悪魔なかわいさ小悪魔ネネ
わたしは、ピンク模様の入った紺の翼を折りたたむ。
着地すると、そこは公園だった。
通称、黒バラ園と呼ばれるところだ。
追いかけてきていた、悪魔が追いつき、こちらに近づいてくる。
わたしのこの見た目も楽ではない。
よくロリ系とも、ヒトのいうギャル系とも呼ばれたりするが、わたしはどちらでもない、ただの美少女だ、と自負をしているようなつもりのような。
悪魔ネネは、少し長い髪、黒いひとみに、髪飾りをつけている。
魔力をつかうと、少しひとみの色が変わる。
大抵の悪魔は、怠惰で強情か、呑気で何も考えないか、あとは自分の欲にばかり囚われていて、無害だが、ときどきこうしたいわゆる欲におぼれたような者がいて、そういうのには、わたしはよく絡まれる。
仕方なし。
腰の下、足の付け根に装備してあるトロピカルガンを手にとる。
ショックレベルは、二十五くらい。
大丈夫、ただの電気ショックだ、二十五くらいなら。
最大はショックレベル百だが、それで使うと悪魔でも死んでしまうだろう。
相手が近づいてきた。
近くでみると、そんなには気持ち悪くないが、それは見た目で、
「ねえ、こっちみてよ」
とか
「ほら、いい子だから。
ピー (放送禁止)とか、ドー (変態言葉)」
とか言われると、うわっなに、て思う。
片手でトロピカルガンを構えて、打つと電気ショックが相手に流れていき、その悪魔は後ろに倒れて、気を失った。
「ふう。護身用改お手製電撃拳銃、名付けてトロピカルガンは、けっこう役に立つのよね」
倒れた悪魔はどうしようか。
魔力だけ吸収して、近くの川にでも、蹴飛ばしてやろうか。
夜の公園を見渡すと、魔力街灯のその薄明かりのなか、ベンチに悪魔が寝ていた。
観ると、まだ若い。
少しブルーのはいった黒の短髪に、服装もブルーの模様の入った紺に近い上下を着ている。
ブーツは黒だが、ジャラついている。
トロピカルガンを元の足の付け根、スカートのなかに隠して、起こそうか迷う。
わたしは、少しミニのスカートをはたいて、そのあと、黒の上着やなかにきているシャツを点検する。
特に破れたり、崩れたりはしていない。
あ、起きた。
「え、なに、ここ、どこ」
転生、成功しました。
その悪魔にしか、聴こえない声がする。
感覚では遠くから、声が聴こえて、次に悪魔ノートが光り、一ページがひらくと、転生の文字が追加されていた。
その悪魔は、ノートを拡げて、確認している。
「そうか。これ、記録帳みたいなのか」
「もしかして、ここで寝てたけど、転生者?」
「えと、そうみたい。きみは?」
「わたしは、悪魔のネネ。アナタ名前、わかる?」
「え、名前か」
少し考えこんでしまう。
起きあがり、靴を確かめてから、その悪魔は立ちあがり、そして、辺りを見回してから
「ごめん。名前まだわからない」
ベンチにのっている悪魔ノートを開いて、ペラペラめくりながら
「ところで、その転がってる男はなに?」
「あぁ、わたしを追いかけてきた、変態悪魔。どうしようかなぁ」
すると
「手伝うよ。どうする?」
「え、あ、うん。じゃ、近くにゴミステーションあるから、そこに投げておくわ」
起き上がった悪魔は、転がっている悪魔を引きずろうとするから、わたしも肩を貸して、ゴミステーションまで、引っ張る。
公園の角にある、悪魔機械式ゴミステーションに、放り投げておく。
ゴミステーションの上の看板が光だし
「コレは、分別ゴミではありません」
と音声が流れている。
「いいの、これ?」
「いいの。丸一日は目覚めないし、悪魔清掃業務員がみつけて、仕事放棄者として、悪魔役所に通報されるだけ」
「それより、ありがとう」
「いいけど、名前まだ思いだせないな」
「わかった。とりあえず、悪魔な転生者として、発見した以上は、案内するわ」
