表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一貫校の新入生  作者: 相模原 光
入学編
10/59

取材

 智香に招き入れられたのは、綾乃を含めて5人の生徒だった。

 沙織と同じ色のリボンをつけた生徒は綾乃だけで、そのほかの4人は違う色だった。

 3人は2年生、1人は3年生だ。



「綾乃ちゃんは同じクラスって聞いたから、自己紹介は簡単にしてもらって……他の4人は沙織ちゃんとは初対面だから詳しく自己紹介してね!」


「まずは私から。」


 沙織の前に一歩出て自己紹介を始めた生徒は、リボンの色がこの場にいる全員と違い、3年生だとわかった。


「私は新聞部の部長をさせてもらってる宮野久美です。

 今日はうちの学園で久しぶりの外部進学者で、なおかつ今回の生徒会役員に就任した及川沙織さんの取材をさせていただくために、新聞部として取材を受けていただこうと思ってます。

 無理な取材はしませんので、何卒よろしくお願いします。」


『3年生に敬語で話されると緊張する……。』


「久美さんが言った通り、沙織ちゃんには取材を受けてもらえたらって思ってるんだけど……どうかな?」


「えっと……よろしくお願いします。」


 新聞部というからには、結構無理矢理にでも取材をしてくると思っていた沙織は、戸惑いながらも覚悟ができていたため了承した。



 久美の自己紹介が終わると、次は2年生が自己紹介を続けていく。


「私も新聞部所属の菅野奈津美。

 普段は取材と編集を担当してるんだけど、今回は綾乃ちゃんの補佐として来ました。

 よろしくね!」


『人当たりの良さそうな人だ。それに元気!』


「永野葉月、写真部。」


「この子が私と一緒に、沙織ちゃんを入学式の日に保健室に連れて行ったルームメイト。」


 保健室に連れて行ってもらった人が、こんなに急に現れるとは思っていなかった沙織は、慌ててお礼を言う。


「先日はありがとうございました。お礼を言うのが遅れてしまい、すみません!」


 葉月は軽く手を上げて気にするなとジェスチャーで伝えると、カメラケースをテーブルに置いてカメラの準備をし始めた。


「そして最後に紹介するのは橋本明日香さん。

 彼女は今回の取材とは関係ないんだけど、今日紹介しておきたくて来てもらったの。」


 明日香はかけていた眼鏡をくいっと上に上げると、沙織に自己紹介をする。


「はじめまして及川さん、橋本明日香です。

 私は経理部で部長をさせてもらってます。経理部は高等部での経理の管理をしている部活です。

 部活動ごとの部費の使用用途の相談だったりも請け負ってるので、生徒会とも良く一緒に仕事をしているの。

 これからよろしく。」


「はじめまして及川沙織です。これからよろしくお願いします。」


『経理部って部活もあるんだ……。部活動が沢山あるのは聞いていたけど、想像以上に沢山ありそう。』


 沙織と初対面の面々が自己紹介を終えて、最後に綾乃が自己紹介をした。


「小林綾乃、新聞部です。よろしくお願いします!」


 綾乃も沙織と同じく緊張しているようだが、沙織とは違って堂々と挨拶を終えた。


「もしかして、昨日の教室で……。」


 瑞稀は綾乃を思い出し、めぐみの時と同じく謝罪と自己紹介をした。

 昨日の教室での雰囲気と違って、雰囲気が軟化していたおかげか、瑞稀と綾乃は打ち解けられた様子だった。


 全員が自己紹介を終えると、智香が今日の今後の流れを全員に説明する。


「まず沙織ちゃんに関してなんだけど、今から少し取材を受けてもらいます。

 生徒会の新しい役員として、全校生徒に報告しておくと言った名目もあるから、軽くインタビューくらいは受けてもらいたい。」


『生徒会の新しい役員として……。』


「わかりました、頑張ります。」


 智香が嬉しそうに頷く。


「そして、沙織ちゃんは人見知りで緊張しやすいといった点を考慮して、インタビューは意気込みくらいにしてもらって、主な内容は橋本さんと実務をやっている所を取材して記事にしてもらおうと思ってます。」


