No.2
毒性水溶液って孤独感あって愛着湧いちゃう。
少し、私の話をしよう。
名を、藤ヶ谷華折、という。
私は幼い頃から、数字が……理系科目が好きだった。
そして、『天才』と呼ばれる程…得意だ。
0歳8ヶ月で、文字は読めないのに、数字が読めるようになった。
1歳で、小学校低学年レベルの四則計算をマスターした。
やっと文字が読めるようになった2歳で、文章題が解けるようになった。
4歳で小学校高学年から中学校1年生レベルの数学を、5歳で、二次方程式を───
これはいつの間にか世間に注目され、小学生では何処かの研究所と合同で薬品の研究をしたり、ゲームの制作に携わったりしていた。
中学生になり、学校で『理学部』という部活を立ち上げ、部員と共に研究や開発をした。
──私これを世間は『天才』と呼んだ。
私のような、何かに特化している者を『天才』と呼んで異質なもの、とすることで、自分が平凡になった気でいるのではないのか、それはこちらに迷惑だ──と思ったこともある。
……だが、これは将来的に考えて、仕事に困ることはない、ということ。
そんな、将来に希望を持っていた、中学2年の夏────。
有機物燃焼中に、換気を忘れ、一酸化炭素中毒により、命を落とした。
忘れていた私が悪かった。
こんなこと、一度もなかったのに。
その一度が、命取りなのだ。
そして、私は、一酸化炭素中毒で話すことが出来なくなる前に、ある音声──いわば遺言を遺してこの世を去った。
次は、もっと世間の役に立ってみせるから。
だから私は、強くなりたいと、願った。
COに負けないくらい、強く。
そして、私の能力で、他の人の役に立てれば良いのだ。
もう一度、やり直したかった。
神様なんて信じてなかったけど、一度くらいお願いしてもいいかな、と思った。
もう一度、やり直すことが出来たら。
能力はそのまま。
──私を強くして。
そう、願った─────
そして、異世界に至る。
二度目の生も日本にて受けた私には、前世の記憶があった。
…つまり、もう一度『天才理系少女』として、産まれることができたのだ。
私の "二つ目の名前“ は──米優春織。
「ハオリ」という名をもう一度授かったのは、偶然なのか、必然なのかは……神のみぞ知る。
加えて私はもうひとつ。神からもあるモノを授かった。
そう… 神術だ。
つまり私は─────
神術者として、産まれた。
神術名は、『複製召喚』──
今までに自分が『つくった』ことがあるものを、複製することができる能力である。
複製する場所、数も指定することができる。
使い方は、『複製』したい物と、『複製』したい場所を指定する。
場所は、大体の場所を想像すれば良い。
そこ、とか、あの辺、とか。
また、今世だけでなく、前世に『つくった』ことがあるものも『複製』可能だ。
生まれつきで複製できる最高質量は789kg、体積は13㎥だった。
例えば私が、折り紙で鶴を『つくった』としよう。
それを一羽『複製』すると、折り鶴は二羽に増える。
二羽『複製』すれば二羽増え、三羽『複製』すれば三羽増え…。
小学生の頃に家庭科で『つくった』不格好なエプロンでさえ、好きな時に、好きな場所で『複製』できる。
それは強力な神術だったが、世間にはあまり評価されず、その頃の私はBクラス、だった。
そこで、幼い私は考えた。
神術者として産まれたのであれば、神術は高い方が良いだろう、と。
幼いながらに地獄の特訓を繰り返した。
両親は、強い神術者であった。
父、忠幸は、普段は温厚だが、特訓となると熱血になる。
炎使いのSクラス神術者で、町の有名人でもあった。
その相手となる母、美織は、笑顔を絶やすことの無い美人で、Aクラス神術者。
薬草がなくとも、その場で薬を調合することができるという神術で、こちらもやはり有名人であった。
二人とも、幸変組織『流星軍』の一員であった。
そんな高神術者の間に産まれた私は、やはり注目された。
まず、1歳で『複製』した物を消すことが出来るようになった。
最高質量、体積を上げ、6歳で質量が132t、体積が3456㎦となった。
