交流会1日目 クイズ大会
「えっと、まずはルール説明からしますね!
千夏先生と聡美先生も参加してもらいますから、ご一緒にルール説明を聞いてくださいね。」
「わかった。」
「はい! ちゃんと聞きます!」
先生2人もなんだか楽しそうだ。
「まず今回の交流会前に、全員に自分に関するクイズを作成してもらっていたかと思いますが、その問題を順番に出題してもらいます!
そして出題者以外の全員が、早押しで答える。
そんなクイズ大会です。正解者が出るまでやりますからね!
それでは例題があるので、まずはお試しでやってみましょう!」
沙織は用意しておいた例題を使って、模擬戦の進行を開始した。
「あっ、言ってなかったんですけど、色々手作りなので効果音は自分の口でお願いします。」
沙織がそう言うと、智香が質問をした。
「ピンポーンとか?」
「そうですね、あとは出題者として立った時に「問題! でーれん!」みたいな感じでやって貰えると嬉しいです。」
「セルフ盛り上げ?」
「そうですね!」
おもしろそうとか、恥ずかしいとかさまざまな感想が飛び交っているが、沙織はそれらを全スルーして例題を始めた。
『私も効果音は少し恥ずかしいけど、発案者がそんなんじゃダメだよね!』
「それでは早速例題から始めます!
問題! でーれん!
この学園の高等部にはさまざまな部活動が有りますが、その部活動をまとめている部長には何年生が多いでしょうか!」
この例題は学園内を散策していた時に沙織が思い付いた問題だ。
早押し問題なのに中等部だけでなく、智香と瑞稀も少し考え込んでいる様子だが、その中でひとりだけ早押しクイズらしく躊躇のない者がいた。
「ピンポーン!」
「はい、未来ちゃん!
答えをどうぞ!」
「3年生!」
未来が自信満々に答えを言った。
沙織は少し焦らして発表した。
「……未来ちゃん残念! さあ、他の人は〜。」
誰かが当たるまで早押しをするとルールで説明していたので、次の解答者を募る。
「「ピンポーン!」」
智香と瑞稀がほとんど同時に早押しボタンを押した。
『うーん……今のは若干瑞稀さんの方が早かったかな?』
沙織は少し悩みながら、瑞稀を指名した。
「瑞稀さん!」
「2年生。」
「ピンポーン! 正解でーす!
正解は2年生でした!」
正解した瑞稀に全員が拍手を送る。
「素早さで負けた……次は勝!」
僅差で負けた智香は、答えは瑞稀と同じく2年生だったらしく、だいぶ悔しいらしい。
例題からまあまあ盛り上がったので、早速、沙織は安心してクイズ大会を始めた。
「はい、それではこんな感じでクイズ大会を開催していきますよ。
出題者の順番は特に決めていないので、自由に立って出題してください。
あと、全員一度は出題してくださいね! 名前書いておきますから。」
部屋にあったホワイトボードに全員の名前を書いた。
そして、沙織は例題で問題を読み上げたので、解答者に回った。
沙織が解答者側に回ったところで、早速出題者希望の人が出た。
初めの出題者は意外にも瑞稀だった。
予想よりもノリノリの様子の瑞稀の姿に、沙織は微笑ましく思った。
そして先程沙織がやったように、頑張って盛り上げようと張り切って出題を始めた。
「問題、でーれん!
この学園内で私が1番好きな場所はどこでしょうか。」
瑞稀の完全に個人的な答えが正解のクイズに、沙織は少し高揚していた。
『これだよ、これこれ!
このくらい個人的な問題が欲しかったんだよ!』
沙織が勝手に盛り上がっている間に、次々と早押しボタンは押されていく。
「早かったのは……奈々ちゃん。
答えをどうぞ!」
時折、思い出したようにテンションを上げる瑞稀を見て、智香と千夏先生はニコニコと笑っていた。
「瑞稀先輩は寮生だと聞いたので、学生寮の自室!」
「ぶっぶー! 違います。
次!」
自室が不正解で智香はとても驚いていた。
「えー! 私も自分の部屋だと思ってた。」
智香と同じく、瑞稀自身の部屋が正解だと思っていた沙織はもう一度よく考えてみる。
「自分の部屋よりも好きな場所か……。」
『自分の部屋以外に学園内で良く使う場所と言えば、自分のクラスの教室、各教科ごとの教室。あとは……。』
沙織は色々考えてみた結果、当たって砕けろ精神で早押しボタンを押した。
「ピンポーン!」
「はい、沙織。」
瑞稀は自分のクイズが少し盛り上がっていて嬉しそうだった。
『いちかばちか。ここだったら嬉しいな〜くらいで。』
「生徒会室。」
瑞稀は黙っていて間が空いている。
『どっちですか瑞稀さん!