「実務と言っても、これからの経理関係の説明がほとんどになると思います。

 ただ、実際の資料なども使っていく予定なので、写真部さんや新聞部さんの記事や写真に関して、校内新聞が発行される前に確認したいんですけど……。」


「それはもちろん。

 新聞部は生徒会の皆さん含めて、掲載予定内容を確認していただいてから校内新聞を発行する予定です。」

「わかった。

 写真は早めに現像して新聞部と経理部に渡す。」


「経理部は信頼関係で他の部活から委託して作業させてもらっているので、そうしていただけるとありがたいです。」


 明日香はその点以外は自由に掲載して構わないと言うと、資料の準備に取り掛かった。


「それじゃあ橋本さんが準備している間に、新聞部さんからのインタビューを進めてもらいましょうか。」


「よし、まずは私と一緒に綾乃ちゃんは沙織ちゃんにインタビューする内容の確認をしたら、すぐにはじめましょう!」

「はい!」


 綾乃と奈津美が生徒会室の隅っこで打ち合わせを始めると、カメラの準備ができた葉月が写真の指示を出して撮影を始めた。


「まずは自己紹介用の少しにこやかな表情で。」


「にこやかですか?」


 慣れない撮影に頑張って笑っている沙織だが、誰が見ても引き攣っている。

 気を利かせた智香が瑞稀を沙織の横に連れて来る。


「さっきまで2人で仲良さそうだったから、話したりしていたらいい写真が撮れるんじゃない?」


「ぜひお願いします。」


「沙織がどうしてもって言うなら……。」



 瑞稀が横に来たことによって、沙織の表情が柔らかくなり、自然な笑顔の写真が増えていく。


 ある程度枚数を撮り、葉月は満足したようだ。



「そしたら次はこっちでインタビューさせてください!

 綾乃ちゃんが主に質問していくから、リラックスして答えてね!」


 綾乃の横に奈津美が座り、2人の向かい側に沙織が座りインタビューが始まった。

 説明されていた通り、簡単な意気込みや役員としてどんな仕事をしていきたいか等を答えて終了した。

 沙織よりも綾乃の方が緊張していたようで、インタビューが終了後に大きく深呼吸をしていた。



「最後は沙織さんの席で資料の説明などをさせてください。」


 一息つく暇もなく、明日香との経理面の書類説明会が始まった。

 明日香は高等部のあらゆる経理を管理している、経理部で部長をしているだけあって、とても丁寧に1箇所ずつ確実に沙織に教え込んでいく。


 その周囲で葉月が時たま写真を撮っているが、それ以外の面々はどんな記事にするか、記事の書き上げ日程などを決めている。




「今日はここまでにしましょうか。

 もう暗くなってきちゃったし、学生寮の人たちはそろそろ学食に向かわないと夕食を食べ損ねちゃう。」


 明日香は時計を見ながら説明していたようで、夢中になって作業をしていたた他のメンバーに声をかけて立ち上がった。


「もうこんな時間に、早いですね。

 だけど全部は終わらなかったですね……。」


『残っている書類の山を見ると、終わらなくて残念だなぁ。』


「今日だけで終わるとは思ってないよ、また明日やればいいじゃない。

 明日もここに来るから。」

「明日香さん……。」


「私達は記事を書く作業に入るので、完成次第サンプルをお持ちします。」

「よろしくお願いします。それじゃあ今日はここで解散って事で!

 私と瑞稀と葉月はこのまま学食に向かうけど、沙織ちゃんと綾乃ちゃんも一緒に行く?」


「そうですね……時間も無いですし、先輩達がよろしければ。」


「2人も一緒で良いよね?」


 瑞稀と葉月は頷いた。



 生徒会室を軽く片付けて、智香が鍵を閉めた。


「そうそう、沙織ちゃんにも鍵を渡しておくね。」


 智香は沙織に生徒会室の鍵を手渡す。


「生徒会役員は全員持って良いって学校から言われてるから、無くさないようにだけ注意してね。」


「はい。」


『無くさないように……そうだ!』


 生徒会室と書かれた鍵を渡された沙織は、無くさないようにその場で寮の鍵と一緒にキーホルダーでまとめた。


 校舎から出ると、辺りは真っ暗になっていた。


「それじゃあ、私達はここで。」

「今日はありがとうございました。おやすみなさい。」


 学食へ行く道に差し掛かり、学生寮のメンバーと自宅メンバーで別れた。


 学生寮のメンバーは学食へ向かい、自宅メンバーは正門を出てから更に別れて帰宅していくようだ。


『大人数での学食はちょっと緊張する、なんだったらインタビューより緊張してるかも。』


「先輩達と学食って楽しみだね沙織!」


『その何でもポジティブに捉えられる綾乃はすごいよ、ほんと。』


 客観的に見て綾乃と智香は似ている気がした沙織だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