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一貫校の新入生  作者: 相模原 光
入学編
15/59

後輩は先輩と仲良くなりたい

 1時間目の授業が終わり、千夏先生が保健室を後にしてからさらに時間が経過し、ついにお昼休みに突入した。


「失礼します。」


 保健室のドアを開けて入室してきたのは、綾乃とめぐみの2人だった。

 沙織がなかなか戻ってこないことを心配してやって来たのだ。


「あら2人とも! 沙織ちゃんならまだ眠ってるわ。

 お昼ご飯、よければここで食べて行かない?」

「いいんですか?」


 めぐみはお弁当を持って来ていたので、そのまま保健室のテーブルに弁当箱を広げていく。

 しかし、綾乃は沙織と同じく寮生なので、普段は学食で食べていた為持ち合わせが無かった。


「それなら私、パンか何か買ってこないと。」


 そう言った綾乃は学食の横にある売店へ向かおうとする。


「行かなくて大丈夫よ。少し待ってれば来るから。」

「待ってるって?」



 真理先生に言われた通り、しばらく保健室で待っていると、ドアが開いて2人の生徒が入ってきた。


「こんにちは真理先生。」

「こんにちは〜。

 今日は私以外の子達もいるけど、いいかしら?」

「もちろんです! どうぞ見てってください。」


 そう言って彼女達が見せたものは、売店で売っている一部の商品だった。


「我が販売部の品揃えは、売店には及びませんが、移動販売としては満足いただけるだけの商品を取り揃えていると自負しています!」


「販売部は移動販売もやってくれてて、保健室にも来てくれるのよ。

 保健室にいる私や生徒も、お昼ご飯はちゃんと食べないと、午後の活動に差し支えるでしょ?」


 綾乃は早速商品の中から、自分のお昼を選び始めた。


 その間に真理先生は、沙織が眠っているベッドへ向かい、沙織に声をかけた。


「沙織ちゃん? お昼の時間になったからご飯食べましょう。

 お友達も来てるわよ。」


 声をかけられた沙織は、すっかり顔色も良くなり、もぞもぞと起き出した。


「沙織ちゃんはお昼ご飯何が食べたい?」


「……お米。」


「お米ね、見てくるわ。」


 真理先生が販売部の元へ戻り、商品の中からお米の入った商品を選んでいく。


「おはよう沙織。調子はどう?」


 沙織が起きたので、めぐみが様子を見に沙織のところまでやってきた。


「うん、もう大丈夫。心配かけてごめんね。」


「全然いいよ、ご飯食べよ?」


 めぐみは沙織をテーブルまで連れて行き、椅子に座らせた。


「沙織ちゃん、お米の商品はこのくらいあるけど、どれが食べたい?」


 いくつかの商品を見繕ってきた真理先生は、沙織に商品を選ばせる。


『寝起きで揚げ物はキツイかも……。』


「じゃあ……これにします。」


 沙織が選んだのは温めるとおじやになるお弁当だった。


「わかりました! あなたは寮生ですよね?」


 販売部は沙織に寮生かどうかの確認をして、沙織は「そうです。」と返した。

 すると販売部は腰からぶら下げていた機械を取り出して、沙織の選んだ商品をスキャンすると、その端末を沙織に差し出した。


「それではこちらの端末に学生寮の鍵をかざしてください。」


 どうやら移動販売でも学食と同じシステムで会計ができるようだ。

 沙織が鍵をかざしてお会計を終えると、販売部は「失礼しました。」と言って保健室を後にした。


「それじゃあ、沙織ちゃんのお弁当を温めるわね。」


 真理先生が保健室の流し横にある電子レンジで沙織の弁当を温めていく。


「綾乃は何にしたの?」


「私はおにぎりセットにしたよ。おにぎりが2つとおかずが一緒に入ってるやつ。

 唐揚げとか卵焼きが入ってる。」


「その唐揚げちょうだい?」

「めぐみはお弁当を持ってきてるじゃん!」

「じゃあ……おかず交換して。」

「交換ならまぁ……。」


 綾乃とめぐみがおかず交換をしていると、真理先生が沙織のお弁当を持ってきた。


「はい沙織ちゃん、温かいうちにたべて。」

「ありがとうございます真理先生。

 いただきます。」


 保健室なので大声は出さないが、楽しく会話をしながらお昼ご飯を食べていく一同。

 そしてまたもや保健室へ来客が来た。


 今度の来客は智香と瑞稀だった。


「沙織ちゃん大丈夫?

