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~貧民街の事情~

城下町へ戻り、リコルとゼロは広場のベンチに座っていた。


リコル「これで税金、安くなるかな?」


ゼロ「そうだな・・・・・なると思う。」


ゼロは、リコルの底なしの魔力と、魔法に驚いていた。

転移魔法に、時魔法・・・・・現代では失われし魔法だと、聞いたことがあるが・・・

普通の属性魔法ですら、城全体に作用するような広範囲の物は聞いたことも見たこともない。


リコルにかかれば、世界征服すら簡単に出来てしまうのではないか。


そんなことをゼロは思った。


リコル「・・・・・ゼロ?」


ゼロ「・・・・・ああ、すまない、考え事をしていた。」


リコル「私の魔法、こわかった?ごめんね。」


何かを、悟ったように目の前の少女は微笑んだ。


ゼロ「違う、そんなことは思ってない。」


即座にそれを否定する。


どんなにリコルが凄い魔法を使えようと、

どんなことをしようと、リコルに大きな恩があり、

自分がリコルにしてもらったことは事実だ。


リコルの傍にいて、リコルのためになんだって出来ることはする。


あの誓いは嘘じゃない。

そして、リコルに対して、恐怖心などはなかった。


リコル「そっかぁ、ちょっとやりすぎたかなって反省してる。」


ゼロ「税金で贅沢してる王にはいい薬になったんじゃないか?」


リコル「そうかな~!早く税金が減るといいな~」


ゼロ「リコル」


リコル「はい?」


ゼロ「俺は・・・リコルの傍にいるよ。何があっても。」


リコルの手に自分の手を重ねて、目を見てそう言うと、


リコル「うん、ありがとう、ゼロ。」


ゼロ「・・・・・ああ。」


剣闘士だった自分には、少しばかりの剣術しかない。

リコルのような魔法も、強さもない。


少しでもリコルの役に立つためにはどうしたらいいだろう。

これから考えて行かねば。


リコルの、役に立つんだ。


そう、心の中でゼロは決意をした。


リコル「お腹すいたし、ゼロ、ご飯にしようか。」


ゼロ「わかった、リコルは何が食べたい?」


リコル「うーん、あればグラタンが食べたい!」


ゼロ「じゃあ、近くの食堂へ行こうか。」


リコル「うん♪」


―――

  

