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一貫校の新入生  作者: 相模原 光
入学編
36/59

準備万端です!

 綾乃に漫画を1日1冊貸し続け、ついに金曜日になった。

 綾乃に貸していた漫画は、後日めぐみに渡り、さらに1日後に沙織へと返却されていた。



「沙織、これありがとう!

 この巻のヒロイン、めっちゃ可愛いかったよ!」

「うん、めぐみはそう言ってくれると思ってた。」

「いや、その巻はヒロインの可愛さは主人公のかっこよさがあって初めて発揮されるわけで……。」


 めぐみが読み終わった巻までならば、ネタバレを気にすること無く話せるようになったため、3人が集まる朝食や昼休みの時間には漫画の話題がほとんどだった。



 初めは3人とも、まぁまぁな内容の漫画のため、人前で感想を口にするのを少し躊躇っていたのだが、どうしても感想を共有したいと、一度口に出してしまってからは周囲の視線などほとんど気にしなくなってしまった。

 というか、案外周囲の人たちも沙織達の話に聞き耳を立てている事などなく、自分達の会話に集中しているため、誰にも何も思われていないらしい。


 今はお昼ご飯を食べ終えて、会話が弾み始めていたタイミングだ。


「そうだ2人とも、私は明日から生徒会の交流会なんだけど、今2人に渡してる漫画は残りの巻数もそんなに無いし、2人が良ければ残りの漫画は全部、明日の朝に綾乃に渡しても良いかな?」


 沙織の提案に綾乃とめぐみはとても喜んでくれた。

 どうやら、2人とも沙織の漫画にすごくハマっていたようだった。


「全然いいよ! むしろ大歓迎!」

「それなら私、土日は綾乃の部屋に行こうかなぁ。

 そうすれば綾乃が読み終わった漫画をすぐに読めるし。」

「私の個人スペースでならいいよ。」


『私も一緒に綾乃の部屋に遊びに行きたかったなぁ……。

 だけど今回綾乃の部屋に遊びに行けない分、交流会で中等部の生徒会の子達と仲良くなろう!

 漫画の話は全部読み終わった後に2人と盛り上がろう。月曜日とかに!』


 沙織は土日に2人と漫画の話ができない事が少し残念に感じたけれど、その分、月曜日に盛り上がろうとすぐに気持ちを切り替えた。



「ところで沙織、交流会では何をするの?」

「たしか中等部の生徒会と合同で、レクリエーションみたいなのをするって聞いたけど、どんなレクをやる予定なの?」



 2人は沙織達生徒会が計画したレクリエーションに、興味津々の様子だ。

 この2人もそうだけれど、この学園の生徒はたまに外部進学者である沙織の発言や行動に対して、異常なほど反応を示す事がある。

 今の2人はまさにそんな様子だ。


「えーっとね、私たち高等部からは合宿所でのお泊まり会と、クイズ大会を提案してるんだ。」


 沙織が思っていた以上に2人は話に食いついた。


「お泊まり会は親睦が深まりそうだね!

 クイズ大会はどんな問題を出すの?」

「たしかに! 中等部の子達も楽しめるクイズってなると、出題問題を用意するのが難しそうだね。」



 綾乃が言った通り、中等部の生徒会との交流会なので、出題問題には沙織もとても頭を悩ませた。

 けれどその甲斐があり、良い出題問題を考えついたのだ。

 沙織はドヤ顔で思い付いた出題問題を2人に伝えた。



「実は出題問題は、私たち高等部生徒会と、中等部生徒会の両方から出してもらってるんだ!」


「そっか! そうすれば中等部の子達も答えられるね!」


 めぐみは沙織の案を手放しで褒めてくれたけれど、綾乃の反応はイマイチだった。


「沙織の案もいいと思うけど、それでも高等部の方が答えやすくない?

 現に瑞稀さんとかすっごく頭良いし。」


 綾乃の発言に「待ってました!」と言わんばかりの表情で、さらに思いついていた事を話した。


「私も綾乃と同じ事を考えたの。

 だから少し出題問題に縛りを設けたの!」

「縛りを?」


 沙織は早速、詳しい説明を始めた。


「今回の交流会は、もともと高等部生徒会と中等部生徒会で親交のある生徒が居ない事が原因で、先生たちから発案されたんだけど、それをクイズ大会の縛りにしたの!」


 沙織の説明は大雑把過ぎたのか、2人の頭上にははてなマークが見えている。


「つまり、クイズ大会の出題問題は、私たち高等部生徒会と中等部生徒会の、それぞれのメンバーに関する問題って縛りを設けたの。」



 細かい情報を伝えると、綾乃とめぐみは「そういうことか!」と感心した。


「そっか……それならクイズが出題されるたびに、沙織たち高等部生徒会は中等部生徒会の子達の情報に詳しくなって、逆に中等部生徒会の子達も沙織たちの事を知る事ができる。

 よく考えられたクイズ大会だね!」


「一応、参加する人全員に、自分に関するクイズを一問は準備してもらう事になってるから、同じ中等部、高等部のメンバーだからって必ずしも答えられる訳じゃないから、結構楽しんでもらえるんじゃないかなって思ってる。」


「そのクイズ大会、とっても楽しそう!

