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一貫校の新入生  作者: 相模原 光
入学編
47/59

些細な変化

 朝ごはんを食べ終えると、朝ごはん担当は調理室の片付けを、掃除担当はその他の部屋の清掃に取り掛かることになった。


「それじゃあ、高等部メンバーが中心になって各担当の清掃を頼む。

 私と聡美先生は一度合宿所を離れるけれど、学園内にはいるから、何かあったらすぐに連絡してくれ。」


 千夏先生と聡美先生は、智香、瑞稀、沙織の3人に後のことを任せると、ゲームの景品を探しに合宿所から出て行った。


「さてと、それじゃあ清掃担当は瑞稀の指示で使った部屋の清掃をお願いね。

 朝ごはん担当は私と一緒に調理室の清掃と、生ごみとかの片付け。終わり次第清掃担当と合流って事で!」


「わかった。」


 役割分担を確認した面々は、それぞれの担当班に分かれて清掃を開始していく。

 瑞稀率いる清掃担当メンバーは、この後使う予定の無い部屋の清掃から始めると決めると、ぞろぞろと部屋から出ていった。


「さてと、私たちも始めようか!

 まずは使った食器含めて洗い物と、テーブルの片付けからやっていって、最後にコンロ、洗い場、床清掃の順番で進めて最後にゴミ捨てをしていこう。」

「わかりました。」


 朝ごはん担当も智香の指示で分担して清掃を開始する。

 智香と沙織が洗い物を、真奈美と奈々が食堂の片付けを始めた。


 智香と沙織は並んで食器や調理器具を洗うところから始めた。

 智香が食器を、沙織は調理器具を洗いながら話を始めた。


「それにしても瑞稀さん、結構中等部の子達と打ち解けたみたいでよかったですね。」

「本当にね。私ね、さっき瑞稀がすぐに『わかった。』って言って、正直驚いたんだ。

 昨日の担当決めの時から私や沙織ちゃんと離れて、中等部の子達と一緒に作業するのは承知していたと思うけど、あそこまでにすんなり行くとは思わなかったからね。」


 智香は少し寂しそうにそう言った。


「たしかに、瑞稀さんが今回の交流会で1番変わったのかもしれませんね。

 私の時よりも打ち解けるのが早かったし。」

「それは多分、中等部の子達の勢いが凄まじかったからじゃないかな?」


 智香はそう言って食堂の方で片付けをしている真奈美と奈々の方を見た。

 2人は沙織達と同じく、2人で話をしながら楽しそうに片付けをしていた。


「そうですね。

 中等部の子達の勢いは凄かったですもんね。」

「そうそう。

 1日しか経っていないのに、もっと昔から知り合いみたいな感じになってるしね。」


 沙織は智香と瑞稀が中等部のメンバーとの面識がこの交流会までほとんどなかった事実に、少し驚いていたことを話し出した。


「智香さんと瑞稀さんて、中等部の子達と面識が無かったんですね。

 てっきり3年生の梓ちゃん、美琴ちゃん、奈々ちゃんの3人とはある程度面識があると思ってましたから。」

「あぁ、瑞稀は中等部の時には生徒会に入っていなかったし、私は生徒会に入っていたけど2年生の時までだったから3人と在校期間が被る私が3年生の時には、生徒会にはいなかったんだよね。」


 智香が中等部の時の話題が出ると、沙織はその時の話を聞きたくなった。


「智香さんが中等部の時ってどんな感じだったんですか?

 中等部の生徒会ってどんな仕事をしていたんですか?」

「うーん……。」


 智香は洗い物をしている手を少しゆっくり動かしながら、思い出しながら話し出す。


「今の高等部の生徒会よりは緩かったかな?

 私は中等部の頃は1年生の時は書記、2年生の時は副会長をやっていたけど、大した仕事はしていなかったよ。

 各部活の体育館の割り当てを確認したり、学園祭の時に活動指導をしていたり……後は高等部には無いけど委員会との会議とかかな?」


 沙織は高等部には馴染みのない委員会の話題に興味を持った。

 沙織は炊飯器から器具を取り外して流し台に持ってくると智香に詳しいことを尋ねた。


「委員会ってどんな感じの活動をしていたんですか?