正解? 不正解?』
「正解!」
正解した沙織に拍手が送られる。
と同時に、どうして生徒会室が好きな場所なのか、瑞稀に質問が飛んだ。
「だって……他の人から話しかけて貰えるから……。」
『やっぱりそうだったんだ。』
沙織は瑞稀の性格を考えて、瑞稀が好きな場所ということは、他の人と話せる場所だと考えたのだ。
それに加えて、瑞稀は相手から話しかけてくれると、とても喜んでいることも最近知った。
これらの情報を加味して考えた結果、生徒会室に辿り着いたわけだが、最後は完全に勘だった。
「それじゃあ、沙織に1ポイント。」
瑞稀が沙織の名前が書かれている場所の下部分に、正の字で1ポイントを書き足した。
「えっ? ポイント制だったんですか?」
美琴が沙織の名前の下に書かれたポイントに反応する。
先程沙織が説明したルールには無い、いきなり始まったポイント制に、皆が驚いている。
これには、このクイズ大会を企画した沙織自身も驚いていた。
『ポイント制って、何にも景品とか用意してないんですけど?!』
皆が戸惑っていると、瑞稀が自分の席にスッと戻ってしまった。
そして沙織に向かってニッコリと微笑んで黙ってしまった。
『しょうがない……何か景品を考えるか。』
「仕方ないですね……。
千夏先生、何か景品を考えるので後で外出しても大丈夫ですか?」
「いいぞ、その場合は私も同行するがな。」
「お世話になります。」
こうして急遽、景品ありのクイズ大会に昇格したところ、全員の目の色が変わった。
『みんな凄い目力……今朝の緊張していた時の瑞稀さんよりも凄い……。』
そして続々と出題される自分クイズに、他の人がどんどんと答えていった。
千夏先生と聡美先生も、ノリノリで生徒の出題したクイズに解答していた。
瑞稀が出題した問題同様に、結構マニアックな問題が多く、クイズ大会はなかなかの盛り上がりを見せた。
全員が満遍なく点数を重ねて、いよいよ最後の出題者に順番が回った。
ホワイトボードに書かれた自分の名前の下に書かれたポイントを、全員がチラチラと見て気にしている。
「それでは私が最後ですね。」
そう言って立ち上がったのは真奈美だった。
真奈美が問題をメモしておいた紙を広げると、智香が手を挙げた。
「はい!」
智香はその場に立ち上がり、手を挙げた理由を述べた。
「私と梓ちゃんと未来ちゃんがゼロポイントなので、救済措置をお願いしたいです!」
それを聞いて全員が自分以外の人のポイントも確かめると、たしかに3人の名前の下にはポイントが書かれていなかった。
智香の言った通り、つまりはゼロポイントだ。
『うーん……智香さんが言ってる救済措置って、つまりはクイズ大会によくある「最終問題は1億ポイント!」……みたいなやつだよね。
盛り上がるとは思うけど急にポイント制に変更したし、なんだかわからないうちに景品ありに変わっちゃったし。
それに真奈美ちゃんの問題だけ、最終問題だからってポイントを跳ね上げるのはなぁ……。』
沙織が思案していると、聡美先生がひとつの提案をしてくれた。
「それでは、今日は真奈美ちゃんの問題を最後にして、明日の午前に救済措置として最終問題を出しましょう。
真奈美ちゃんの問題を高得点にすると、真奈美ちゃんの優勝の可能性が無くなっちゃいますし。」
聡美先生の提案に真っ先に反応したのは、千夏先生だった。
「聡美先生の提案なら、今日中に景品を準備しておけば、優勝商品を最終問題を終えてすぐに渡す事ができるし、なんだったら私が最終問題を作ろう。
私は優勝には興味が無いからな。」
「それなら私も千夏先生と一緒に問題を作りますよ。」
「聡美先生も一緒に問題を作ってくださるなら、どの生徒にも公平な問題が作れそうですね。
及川はどうだ。このクイズ大会は及川が企画者だから、及川が最終決定してくれないか?」
『もう私ひとりでは対応しきれないと思います!
先生たちに助けて貰えるとありがたいです!』
「ぜひお願いしたいです!」
「わかった。という事でいいか?」
千夏先生が智香に視線を移した。
「救済のチャンスを貰えるだけで嬉しいです!
