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第三話

「あの……お祓いをするには数日を要するのでは……」

「普通の病気だっていきなり手術しないでしょ。まずどんくらいか様子見ないとね。これで祓えるならそれでいいし、できないならまぁ対策を考えるよ」



 師匠が宮本を和室へと連れていき、中央に座らせる。余談だが宮本に着せたメイド服はサイズが合っておらずパツパツだ。師匠だってどちらかといえば大きい方なのにな。本当に余談だが。



「空、絶対出てこないでね」

「わかってますよ」



 俺は和室の隅。米で周りを囲んだ結界の中にいる。米は邪悪なものを跳ね除ける性質があり、まじないを解除できた場合俺に返ってくるものを遮断する、というのが目的だ。他にも日本酒や塩なんかも魔除けに使えるが、前者は畳が汚れる。後者は逆効果になる場合があるということで却下になった。



「あの……お祓いは具体的に何を……?」

「ああ、言っとくけどあたしお祓いできないよ? むしろ呼び寄せたいし」


「え?」

「あたしすごい大好きな名言があってね。バケモンにはバケモンぶつけんだよ! ってことで、どりゃぁぁぁぁっ!」



 師匠が畳に叩きつけたそれが、その衝撃で粉々に砕け散った。



「霊山の祠に置いてあった御神体! あたしが持ってる中で一番やばいやつを壊してやったから、まぁ、テンション上がるぅぅぅぅぅぅぅぅっ!」



 俺がいる空間は和室と分断されている。だから直接触れ合っているわけではないのに。



 何か、嫌な気配が、空間に渦巻いていく!



「きゃっほーっ! すっご! ねぇ見てる空!? これすっごいよっ!」

「師匠離れて! さすがにやばすぎるっ!」

「ぅぅぅぅぅ……!」



 過去一レベルでテンションが上がっている師匠と、それを注意する俺。そして宮本は。四肢を床につき、尻を上げて唸っていた。憑いている犬の霊が表に出るほどに、やばいんだ。そして。



「すき……すき……」



 誰も存在しないはずの俺の隣から。女性の声が耳元で囁く。



「結婚……しよ……?」

「ソラ……!」



 結界内に。黒く黒く長い髪を持つ巫女服の女性。俺に取り憑いている神様。ソラが出現した。



「愛してる……愛してる……」



 強い霊力の出現に呼応して姿を見せたソラは、愛の言葉を囁きながら俺に絡みついてくる。実体はない。それなのに身体に触れる感触がする。冷たい、死体のような肌が。俺の身体を包み込んでいく。



「し……しょ……」



 声を出したいのに口が上手く回らない。人ならざるものに纒わり憑かれる恐怖で頭の中が真っ白になる。

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