食堂へ行き、リコルとゼロは食事を済ませて

また町の広場へ戻ってきた。


すると、何やら騒ぎが起きていた。

広場には、人混みができていて、


「何これ!?一体どういうこと?」


「我々からしたら有り難いけど、どういう風の吹き回しだ?」


と騒ぐ民衆。


「王様からのお触れだ!!!」


と、王宮の兵士が大きな看板を掲げている。

看板の前には人混みが出来ていて、内容がよく見えない。


リコル「なんだろ?」


ゼロ「・・・・・・見てくるか?」


リコル「あ、わかったかも。」


ゼロ「・・・・・税金か・・・」


リコル「かもよ!!行ってみよう~!」


人混みをかき分けて、看板を見に行くと、

やはり税金を引き下げる内容であった。


ゼロ「・・・・・・・対応が早いな」


リコル「ね!お菓子屋さんのお婆さんにも、報告してあげなきゃ~!」


そう言って、リコルはお菓子屋さんへ走り出して、

ゼロもそれに続いた。


―――


アンナ「・・・・・・あ!お姉ちゃんたち!!!」


リコル「どうもどうも、こんにちは」


アンナ「ねえ!本当に王様に話しに行ったの?!税金が安くなるって・・・」


ヴィオラ「広場の、お知らせを見てびっくりしたよ・・・・お嬢さんは王族か貴族なのかい?」


リコル「話に行ってきたよ~!これで、お菓子屋さん続けられるよね?」


アンナ「うん!!!おばあちゃん喜んでた!!!ありがとう!!お姉ちゃん!」


ヴィオラ「ああ、ありがとうね。お店にあるお菓子、好きな物を持って行きな」


リコル「やった!でもちゃんと、お代は払わせてね。お店長続きしてほしいから。」


アンナ「私も、お店ずっとやっててほしいから、お手伝い頑張る!」


リコル「うん、がんばってね!またくるね!」


ヴィオラ「本当に、ありがとうね。お嬢さん・・・またいつでもおいで!」


なんて会話をして、クッキーを何枚か買って

私とゼロはまた歩き出した。


ゼロ「よかったな、リコル」


リコル「うん、よかったよ~!行きつけのお店にしたいなって思ってたから。」


ゼロ「確かに、美味しかったしな。」


リコル「そうそう、チョコのクッキーが・・・・って・・わっ!?」


急に、何かがぶつかってきて、リコルはよろめいた。

それをゼロはとっさに受け止めた。


「・・・・・・・おっと、ごめんな~!」


ぶつかってきたのは、リコルと同い年くらいの少年だ。

手には何かを持っている。


リコル「あ、それ、わたしのお財布。」


ぽそりとリコルが呟くと、

少年は走って逃げだした。


ゼロ「待て!!!」


咄嗟にゼロが追いかけようとするが、

そのまま少年は地面にすっころんだ。


「うわああああああ!!!なんだこれ!!!」


転んだ少年の足には、地面から生えた木の根が絡まっている。


リコル「土魔法で生やしてみたの。なかなかいい使い方でしょ?」


ゼロ「・・・・・なぜ、盗みなどをしたんだ。バレて捕まったら、罪人として奴隷にされてしまうぞ。」


「く・・・・・くそ・・・・・・どうしても、お金が必要だったんだ。それで、朝にアンタたちが、武器屋で大金を払ってるのを見て、アンタたちなら金持ってそうだなって思ったんだ。」


リコル「確かに、お金はあるけどね・・・」


ゼロ「身なりからすると、路地裏の貧民街に住む子供か・・・」


「・・・・・・ああ、そうだよ・・・・・・」


リコル「ねえ、よかったら事情を聞かせてよ。悪いようにはしないから。」


そう、魔法を解いて少年に言うと、

少年はうなだれたように話しだした。


少年には両親がおらず、妹だけしかいないこと。

妹と二人で、ずっと貧民街で暮らしていること。


その妹が、病気になってしまい

薬も買うお金もなく、盗みに走ったということ。


ゼロ「・・・・・・・」


リコル「なるほどね、それは辛かったね。妹さんの居る場所に、案内してくれる?」


「うん・・・・・わかった。」


リコル「君、名前はなんていうの?」


「俺は、アレン・・・・・妹は、ルチカ。」


リコル「そっか、アレンね。」


アレンに連れられて、路地裏の橋の下まで来ると、

簡素な木とボロ布で作られたテントのようなものがあった。

かろうじて、人が二人寝れるくらいのスペースがある。


そこに、女の子が寝ころんでいた。


アレン「ルチカ、兄ちゃんだよ・・・・・」


そう、アレンが少女に声をかけると、辛そうにルチカは返事をした。

顔は赤く、熱を持っている。


ゴホゴホと、咳もしていて辛そうだ。


ルチカ「お兄ちゃん・・・・・おかえりなさい・・・」


リコル「こんにちは、ルチカさんかな?今治すからね~」


パチンと指を鳴らして、リコルは治癒魔法をかける。


すると、みるみるうちにルチカの顔色が良くなっていく。


ルチカ「・・・・え?あれ?・・・熱・・・・・ない・・・・・・喉も・・・痛くない・・・!?」


リコル「治癒魔法で治したんだよ、あとは栄養のあるもの食べれば大丈夫だよ。」


アレン「ルチカ!!!よかった!!!!」


ルチカ「ありがとうございます・・・・・でも、私・・・・お金もってない・・・・・」


リコル「お金はいらないよ、ゆっくり休んで。」


アレン「・・・・・・・・・盗みを働いた俺に、ここまでしてくれるなんて・・・」


リコル「いいよ~べつに~。それより、ほら。」


チャリチャリと、リコルはアレンに金貨を持たせた。


アレン「え?これは・・・・・」


リコル「これで、まずは栄養のあるものを買って二人で食べなよ。」


アレン「で、でも・・・・・・・」


リコル「いいからいいから。」


アレン「・・・・・・・・・・ありがとうございます・・・・・!!!」


ぼろぼろと、アレンの目から涙が零れ落ちている。


リコル「・・・・・・二人でずっと、大変だったねぇ。」


ルチカ「私からも、ほんとうに・・・・・・ほんとうにありがとうございます・・・」


リコル「いいよ、兄妹仲良く過ごしてね。じゃ、行こうかゼロ~」


ゼロ「・・・・・ああ。」


こうして、アレンとルチカに別れを告げて

2人は元来た道を戻った。


リコル「・・・・貧民街の人達は、病気になったらそのままなの?」


ゼロ「・・・ああ、治癒魔法を教会で受けるのにも、金が必要だ。だから、俺みたいな奴隷や、貧民は治療も受けられず死んでいくことが多い。俺も・・・リコルがいなかったら・・・・・・死んでいた。」


リコル「・・・・・・そっか・・・・・なんとかする方法はないかなぁ~」


そう、ボヤきながら、リコルは自分の髪の毛をくるくると回した。



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