それでお願いします!」
智香は嬉しそうに席に座った。
智香と同じくゼロポイントの梓と未来も、少し嬉しそうに笑っている。
話が落ち着いたところで、沙織はクイズ大会を仕切り直しにかかった。
「それではあらためて、真奈美ちゃん!
出題をお願いします!」
真奈美はキョロキョロと全員の反応を確かめると、あらためて問題を書いてあったメモ用紙を広げて息を吸った。
「問題! でーれん!
私のお姉ちゃんは誰でしょうか! 中等部の生徒は知っているかもしれないので、高等部の先輩達が一度答えてからの早押しでお願いします!」
早押し問題なのに中等部のメンバーは高等部メンバーが一度答えてからという、特別ルールで解答時間が始まった。
「えっ! 私たちは後で?」
「斬新な出題方法ですね。」
「まぁ、私たちはお姉さんを知ってるからね。
名前は……。」
中等部メンバーが口を滑らせないかと耳を澄ませていた高等部メンバーだったけれど、真奈美は冷静に対応していく。
「高等部の先輩達は、私のお姉ちゃんが誰なのかわかれば正解にします。
だけど中等部メンバーは学年と名前、あと所属している部活動も全て答えられて正解にしますから。」
真奈美は中等部メンバーには容赦しないようだ。
ただ、それは沙織たち高等部メンバーにも同じだ。
特に沙織に至っては、真奈美のお姉さんと面識があるのかもわからない。
「それは……結構中等部メンバーが正解するのは、なかなかハードだね。
本当に容赦ない……。」
梓は早押しボタンを押したくてうずうずしながら言った。
どうやら全て答えられる自信があるらしい。
梓と違い、智香はお姉さんの正体に頭を悩ませていた。
「だけど私たちは、高等部の人の中から真奈美ちゃんのお姉さんを考えなくちゃいけないから、私たちも結構ハードかも。」
「そうだね。ひとつ質問してもいい?」
瑞稀がヒントが欲しいと真奈美に申し出た。
「もちろんです。
ヒントは、高等部生徒会の先輩達は絶対に面識が有ります!
ですかな?」
真奈美は自信満々に、沙織達と面識がある生徒が自分のお姉さんだと言い切った。
これはかなりのヒントだ。
「これでヒントはお終いです。
結構大胆なヒントになったと思うので。」
「うーん……。」
ヒントを貰いはしたけれど、さっぱりわからない様子の高等部メンバーに、中等部メンバーが急かし始める。
特になんとしてもゼロポイントからの脱却をしたい梓と未来は必死だった。
「先輩達! 早く答えてくださいよ!」
「そうですよ、私たちが答えられません!」
『待って待って! 全然思い浮かばないんだけど!
私とも面識があるって言われても、そんなにたくさんの人と知り合った訳じゃないし……。
もう一回冷静に考えてみよう。』
沙織が自分と面識のある人を、ひとりひとり思い出していると、大きな声で早押しボタンを押しながら「ピンポーン!」と言った声が響いた。
「わかったー!」
その声の主は智香だった。
「それでは先輩、答えをどうぞ!」
「新聞部部長の久美さん!」
自信満々に答えた智香とは対照的に、中等部メンバーは頭を下げて、ガッカリした様子で床を見た。
『その反応は何?!』
そんな周囲の様子を全く気にしていない出題者の真奈美は、口をゆっくり開いて言った。
「正解! よくわかりましたね。」
「やったー!」
ゼロポイントを脱却した事に大喜びの智香に、沙織と瑞稀は拍手を送った。
「智香さん凄いです!」
「言われてみれば顔のパーツが似ている気が……。」
2人が真奈美のことをよくよく観察していると、正解した智香は久美にたどり着いた考えを話し始めた。
「私たちが面識のある人の中から、真奈美ちゃんと同じく苗字の人を思い出していたの。
宮野って苗字の人は高等部に何人かいるけど、沙織ちゃんとも面識があるって考えると新聞部部長の宮野久美さんしか居ないって。」
『そういえば同じ苗字だった。
テンパり過ぎてそんなこと考えられなかった。』
こうして見事に高等部メンバーが全員ゼロポイントを免れたところで、この日のクイズ大会は終了した。
とはいえ、明日の午前中に最終問題として千夏先生と聡美先生から出題されるクイズが全ての勝敗を決めることになるのだけれど……。
クイズ大会が一旦終了し、時刻はちょうどお昼時だ。