 その委員会との会議のこととかも気になります!」


 食い気味に聞いてくる沙織に圧倒された様子の智香だったが、ちょうど洗い物も終了して手に付着していた水滴をタオルで拭うと、食器拭き用のタオルに持ち替えて話を再開する。


「中等部の委員会は、高等部で言うところの部活動になるかな?

 部活動って言っても、運動部や文化部といったくくりの部活動じゃなくて、被覆部や調理部とかの特殊な活動をしている部活を中等部では委員会って言ってたんだ。

 各委員会は部活動と掛け持ちで各クラスから2名ほど参加してもらうんだけど、その委員会にも予算だったり活動報告を定期的にしていたからその会議の進行が主な仕事だったよ。」


『中等部の委員会って、高等部の特殊な活動をしている部活動のことだったんだ。

 つまり、中等部は部活動としてじゃなくて、各クラスからの有志で人員を確保していたわけか……。』


「中等部の方も部活動にしなかったんですね?」

「昔は中等部でも高等部と同じように部活動にしていたみたいなんだけど、どうしても部活動に人数の偏りが出てしまうことが多かったらしいんだよね。

 かといって初等部みたいに専任の職員を雇うんじゃなく、高等部と同じように生徒が主導になって活動をしてもらわないと、この学園全体で指針にしている『自主性』の方針に向かわないからってことで間を取って部活動じゃなく委員会になった……って聞いてたよ。」


『確かに高等部の部活みたいに、完全に生徒が主導になって自分達だけで活動していくのは中等部の生徒には難しいのかもしれない。

 かと言って初等部みたいに専任の職員を雇わなくちゃできないことでもないって事か。』


「智香さんはそんな委員会との会議を中等部時代に経験していたんですね!

 ……それじゃあ、瑞稀さんは中等部では何を?」

「瑞稀は生活委員会に所属していたんだ。

 中等部では部活動の所属は強制じゃなかったから、瑞稀は部活動には所属していなかったんだけど、代わりに委員会で一番忙しかった生活委員会に所属することになったんだ。

 3年生の時には生活委員会の委員長をやっていたよ。」


 智香が瑞稀の中等部時代のことを詳しく言ってくれたけれど、沙織はその話を聞いても全く想像がつかなかった。

 驚きながらも炊飯器の器具を洗い終えて手をタオルで拭くと、沙織も器具の水滴を拭き取る作業に取り掛かった。


『瑞稀さんが委員会の委員長?!

 というか、生活委員会って名前からして風紀を正す側の委員会みたいだけど、中等部の時からピアスとかつけていたって聞いた記憶があるんだけど……。』


 沙織の腑に落ちない表情が横目で見えたのか、智香は「ふふっ!」と笑いながら食器の吹き上げを終えた。


「全く想像がつかないって顔してるよ?

 まあ、瑞稀が生活委員会の委員長って言われても、全く想像がつかないのは理解できるよ!」

「その生活委員会ってどんな活動をする委員会なんですか?」


『内容によっては想像ができるようになるかもしれない……。』


「生活委員会は簡単にいうと簡略化した生徒指導とかになるのかな?

 生活態度の指導や挨拶促進運動なんかをやっていた委員会だよ。」

「瑞稀さんが挨拶促進運動をやっていた委員会の委員長ですか?」


 沙織は今日1番の大きさの声で驚くと、智香も苦笑いをしながら同意した。


「全く想像つかないよね? だけど結構しっかりと活動していたんだよ?

