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一貫校の新入生  作者: 相模原 光
入学編
9/59

初仕事

 生徒会室に到着すると、瑞稀が2人を出迎えた。


「沙織、遅かったね。来ないんじゃないかって思った……。」

「瑞稀先輩、ご心配をおかけしました。

 この子に連れてきてもらいました!」


 瑞稀は沙織と手を繋いで、にこにこ笑っているめぐみに視線を移す。

 すると、昨日沙織を迎えに行った教室で会っていた事を思い出した。


「昨日はごめんなさい。初めて会った人が多かったから、テンパって語尾が強くなってたみたいで……。」


 めぐみは昨日の出来事はすっかり忘れていたようで、瑞稀に言われてから思い出した様子だ。


「あぁ、そういえばそんなことがあったような。

 私は全然気にしてないので、先輩も気にしないでください、えっと……勝又先輩ですよね?」



「私のこと知ってるんだ。」

「それはもう、勝又先輩はうちの学園では有名人ですから。

 もちろん、沙織も同じく有名人なんだけどね。」


「これ以上、傷口に塩を塗らないで……。」


 しょぼくれた沙織の頭をめぐみが優しく撫でる。

 やはり沙織は満更でもないらしい。


「とりあえず今日は初日だし、早めに覚えてもらいたいこともあるから、中に入って。

 あなたも一緒に来る?」


「お誘いはありがたいのですが、あいにく私は帰宅部に入部しているので、これから部活動なんです。」


「そうなんだ……部活頑張って。」


「はい! ありがとうございます。

 それじゃあ私はこれで。沙織、また明日ね。」

「うん、また明日。」


 笑顔でめぐみを見送り、沙織は瑞稀と一緒に生徒会室へと入って行った。




 生徒会室は昨日と少し様子が変わっていた。

 机が増え、その机の上には書類が束になって置かれている。


「ここが沙織の机。

 智香はまだ来てないから、先に私が大まかな仕事を教えていく事になってる。」

「わかりました。よろしくお願いします瑞稀先輩!」


 生徒会室にできた自分の机に、沙織はおそるおそる手を触れる。


『ここでこれからいろんな仕事をしていくんだ……。

 私にできるかな……。』


「大丈夫、私たちが居るから。」


 瑞稀は沙織の不安を感じ取ったのか優しい笑顔だった。


『瑞稀先輩って、本当に優しいなぁ。

 先輩と一緒に生徒会の活動ができるなら、安心して活動ができる気がする。

 頑張るぞ!』



 沙織が自分の席に座ると、瑞稀が椅子を持ってきて沙織の横に座った。


「まずはここに準備しておいた書類から。

 出来るだけ目を通しておいて欲しい書類だけ厳選しておいたから、これでもごく一部なんだけど……大丈夫そう?」


『到底ごく一部の書類とは思えないくらいの量だけど、私のために瑞稀先輩が準備してくれていたものだ。

 しっかり目を通しておこう。』


「大丈夫です。」


「わからない事があったら何でも聞いて……これからも。」

「もちろんです。」


 沙織は上の書類から目を通していく。

 その書類は目次のように、これから沙織が目を通していく書類の題目を箇条書きしてあるものだった。

 ただ、その書類すらも数枚の用紙にびっしりと題目が書かれていて、ホッチキスで綴じられていた。


『書類ひとつで結構な量だなぁ。』


 沙織は片っ端から目を通していく。


 生徒会の役割や仕事内容はもちろん、それぞれの部活動が行なっている活動の、主な内容や成果など。

 生徒会の仕事内容は主に高等部での仕事と、学園全体との仕事の大きく分けて2種類あるようだ。


 その中で沙織に割り振られる予定の仕事は、主に高等部のみで完結する仕事のようで、所々に目印が付いていた。


「沙織に担当してほしいのは、この目印が付いている項目の仕事。

 とりあえずはこの仕事の内容から確認してもらいたい。

 私も横で別の書類を読んでるから、何かあれば声かけて。」

「わかりました。」



 項目ごとに冊子にされている資料を探し出して読み込んでいく。

 その中には手書きでのメモが書かれている箇所もあり、そのメモ部分も読んでいく。


『部活ごとの衝突や連絡ミスが無いように注意。

 各部活の部費は使用用途を明白に記載。

 仕事は持ち帰らない。生徒会室で寝泊まりしない。

 ……なんだか神経をすり減らしそうな予感がする。』


 ふと顔を上げて横を見ると、瑞稀の横顔が目に入った。


『やっぱり瑞稀先輩って、綺麗な顔立ちしてるよなぁ。

 だからか緊張で笑ってない時の顔は怖く見えるのかもしれない。

 ピアスもすごい沢山着けてるし……。』


 沙織の視線に気がついた瑞稀も、手元の書類から沙織の方に視線を移す。


「何かわからないところでもあった?」

「いえ、少し休憩を。」


『横顔に見惚れてたなんて、言えません!』


 おもむろに瑞稀が立ち上がり、珈琲を持って戻ってきた。


「珈琲を飲めば気分が良くなるって聞いたから……よかったら飲んで。」

「ありがとうございます。」


 沙織が珈琲を飲もうとカップに手をかけると、瑞稀が砂糖とミルクはいらないのか? といった表情で沙織を見ていた。


「私、その時の気分で砂糖とミルクを入れたりするんです。今日はブラックで。」

「すごい……大人だね。」


 沙織は少し照れながら珈琲を飲んだ。

 瑞稀も一緒に珈琲を飲み始めたが、普段はブラックでは無いのか、ひと口飲んだ瞬間に眉間に皺がよった。


「瑞稀先輩、砂糖とミルク入れますか?」


 瑞稀は少し考えてから頷いてひとつずつ入れて混ぜた。


『やばい、今の頷きすっごく可愛かったんだけど!』


 2人で珈琲休憩を挟んでから、作業を再開すると、生徒会室のドアが急に開いた。


「どうかな沙織ちゃん、仕事は順調に進んでる?」

「智香先輩!」

「もうちょっと遅くてもよかったんだけど……。」

「何か言った?」

「何も言ってない。」


 智香は沙織の正面に立って机の上を見る。

 どうやら沙織がどこまで書類に目を通しているのかを確認しているようだ。


「よし、今日の書類確認はここまでにして、実務といこうか!」


『ついに……。』


「入っていいよ!」


 智香が招き入れたのは、綾乃を含めた新聞部の部員達だった。

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