また、そもそもの『つくった』の基準を変え、10歳で『つくった、もしくは触れた』という基準に変えることに成功した。
…そうした努力を経て、私は『Sクラス』になった。
別に嬉しくなかった、そのくらい当たり前だったから。
そんな噂は町にすぐに広がっていき、また、『天才理系少女』ということも既に周知の事実となっていた。
私が、小学2年生で、不思議な糸を開発したからである。
その糸は、物理攻撃耐性、神術耐性、毒耐性、ウイルス耐性………あらゆる物への耐性のある『福石』を細かく砕いて混ぜ込んだ特殊な糸だ。
当時の人々に、「福石を砕く」という考えはなく、また、そんな技術も存在しなかったのだ。
とにかく、細い繊維さえ作ることができれば、糸は簡単につくれるのだが。
…しかし、私は家庭科は苦手で、糸の用途が見つからなかったため、その糸を祖母(神術:裁縫、ランク:A)に渡した。
すると祖母は、慣れた手つきで、羽織らしきものをつくってくれた。
それが、私のチャームポイントである、白衣となる。
やはり、これがなくちゃ理系感が出ない、と、私は密かに思う。
前世でも、ずっと白衣を着ていた訳だし。
……そして、トラウマの小学5年生になる。
現場は見ていないが、聴いたときに、何が起こったのか、理解出来なかった。
だって、私の両親はSクラスとAクラス、負ける訳がないじゃない、と。
そう───あの時、私の両親は、亡くなったのだ。
頭が、真っ白になった。
今でも、父の遺体が運ばれてきたことを思い出すと、今でも目から雫が流れ出る。
しかも、母親の遺体は………無かったのだ。
──二人とも、立派な最期だったという。
父は相手の核を半分以上破壊したと聴き、母は最期まで怪我人の治癒にあたり、しまいには自分の身を呈して怪我人を守ったそう。
娘として、誇らしい限りだ。
母親、美織の遺体がなかったのは、彼女がとある神術を持っていたからだ。
薬の調合。そしてもうひとつ、彼女は所持していた。
2つ目の神術。
それは、死後に発動する神術だった。
死後、自分の全細胞が、爆発するという、神術。
その神術を持っていることを、彼女が知っていたのかは、分からない。
この事件の後、私は祖父母の家に引き取られた。
……あまり人と話さなくなり、元々から少なかった私の笑顔は消えていった。
──そしてついに、私は幸変組織『流星軍』の討伐部に入部した。
…あれだけ強かった両親でも勝てなかった、見知らぬ敵に勝つために。
入部直後、No.000からNo.100という、禍物だけでなく、人を殺す事でさえできる『技』をつくった。
『技』とはどういうものか、というと。
例えば私が『触れた』ことのある強力な毒を、敵の体内に『複製』する、とか。
私が『触れた』ことのあるナイフを、大量に敵の頭上に『複製』する、とか。
そういうものを、数字を唱えるだけで『敵の体内』などという決まった場所に、『強力な毒』などという決まった物を『複製』ができる、というもの、だ。
この『技』の中でも特に強い一桁、No.000~No.009は……まあ、相当なものである。
恐らく、強力な禍物でさえ、一撃で葬ることができるレベルだ。
この10個全て、という訳ではないが。攻撃技ではないものもあるからね。
でもこの『ヒトケタ』は、実戦で使ったことはない。
危険すぎて、何が起こるのか、計算でしか導けていないのだ。
そして、小学校卒業前に、幸変組織育成校、私立輝和学園というところから、うちの学園に来ないか、とスカウトされた。
小中高一貫校、全寮制。
幸変組織育成校は、その名の通りで、幸変組織に入部した、もしくはしたいと考えている子供たちを育成するための…専門学校、のようなものだ。
普通の教育と、神術的な教育を並行して行う。
どうやら輝和学園にスカウトされるのは、Aクラス以上。
スカウトで入学すると、卒業まで、学校側が全額負担してくれるらしい。
…ということで、私は輝和学園に入学することに決めた。
そのまま祖父母の家にいるのも迷惑をかけると思ったのだ。