 同じ生徒会役員の新たな一面まで知る事ができるかもしれない。」


『中等部生徒会の子達を知っている2人にここまで言ってもらえると、上手くいく気がしてきた!』



 沙織の交流会用に計画したクイズ大会は、綾乃とめぐみからも良いアイディアだと賞賛された。

 沙織は2人の反応に自信が湧き、これなら確実に交流会が成功すると思えた。



「それにしても、沙織は面白い事がポンポンと思いつくよね?

 発想が柔軟というかさ。」

「私もそう思ってた! クイズ大会って言われたら、私だったら自分の事を問題にしようなんて思い付かないもん。」


「たまたま思いついただけだよ。

 初めから、クイズ大会が面白くて盛り上がるかなって思ってたんだけど、綾乃がさっき言った通り、私たち高等部生徒会の方が知識は多いでしょ?

 それだと中等部生徒会の子達が楽しめなくなっちゃうし……。

 かと言って問題を中等部の子達の知識量に合わせてしまうと、瑞稀さんと智香さんが中等部の子達に気を遣って、クイズ大会なのに答えてくれないかもしれない。

 それを両方とも回避するために色々考えた結果、今回の出題問題に縛りを設ける案が思いついただけ。」


 綾乃とめぐみは沙織の話を「うんうん。」と頷きながら、感心した様子で聞いていた。


「問題点を改善するために、いっぱい考えたんだね!

 沙織がそれだけ真剣に考えて決定した計画なんだから、絶対に成功するよ!」


「そうだね。

 土日の交流会、楽しんでね!」


「うん! ありがとう!」


『今回の私が考えたクイズ大会は、私自身も智香さんや瑞稀さんの事をもっと知りたいって願望から考えついた案だったけれど、先輩達と同じく中等部の子達のことも知りたいって思ったから、どちらの事も知る事ができる素晴らしい企画だと、自分でも思ってる!』



 沙織がこのクイズ大会を思いついた背景には、完全に私利私欲にまみれた理由が存在していたけれど、一応今回の交流会がうまく隠れ蓑になった。



 そんなこんなで会話をしていた3人だったけれど、気がつけば昼休みももう少しで終了の時間に差し掛かっていた。


「そろそろ教室に戻ろっか。」


 綾乃の言葉で3人は各自で忘れ物がないか確認したのち、教室に戻って午後の授業を受けた。



 放課後、沙織の教室に遊びに来ためぐみと3人で少し会話をして、教室で解散した。

 めぐみは綾乃と土日の予定を話すために、綾乃について行った。



「お疲れさまです!」

「お疲れさま沙織ちゃん!

 さっき千夏先生が合宿所の鍵を取りに行くから、荷物の最終チェックをしておいて欲しいって言ってたよ〜。」

「わかりました、最終チェックが終わったら合宿所に運んで行きますね!。」


 沙織は自分の席に荷物を置くと、早速、明日の交流会用に準備していた物の最終チェックを始めた。


「明日は楽しみだね!」

「そうですね! なんだかワクワクしてきました!」


 智香と沙織がキャッキャと盛り上がっていると、通常の生徒会での仕事をしていた瑞稀も、休憩がてら2人の会話に加わった。


「私も……お泊まり会ができるのとっても楽しみ。」


『瑞稀さんのその少し恥じらいながらの笑顔!

