気にしないことにするわね」
黒鉄鳥も仕組みが複雑らしい。
わたしとの契約もときどき見直している。
けれど、わたしの契約鳥のこの子は、あまり契約を重要視していないらしく、ときどき平気なのかという無茶がある。
とくに小さいときは、すごかった。
いまでは契約と口にするけれど、実はかなりその内容を変化させているらしく、密かにミレイの黒鉄鳥に、相談している。
「契約鳥もタイヘンなのよ」
「灰鐘鳥は喚べないのかな?」
「う〜ん、アマツキが契約を書くか、アヤネが契約書面をつくるか」
「アヤネを召喚したほうが早いかもね」
「……考えておくわ」
「黒鉄は……天使とは仲良いの?」
少し気になるため聴いてみる。
「鳥たちは、鳥たちの情報源と共有があるわね。でも悪魔だって天使と一切ないわけじゃないでしょ」
そんな話しをしていると、メディの待つ部屋の前にきた。
とりあえずノックすると、黒鉄はサッサと別の場所に飛んでしまう。
まだ、別の用があるらしい。
「どうぞ」
メディはなかにいるようだ。
「メディ、ミレイ回復したわよ」
部屋が、また散らかっている。
「よかった」
「散らかし過ぎじゃない?」
メディは仕事の途中らしいけれど、まさかわたしがいたときよりひどくなっていて、笑ってしまう。