祖父母は少し寂しそうにしたが、笑顔で見送りをしてくれた。
そしてついに今。
輝和学園中等部、2年生になる。
スカウト生ということもあり、先生たちからは甘々である。
そして私は、昨年度、ある部活をつくった。
『理学部』___そう、私が前世でも作った部活だ。
目的は前世と同じ。
理学が好きな者を集めたい、だ。
前世は入部テストとしてテストを行い、それで合格した者だけ、入部できるという仕組みを作っていたので、今世も同様にテストをつくった。
このテストは、一人一人問題が異なる。
問題の流出なんてされたら困るからだ。
一応、採点後は点数のみ伝え、問題は回収するが、それでも不安だったので、一人ずつで違う問題にした。
落ちても、何度でも受けることが可能だ。
…まあ、流石に何十回も受けられると困る。
問題を毎回私が考えているから。
この筆記テストは20点満点。
問題数は4問で、生物、地学、化学、物理から1問ずつ。
それに加え、今世でしかできない、『神術』のテストもつくった。
実技テスト、とでもしよう。
内容は簡単で、自分の神術をアピールするだけだ。
その時に、神術を使うのも自由。
神術を見て、『理学部』部員全員が、持ち点1点ずつで判断する。
今、『理学部』に入部しているのは私含め5人。
因みに、この実技テスト制度は、5人が入部してから始まったものだ。
昔までは筆記テストのみの20点満点15点合格だった。
つまり今は、25点満点。20点合格。
別に神術ができなくても、筆記テストで満点をとれば、入部可能だ。
…まあ、今までに、筆記テスト満点も、実技テスト満点も、見たことがないのだが。
筆記テスト(作:私)は、前世でも評判の超激ムズ問題。
中学生で解けるレベルなんだけどなあ。
実技テストでは、毎回、男子には絶対に点をあげない奴がいる。
女子は、そもそも理学部に入ろうとしなかった。
女子の挑戦者は、今理学部に入部している者のみだ。
理学部の活動は、主に実験。開発。
禍物の新たな倒し方の研究も同時に進めている。
全員が幸変組織『流星軍』に所属しており、その中で、『理学部』としてパーティを組んでいる。
……因みにパーティ名は『RMC136a1』…とかいうとても厨二な名前である。
…『RMC 136a1』っていうのが、今見つかってる星の中で質量と光度が高い星だから…っていう理由で、私が提案したんだけど、部員たちが、RMCという英語の意味を考え出して、その結果……まあ、こうなった。
そして、この名は部員でも覚える人がおらず(言いにくい、面倒など)、会議の末、『RMC 136a1』っていうのが本当の名前で、仮の名を『アブソリュート』ということにした。
『アブソリュート』は絶対的という意味で、『アブソリュートゼロ』で「絶対零度」、『アブソリュートバリュー』で「絶対数字」の意味である。
なに?本当の名前と仮の名が全く違うじゃないか、と?
それはしょうがないんだよ。
(実際には組織では『RMC136a1』という名前で登録せず、『アブソリュート』という名前で登録している)
…それが輝和学園理学部なのである。
この物語は、とあるSクラスの少女の物語。
米優春織。
別名 『複製の女神』___。
どーもっこんばんちゃ!(謎挨拶すみません。「こんばんは」と「こんにちは」を合わせてみました)
甘鷺千鶴です!
「こんばんちゃ」では「おはよう」が入っていないことに気がつき、「おはばんちゃ」の方が良いのではと思ったところです。
最近夜寝るのが遅くて電車に乗り遅れそう。
ツイは沼るよ気を付けよう。
第二話です!
第一話で終わらなくて良かったです!
なんと投稿してから1時間でPV数が26!
作者びっくりです。
これからも書きます。
頑張ります。
感想とかよかったらほしいなぁなんて思ってみたり。
第一話と第二話は初めの設定紹介みたいなところもあるので真面目に書いたつもりです。
第三話からは個性豊かすぎるメンバーのせいで語彙力が崩壊しています。
ここで先に述べておきます。
次回も良かったら読んでください!!