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「君の世界で流行病があったじゃろ?君もそれで死んでしまったんじゃ」
おじいさんの言葉に、やはりなと思う。ここ最近私が毎日家にいたのも、その流行病のせいで仕事を辞めざるを得なかったからだ。体調の悪さは微妙過ぎて確信には至れなかったが…。
仕事もなくこれからの見通しもない状態だったので、死んでしまったのならそれでもいいかなという感じだ。ただ、何故私はいまここにいるのだろう。このおじいさんはおそらく神様のはず。勇者などと言われてしまうのだろうか?
そんな私の思いが伝わったのか、おじいさんは重ねて説明をしてくれた。
「実はのう、その流行病のせいで人が死にすぎてしまったんじゃよ」
「はあ…ニュースでも大変なことになってたのでそれは知ってますけど…」
それが運命ってやつではないのだろうかと思い、首を傾げた。
「そのー、間違ってしもうたんじゃ…」
「え?」
「本当は死者の数はもっと抑えるつもりだったんじゃが、うっかり…」
おじいさんは非常に申し訳なさそうにしているが、だからと言って私がここにいる理由にはならない。
「それはわかりましたが、私は何故ここに…?というか、あなたは神様ですか?」
「おお!すまんすまん!お察しの通り、わしは神じゃ。それで君がここにいる理由なんじゃがの、ちいと言いにくいんじゃが…」
おじいさんは神様で間違いなかったらしい。だが、もう死んでいる私には神様だったところであまり関係はない気がする。日本人である私には神様というものもよくわからないのだが。
神様はもじもじしながらこちらをうかがっている。ちょっと可愛い。
「こちらの世界の人口が減りすぎて、バランスがとれなくなってしまっての…。急遽他の世界の、いわゆる強い魂を呼んでバランスをとることにしたんじゃよ」
「バランスとは?」
「この地球自体の自然の力と人間の力は本来拮抗しているものなのじゃ。しかし人間が減りすぎた今、自然の力が強くなりすぎて、このままだと人間が滅びてしまうんじゃよ」
「神様ならば、病が蔓延する前に戻したりすることはできないのですか?」
「なくなったものを戻すことは神でもできんのじゃ…すまんがのう」
「いえ、私は別に構いませんが…」
「それでな、人間が滅びるのを防ぐために、他の世界から強い魂…勇者を喚ぶことにしたんじゃよ」
いわゆる異世界召喚というやつをされた人がいるらしい。よく見る中世風の異世界からだと、現代に適応するのは大変だろうな、と思う。
「勇者を召喚したのはいいんじゃが、向こうの世界の神から苦情が入ってのう」
「バランス…のせいですか?」
向こうの世界から強い魂とやらを召喚したのだから、そちらのバランスが崩れてしまうのも納得がいく。