 たまりませんねぇ!』


 沙織がニコニコ瑞稀を見ていると、ちょうど生徒会室のドアが開いた。


「おつかれ。あぁ及川、最終チェックは終わったか?」


 合宿所の鍵を持った千夏先生が、荷物の確認をしていた沙織の横にやって来た。


「はい千夏先生。

 最終チェックも無事に終わりました。

 あとは荷物の運び込みと、合宿所内の設備チェックだけです。」


「そうか。なら、そろそろ合宿所に向かうか。

 私と及川で行ってくるから、千葉と勝又はここを頼む。」


「はーい! いってらっしゃい!」

「いってきます!」


 千夏先生と沙織は、手分けして荷物を持つと、合宿所へと向かった。


「千夏先生、その荷物重くないですか?」

「そうでもないな。

 長期休みの時に生徒に渡すテキストやプリントと比べたら、このくらいの荷物どうって事ない。」


 千夏先生は強がりではなく、本心からそう思っているようだ。

 その様子に、沙織は少し身震いをした。


『この学園ってそんなに長期休みの時に課題があるのか……。

 課題は計画的にやったほうがいいな。』




 合宿所に到着すると、千夏先生は荷物を汚れないように置いて、合宿所の鍵を開けた。

 千夏先生に続いて沙織も中に入ろうとした時、背後にから声が聞こえた。

 振り返ると中等部生徒会の顧問、聡美先生が小走りでやって来ているのが見えた。


「はぁはぁ……こんにちは、千夏先生、沙織さん。」

「こんにちは聡美先生。」

「聡美先生、そんなに急いでどうされたんですか?

 何か問題でも?」


 千夏先生は小走りでやってきた聡美先生に、何かあったのかと問いかけたけれど、聡美先生は特にそんなことはなかったみたいだ。


「いえ全然何もないです! すいません。

 ただ荷物が多そうだったので、お手伝いしようかと声をかけただけなんです。」


「そうでしたか。

 それならちょうど鍵も開きましたし、今から施設チェックをするので聡美先生もご一緒にお願いできますか?」


 千夏先生のお願いを、聡美先生は快く引き受けてくれた。


「もちろんです。」


 手分けして荷物を合宿所の中まで運び込み、そのまま施設のチェックを始めた。

 窓とカーテンを開けて換気をしつつ、どの部屋で何をするのかを最終確認していった。



 3人は室内の確認をひと通り終えて、持ってきた荷物の荷解きを始めた。


「そういえば、今日は中等部の子達は来ないんですか?

 前回みたいに梓ちゃんとかは。」


 中等部から聡美先生しか来ていないことに気がついた沙織は、生徒会役員は来ないのか聡美先生に聞いてみた。


「今日は中等部生徒会はお休みにしたの。

 自宅生の子達もいるから、早めに帰らないと明日の支度とか大変だと思って。」


「そうだったんですね。

 てっきり生徒会の仕事をしているのかと思ってました。」


『今日は中等部の子達に会えないのか……。

 残念だなぁ。』


 沙織がそう言うと、聡美先生は首を横に振った。


「自宅生の子だけ早くに帰宅させて、学生寮の子に仕事をさせるのは不平等になってしまうから、昨日までにみんなで協力して、全ての仕事を終わらせておいてもらったの。

 だから今日はみんなでお休み。」


「聡美先生はお休みしないんですか?」


「私は千夏先生と同じで、この学園内の職員用の部屋に住んでるからすぐに帰宅できますし、何より中等部生徒会の顧問として、生徒たちが使う場所の確認はしておかないと!」


 聡美先生はそう言って、荷解きした物を丁寧に並べていった。


『結構いろんな先生が学園内に住んでるんだなぁ。』


「よし! これで最後かな?」


 聡美先生がそう言うと、持ち込んだ荷物全てを並べ終わった。

 千夏先生はさらに並べた荷物を確認して、準備漏れが無いかを確認していく。



「漏れは……無さそうだな。

 お泊まり会で使う布団は、明日の午後に、被服部が持って来てくれることになってるから……。

 これで準備は完了だな。」


「お疲れさまでした〜。」


 全ての準備作業が終了して、沙織はその場に足を伸ばして座り込んだ。


『終わった〜!』


「これで明日からの交流会は楽しく開催できそうですね!」


 沙織は生徒会に所属してから初めての大仕事を終えて、すでに達成感を感じていた。


「沙織さんたち高等部の生徒会がたくさん行動してくれたおかげね!

 ありがとうございます!」


 聡美先生が代表して千夏先生と沙織の2人にお礼を述べる。


「聡美先生もお疲れさまでした!

 明日からは聡美先生と千夏先生も、一緒に楽しみましょうね!」


 沙織は顧問の2人も一緒に楽しんでもらえるように準備していたので、これであとは楽しむだけだと胸を躍らせた。


「そうね、たまには生徒と一緒に楽しまないと損よね!」

「まぁ、適度に楽しませてもらうよ。」


 顧問の2人も沙織の言ったように、明日からの交流会を楽しみにしてくれているようだった。


『絶対に全員が楽しめる交流会になるように、頑張るぞー!』


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