No.1
5!・4!・3!・2!・1!=5!!
なのか?
こちらの世界、この国、日本には、こんな話が信じられている───
それは、花の便りが聞かれる頃のこと。
とある双子の子が産まれた。上が女の子で、下が男の子、姉弟である。
彼らは──神様の子どもたちだ。
神の子どもの、姉君は、美しい銀髪に、虹色の瞳、そして美しい声の持ち主───まさに『神の子』であった。
彼女が産まれ、「おぎゃあ」と泣いた時、そこにいた全員が虜になったそうな。
名を『藤寿』という。
…藤の花の花言葉は、『優しさ』である───。
…それに対して弟君は。
漆黒の髪に、赤の瞳────まさに『悪魔の子』のようであった。
その為、弟君は『忌み子』として、いなかった者として────名前すら、付けられなかった。
何処かの森に、捨てられてしまったそう。
だから、このときの神の子は、1人、だったのだ。
下の子は、いなかったものと、されたから。
ところで、彼らには類似的で対称的な、とあるチカラが備わっていた。
姉君のチカラは───『福石』と呼ばれる、神秘の能力を持つ、宝石のようなものをつくるものだ。
宝石とは格が違うのだが。
この福石は、様々な効果がある。
そしてその効果によって、色が違う。
怪我を治すことができるのなら黄緑色、人を笑顔にできるのなら桃色、といった感じだ。
これらは主にお守り等として使われる場合が多い。
だが、この福石は、消耗品である。
ものによって異なるが、時間が経つと効果が無くなる。
その合図は福石の光。
福石の光が失われると同時に、効果が無くなるのである。
また、出現場所、出現率などに、法則性はない。
研究者によると、彼女が何らかの正の感情を抱いた時に、何処かにつくられるのだと考えられている。
…それに対して弟君のチカラは───自分の願いをなんでも聞いてくれる生命体をつくり出すこと。
つくりだす、というところは同じだが、石と生物。
これは正反対と言って良い程、異なる。
そして…捨てられた弟君は生命体を沢山つくりだした。
これらの生命体は、時には人に害を与え、時には自然を破壊する。国を滅ぼしたことだって、ある。
───全て、弟君の指示によって。
やがて、人々はこの生命体を『禍物』と呼ぶことにした。
禍々しいもの、略して『禍物』だ。
禍物には多くの種類がおり、人型からスライム状のものまで存在する。強さも様々だ。
そして、藤寿様の弟君はいつしか……『魔王』と、呼ばれるようになった。
何故、禍物は『禍』なのに、王は『魔』なのかは、不明だ。
やがて、国を滅ぼされたり、民を傷つけられたりで怒った姉君は、禍物を倒すため、また、禍物による被害を食い止めるために、『神術』というものを人々に与える。
『神術』とは───この国において、人生を分けるものでもある。
その名から分かる通り、神様から与えられた力だ。
正確に言えば、神の子どもだが。
元から備わっている能力を高める、またはなかった能力を習得することができる。
そちらの世界では有り得ない概念だと思う。
この国では、生まれつき、一部の人や物には神術が備わっていて、その種類や効果、大きさはモノによって異なる。
モノによっては、幾つもの神術を備えている。
まず、種類について。
料理の力や握力の強さを上げる、実用的なもの。
そして非現実的なもの───例えば水を操る、とか。
この世界は、ロマンチックなのだ…。
次に強さについて。
神術の強さ──クラスは、弱いものから順に、0、D、C、B、A、S、SSの7つに分けられる。
0は、神術を持っていない──つまり、『神術者』ではないモノを指す。
『神術者』とは、その名の通り、神術を持つモノのことだ。
人であっても、動物であっても、物であっても、『者』という漢字を使う。
クラスに関して、なぜ0だけ数字なのかはよく分からないが……。
この、0クラスは、国の4分の1程度を占めていると言われる。
だから神術者は貴重であり、重宝される。
因みに、SSクラスは10世紀に一度、生まれるか生まれないか、という程で、現代では存在しない。
Sクラスは43万分の1程度だと言われている。
クラスは、0でない限り、努力次第で上げることが可能だ。
…0でない限り、というのは、0の人は、努力しても神術を手に入れることはできない、ということだ。
ボールがないのにサッカーの練習をする…いや、足がないのにサッカーの練習をするのと同じようなことだ。
しかし、稀に、後天性の『神術』が与えられることがある。
それを少し期待して、0ランクの人々は今日も暮らしている。
そして、『神術』を手に入れた人々は『幸変組織』という組織を作った。
災いを"幸”せに"変”える。
幸変組織は、『禍物』という災いを、無くすために、生まれた。
日本にあるのは『流星軍』と『テンペスト』という2つの組織で、国家的にも、大きな力をもたらしている。
初めにできたのは『流星軍』。
『流星軍』に入るにはCランク以上の神術が絶対的に必要だ。
そこで、家庭の事情などで、どうしても、幸変組織に入りたい0ランクの人々が反乱を起こし、作られたのが『テンペスト』。
『テンペスト』に入るためには、神術は必要ない。
条件は、1つのみ。
その条件を満たせば、誰でも入ることが可能だ。
それは、この問いに「Yes」と答えること。
「命を失ってでも、禍物を倒し、人を守るために戦うか?」
そこで「Yes」と答えれば、組織の一員として認められる。
だが、そこで問題なのは、神術だ。
「禍物を倒すために神術があるのに、その条件ならば0クラスの人でも入ることができるのか?」と。
勿論、入ることは可能だ。
だが、殆どの場合、特別な理由がなければ、0クラスの人は入って来ない。
…自分の力量は、十分理解しているから。
それでも『テンペスト』に入った者は、剣技などを磨いて禍物を倒すことが多い。
幸変組織では、何人かで集まって、パーティーを組む者が多い。
そちらの方が、効率よく禍物を倒すことができるからだ。
…禍物を主な倒す方法は1つだけ。
それは、魔王が禍物一体一体に与えた、『核』を壊すことだ。
だから、一応、神術者でなくとも、禍物を倒すことは可能だ。
因みに核は、モノによって場所が異なるが、人型などの生物の形の禍物なら心臓にあたる部分などと、決まった部分にある。
……心臓が何処にあるのかも分からない禍物もいるが…。
核を壊すと禍物は、溶けるように消滅していく。
そのようにして、人々は禍物を倒している。
そして、壊された核の破片を幸変組織の地方のギルドへ持っていくと、倒した禍物の強さに応じて、お金と交換してもらえる。
幸変組織では、禍物の出現情報も集めており、強いパーティーには偵察や討伐依頼を出すこともある。
そこで依頼に成功すると、核の交換代金だけでなく、成功代金も貰うことが出来る。
そんなパーティーは皆の憧れの的だ。
しかし。
人々は、金目当てで禍物を倒しているのではない。
全ては、
藤寿様の永遠の願いを、叶えるためなのだ───。
皆さんはじめましてっm(*_ _)m
初投稿ですっ!!
甘鷺千鶴と申します!
えっと…。
初投稿ということで…
創作秘話を。少しだけ。
実は私、この物語を1年半前から考えておりました。
でも時間がなくてあまり書けなくて…という感じです。
魔物じゃない概念を生み出したくて、『禍物』。
魔法じゃない概念を生み出したくて、『神術』。
無いものを創り出したいですね…。