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一貫校の新入生  作者: 相模原 光
入学編
59/59

復旧

 加害者生徒が停学、退学処分になって早くも1ヶ月が経とうとしていた。


 その1ヶ月、沙織は多くの行動をして過ごしていた。


 沙織は気分転換にと初等部の見学に改めてめぐみを誘い、綾乃も含めた3人で見学に行った。

 めぐみも本当は最初に誘われた時点で行きたかったそうだが、沙織と綾乃にもいじめが飛び火してしまうことを心配して断っていたらしかった。

 その心配が無くなり、初等部見学に行った3人は久しぶりに楽しい時間を過ごした。


「この教室で〜。」とか「ここでやった授業が〜。」など、2人の話す内容を沙織は興味深く聞いた。

 自分に過去の思い出を話してくれる2人に、心地よさを感じた。


『この2人と友達になることができて本当によかった。』


 案内を担当してくれた初等部の先生も2人と面識がある先生だったらしく、沙織にこっそりと2人の初等部当時の様子を教えてくれたりした。


 意外なことに、初等部の頃は綾乃の方がめぐみよりも活発だったらしく、体育館の上部に設置されているギャラリーに、頻繁にわざとボールを打ち上げては1番に取りに向かう様な一面を持つ子供だったらしく、打ち上げたボールで窓ガラスにひびを入れて割りかけたこともあったらしい。

 その出来事がきっかけで、初等部の体育館ギャラリーにある全ての窓には、防球ガードが設置される事態が発生したらしい。


 そして大学への見学には智香と瑞稀、生徒会メンバーで行き、大学の広いキャンパスを見て回った。

 智香と瑞稀は進学先を見定めているのか、沙織を時間ギリギリまで連れ回して全ての施設を回ってしまった。

 2人に感化された沙織も、高校1年生とは思えないくらい詳しく話を聞いたため、全てを見終えた頃には、3人とも疲れ果てていた。

 これには案内をしてくれた大学職員や学生も驚いていた。


「まさか1日で構内を周りきって、しかもここまで詳しく話したことなんてほとんどなかったから、すごい充実した時間でした。

 まだ高等部の1年生、2年生ですから、焦らずじっくりと進路について考えてくださいね。」

「私はあなた達みたいな後輩がきてくれると嬉しいけど……まあ、ゆっくりよく考えて決めてください。

 何度でも案内するから気軽に遊びにきてね!」


 そんな数週間を過ごしていた沙織達に釣られるように、高等部の、特にめぐみのクラスにも平穏な日常が戻っていった。


 そしてこの日、停学処分を言い渡された加害者のひとりである、鈴本果穂が登校を再開する日だった。

 めぐみのクラスは前日からざわついていた。


「本当に明日から来るのかな?」

「あんな事しておいて? 私だったら停学処分の期間が終わっても学校に来られないんだけど。」

「あんな事ができるくらいだから、何も気にせずに来るんじゃない?」


 めぐみのクラスでは、そんな会話が一日中、ひっきりなしに繰り返されるくらいだった。

 当事者である、めぐみには誰も会話は振らなかったものの、めぐみは居心地が悪かった事だろう。

 そんな前日の様子から、沙織と綾乃はあらかじめ、めぐみに一緒に登校することを念押しして、半ば強引に約束させていたのだ。

 沙織の部屋に綾乃がやってくると、綾乃の後ろには玲奈も一緒に立って待ったいた。


「おはよー、私も今日は一緒に朝ごはん食べたいなーって思ってさ。」

「おはよう、一緒に行こうか。」


 沙織と綾乃、そして玲奈の3人が学生寮から出ると、めぐみが表で待っていた。


「おはよう。」


 どことなく不安そうな表情で3人を迎えるめぐみに、3人はなるべく普段通りに接していく。


「めぐみは今日は朝ごはん食べる?」

「少し食べようかな……早く来すぎてお腹空いてきたし。」


 不安を隠すように無理に笑って応えるめぐみの手を、玲奈が優しく握った。



「もう大丈夫! クラスの雰囲気も明るくなったし、教室では玲奈が一緒にいるから。」

「まあねー。まあ、あの2人が今の雰囲気に受け入れられるかは微妙だけどねー。」


 玲奈の言う通りめぐみと玲奈の在籍している1年A組では、すでに加害者生徒が掻き乱す前のような穏やかな雰囲気に戻っていた。

 しかも停学処分になった果穂と由理恵は停学期間が違うため、ひとりずつ戻って来るから相当気まずい筈だ。


 クラス内で加害者だった3人以外の生徒は、全員がいじめを注意していたため、余計にアウェイな状況のはずだ。

 

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