 ピアスをつけた生徒が毎朝、中等部の玄関で睨みを効かせていれば大抵の生徒はしっかりと挨拶を返していたしね!」


『あー……それなら想像ができる。』


「怖くて……ですね?」

「その通り!」


 沙織も器具の吹き上げを終えると、器具と食器を戸棚へと戻していく。

 そこへ食堂を片付けていた真奈美と奈々がやって来た。


「食堂の方は床掃除も終わりました。

 調理室は何をすれば良いですか?」


 智香と沙織は周囲を見渡し、コンロと流し台の清掃、床掃除とゴミ捨てが残っていることを確認する。


「コンロと流し台は私と沙織ちゃんでやっちゃうから、2人は床掃除とゴミ捨てをお願いできる?」

「はい!」


 真奈美と奈々は食堂の清掃で使用した箒をちりとりを持ってくると、手際良く床清掃を始めた。

 智香と沙織も器具類の片付けが終わり、コンロと流し台の清掃に入った。


「だけどこうやって聞くと、中等部と高等部の生徒会はもちろん、活動体制も結構違うんですね。

 私はてっきり中等部も高等部と同じような活動体制で、部活動が中心なんだと思ってましたけど、結構違っててびっくりしました。」

「まあ、高等部から入学した沙織ちゃんからしたら、中等部も高等部も特殊なんだろうけど、改めて話してみると高等部の方が特殊さは際立っているのかもね。」


 ここで調理室の清掃に加わった真奈美と奈々も会話に混ざる。


「高等部は確かに特殊ですよね?

 来年、高等部に馴染めるのかどうか心配になって来ました……。」

「大丈夫ですよ奈々さん。

 というか、私と未来が高等部に入った時に面倒を見てもらうんですから、しっかりしてくださいね?」

「それは大丈夫!

 智香先輩、瑞稀先輩、沙織先輩が居るから!」


 奈々は自信たっぷりにそう言うと胸を張った。


「そうですよ奈々さん。

 私と未来が高等部に入る時には智香さんと瑞稀さんがいらっしゃらないんですから、しっかりしていてください。」


 真奈美がそういうと、智香は少し寂しそうな表情を見せた。


「そっか……私と瑞稀は真奈美ちゃんと未来ちゃんの2人とは一緒に高校生活を送れないのか……。」


 あからさまに落ち込んでしまった智香を励まそうと、沙織は必死にフォローを入れた。


「でもほら、今は一緒の学園にいますし、何より来年も交流会をすればまた一緒にお泊まりできますし!

 それでも不満なら、いっそのこと智香さんと瑞稀さんが留年するって手段もありますから!」


 沙織の言葉は途中までは良かったけれど、後半は他3人の冷たい視線を集める結果になってしまった。


「沙織先輩、それはフォローになってないです。」

「私もそう思います。

 第一、本当にそうなった場合は、私と未来は顔を合わせにくいです……。」

「私も……留年したら真奈美ちゃんと未来ちゃんに会えないと思う。

 何だったら退学の方がマシかもってくらい恥ずかしいと思う。」


 3人からの的確な反論に沙織は思わず目を伏せる。

 その凍った空気を変えようと動いたのは、1番歳下の真奈美だ。


「まぁ、お2人が留年するのは絶対にあり得ませんから、学園祭とかでお会いできれば嬉しいです!」


 真奈美の発言した『絶対』の単語に、智香は自信なさげになる。


「絶対って言われても……何があるかわからないからね。」

「ちょっと智香さん、そんな事言わないでくださいよ!

 私、さっきは冗談で言いましたけど、智香さんと同級生とか嫌ですからね?」

「そうですよ。

 私も高等部に入ってお会いする時は、3年生の! 智香先輩と瑞稀先輩がいいです!」


「うん……3年生になれるようにほどほどに頑張ってみるよ。」

「ほどほどですか……まあ、智香さんは努力家で今でも十分すぎるほど頑張ってますから、ほどほどで良いかもしれませんね。」

「沙織ちゃんにそんな事言われると、もっと頑張っちゃうかも。」

「どうしてですか? そのままでいてください。」


「対応が冷たいなぁ……。」


 調理室と食堂の全ての清掃が終了し、後はゴミ捨てのみになった。


「それじゃああとはゴミ捨てだけだから、沙織ちゃん達は瑞稀達清掃班と合流しておいて。

 私もゴミ捨てが終わったら行くから。」

「えっ? 智香さんがゴミ捨てに行くんですか?