街灯の照らされるなか、よくみると、その転生した悪魔は短髪がよく似合う顔つきで、身体つきもほっそりだ。
「きみ、可愛いな。みんな悪魔ってそんなに美悪魔とか美少女?」
「ふふん。ありがとう。みんな可愛いけど、わたしは、よく悪魔的な可愛さって言われるわ」
「わかった。ネネさんだよね」
「あ、その、さん、てなに? みんなはネネとか、ネネリンとか、ネネタンだよ」
「えーと、それじゃ、ネネでいいかな」
よく観ると、その転生悪魔の瞳の色が、変わった感じだ。
「転生者は、ひとみの色、変わった感じなのかなぁ」
「色?」
「うん」
「うーん、まだなんとも、わからない」
変な悪魔。
街中を案内することにした。
ピンク模様の入った翼を拡げて飛ぼうとすると
「待って待って」
「え、なに? どうしたの?」
「翼初めてだから、飛びかたとか、わからない!」
「あー、そっかぁ。あ、どうしよ。じゃ、歩いてだね」
夜の街なかを、その悪魔と練り歩く。
ここが、紹介所。
ここがギャンブル場。
ここは、普通の衣料品だったかな。
途中、あくまな自販機で、飲みものを買うことにする。
「なんだ。この味しかないや」
腕につけているデレデバイスで、タッチする。
ピコン
可愛い音がして、自販機から飲みものが転げて、足に落ちてくる。
避けそびれて、ネネの足に当たる。
「いた! もう。悪魔自販機め」
「ごめんね。このデビルズイチゴしか、味なかった」
転生悪魔は受け取る。
「ありがとう」
一口飲むと
「うわー激甘。みんなこれ飲むの?」
「いやー、ごめん。ランランイチゴのほうが、味よかったかな。自販機の補充が、あまり来ないから、すぐ売り切れになってるんだよね」
「そうなんだ」
「でも、あまり悪魔は、食べものとか、好みないんだよね。魅力な果実と怠惰な実のどちらか、が魔力補充に必要で、基本は怠惰の実に、取りつかれるから、その味ばかり」
「ふふ」
「なに、どうかした?」
「悪魔なのに、ネネは丁寧だから、悪魔って、イメージと違うんだな、て」
「あ、泊まるとこ、わからないよね。うーん、ゲームセンターで、一泊するか」
ゲームセンターは、二十五時間経営で、ずっとやっている。
朝から晩から、日付回っても働くとか、意味不明。
でも、こういうときは、便利かも。
「え、いいよ。どこかで野宿でもしてくるから、朝どこにいけば、いいかだけで」
「だめー。悪魔転生したばかり、名前もまだだし、それとも、わたしじゃないほうがいい?」
「うーん、そんなことはないけど、でも」
「でも、とか言わないの」
結局ゲームセンター、デビルズヘイブンの隅にあるベンチで、並んで、座る。
「ひと休みすれば、すぐ朝だよ。おやすみね」
「うん、わかった」
ベンチに並んで、座ってわかった。
メチャどきどきする。
なんだろ。
この感覚。
ヤバい。
となりの悪魔は、すぐに寝てしまったようだ。
わたしは、肩にもたれてみる。
寝られそうにはないが、なんか居心地がよい。
なんだろ。
さっきまで、照れなんてなくて、姉気分だったのに、いまは少し恥ずかしい。
朝方、三時間くらい寝て、その悪魔は、男子トイレに向かう。
顔を洗ってきたようだ。
「すごいびっくりした。羽根あるし、髪ブルーだし、たしかに顔つき悪魔だったよ。やべ!」
「おはよう。わたしもいってくるね」
お化粧室に入り、顔が赤いことに気づく。
洗顔して戻るも、笑顔の悪魔がいる。
どきどきする。
「名前、わかった。メディナナタリア。悪魔だ」
「ふーん。そう。じゃ、改めて、お願いね」
こうして、メディに出逢った。
ヤバい、メチャどきどきするんですけど。
決めては、たぶん、そうその甘くてくすぐったい声と、あとブルーがかって、少し変化する瞳のキレイさか。