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死ぬ前までの無気力ぶりが嘘だったかのように私のテンションは上がっていた。もしかしたら体が若返ったのにも影響を受けているのかもしれないが、次の人生が楽しみで仕方がなくなっている。
「お時間いただいてしまった上にたくさん望みも叶えていただいてすみません」
「もともと迷惑をかけているのはこっちじゃからのう。それに、他の者の願いに比べれば可愛いもんよ」
謝罪をすると、神様がなんだか疲れたような表情をした。遠い目をしている気がする。
「そういえば、1人だけ似たようなことを望む者もおったのう。その子も日本人じゃったが…国民性ってやつなのかのう」
それは個人情報的に大丈夫なのだろうかと思いつつも、いつかその人に会えたらいいなとも思った。
「さて、それではそろそろいいかのう?」
「はい、神様」
「君はあまりにも無欲だったからのう、何かあればわしを呼んでも構わんぞ」
「ありがとうございます」
結果的にチートっぽい感じがするのだが…善意から言ってくれてるみたいなので良しとしよう。というか、その何かが起こらないような人生を送りたいものだ。
「異世界から来たことは周りに言っても言わなくても構わんぞ。今回に限らずたまにあることじゃからな。向こうでは『落ち人』と呼ばれていて、だからと言って何があるわけでもないしのう」
「そうなのですね。ご説明ありがとうございます」
向こうからしたら突如村の外れに家ができるわけなので、その一言で説明がつくのはありがたい。
徐々に周りの景色が歪んでいく。
「じゃあの。新しい人生を存分に楽しむんじゃぞ」
「はい、お世話になりました」
次に目を開くと、先程確認した私の家の前に立っていた。万が一のことを考え、頬をつねってみた。痛い。夢じゃないことを確認し、思わす口元が綻んだ。
「これからよろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げながら誰にともなく挨拶し、私は異世界での第一歩を踏み出した。