 私が行きますから真奈美ちゃんと奈々ちゃんを連れていってください。」


 沙織がゴミ袋を持とうとすると、真奈美と奈々も自分達がゴミ捨てに行くと言って袋を抱えている。


「いやいや……3人とも合宿所のゴミ捨て場知らないでしょ?」


 3人が顔を見合わせると「そういえば……。」としか言葉が出なかった。

 その様子に「ふふっ。」と笑った智香が沙織に「よろしく!」と言って颯爽とゴミ袋を持って行ってしまった。


 残された3人は大人しく清掃班に合流する事にした。


 清掃班がどこで掃除をしているのかを聞いていなかったけれど、合宿で寝ていた部屋の方から声が聞こえていたので、3人はその部屋に向かった。


 扉は開いており、既に布団が運び出されていた。


「瑞稀さん、調理室の片付け終わりました。」

「お疲れさま。こっちもこの部屋はそろそろ清掃が終わるところだよ。」


 部屋を見ると、全員の荷物が1箇所に集められ、ゴミをまとめているようだった。

 この部屋ではこれ以上、清掃をする場所はないらしい。


「ここの部屋もやる事は無さそうですね。

 あとはどこの掃除が残っていますか?」

「浴室と脱衣所くらいかな。

 一応使ってない部屋も軽く清掃はするけど、人数が必要な場所はそのくらい。」

「それなら、分担した方が速そうですね。」


 清掃班のメンバーが浴室と脱衣所の清掃に、調理班がその他の部屋を掃除することを決めると、智香も戻ってきた。


「ただいまー。」


 智香を見るや否や、瑞稀は1枚の用紙を手渡した。

 その用紙は昨日、被服部部長の加藤由紀から渡された用紙のようだった。


「智香は布団の返却をしてきて。

 一応、入口に運んで置いてあるから。」

「うん、わかった。

 掃除は任せちゃってもいい?」


 智香は瑞稀と沙織に確認を取る。


「いいよ。」

「大丈夫です。」


 それぞれの担当箇所が終了したら、レクリエーションをした部屋に集合することを決め、解散した。


 沙織は再び真奈美と奈々と3人で行動を開始する。

 片っ端から部屋の扉を開けてはき掃除とふき掃除を終えて行く。

 元々綺麗に整っていたおかげか、どの部屋もそれほど時間がかからなかった。



 全ての部屋の掃除を終え、レクリエーションをした部屋に入ると、智香と清掃班の美琴と未来。そして千夏先生と聡美先生の姿もあった。


「おかえりなさい!」

「お疲れさま。」


 先に待っていた面々に迎えられ、沙織達も和の中に加わった。

 沙織は智香の横に座ると、まだ居ない人を確認した。

 どうやらあとは瑞稀と梓の2人だけらしい。


「あの2人が揃ってまだ来て無いとはね。」


 智香も意外に思っていたらしく、沙織に小声でそう言った。

 それには沙織も同意見だった。


「梓ちゃんの瑞稀さんとの初対面の時からは考えられませんね。」

「それだけでも合宿をやって正解だったって思えるよ。」


 ひと足先に対面していたせいか、梓の変化に特に驚かされていた。

 初めて生徒会室で対面した日の印象から考えると、相当関係が進んでいる様子で2人は安心した。


「戻りました。」

「遅くなりました。千夏先生たちも戻ってたんですね。」

「無事にこちらの準備もできたぞ。」


 千夏先生は1枚の用紙を手で持ち、ひらひらと用紙を振っていた。

 おそらくその用紙に最終問題が既に書かれているのだろう。

 そして聡美先生はニコニコしながら小さな箱を持っていた。

 そちらはクイズ大会の景品だろう。


 瑞稀と梓も席に座りいよいよ最終問題、最終決戦が始まる。

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