 瑞稀から聞いたけど、もし無理そうだったら放課後の生徒会はお休みでもいいよ?」


「もう大丈夫です、放課後はちゃんと生徒会室に行ってお仕事できます。」


「朝よりも顔色も良くなってるし、無理しない程度に仕事してくれれば良いよ。」


 2人は売店で買ってから保健室に来たようで、それぞれパンやお弁当を持っていた。


「あらあら、今日は賑やかね!

 沙織ちゃんも元気になったみたいだし、みんなで食べましょう!」


「千葉先輩も勝又先輩も、こっちの椅子に座ってください。」


 智香と瑞稀の椅子を、綾乃が準備して2人を座らせた。


「ありがとう綾乃ちゃん!」

「ありがとう……。」


「いえいえ。

 さっ! 先輩達も早くお昼食べないと、お昼時間終わっちゃいますよ?」


「そうだね、早く食べようか。

 いただきまーす。」


 智香と瑞稀も加わり、結果的に6人でお昼を食べた。


「そういえば葉月はもうどこか行っちゃったの?

 瑞稀から沙織ちゃんを連れて保健室に行ったって聞いたから、てっきりまだ保健室にいるんだと思ってたんだけど。」


 葉月が真理先生にからかわれて保健室を出たのは、当事者以外に沙織しか知らない。


「葉月先輩なら……。」


 沙織は経緯を話そうとしたが、葉月の個人情報も口にしそうだったので、一瞬考えて話を少し濁しすことにした。


「カメラのメンテナンスが終わったので、写真を撮りに行きました。」


 瑞稀と智香は「それもそうか。」と言って会話を戻した。


『2人が納得したって事は、葉月先輩は本当に写真に全力に取り組んでるんだなぁ。

 本当に凄い人なんだ。』


 葉月の話題が出たことで、綾乃は新聞部の先輩である奈津美から聞いた話を2人に聞き始めた。


「葉月先輩といえば、学園のパンフレット写真も含めて、高等部関連のほとんど全ての写真になんらかの形で関わってるって奈津美先輩から聞いたんですけど、本当ですか?」


「さすが新聞部……情報網はピカイチだね!

 そうだよ、高等部の写真は葉月が関係していることがほとんどだし、葉月が撮った写真もたくさんパンフレットに使われてるよ。」


「奈津美先輩に聞いた通り、本当に凄いですね……。」

「今朝見かけた時も、他の人とは違うオーラを感じたけど、本当に凄い人だったんだ……。」


「オーラって大袈裟。

 葉月はそんなに遠い存在じゃないから、もうちょっと親近感を持って接してあげないと……。」

「瑞稀の言う通り! もう少し近づいていかないと、葉月は写真にしか興味を持たないから、みんなの顔も名前も忘れちゃうよ?」


『そんなに?!』


「せっかくお話しできた先輩なのに……。

 というか、私は保健室に2回も連れてきてもらったのに、顔も名前も忘れられると申し訳なく感じます……。」


「沙織ちゃんは生徒会の仕事でこれからどんどん関わりが増えるし、綾乃ちゃんも新聞部とは関わりが多いから、他の生徒よりは会話する頻度は高いと思うよ。」


 沙織と綾乃は葉月に忘れられる可能性は低そうだが、名前が出てこなかっためぐみは悲しそうだ。


「それじゃあ私だけ忘れられる感じですか?」

「葉月と顔を合わせて話しをすれば、忘れられる事は無いよ。1番は写真の話題を出して会話が成立すれば間違いないんだけどね。」


『あの葉月先輩と写真の話ができる人は、この学園内に存在するのだろうか……。』


「それはハードルが高いですね。」


「それなら私から話しかけ続けます!」


 めぐみはどうしても葉月に忘れられるのは嫌らしい。


「めぐみちゃんは帰宅部だから、帰宅部の活動に葉月を誘えばいいよ。

 たまには学園外の刺激もあった方が葉月にも良いだろうし、それにめぐみちゃんも葉月と会話ができて仲良くなれる。」


「そうします!

 学園外の写真を葉月先輩が撮る。

 そして私は一緒に歩く。最高ですね!」


 めぐみは一筋の希望を持って葉月を誘う事にしたようだった。

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