~町を治すよ!~
翌日、リコルとゼロは路地裏の貧民街へ来ていた。
リコル「さて、まずは空気を浄化する結界を貼ります~」
パチンと、リコルの指が鳴る。
周囲の砂埃の混じった空気が晴れ、
澄んだ空気があたりを包み込んだ。
ゼロ「・・・・・空気が、変わった・・・・・これもリコルの魔法なのか?」
リコル「うん、神聖魔法・・・・聖属性の魔法の一つだよ。」
ゼロ「そうか・・・・神聖魔法か。」
リコル「で、次が土属性の魔法で~・・・・・・」
もう1度、リコルが指を鳴らすと、町の外壁が綺麗に補修され、
パキパキと音を立てて石作りの四角形の建物が並んだ。
ゼロ「・・・・・・・これは!?」
リコル「外壁を治して、簡素だけど家を作った。ここ人を住ませれば、雨風が凌げるでしょ?」
ゼロ「確かに、橋の下にいる住民が多かったからな・・・・」
リコル「そういうこと!」
「なんだ?一体何が起きているんだ?」
リコルとゼロが、話していると
貧民街の住人たちが町の様子に異変を感じて集まってきた。
「空気が綺麗になっている・・・・この建物も・・・・」
「奇跡でも見ているのか?」
ざわつく住民たち。
その住民をかき分けるように、一人の男が前に出た。
ガロ「そこのお嬢さん・・・・ちょっといいかい?俺は、ガロって言うんだが・・・・」
ゼロ「・・・・・・」
警戒をして、ゼロが腰の剣に手をかざした。
リコル「ゼロ、いいよ。大丈夫。・・・・で、なあに?」
ガロ「この建物を作って、空気を綺麗にしたのは・・・アンタかい?」
リコル「うん、そう。王様に、許可はもらってるよ。ここを整備して、皆が住めるようにするの。」
ガロ「この建物も、全部魔法でやったのか?」
リコル「そういうこと。君が、ここの路地裏をまとめてる人だったりする?」
ガロ「・・・・・そんな、大した身分じゃない。俺もここの貧民街の住民ってだけだ。顔が少し広いくらいだ。」
リコル「一つお願い事をしていい?」
ガロ「・・・・ああ、アンタは住民のために動いてくれた。俺に出来ることなら力になろう」
リコル「ここの区画に、詳しくないんだけど、結構病気の人とか多い?」
ガロ「・・・・・多い、なんせここでは治療も受けられないし、教会で治療を受ける金もない連中ばかりだからな。」
リコル「これ。」
ずいと、リコルが差し出したのは大きな袋に入った沢山の飴玉だった。
ガロ「これは・・・・・」
リコル「治癒魔法が込めてあるの、これ、病人の人とか、怪我してる人にあげて欲しい。」
ガロ「・・・・・・・そうか・・・・・・アンタは、聖女様か何かか?」
リコル「聖女?違うよ、私はリコル!魔法使いだよ。ガロ、君も悪い所があったら飴食べてね、すっごく効くから。」
ガロ「・・・・ああ、ありがとう・・・・・リコル。」
リコル「じゃ、私は王様の所戻る。ガロ、またね!」
手をふりふりと振って、
リコルはいつも通り、移動するためのドアを出した。
ガロ「驚いたな、空間魔法まで使えるのか・・・・」
リコル「うん、まあ、仕組みがわかればカンタンだよ!じゃ、ばいばーい!」
その後、ぽすんと音を立てて
空間に出ていたドアは姿を消した。
ガロ「・・・・・・神の使いか何かか・・・・・・・?」
一人残されたガロは、そう呟いてた後、
貧民街の住民へ、リコルからもらった物を配るために歩き出した。
―――
リコル「よっ」
扉をするりとくぐり、リコルとゼロはリヴェル城の、王の間にやってきた。
ゼロ「・・・・この移動にも、慣れてきた俺がいる・・・」
リコル「サクっと移動できるから便利でしょ?」
ゼロ「ああ、そうだな。」
リコル「おじさん、みっけ!」
カーライル「・・・・そなたらか。まさか・・・・その様子は・・・」
リコル「うん、路地裏の貧民街の整備が終わったよ。」
カイゼル「なんと・・・・・・・・王、少し様子を見てみますか?」
カーライル「ああ、頼む」
リコル「見れるの?」
カイゼル「城壁に水晶を埋め込んでいて、それを通して町の風景が見れるんです。」
リコル「へー!凄いね。」
カイゼル「リコルさんの転移魔法に比べたら、児戯に等しいですが・・・」
目をつぶって、呪文を唱えるカイゼル。
暫くして、王の間の壁に街の様子が映し出された。
カーライル「これは・・・・」
カイゼル「・・・・・・家が、建っていますね・・・・」
カーライル「城壁も床も、補修したのか。」
リコル「うん、全部土魔法。で、空気も人が住めるように浄化した。」
カーライル「・・・・・・これを1日で成し遂げるとは・・・・」
カイゼル「奇跡としか言えませんね・・・・・」
カーライル「・・・・・・リコルと言ったな?」
リコル「はい?」
カーライル「・・・・・お主は、立派な働きをしてくれた。褒美を取らせよう。望みはあるか?」
リコル「・・・・・望み?いらないかな。欲しいものは、自分で創るか、買うし。」
カーライル「・・・・・そうか・・・・」
リコル「貧民街に、知り合いが出来たの。孤児の兄妹でね、その人達の力になりたかったの。」
カイゼル「なるほど・・・・・・」
カーライル「・・・・・人のためか。私が、長年忘れていた感情だ。」
そう呟いて、カーライルは席を立ちあがり、頭を下げた。
リコル「おじさん?」
カーライル「我が国民を救ってくれたこと、王として礼を言う。そなたは私の恩人だ。」
カイゼル「私からも、本当にありがとうございました。」
カーライル「今後、お主が困った時は私が力になると約束しよう。」
リコル「私こそ、貧民街の整備をさせてくれてありがとう!あとは、整備した区画はおじさんに管理を任せるね。困ったことがあったら、私こそ力になるから呼んでね!」
カーライル「・・・・・・ああ。」
カイゼル「では、さっそく兵士を手配します。住民に何かあれば対応できるようにしましょう」
カーライル「うむ、貧民街に居る民に、王都にある物資を配給するようにも手配せよ。」
リコル「じゃあ、私はおいとまするね。ばいばい、おじさんと大臣さん!」
カーライル「ああ、また顔を見せてくれ、我が友人よ。」
そう挨拶を交わして、リコルは城を後にした。